SSブログ

【映画レビュー】「大いなる自由」(原題「Great Freedom」/2021 オーストリア・ドイツ) [映画]

【映画レビュー】「大いなる自由」(原題「Great Freedom」/2021 オーストリア・ドイツ)
 同作は第二次世界大戦終戦後のドイツから、ストーリーが始まる。男性間の同性愛を禁じた「刑法175条」に反した性的指向を持つ男、ハンス・ホフマン(フランツ・ロゴフスキ)が1968年、ハッテン場でもある公衆トイレで、同性恋人のレオ(アントン・フォン・ルケ)と性行為をするハンスを捉えたカメラ映像を見せられる裁判所でのハンスが裁判にかけられ、懲役刑を言い渡される。
 刑務所で同房となった囚人のヴィクトール・コール(ゲオルク・フリードリヒ)は、そんなハンスを忌み嫌い、遠ざけようとするが、腕に彫られた番号から、ハンスがナチスの強制収容所にいたことを知る。
 己を貫くあまり、何度も懲罰房に入れられる頑固者のハンスと、そんなハンスを長期間にわたって見てきたヴィクトール。反発から始まった2人の関係は、長い年月を経て互いを尊重する絆へと変わっていく。
 同性愛者の人権をめぐり、終戦後の1945年、恋人と共に投獄された1957年、そして「刑法175条」の廃止が報じられた1968年と3つの時代を行き来しながら、「愛する自由」を求め続けた男の20余年にもわたる闘いを描いている。
 男性間の同性愛を禁じる刑法175条は、ドイツ帝国成立後まもなく制定され、ワイマール共和政下、そしてナチスドイツの時代を経て厳罰化が進んだ。
 その後、第二次世界大戦での敗戦を経てドイツは東西に分断されるが、西ドイツではナチス時代と同一の条文を1969年まで使用しており、以後、徐々に適用範囲が縮小され、1973年には罰則の緩和が行われ、最終的に撤廃されたのは東西ドイツ統一後の1994年だ。その約120年間に14万もの人が処罰されたといわれている。
 一方の東ドイツでは与党のドイツ共産党がこの法律に反対していたこともあり、1950年代に同性愛に対する規定を削除。この間、大人と青少年の間で行われる同性愛が処罰対象と定めたこともあったものの、以後も成人した者同士の同性愛行為は処罰の対象とされておらず、1988年には再び同性愛への罰則規定が削除された。作中でハンスが、東ドイツへの亡命を企んでいたのは、そのためだ。
 同性愛を禁じる法律があった国はドイツにとどまらず、全世界で存在していた。その歴史も古く、紀元前のアッシリア時代からあったとされている。
 それらは広義では「ソドミー法」とも呼ばれ、それぞれの国が持つ宗教をバックボーンとしている。特にキリスト教やイスラム教では、その傾向が強く、死刑を言い渡された事例も少なくない。
 日本においても明治5年(1872年)に「鶏姦律条例」という肛門性交を禁止する規定が設けられ、翌明治6年には「鶏姦罪」として公布されたが、明治15年の刑法改正によって消滅したという歴史がある。しかしながら、法律の有無にかかわらず、社会的な偏見は根強く残っていることは事実だ。
 同作は、プロローグとラストシーンを除けば、刑務所内を舞台とする、ほぼワンシチュエーション作品であり、かつ女性キャストも出演しない徹底ぶりだ。男性同士の性行為のシーンも、見る人によっては目を背けたくなるほど、生々しい描写がなされている。
 ハンスは、その性的嗜好を除けは、刑務作業も真面目にこなす実直な男だ。ナチス、そしてその後のドイツにいても迫害され続けた過去を持つにも関わらず、ひねくれた面が全くない。
 対して、ヴィクトールは殺人を犯し、かつ薬物中毒者でもある。性的嗜好は、いわゆる“ノンケ”であるがゆえ、ハンスと同房で過ごすことに嫌悪感を示し、近付くのも避けることは無理からぬことだろう。
 しかし、ハンスの腕にナチスの強制収容所で付けられた番号を記した入れ墨を見つけると、彫師でもあるヴィクトールは、自ら歩み寄り、その番号を消してやろうとする。ハンスとヴィクトールの間で友情が生まれ、愛情へと変化していくきっかけとなる出来事だ。
 その間、レオと出会う前の同性恋人ハンスとの再会を経て、ハンスとヴィクトールの関係も大きく変化する。いつしか、ヴィクトールもハンスとの性行為を求めるようになったのだ。
 その求めに応えるハンス。しかし、刑期を終え、薬物中毒のヴィクトールを残し、後ろ髪を引かれる思いで出所したハンスが立ち寄った「Great Freedom(大いなる自由)」という、ゲイが集まるクラブで目にした光景は…。
 決してセリフの多い作品ではないもののフランツ・ロゴフスキの仕草や表情で見せる演技が光り、さらに、オーストリア出身のセバスティアン・マイゼによる脚本と監督により“愛とは何か”“自由とは何か”を考えさせる奥の深いストーリーとなっている。
 LGBTQの人権保護が、広く世界中で叫ばれるようになったのは、21世紀になってからだ。しかし、その声は全ての人に届いているのかは、疑問が残る。
 特にここ日本では、法整備がなかった分、一人ひとりの意識の問題として、差別意識が根強く残り、それを覆していく作業は容易ではないだろう。「生産性」などという言葉を用い、同性愛を全否定するような国会議員が存在する限り、この国でも、同性愛者が“大いなる自由”を手にするのは、遠い未来のようにも思えてしまうのだ。
<評価>★★★★☆
<公式サイト>https://greatfreedom.jp/
<公式Twitter>https://twitter.com/greatfreedomjp
<公式Instagram>https://www.instagram.com/greatfreedomjp/
<監督>セバスティアン・マイゼ
<製作>セバスティアン・マイゼ、ベニー・ドレクセル
<脚本>トーマス・ライダー、セバスティアン・マイゼ
<撮影>クリステル・フォルニエ
<編集>ジョアナ・スクリンツィ
<音楽>ニルス・ペッター・モルベル、ペーター・ブロッツマン
#大いなる自由 #映画 #セバスティアン・マイゼ #フランツ・ロゴフスキ #ゲオルク・フリードリヒ #トーマス・プレン #アントン・フォン・ルケ #刑法 #ドイツ #オーストリア #刑法 #同性愛 #LGBTQ #Bunkamura #カンヌ #国際映画祭 #ある視点

映画パンフレット 大いなる自由

映画パンフレット 大いなる自由

  • 出版社/メーカー: ノーブランド品
  • メディア:



nice!(0)  コメント(0) 
共通テーマ:映画

【映画レビュー】「TANG タング」(2022 日本) [映画]

【映画レビュー】「TANG タング」(2022 日本)
 原作はイギリスの児童小説。よって、ほとんどの鑑賞者は原作未読であろう。しかし、研修医として、父を救うことができず、自信を失った過去を持ち、働かずに妻の絵美(満島ひかり)にも捨てられつつあるダメ亭主・春日井健(二宮和也)と、ポンコツロボット「タング」との出会いと、友情を育んでいく様は、ファンタジーのみにとどまらず、単なるアイドル映画とは一線を画すストーリーを見せてくれる。
 タングはロボットでありながら、人間よりも優しい心を持ち、健に対し、愛情をもって接する。健もそれに対し応えようとするが、タングの能力を悪用しようとする馬場博士(武田鉄矢)の手に渡ってしまう。
 ストーリーは複雑すぎず、子どもでも楽しめる内容であり、VFX映像も美しく、主人公の二宮和也はじめ、豪華なキャストもそれぞれ、持ち味を発揮しているのだが、興行収入が8億円に届かず、評価も今一つだったようだ。
 “失敗”の原因としては、ターゲッティングが曖昧なままだった事だろう。父を救えなかった健が、タングを救うという結末も悪くはないのだが、結果として、子ども向け作品として、あるいはファンタジー作品として、どっちつかずの印象を受けた。
<評価>★★☆☆☆
<公式サイト>https://wwws.warnerbros.co.jp/tang-movie/
<公式Twitter>https://twitter.com/TANGMOVIE_JP
<公式Instagram>https://www.instagram.com/tangmovie_jp/
<監督>三木孝浩
<脚本>金子ありさ
<製作>高橋雅美、池田宏之、藤島ジュリーK.、下田淳行、久保雅一
<エグゼクティブプロデューサー>濱名一哉
<プロデューサー>田口生己、下田淳行
<共同プロデューサー>星野秀樹、熊谷悠
<ラインプロデューサー>及川義幸
<撮影監督>石坂拓郎
<照明>平野勝利
<録音>矢野正人
<美術監督>小島伸介
<装飾>石上淳一
<スタイリスト>里山拓斗
<ヘアメイクデザイン>倉田明美
<キャラクターデザイン>丹治匠
<VFXプロデューサー>井上浩正
<カラーグレーディング>齋藤精二
<音響効果>松井謙典
<編集>柳沢竜也
<音楽>服部隆之
<音楽プロデューサー>千田耕平
<スクリプター>古保美友紀
<助監督>清水勇気
<制作担当>馬渕敦史
<原作>デボラ・インストール「ロボット・イン・ザ・ガーデン」(小学館) https://www.shogakukan.co.jp/pr/robot/
<主題歌>milet「Always You」(SONY MUSIC) https://www.sonymusic.co.jp/artist/milet_music/discography/SECL-2782
#タング #TANG #映画タング #映画 #三木孝浩 #金子ありさ #デボラ・インストール #イギリス #二宮和也 #満島ひかり #市川実日子 #小手伸也 #奈緒 #京本大我 #山内健司 #濱家隆一 #かまいたち #景井ひな
#武田鉄矢 #野間口徹 #利重剛 #ロボット #milet #ワーナー

(初回仕様)TANG タング ブルーレイ プレミアム・エディション(2枚組) [Blu-ray]

(初回仕様)TANG タング ブルーレイ プレミアム・エディション(2枚組) [Blu-ray]

  • 出版社/メーカー: ワーナー・ブラザース・ホームエンターテイメント
  • 発売日: 2023/01/06
  • メディア: Blu-ray






nice!(0)  コメント(0) 
共通テーマ:映画

【映画レビュー】「ベイビー・ブローカー」(原題「브로커」/英題「Broker」/2022 韓国) [映画]

【映画レビュー】「ベイビー・ブローカー」(原題「브로커」/英題「Broker」/2022 韓国)
 借金まみれのクリーニング店主ハ・サンヒョン(ソン・ガンホ)と、教会に勤めながらも養護施設出身で自身も捨て子だった過去を持つユン・ドンス(カン・ドンウォン)には、赤ちゃんポストから乳児をさらい、横流しをする“ベイビー・ブローカー”という裏稼業に手を染めていた。
 ある日、売春婦でもあったムン・ソヨン(イ・ジウン)が、「ベイビー・ボックス」と呼ばれる赤ちゃんポストに我が子を置き去りにするが、気が変わって、翌日、取り戻しに来るが、すでに赤ちゃんはサンヒョンらの手に渡っていた。
 ソヨンが警察に通報しようとしたため、サンヒョンらは赤ちゃんを連れ出したことを白状する。そして、成り行きで、彼らと共に、養子を求める親を探しの旅に出ることになる。
 そこに、ドンスが育った児童養護施設から、サッカーが好きでソン・フンミンに憧れる男児のヘジン(イム・スンス)らが3人の車に忍び込むように加わり、刑事のアン・スジン(ペ・ドゥナ)らの追ってをかいくぐるように、養父母探しの旅に出る。
 一度は捨てられた乳児のウソンのお世話を中心に、サンヒョン、ドンス、ソヨン、ヘジンは、まるで疑似家族にような関係となっていく。
 サンヒョンとドンスによるブローカー稼業も、赤ちゃんを捨てたソヨンの行為も、傍から見れば許されるものではないだろう。そもそも、車にGPSを付けられるなど、警察にマークされる存在だ。
 しかしながら、ストーリーを通じて、サンヒョンもドンスもソヨンも、「悪人」としては描かれてはいない。養父母探しをする中で、韓国中を旅するロードムービーのような展開で、徐々に、この“家族”を応援したくなるような気持ちになってくる。
 依頼主に合うため、ソウルに向かう道中、ソヨンはサンヒョンとドンスに、かつての売春相手だったウソンの父親に当たる男を殺し、殺人犯の子にしたくなかったためにウソンを捨てたことを告白する。
 一方、KTXでソウルに向かったサンヒョンに対し、依頼者の出した条件は、今後、ソヨンが赤ちゃんと会うことを許さないというものだった。
 ソヨンと遊園地の観覧車に乗ったドンスは、ソヨンと出会って自分の母にも捨てざるを得ない理由があったことを知ったと話す。母を許す必要はないというソヨンに、ドンスはだから代わりにソヨンを許すと答える。
 しかし翌日、ソヨンが不在だったことからからサンヒョンは彼女が自分たちを売ったと気付く。そして、依頼主と会っているところに警察に踏み込まれ逮捕される。
 その3年後、サンヒョンは行方不明だったが、スジンに預けられたウソンは元気に成長していた。刑務所から出所したソヨンはガソリンスタンドで働いていた。スジンはウソンの今後を話し合うため、ソヨン、ドンス、ヘジン、依頼主の夫婦を呼び集めて会合を開く。そこに向かうソヨンを追う自動車のフロントガラスには、サンヒョンたち5人で撮影した写真が下げられていたのだった。
 劇的な展開がなくとも、人間が持つ優しさをじわじわと描く是枝監督の手法がいかんなく発揮されている秀作だ。余韻の残るエンディングもとても良い。「万引き家族」で見られたコメディー的要素も一切排した作品だが、重苦しくもなく、素直に感動できる作品だった。
<評価>★★★★★
<公式サイト>https://gaga.ne.jp/babybroker/
<公式Twitter>https://twitter.com/babybroker_jp
<公式Instagram>https://www.instagram.com/babybroker_jp/
<監督・脚本・編集>是枝裕和
<製作>ソン・デチャン、福間美由紀
<製作総指揮>イ・ユジン
<撮影>ホン・ギョンピョ
<美術>イ・モグォン
<衣装>チェ・セヨン
<音楽>チョン・ジェイル
#ベイビーブローカー #映画 #是枝裕和 #ソン・ガンホ #カン・ドンウォン #ペ・ドゥナ #イ・ジウン #イ・ジュヨン #韓国 #ブローカー #赤ちゃんポスト #カンヌ国際映画祭 #ギャガ

ベイビー・ブローカー OST(韓国版)

ベイビー・ブローカー OST(韓国版)

  • アーティスト: オリジナルサウンドトラック
  • 出版社/メーカー: CJ E&M
  • 発売日: 2022/06/24
  • メディア: CD






nice!(0)  コメント(0) 
共通テーマ:映画

【映画レビュー】「キャメラを止めるな!」(原題「Coupez!」/英題「Final Cut」/2022 フランス) [映画]

【映画レビュー】「キャメラを止めるな!」(原題「Coupez!」/英題「Final Cut」/2022 フランス)
 わずか300万円の製作費ながら、2017年に日本で大ヒットした『カメラを止めるな!』を、フランス人のアカデミー賞受賞監督ミシェル・アザナビシウスがリメイクした作品。
 そもそも、『カメ止め』がヒットした理由として、低予算ながらアイデア勝負で作品を作り上げ、かつ、口コミで徐々に人気が出てきたという、従来にはない過程を踏んでおり、そのエキセントリックさも相まって人気作となったが、その中身はB級ホラーの枠を出ないものだ。事実として、上田慎一郎監督はその後、ヒット作をリリースできず、“一発屋”との評価もある。
 そんな作品をなぜ、一流監督がリメイクしようとしたのがが、まず最初の謎。そして、オリジナルを完全に踏襲するストーリー、作中で製作されるホラー映画の役名を日本人名にする点も謎だ。
 そこまでオリジナルをなぞるのならば、なぜわざわざフランスでリメイクしようとしたのか…という点も謎だ。しかも、『カメ止め』の製作費が300万円に対し、400万ユーロ(約5億6000万円)の製作費を掛けている。謎だらけの作品だ。
 『カメ止め』の良さは、低予算のB級ホラーであるという、鑑賞者側のバイアスによってウケた側面が大きかった。実際、脚本的にはドタバタ劇が続く、粗さの目立つ作品だ。
 「なぜ、この映画が作られたのか」という疑問に対しては、エンドロールで一つの種明かしをしているものの、ストーリー自体に意外性もオリジナリティーもなく、一流監督が一流キャストを無駄遣いしたという印象が強く残る作品だ。
<評価>★☆☆☆☆
<公式サイト>https://gaga.ne.jp/cametome/
<映画配給 ギャガ株式会社公式Twitter>https://twitter.com/gagamovie
<映画配給 ギャガ株式会社公式Facebook>https://www.facebook.com/gagajapan
<監督・脚本>ミシェル・アザナビシウス
<製作>ノエミ・ドゥビド、ブラヒム・シウア、ミシェル・アザナビシウス、バンサン・マラバル、アラン・デ・ラ・マタ、ジョン・ペノッティ
<原案>和田亮一、上田慎一郎
<撮影>ジョナタン・リケブール
<美術>ジョアン・ル・ボル
<衣装>ビルジニー・モンテル
<編集>ミカエル・デュモンティエ、ミシェル・アザナビシウス
<音楽>アレクサンドル・デスプラ
#キャメラを止めるな! #映画 #カメラを止めるな! #カメ止め #ミシェル・アザナビシウス #ロマン・デュリス #ベレニス・ベジョ #グレゴリー・ガドゥボワ #フィネガン・オールドフィールド #マチルダ・ルッツ #セバスティアン・シャッサーニェ #ルラファエル・クナール #リエ・サレム #スシモーヌ・アザナビシウス #アニエス・ユルステル #シャーリー・デュポン #アナ・バイラミ #ジャン=パスカル・ザディ #竹原芳子 #リメイク #フランス #B級 #ホラー #ギャガ #GAGA

キャメラを止めるな!(吹替版)

キャメラを止めるな!(吹替版)

  • 出版社/メーカー:
  • 発売日: 2023/01/11
  • メディア: Prime Video






nice!(0)  コメント(0) 
共通テーマ:映画

【映画レビュー】「キングメーカー 大統領を作った男」(原題「킹메이커」/英題「Kingmaker」/2022 韓国) [映画]

【映画レビュー】「キングメーカー 大統領を作った男」(原題「킹메이커」/英題「Kingmaker」/2022 韓国)
 1960年代の韓国、後の第15代韓国大統領キム・デジュンと、選挙参謀だったオム・チャンノクの実話がベースとなっている当時の韓国政界の暗部を描くポリティカルサスペンス。
 韓国東北部の江原道で薬剤師をしているソ・チャンデ(イ・ソンギュン)は、理想主義者の野党・新民党に所属するキム・ウンボム(ソル・ギョング)に魅せられ、選挙事務所を訪ね、選挙に勝つための戦略を提案する。その結果、ウンボムは補欠選挙で初当選を果たし、63年の国会議員選挙では地元で対立候補を破り、新進気鋭の議員として注目を集めるようになる。その後もチャンデは“影”との異名を取り、参謀として暗躍する。しかし、チャンデの勝利のためにはとにかく手段を選ばない。それは、自作自演でウンボムの渡米中にチャンデの自宅を爆破し、政府のせいだとするネガティブキャンペーンを起こすまでに暴走し、ウンボムと袂を分かつことになる。
 当時の韓国の置かれた状況、“真の民主主義”を願う国民の感情まで理解していれば、さらにそのストーリーは味わい深いものとなろうが、日本人である自分にとっては、そうでなくとも十分に、当時の韓国政界の魑魅魍魎ぶりが、迫力をもって伝わってくる。
 同作でモデルとなっているキム・デジュンは、親日家としても知られ、韓国への歴代大統領の中でも好感度が高く、日本からの韓国への好感度の大幅に上昇させたことでも知られている。
 また、北朝鮮に対しても「太陽政策」と呼ばれる緊張緩和政策を志向し、南北首脳会談が実現させ、南北共同宣言を締結。韓国人唯一のノーベル賞受賞であるノーベル平和賞を受賞している。
 一方で、KCIA(大韓民国中央情報部)によって、飯田橋のホテルグランドパレスから拉致され、5日後にソウル市内の自宅前で発見された事件の被害者となるなど、常にその命を狙われ続けた政治人生だった。
 映像や演者のセルフ回しの一つひとつ取っても、ドロドロした政界工作をテンポ良く見せられることで冗長にならず、ストーリーの没入できる作品だった。
 時は流れ、1988年、五輪が行われたソウルでの再会、そして、1997年、ウンボムが大統領選挙に勝利したものの、チャンデは、その姿を見届けることはなく、既に他界していたというラストシーンには美しさすら感じた。 
<評価>★★★★☆
<公式サイト>https://kingmaker-movie.com/
<映画映画会社ツイン公式Twitter>https://twitter.com/movietwin2
<監督>ビョン・ソンヒョン
<脚本>ビョン・ソンヒョン、キム・ミンス
<撮影>チョ・ヒョンレ
<編集>キム・サンボム
<製作>イ・ジンヒ、パク・ユンホ
<音楽>イ・ジンヒ、キム・ホンジュン
#キングメーカー #大統領を作った男 #映画 #ビョン・ソンヒョン #韓国 #政治 #選挙 #大統領 #実話 #金大中 #キム・デジュン #厳昌録 #オム・チャンノク #ソル・ギョング #イ・ソンギュン #ユ・ジェミョン #チョ・ウジン #パク・イナン #イ・ヘヨン #キム・ソンオ #チョン・べス #ソ・ウンス #ぺ・ジョンオク #キム・ジョンス #ユン・ギョンホ

キングメーカー 大統領を作った男(字幕版)

キングメーカー 大統領を作った男(字幕版)

  • 出版社/メーカー:
  • 発売日: 2022/12/02
  • メディア: Prime Video






nice!(0)  コメント(0) 
共通テーマ:映画

【映画レビュー】「アキラとあきら」(2022 日本) [映画]

【映画レビュー】「アキラとあきら」(2022 日本)
 池井戸潤の同名小説の映画化。元銀行員の池井戸らしい重厚なストーリー展開となっている。さらに、単なる経済ドラマの域にとどまらず、同族経営の会社の闇を深く掘り下げた人間ドラマの側面もクローズアップされている。
 山崎瑛は幼い頃、銀行に裏切られ、父親が町工場を倒産させ、一家は追い出される。父親の開発した金型を握りしめ、差し押さえのトラックを追いかけて飛び出した時、後ろからやってきた車に轢かれそうになりる。
 そこで大企業「東海郵船」の御曹司・階堂彬との出会いだ。それは全く違う境遇の“アキラとあきら”がが出会った瞬間だ。
 彬の父親・階堂一磨(石丸幹二)が経営する東海グループは、父親の兄弟たちがそれぞれ社長を務めるものの、階堂崇(児嶋一哉)、階堂晋(ユースケ・サンタマリア)ら、兄弟仲が悪く足の引っ張り合いをしている。彬(横浜流星)はそんな状況に嫌気を指し、東大卒業後、産業中央銀行に入行する。
 そして、同じく瑛(竹内涼真)も東大卒業後、産業中央銀行に入行し2人は12年の時を経て、同期行員となる。2人は新人社員研修から“伝説”と語り草となるほどのプレゼンを披露する。
 瑛は、その生い立ちから、取引先が厳しい状況でも親身になり対応するバンカーとなるが、それがアダとなり、支店に左遷されてしまうが、腐らずに努力することで本社に舞い戻ってくる。
 一方、彬は、実家の東海グループが倒産の危機に直面し、銀行を辞め、自ら東海郵船の社長として再建に乗り出す。
 まずは赤字まみれのリゾートホテルを売却しようと動きますが、負債を抱えてまで買いたいという会社は現れず、残る道は東海商会や東海観光などのグループ会社の全株を東海郵船に譲渡し、傘下に入ること。しかし、仲の悪い伯父たちを説得は難航を極める。
 しかし、彬が一人ひとりと向き合い、土下座までしたことで、少しずつ風向きが変わる。
 そして、瑛も、出世コースである役職を断ってまで彬の支援に乗り出す。自らの出処進退をかけ営業本部長の不動公二(江口洋介)に掛け合い、その熱意が不動の心を動かし、瑛の稟議を通す。結果、東海グループは救われ、瑛の退職を止めようとやってきた彬と固い握手を交わす。
 WOWOWドラマ版の向井理と斎藤工のコンビも良かったが、同作の2人も好演を見せており、彬の父親役の石丸幹二以外は、キャスト総入れ替えで製作されているが、それぞれが持ち味を出していたと感じる。特に、彬の弟・階堂龍馬を演じたキンプリ高橋海人も、その直情径行型の性格や、問題を前に取り乱してしまう姿などをよく再現していたと感じた。
 ラストシーンは過剰なほどに爽やかに締められている。ゆえに同作が単なるバンカー同士の経済ドラマではなく、主人公2人を中心とした人間ドラマであることを示している。
<評価>★★★☆☆
<公式サイト>https://akira-to-akira-movie.toho.co.jp/
<公式Twitter>https://twitter.com/akira_movie2022?s=21
<公式Instagram>https://www.instagram.com/akira_movie2022/
<監督>三木孝浩
<脚本>池田奈津子
<製作>石垣裕之、松岡宏泰
<共同製作>堀義貴、藤下良司、弓矢政法、瓶子吉久、久保雅一、池井戸潤、奥村景二、渡辺章仁、五老剛
<エグゼクティブプロデューサー>臼井央
<企画・プロデュース>青木泰憲
<プロデューサー>馮年、大瀧亮、加茂義隆、川田尚広
<プロダクション統括>會田望
<撮影>柳田裕男
<照明>宮尾康史
<録音>久連石由文
<美術>禪洲幸久
<装飾>鈴木仁
<衣装>浜辺みさき
<ヘアメイクデザイン>倉田明美
<VFXスーパーバイザー>鎌田康介
<音響効果>松浦大樹
<スクリプター>谷恵子
<編集>柳沢竜也
<音楽>大間々昂
<音楽プロデューサー>杉田寿宏
<助監督>サノキング
<制作担当>片平大輔
<アソシエイトプロデューサー>本多航大
<原作>池井戸潤「アキラとあきら」(集英社) http://bunko.shueisha.co.jp/akiratoakira/
<主題歌>back number「ベルベットの詩」(Universal SIGMA) https://backnumber.info/news/detail/104488
#アキラとあきら #映画 #池井戸潤 #三木孝浩 #池田奈津子 #銀行 #経済小説 #竹内涼真 #横浜流星 #髙橋海人 #上白石萌歌 #児嶋一哉 #満島真之介 #塚地武雅 #宇野祥平 #奥田瑛二 #石丸幹二 #ユースケ・サンタマリア #江口洋介 #戸田菜穂 #野間口徹 #杉本哲太 #酒井美紀 #山寺宏一 #津田寛治 #徳重聡 #矢島健一 #馬渕英里何 #山内圭哉 #山村紅葉 #竹原慎二 #アキラ100% #backnumber #WOWOW #東宝

【合本版】アキラとあきら(上下巻) (集英社文庫)

【合本版】アキラとあきら(上下巻) (集英社文庫)

  • 作者: 池井戸潤
  • 出版社/メーカー: 集英社
  • 発売日: 2020/08/20
  • メディア: Kindle版






nice!(0)  コメント(0) 
共通テーマ:映画

【映画レビュー】「劇場版TOKYO MER 走る緊急救命室」(2023 日本) [映画]

【映画レビュー】「劇場版TOKYO MER 走る緊急救命室」(2023 日本)
 2021年夏のTBS「日曜劇場」枠で放送されたドラマの映画化作品である本作。
 「TOKYO MER」(東京モバイル・エマージェンシー・ルーム)は、危険な重大事故・災害・事件の現場に駆けつけ、負傷者にいち早く救命処置を施す救命救急のプロフェッショナルチームだ。
 「待っているだけじゃ救えない命がある」をモットーとする主人公の喜多見幸太(鈴木亮平)をチーフドクターとする、東京都知事の赤塚梓(石田ゆり子)直轄の救命医療チームだ。
 彼らの使命はただ一つ「死者を一人も出さないこと」。ドラマ版では「死者は…ゼロです!」という報告で、赤塚知事以下、チーム一同が盛り上がるシーンがお馴染みだった。
 映画公開直前に放送されたスペシャルドラマ『TOKYO MER 隅田川ミッション』では、TOKYO MERのセカンドドクターだった音羽尚(賀来賢人)が、全国版MERの統括官になるため「TOKYO MER」を離れることが明かされ、YOKOHAMA MERのERカー・YO1のデザインにも携わったこと、チーフドクターの鴨居友(杏)が元恋人であることにも触れられていた。
 都知事直轄であるTOKYO MERを目の敵にしているYOKOHAMA MERは、厚生労働相の両国隆文(徳重聡)が厚労省では全国の政令指定都市にMERを配備させようと計画しているために作られた医療チームで、鴨居も、 「危険を冒しては、救えない命がある」喜多見とは正反対の考え方を持っていた。
 そんな中、横浜ランドマークタワーで放火爆発テロが発生し、200人近い人が70階の展望フロアに取り残され、その中には、喜多見の妻となり臨月を迎えていた千晶(仲里依紗)と、その友人で看護師の蔵前夏梅(菜々緒)も交じっていた。
 そんな極限状態の中、赤塚都知事と両国厚生労働相の暗闘、音羽と鴨居の関係性、そして、切迫早産の危機にある千晶と夫・喜多見の愛が描かれている。
 複雑に絡み合う人間関係に加え、冒頭の飛行機事故の爆発シーンや、本筋の燃え上がるランドマークタワーの迫力あるVFX映像も相まって、テレビドラマ版よりも数段もスケールアップしている。
 鈴木亮平演じる喜多見は、チーフドクターとしてチームをまとめ上げる一方で、妻が妊娠中にも関わらず、ほとんど家にも帰ってこないほどのワーカホリックで、遂には千晶に愛想を尽かされ、実家に帰られてしまう。医者とて、一人の家庭人であり、私生活を犠牲にして、その任務にあたっていることを示す“お医者さんあるある”を表現している。
 喜多見とその妻・千晶がストーリーの中心となるのは当然ではあるのだが、注目したいのはかつての同志にして、同作では官僚側としての立場で、時にはTOKYO MERの活動に制限を加える音羽の存在だ。
 学生時代の回想シーンとして、音羽と鴨居の空港での別れが描かれている。鴨居は米国で最先端の技術を学ぶために渡航しようとしているが、音羽のパスポートを持ち出して勝手にチケットを取り、一緒にアメリカに行くかどうか、音羽に最後の選択を迫る。
 だが、音羽は「誰もが平等に医療を受けられる世の中にする」という信念を曲げることなく日本に残る。2人はMERの統括官とチーフドクターという立場で再会し、鴨居はその時に引き留めてほしかったという本音を、音羽は鴨居の夢を邪魔することはしたくなかったということを互いに遠回りに伝えている。
 ここに音羽尚という人物の魅力がある。音羽の母は、お金がなかったことで治療を受けられずに若くして死んでしまっている。医療の格差を是正するために音羽は医者としてではなく官僚として日本を変えようとしている。TOKYO MERを去ったは、東京だけを救うのではなく、その理念を全国に広げようと仕事に取り組んでいる。
 一方の鴨居は、かつて夢のために自分との別れを選んだ音羽が、海外で逮捕歴のある喜多見や寄せ集めのTOKYO MERを支持していることに疑義を持つ。
 その答えは、鴨居が音羽との食事の後のデザートの際に垣間見える。音羽はお菓子作りが得意だった喜多見の妹・涼香(佐藤栞里)を思い出す。TOKYO MERが出動した事件で唯一の死者であり、互いに思いを寄せていた涼香の死を、音羽はまだ引きずっていたことが分かる。
 そんな音羽に嫉妬に近い感情を抱いた鴨居は、「あなたの夢を賭ける価値があんなチームにあるんですか?」と音羽に問いかける。この問いに対する答えが、音羽のみならず、同作を通してのテーマだ。
 つまり、危険を顧みないヒーローとしての“表の主人公”が喜多見ならば、陰に日向にTOKYO MERの存在価値を示していく役割を果たす“裏の主人公”といえるのが音羽といえよう。
 ランドマークタワーでの火災では、音羽は初出動になるYOKOHAMA MERと応援に出向いたTOKYO MERを現場で統括することになる。
 消防や救急に的確な指示を出すシーンは音羽の有能さを示しているが、過去に何度も縦割りの現場に悔しい想いをしてきた分、現場で連携を指示できる状況にやり甲斐を感じている。
 しかしここに、TOKYO MERを敵視する両国厚生労働相が出張ってきたことで音羽は苦汁を飲む。火災現場に突入したTOKYO MERが窮地に立たされ、迷いを浮かべる鴨居も音羽に指示を仰ぐ中、両国大臣がYOKOHAMA MERの派遣を阻止するのだ。全てはTOKYO MERの“敵失”を待ち、多数の犠牲者と引き換えに、自身の立場を有利にしようとするためだ。両国大臣を演じる徳重聡は「21世紀の石原裕次郎オーディション」でグランプリに輝き、華々しくデビューしたものの、しばらくは“石原裕次郎の幻影”を追うあまり、役柄に恵まれない年月を過ごした。しかし、現在では悪役や、コメディー要素のある役柄を“怪演”し、バイプレーヤーとして開花した俳優だ。同作でも腹黒い政治家を嫌味タップリに演じ切っている。
 両国大臣を横に、無線を通してかつての仲間の苦悶の声が聞こえてくる中、当初は怯えていた研修医の潮見知広(ジェシー)も決死の突入を見せる。千晶が危険な状況に陥る中で喜多見が応援を要請すると、音羽は大臣の制止を無視して鴨居に語りかける。音羽の最大の見せ場の一つだ。
 ここで音羽はTOKYO MERのやり方に全面的に賛成するわけではないが、待っていては救えない命もあると鴨居に告げる。音羽は喜多見の姿に影響を受けていたのだ。
 そして音羽は、TOKYO MERの「死者ゼロ」「全ての命を諦めない」という信念を語る。これは全ての人が平等に医療を受けられる国にしたいという音羽の信念と重なるものだ。涼香の死によってTOKYO MERが掲げた理想は打ち砕かれたが、TOKYO MERはそれでもその理想を捨てずに挑戦し続けている。
 音羽は、経済格差によって優先される命とそうではない命が選別されて母を奪われ、思いを寄せていた涼香の命は理不尽なテロによって奪われた。だからこそ、無謀にも思えるTOKYO MERのやり方にこそ、日本の医療を変える希望があると信じていた。したがって「夢を賭ける価値がある」と、音羽は鴨居に告げる。これは鴨居に問われた「あなたの夢を賭ける価値があんなチームにあるんですか?」という問いに対する音羽の答えだ。
 鴨居はこの言葉を受けて「待っていては救えない命がある」と考えを変える。鴨居もまた、ずっと音羽に思いを断ち切れずにいた。そんな音羽が夢を賭けた相手なら信じようと、迷いが消える。そして音羽自身もTOKYO MERのユニフォームを身に纏い「人の命を救ってきます」と言い残し現場へと戻っていく。
 そして、音羽は喜多見と千晶の危機に現れる。千晶の帝王切開手術は、新生児用の保育器が備わるYOKOHAMA MERの「YO1」で行われる。これは、小さな命でも平等に救おうとする音羽の信念を感じる装備でもある。
 赤ちゃんと千晶が助かると、腰を抜かした喜多見に代わり、あくまで冷静さを保って処置を引き継ぎ、チームメンバーに指示を出すのが、いかにも音羽らしいシーンだ。そしてその後、音羽は、今後は喜多見のように危険に飛び込んでいくと言う鴨居に「頭痛の種は一つで十分」と言って、その場を去っていく。
 同作の見せ場は、ランドマークタワーの大火災や、そこに突入していくTOKYO MERメンバーの勇気、喜多見と千晶との愛の物語など、さまざまな視点があるが、最大のテーマは、救援部隊の司令塔としての音羽の苦悩と決断、そしてそれに応えるように、鴨居が率いるYOKOHAMA MERにも、その信念が伝わっていく過程だろう。
 そして、同作ではエンドロールにも注目だ。そこには、全国各地で活動している救急救命チームのポートレートが映し出される。今、この瞬間も、どこかで名も知られない“ヒーロー”たちが命を救うべく、活動している。そう思うと、全ての医療従事者への感謝の気持ちが、自然と湧き出てくるのだ。
<評価>★★★★☆
<公式サイト>https://tokyomer-movie.jp/
<公式Twitter>https://twitter.com/tokyo_mer_tbs
<公式Instagram>https://www.instagram.com/tokyo_mer_tbs/
<監督>松木彩
<脚本>黒岩勉
<企画プロデュース>高橋正尚
<プロデューサー>八木亜未、辻本珠子
<音楽>羽岡佳、斎木達彦、櫻井美希
<主題歌>平井大「Symphony」(avex trax) https://avexnet.jp/contents/music_j/DHDAI/discography/1035516
#tokyomer #映画 #松木彩 #黒岩勉 #鈴木亮平 #賀来賢人 #中条あやみ #仲里依紗 #菜々緒 #杏 #石田ゆり子 #要潤 #小手伸也 #佐野勇斗 #ジェシー #フォンチー #鶴見辰吾 #橋本さとし #渡辺真起子 #ドラマ #救急医療 #TBS

TOKYO MER~走る緊急救命室~ DVD-BOX

TOKYO MER~走る緊急救命室~ DVD-BOX

  • 出版社/メーカー: TCエンタテインメント
  • 発売日: 2022/03/02
  • メディア: DVD






nice!(0)  コメント(0) 
共通テーマ:映画

【映画レビュー】「ジョージア、白い橋のカフェで逢いましょう」(原題「Ras vkhedavt, rodesac cas vukurebt?」/2021 ドイツ・ジョージア) [映画]

【映画レビュー】「ジョージア、白い橋のカフェで逢いましょう」(原題「Ras vkhedavt, rodesac cas vukurebt?」/2021 ドイツ・ジョージア)
 同作は、ジョージアのクタイシを舞台に織りなされるファンタジーあふれる恋愛映画だ。
 クタイシは、ソ連時代に第2の工業都市として栄え、現在では、ジョージア議会議事堂が首都トビリシより移転してきたほか、ヨーロッパの桃源郷とも呼ばれる美しい古都として、多くの観光客を魅了している。
 ギリシャ神話によると、紀元前2000年紀、ギリシャの英雄たちが巨大なアルゴー船でコルキス王国に黄金の羊毛を求め、古代ジョージアに来たといわれている。コルキス王国の首都はクタイシにあったともいわれており、考古学者に発見された黄金の芸術品からもわかるように、ギリシャの英雄たちはコルキスの豊かさに感動したという。コルキスの黄金の工芸品は現在、ジョージア国立博物館で展示されており、3000年も経つ今日でも輝きを放っている。
 世界遺産に登録されたバグラティ大聖堂やゲラティ修道院が有名だが、街中の散策も楽しめる都市で、リオニ川にかかるホワイトブリッジを見ながらカフェでお茶を楽しむ観光客も多い。
 まさにこの場所が、同作の舞台となっている
 街中で本を落としたリザ(オリコ・バルバカゼ)とすれ違いざまにそれを拾ったギオルギ(ギオルギ・アンブロラゼ)は、夜の道で偶然にも再会する。2人は互いの名前も連絡先も聞かないまま、翌日、その白い橋のたもとにあるカフェで会う約束をするが、翌朝、彼らは邪悪な呪いにかけられ、外見を変えられてしまう。
 変身後のリザ(アニ・カルセラゼ)とギオルギ(ギオルギ・ボチョリシビリ)は、その外見だけではなく、リザは薬剤師としての知識を、ギオルギはサッカー選手としての技術を同時に失い、新たな仕事を探す必要に迫られる。これだけでも非常に辛い状況だ。
 ただ2人は、互いに相手の姿が変わっていることを知らず、約束のカフェで互いを待ち続ける。リザもギオルギも、白い橋のカフェで仕事を見つけ、再開できることを信じ続ける。
 人間の感情の発露である「一目惚れ」と、人知を超えた現象である「呪い」軸に、複数のサブストーリーとともに物語が展開され、見事にラストに収束されてゆく。
 これまでのジョージア映画の特徴は、この国の歴史ある民族と同じように独特な個性があり、多様性を元に、民族の魂を謳い、人々の心を一つにするものが多かった。
イタリア映画の巨匠フェデリコ・フェリーニ監督は、このように「ジョージア映画は奇妙な現象だ。特別であり、哲学的に軽妙で、洗練されていて、同時に子どものように純粋で無垢だ。ここには私を泣かせるすべてがある。そして私を泣かせることは容易ではないと言っておきたい」とも語っている。ジョージア映画の重鎮だったエルダル・シェンゲラヤ監督は「ジョージア映画はジョージア人のためのものだ」と語る。この国の映画人はジョージア人であること、ジョージア映画を作ることを誇りにしている。ジョージア映画の背景にはジョージア民族の魂そのものがあるといっても過言ではないのだ。
 しかしながら、同作は、従来のジョージア映画とは明らかに異なる、未来を向く感性で彩られた、ファンタジーあふれる大人のおとぎ話だ。この舞台となるクタイシの旧市街の歴史的建造物や美しい橋、伝統的なジョージアのパン「ハチャプリ」、リザの友人が製作する映画のために街でカップルを探すカメラマン、アルゼンチン代表のファンでメッシのユニフォームを部屋に飾るギオルギと、彼を慕うサッカー好きの子どもたちや、サッカー観戦を“趣味”とする犬たち…。美しい映像や音楽とともに、それぞれが織りなすオムニバスのようなストーリーがやがて一つになっていく、繊細で、かつ不思議なストーリーを紡ぎ、一見、平凡な中年男性で、変身した後のギオルギとリザに新たな仕事を紹介する「白い橋のカフェ」の店主(バフタング・パンチュリゼ)が、この2人のその後のカギを握っている。
 リオニ川にかかる「白い橋のカフェ」を中心に物語が進行するため、物理的な広がりはないかもしれないが、歴史と伝統が詰まっているクタイシの街の美しさも堪能できる。“ジョージア版ヌーベルバーグ”を謳っているだけあって、フランス映画のような描写も印象的だ。
 そして、思わぬ形でギオルギとリザは、お互いの存在を確認し、このおとぎ話は現実のものとなり、見事なエンディングを迎えることになる。多くの謎と余韻を残しながら…。
<評価>★★★★☆
<公式サイト>https://georgia-cafe.com/
<監督>アレクサンドレ・コベリゼ
<製作>マリアム・シャトベラシビリ
<撮影>ファラズ・フェシャラキ
<美術>マカ・ジェビラシビリ
<衣装>ニノ・ザウタシビリ
<編集>ベレナ・ファイル
<音楽>ギオルギ・コベリゼ
#ジョージア、白い橋のカフェで逢いましょう #映画 #ジョージア #アレクサンドレ・コベリゼ #ギオルギ・アンブロラゼ #オリコ・バルバカゼ #ギオルギ・ボチョリシビリ #アニ・カルセラゼ #バフタング・パンチュリゼ #ベルリン国際映画祭







nice!(0)  コメント(0) 
共通テーマ:映画

【映画レビュー】「流浪の月」(2022 日本) [映画]

【映画レビュー】「流浪の月」(2022 日本)
 公園で雨に濡れているにも関わらず本を読む10歳の家内更紗(白鳥玉季)に声をかけた19歳の大学生の佐伯文(松坂桃李)が傘を差し出し、家に連れ帰る場面から始まる。
 更紗は、家庭の問題を抱えており、自らの意思で家出した少女だった。更紗にとって、文の絵で過ごす時間は平和なものだったが、文は誘拐犯として逮捕されてしまう。その後、15年もの時が経ち、2人は偶然再会する。
 しかし、そして再び過去の事件が2人を苦しめる。文は女児誘拐犯のロリコン男というレッテルを貼られ、一方、大人になった更紗(広瀬すず)には「誘拐された過去を持つ可哀そうな女性」として生きなければならず、加えて、DVをはたらく現在の恋人である中瀬亮(横浜流星)にも苦しむ日々を送っていた…。
 「本屋大賞」を受賞した凪良ゆう氏の原作小説を、李相日の脚本・監督によって映画化された作品であり、終始、重苦しいストーリー展開で物語は進む。
 ある日、更紗の友人の安西(趣里)から娘の梨花(増田光桜)を預かることになるが、安西はそのまま姿を消し結局、文が梨花の面倒を見ることになってしまう。
 そして、その姿はSNSで拡散されてしまい、再びマスコミに騒ぎ立てられる羽目になる。更紗はレストランをクビになり、文が営む喫茶店にも嫌がらせが続く。
 更紗は、自分を苦しめる元凶の亮の元へ向かうが、亮は突然、更紗の目の前で手首を切り、自殺を図る。更紗は救急車を呼び、警察にも事情聴取される。しかし、亮との事を聞かれると思っていたら、警察は文の事を聞いてくる。警察は過去の事件から文を問題視していたのだった。
 結局、梨花は保護されることになり、文は出頭を命じられるが、事件性がないことから釈放される。
 更紗は、文に迷惑をかけた事を文に侘びる。そして、感謝の気持ちを打ち明ける。
 すると、文は、おもむろに服を脱ぎだし、真っ裸になり泣き出す。そして自分が第二次性徴の来ない病を患っていることを初めて告白するのだった。
 小児愛者ではなく病気だった事実を文は誰にも言えずに苦しんできたのだ。更紗は泣きじゃくる文を優しく抱きしめる。
 その後、2人は誰も自分達の事を知らない場所で、静かに暮らすことを決める。「また気づかれたら?」と更紗に尋ねると、更紗は「また流れるだけ」と答えるのだった。
 一部の原作ファンには否定的な意見も多かった作品だが、広瀬すず、松坂桃李の、イメージとは異なる陰のある役柄、特にDVのメンヘラ男を演じた横浜流星、そして更紗の幼少時代を演じた子役の白鳥玉季の演技には目を見張るものがある。二枚目俳優として存在感を示し続けてきた横浜流星に関しては、新境地を開拓した感すらある。
 更紗と文の行動を見るにつけ、そこには加害者も被害者もいないはずだ。しかし、警察やマスコミ、SNSは、こぞって加害者と被害者をでっち上げ、攻撃するという人間の汚い部分を、同作は詳らかにしている。
 加えて、ストーリーに寄り添うような画作りも注目すべきで、150分という長尺であることを感じさせない作品に仕上がっている。
<評価>★★★★☆
<公式サイト>https://gaga.ne.jp/rurounotsuki/
<公式Twitter>https://twitter.com/rurounotsuki
<ギャガ公式Facebook>https://www.facebook.com/gagajapan
<監督・脚本>李相日
<製作総指揮>宇野康秀
<製作エグゼクティブ>依田巽
<製作>森田篤
<プロデューサー>朴木浩美
<エグゼクティブブロデューサー>小竹里美、高橋尚子、堀尾星矢
<ラインプロデューサー>山本礼二
<撮影監督>ホン・ギョンピョ
<照明>中村裕樹
<美術>種田陽平、北川深幸
<装飾>西尾共未、高畠一郎
<衣装デザイン>小川久美子
<ヘアメイク>豊川京子
<音響>白取貢
<音響効果>柴崎憲治
<編集>今井剛
<音楽>原摩利彦
<音楽プロデューサー>杉田寿宏
<助監督>竹田正明
<キャスティングディレクター>元川益暢
<コーディネーター>鄭信英
<制作担当>多賀典彬
<原作>凪良ゆう「流浪の月」(東京創元社) http://www.tsogen.co.jp/np/isbn/9784488028022
#流浪の月 #映画 #凪良ゆう #李相日 #広瀬すず #松坂桃李 #横浜流星 #多部未華子 #趣里 #三浦貴大 #白鳥玉季 #増田光桜 #内田也哉子 #柄本明 #ホン・ギョンピョ #本屋大賞 #日本アカデミー賞 #ギャガ

流浪の月 シナリオブック (創元文芸文庫)

流浪の月 シナリオブック (創元文芸文庫)

  • 出版社/メーカー: 東京創元社
  • 発売日: 2022/06/13
  • メディア: 文庫






nice!(0)  コメント(0) 
共通テーマ:映画

【映画レビュー】「X エックス」(原題「X」/2022 アメリカ) [映画]

【映画レビュー】「X エックス」(原題「X」/2022 アメリカ)
 同作の舞台は1979年のテキサス。自主映画で一発当ててやろうとする3組のカップル、女優マキシーン(ミア・ゴス)とマネージャーのウェイン(マーティン・ヘンダーソン)、ブロンド女優のボビー・リン(ブリタニー・スノウ)と俳優ジャクソン(スコット・メスカディ)、監督のRJ(オーウェン・キャンベル)とその恋人で録音を担当するロレイン(ジェナ・オルテガ)の男女計6人の学生が、新作映画「農場の娘たち」を撮影するために借りた農場を訪れる。しかし、それは単なるポルノ映画だ。
 6人を迎え入れた老人ハワード(ジェナ・オルテガ)は、6人が泊まる場所として、納屋へ案内する。順調に撮影を続ける撮影クルー。だが、ロレインと仲違いしたRJが、深夜に一人で帰ろうと車に向かう。
 そんなRJに色目を使う農場主の妻パール(ミア・ゴス:2役)。実は彼女は殺人鬼で、高齢ながらもセックスに執着していた。無視されたことに怒り、パールはRJを刺し殺す。退役軍人でもある夫のハワードは心臓病持ちの老体だが、妻の殺しを手伝い、始末する共犯者だ。
 RJを探しに出て、パールに殺されるウェイン。撮影クルーは老夫婦に次々と殺され、マキシーンだけが取り残される。ハワードが心臓発作で死亡しても構わずに、マキシーンを殺そうと迫るパール。そんなパールを倒し、農場から逃げ去るマキシーン。後には大量の死体と撮影機材だけが残される…。
 ホラーの金字塔『悪魔のいけにえ』や、『ブギーナイツ』といった名作ホラーへのオマージュも感じられる同作。脚本を務め、自らメガホンを取ったタイ・ウェストによって、“ホラー”と“ポルノ”の融合にも成功している。
 そして何よりも、老女でありながら、尽きぬ性欲を殺人という形で消化していくパールの恐ろしさが半端ない。顔色一つ変えることなく、淡々と一人ひとり惨殺していくシーンは視覚的にも効果十分だ。
 ストーリー的に、特に捻りはないものの、ホラー映画の王道を行くような展開であるのは確かだ。ただギャーギャー騒ぐだけで全く怖さも面白みもないジャパニーズホラーにも、少しは見習ってほしいものだ。
<評価>★★★★☆
<公式サイト>https://happinet-phantom.com/X/
<公式Twitter>https://twitter.com/xmovie_jp
<監督・脚本>タイ・ウェスト
<製作>タイ・ウェスト、ジェイコブ・ジャフケ、ハリソン・クライス、ケヴィン・チューレン
<製作総指揮>キッド・カディ、デニス・カミングス、サム・レヴィンソン、アシュリー・レヴィンソン、カリーナ・マナシル、ピーター・ポーク
<撮影>エリオット・ロケット
<音楽>タイラー・ベイツ、チェルシー・ウルフ
<撮影>エリオット・ロケット
<編集>デビッド・カシェバロフ、タイ・ウェスト
<美術>トム・ハモック
<衣装>マウゴシャ・トゥルジャンスカ
#X #エックス #Xエックス #XMovie #映画 #タイ・ウェスト #ミア・ゴス #ジェナ・オルテガ #マーティン・ヘンダーソン #ブリタニー・スノウ #オーウェン・キャンベル #スティーブン・ユーア #スコット・メスカディ #ホラー #殺人鬼 #史上最高齢 #ポルノ #レトロ #A24 #ハピネットファントム

X エックス(吹替版)

X エックス(吹替版)

  • 出版社/メーカー:
  • 発売日: 2022/12/02
  • メディア: Prime Video



nice!(0)  コメント(0) 
共通テーマ:映画