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【映画レビュー】「マリウポリの20日間」(原題「20 Days in Mariupol」/2023 ウクライナ・アメリカ) [映画]

【映画レビュー】「マリウポリの20日間」(原題「20 Days in Mariupol」/2023 ウクライナ・アメリカ)
 とにかく衝撃的な映像の連続だった。
 本作は、2022年2月24日、プーチン大統領曰く、「自衛のための特別軍事作戦」と称したウクライナへの侵攻が始まり、その最前線となった、人口約45万人の工業都市・マリウポリに攻撃を開始。その報を知り、ウクライナ人にしてAP通信のジャーナリスト、ミスティスラフ・チェルノフをはじめとする取材班が、その凄惨な状況を克明にカメラに収めたドキュメンタリー作品だ。
 ほどんどのメディアがウクライナから脱出する中、ロシア軍による侵攻開始当初の混乱ぶり、そして猛烈な攻撃を受け、街が破壊され、住民は逃げ場を失い、食糧などの物流はもちろん、電気、水道、ガス、ネット回線も遮断され、孤立していく中での市民の焦燥や怒り、悲しみ、さらに重傷を負った人々が次々と運び込まれてくる病院の惨状を克明に記録している。
 我々日本に住まう者が当初、目にしていた映像は、あくまで安全と思われる場所から遠隔操作の無人カメラで撮影したと思われるものだが、チェルノフらはあくまでマリウポリ市民、そしてウクライナ軍の兵士、混乱を極める病院で働く医療関係者と同じ目線に立つことにこだわり、いつ爆撃の標的になるかも分からない状況の中、命懸けで取材を続け、マリウポリでの現実を世界に発信した映像で、その結果として2024年のアカデミー賞では「長編ドキュメンタリー賞」を受賞した。
 そんなチェルノフだが、初めから全てのマリウポリ市民から受け入れられていたわけではない。修羅場と化した病院内での撮影は、「この現実を世界に広めてくれ」と、概ね協力的だった一方で、街中での撮影に臨むと、嘆き悲しむ市民がいたかと思えば、撮影クルーに毒づき、罵る者もいる。その様子は、突然の戦禍によって我を失ったかのようにも見える。
 しかしチェルノフは何を言われようが言い返したりはしない。むしろ、心身共に傷付いた市民にとことん寄り添おうとする。わずか20日間の取材期間ではあったが、その間、チェルノフたちは間違いなく「マリウポリ市民」だったのだ。
 マリウポリから逃げ遅れた人々は、行く当てもなく建物の地下や体育館、スポーツジムを仮の避難所とし身を隠す。ロシア軍は、一般市民は攻撃しないとされていたが、そんな建前は全くの嘘。住宅や病院にも容赦なくミサイル攻撃し、街には死体の山が積み上がっていく。
 この中には、チェルノフの取材を受け、交流があった人物もいた。チェルノフとて感情のある一人の人間。心穏やかでいられるはずはなかったはずだ。それでも彼は淡々と、自身の使命をこなしていく。
 取材を重ねる中、状況は悪化の一途を辿っていく。インフラのみならず、攻撃は病院や消防署にまで及び、ついには破壊された店から商品を略奪する不届き者まで現れる。街への攻撃は、建物など物理的なものだけではなく、市民の心まで壊していたのだ。
 死体安置所のスペースもなくなり、大きな溝状の穴を掘って、袋詰めされた遺体が次々と投げ込まれる。まるでゴミを埋め立てるようなその扱いに、戦慄を覚えざるを得ない。
 ロシア軍の攻撃はついに、唯一残った産婦人科病院をも標的とする。妊婦や生まれたばかりの乳児も犠牲となるが、何とか攻撃から免れた妊婦が、外科の手術室でお産に臨む。取り出した赤ちゃんは泣き声を出さず、暗澹とした空気が流れるが、医師らが必死に赤ちゃんの体をさすると、元気な泣き声を発し、それと同時に医療スタッフは安堵の思いと感激から、母親ともども涙する。
 数え切れないほどの「死」を描いた中で、唯一、「生」を感じさせるこのシーンには、思わず心を揺さぶられる。
 命懸けの取材を重ね、映像を脆弱なネット回線で編集局に送信していたチェルノフ。当然、世界中でその衝撃的な映像が報じられるが、ロシアメディアは「フェイクニュース」として報じる。このシーンについては、怒りを通り越して、憐みを含んだ嘲笑しかない。そして同時に、「ロシア人に生まれなくて良かった」と強く感じ、プロバガンダの恐ろしさを見せつけられる。
 この作中で、プーチンとゼレンスキーの両大統領は、それぞれ1度しか登場しない。それもニュース映像のシーンを映し出したに過ぎない。戦況がどうなっているかも分からないまま、その戦争の中心にいるチェルノフや、マリウポリ市民にとっては、両国の政治的駆け引きなど、どうでもいいことであり、人道回廊を設ける話すら全く前に進まない現状に、不信感ばかりが募っているのだ。
 マリウポリでの取材活動から20日、チェルノフらAP通信の取材クルーは、ついに街を後にする決意をする。しかし街はすでにロシア軍に包囲されており、国境を越えるのも命懸けだ。赤十字が作った車の隊列に紛れ、撮影機材や取材映像を隠しながらの脱出劇だった。
 その時、チェルノフの思いは想像するしかないが、市民を残してマリウポリを出ることに、葛藤があったはずだ。
 しかし同時に彼はジャーナリストであり、家庭に戻れば父親でもある。その使命を十二分に果たした彼の勇気は、称賛に値するだろう。
 97分という上映時間が長く感じる作品だった。それは退屈だったということではなく、あまりにも過酷な現実を見せ付けられ、辛くなってくるからだ。戦争となると、女性や子どもが真っ先に犠牲となる。話としては理解しているつもりでも、そんな常識を見える形で示されると精神的に堪えるのだ。特に、血みどろになったまま死んでいく子どものシーンにはショックを受けた。
 想像していた以上に衝撃的なドキュメンタリーであり、同時に、これが「戦争」なんだと思い知らされた。開戦からわずか20日の間に、これだけの出来事が起き、マリウポリは、チェルノフらが脱出した直後に陥落。そして、ロシア軍のウクライナ侵略戦争は2年経った現在も続いている。その凄惨さから、見るにはある程度の覚悟が必要な作品ではあるが、“現在進行形”の出来事を描いているという点で、世界での高い評価も納得できる作品といえるだろう。
<評価>★★★☆☆
<公式サイト>https://synca.jp/20daysmariupol/
<公式X>https://twitter.com/SYNCACreations
<公式Instagram>https://www.instagram.com/synca_creations/
<公式Facebook>https://www.facebook.com/SYNCACreations
<監督・脚本・撮影>ミスティスラフ・チェルノフ
<製作>ミスティスラフ・チェルノフ、ミッチェル・マイズナー、ラニー・アロンソン=ラス、ダール・マクラッデン
<編集>ミッチェル・マイズナー
<音楽>ジョーダン・ダイクストラ
<スチール撮影>エフゲニー・マロレトカ
#マリウポリの20日間 #映画 #マリウポリ #ウクライナ #戦争 #ロシア #ミスティスラフ・チェルノフ #ドキュメンタリー #AP通信 #シンカ

「実録 マリウポリの20日間」前編

「実録 マリウポリの20日間」前編

  • 出版社/メーカー:
  • 発売日: 2024/04/11
  • メディア: Prime Video






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【映画レビュー】「ゼロ・コンタクト」(原題「Zero Contact」/2021 アメリカ) [映画]

【映画レビュー】「ゼロ・コンタクト」(原題「Zero Contact」/2021 アメリカ)
 IT業界の大物フィンリー・ハート(アンソニー・ホプキンス)は妻が亡くなった後、自社の「ハート社」から追放され、自身も急死する。そして、5人の関係者、ロサンゼルスにいるフィンリーの息子サム・ハート(クリス・ブロシュー)、かつてフィンリーと働き、現在はスウェーデンに住むハカン・ノードクイスト(マルティン・ステンマルク)らが、謎のAIに呼ばれ、Zoomによるリモート会議に出席する。
 AIは5人に、彼らが知るパスコードを60分以内に入力しろと要求。だがフィンリーは生前、地球を壊滅させる技術を生み出しており、パスコードはそれを起動させかねないものだった。
 本作は、2020年のコロナ禍のロックダウンを逆手に取り、完全リモートによって製作され、NFTによって資金調達や配信がなされた革命的な作品だ。「ゼロ・コンタクト」のタイトル通り、17か国・89人のキャストやスタッフが接触なしで作り上げている。
 全編にわたって、ほぼZoonの画面のみ、そこに生前のフィンリーの語りが挿入される。フィンリーの予言めいた言葉の一つひとつが、恐怖に満ちた物語とている。アンソニー・ホプキンスの存在感は、やはり群を抜いている。
 暗黒物質やタイムトラベル、量子物理学といったプロットは複雑で、理解するには難しいものだったが、脚本自体はシンプルなもので、立派なサスペンス映画として成立している。その事実だけでも、映画界にとっては画期的だともいえる
 ウェブカメラの映像であることを強調するための、画面のちらつきといったエフェクトも効いていたし、制限時間が近付くに連れ、冷静さを失っていく登場人物たちもリアリティー溢れるものだった。
 コロナ禍は、映画界に大きな損失生んだが、このシチュエーションで、鑑賞者を惹きつけ、恐怖に陥れるリック・ダグデイルの手腕には脱帽するしかない。
<評価>★★★☆☆
<監督・製作>リック・ダグデイル
<脚本>キャム・キャノン
<撮影>エド・ルーカス
<音楽>クラス・ヴァール、アンダース・ニスカ
<インターネットムービーデータベース>https://www.imdb.com/title/tt12359080/
#ゼロ・コンタクト #映画 #リック・ダグデイル #キャム・キャノン #アンソニー・ホプキンス #クリス・ブロシュー #ヴェロニカ・フェレ #アレックス・パウノヴィッチ #TJ加山 #マルティン・ステンマルク #リリー・クルーグ #ジェームス・C・バーンズ #ロックダウン #コロナ禍 #リモート #サスペンス #ミステリー #Zoom #NFT

Zero Contact [Blu-ray]

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  • メディア: Blu-ray






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【映画レビュー】「ゲネプロ★7」(2023 日本) [映画]

【映画レビュー】「ゲネプロ★7」(2023 日本)
 若者から絶大な人気の7人組男性ユニット「劇団SEVEN」。新作舞台「シェイクスピア・レジェンズ」の準備に向けて、新たなメンバー山井啓介(三浦海里)の加入と時を同じくして、リーダーの蘇我が急死する。蘇我を失った劇団はパワーバランスを失い、お互いのミスを責め合い、稽古にも身が入らず、次第に信頼関係を失っていく。
 さらに、“ある秘密”が彼らに告げられたことで、運命の歯車は容赦なく狂い出す。
 誰かが操っているのか?何者かが劇団に仕掛けた罠なのか?1人、また1人と、不気味な影が彼らを嘲笑う。止まらない猜疑心と焦燥感。そんな中、「劇団SEVEN」の絆を打ち砕こうとする黒幕に迫っていく…というミステリー作だ。
 これは脚本の問題でもあり、演者の問題でもあるのだが、気分次第で稽古を中断したり、仲間の足を引っ張る時点で「役者」として問題があるのではないかという思いが先立ち、終始モヤモヤした展開が続く
 「子どもじゃないんだからさぁ」というセリフがあるが、些細なことでケンカを始めたり、メンバー全員の“ガキっぽさ”ばかりが際立つ。
 鑑賞者側に考察を押し付けるようなシナリオも、説明不足で、一体何を描きたかったのか不明なまま、物語は幕を閉じる。
 「劇団SEVEN」を演じた若手俳優は、それぞれ尖ったキャラクターを演じ、殺陣のシーンも見せ場だっただけに、彼らの持ち味を生かしているわけでもなかった点で、もったいなさも残る。
 ミステリーとしても、どこかスッキリせず、血がドバドバ出るだけで、後味の悪さだけが残った。
 このキャストが見たい人以外には、刺さらない作品といえる。堤幸彦監督作品ということで、期待しては見たが、裏切られた気分だ。
<評価>★☆☆☆☆
<公式サイト>https://gaga.ne.jp/gene7movie/
<公式X>https://twitter.com/Gene7movie
<監督>堤幸彦
<脚本>川尻恵太
<製作>藤田晋、野上祥子 依田巽 渡辺章仁 米田理恵
<企画・プロデュース>松田誠
<エグゼクテイブプロデューサー>谷口達彦
<プロデューサー>柳昌寿、寺田哲章
<撮影>斑目重友
<照明>山口泰一郎
<録音>臼井久雄
<美術>長谷川功
<装飾>篠田公史
<衣装>牧亜矢美、佐久間美緒、及川千春
<ヘアメイク>阿部麻美子
<編集>大野昌寛
<音響効果>壁谷貴弘
<音楽プロデューサー>茂木英興
<音楽>植田能平
<劇中音楽>ZIPANG OPERA
<アクション監督>栗田政明
<振付>賞間里美
<VFX>野崎宏二
<助監督>稲留武
<スクリプター>奥平綾子
<スケジュール>鬼頭理三
<アシスタントプロデューサー>高橋ちえ
<ラインプロデューサー>市山竜次
<主題歌>ZIPANG OPERA「KAMINARI FLAVOR」(LDH Records) https://ldhrecords.jp/6990/
#ゲネプロ7 #映画 #堤幸彦 #川尻恵太 #三浦海里 #和田雅成 #荒牧慶彦 #佐藤流司 #染谷俊之 #黒羽麻璃央 #高野洸 #竹中直人 #大高洋夫 #荒木健太朗 #宮下貴浩 #輝山立 #鷲尾昇 #ゲネプロ #舞台 #ミステリー #ABEMA #ギャガ #GAGA







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【映画レビュー】「成功したオタク」(原題「성덕」/英題「Fanatic」/2021 韓国) [映画]

【映画レビュー】「成功したオタク」(原題「성덕」/英題「Fanatic」/2021 韓国)
 ある日、「推し」のアイドルが犯罪者になる。しかもその犯罪とは性加害だった…。
 本作は、韓国の女性監督オ・セヨンによる、自身の経験を基に、アイドルの「推し活」をしていたものの、裏切られたファンの声を余すところなく拾い上げたドキュメンタリー作品だ、
 セヨン自身、K-POPスターのチョン・ジュニョンの熱狂的ファンで、その結果、テレビ共演も果たした「성덕(ソンドク)=成功したオタク」だった。この言葉、ファンとして世間に認知され、推し活が高じて、好きなタレントに実際に会ったことのある人を指す言葉で、並大抵のことでは、そうとは呼ばれないほどの、一握りのファンだ。ファン層にカーストがあるとすれば、その頂点にいる存在といっていいだろう。
 しかし突然、「犯罪者のファン」になってしまった彼女は混乱し、苦悩し、葛藤する。そして、同じ思いをしている仲間を気に掛ける。
 本作の監督であると同時に、語り手でもあるセヨンは中学生の時にチョン・ジュニョンにハマり、目立とうとしてサイン会にチョゴリ(韓服)を着ていったことで注目される。そして、推しの出るテレビ番組にファン代表として呼ばれ、熱烈なファンの集団のことを指す“ファンダム”の中でも認められ、「成功したオタク」となる。
 推しとして認知されるだけでも大変なことだが、その代表として、テレビに出るなどの特別扱いを受ける。思春期の女の子にとって、そうした体験がどれほどの大きく深い心理的影響をもたらすか、想像してもしきれないだろう。
 しかし、状況は一変する。ジュニョンによる性行為動画流出を皮切りとした「バーニング・サン事件」だ。
 韓国芸能界のみならず、政財界を巻き込む大スキャンダルとなったこの事件については、あまりにも有名であることから詳細は省くが、結果、当時人気だったBIGBANGやFTISLANDのメンバーにも懲役刑が下されている。
 セヨンは突然、「成功したオタク」から「失敗したオタク」になってしまう。物語はそこから始まる。
 セヨンは、同じように推しによる犯罪によって裏切られた感情を持つファンに、次々とインタビューしていく。本作のほとんどの時間を彼女たちの言葉で紡ぎ、さらにセヨン自身のモノローグでもある。
 その“失敗したオタク”たちは、口々に語り出す。
 「思い出を汚された」「一生刑務所から出てこないでほしい」「私たちは直接的な被害者ではないけれど、2次的な被害者」「(性犯罪者用の)電子足環をつけて暮らしてほしい」
 そして、ついには「死んでしまえ」と言い放つ者まで現れる。“可愛さ余って憎さ百倍”といたところか。
 一方で、「私の思い出はきれいなまま」と振り返る冷静なファンもおり、さらには推しのタレントが逮捕された後も、陰ながら応援しているファンもいた。
 こうした二項対立した声をきちんと拾っているところに、セヨンの映画監督としての気概が感じ取れる。
 自分の心中と相反する言葉を作中に描くことは、葛藤との闘いでもある苦しい作業だ。かといって、罪を犯したアイドルを非難する方向に振り切ってしまえば楽なのだろうが、セヨンは、それを良しとはしなかったのだ。
 例えば、ジュジュという女性は、罪を犯した推しのタレントを擁護するファンについて「社会悪に手を貸すのか、哀れむなんて最悪なことだ」と怒りを露わにする。当然と言えば当然の感情だ。
 しかし、好きだった相手に怒りの感情を持ち続けることは苦しいことだ。実際、「死んでしまえ」と吐き捨てたミンギョンという女性は、時間の経過とともに「もう怒りも感じない」と変化している。もちろん許したわけではないだろうが、興味を失ったということだろう。人間の脳とは都合よくできているものだ。
 とはいえ、本作を観賞していると、もし自分の推しや、自分の身近な人の推しが罪を犯した時、正しく怒りを感じることができるか自信が持てなくなる。怒る人の気持ちには寄り添いたいが、怒れない人に対して説教などできようか…。
 一方で、推しが犯した罪自体を「許す」のもどうかとも感じる。
 推しの罪を認めない、あるいは矮小化することは、2次加害にもなり得る。セヨン自身も当初は推しに関するスキャンダル報道を認めず、事件を報じた記者に怒りを覚えていたのだ。
 しかし、その記者と会って話した後、セヨンはその流れで朴槿恵元大統領を支持する人々の集会に参加することになる。
 朴氏は、2016年の「崔順実ゲート事件」で、韓国の民主化以降、史上初めて弾劾で罷免された大統領であり、2017年に逮捕され、懲役24年、罰金180億ウォンの有罪判決を受けていた。
 しかし、デモの参加者は、朴氏の無実を信じている。傍から見て妄信的なような光景だが、彼らは毎週200~300通の激励の手紙を朴氏に届けていた。
 その雰囲気に圧倒されたのか、セヨンも服役中の朴氏に手紙を書く。書きながらセヨンは「ファンレターのようだ」と語る。同時に彼女は、未だに推しを応援しているファンへのインタビューはしないことを決意する。
 ここからのセヨンの心の動きは、鑑賞者が想像するしかない。
 収賄を犯し服役中の朴氏を信じ、その存在に支えられている人々を目の当たりにしたことで、未だに推しのアイドルを信じているファンの心情を推察できたという見方もできるし、推しを信じようとする人々にインタビューをすることで、彼女たちをこれ以上傷つけまいとする配慮を感じた。
 また、朴氏の支持者が、一方的に早口でまくしたて、会話にもならない経験を通じて、「(妄信的な人間と)話をしてもムダ」という結論に達したのかも知れない。
 こうしてみると、最もシンプルで楽な解決法は「推しのことを全て忘れる」なのかもしれない。実際、作中では、セヨンとその友人が、買い集めたジュニョンのグッズを“供養”するシーンもある。しかし始めてみると、「あれは捨てられない、これも捨てられない」と、なかなか処分が進まない。ファン心理を上手く突いたシーンだ。
 推しがいる人にとっては、胸が苦しくなり、切なくなるだろう。
 見る側の価値観によって、受け止め方が変わる作品だが、ここ日本でも「推し活ブーム」が起きている中、その描写は切ないものだ。
 特に、推しに出さずにいた手紙や、推し活をしていた頃の日記を読み上げるシーンでは、繊細な言葉選びから、セヨンが感受性豊かな人物であることが垣間見える。
 しかし、どのオタクのインタビューも辛いものだったにも関わらず、セヨン本人をはじめ、涙を流すものはいない。
 セヨンは監督として、傷つきつつも前進しようとするオタクたちの姿を収めることにしたのだろう。
 ある日突然、推しが犯罪者になったことで、美しい思い出が破壊され、自分のアイデンティティが無惨に踏みにじられても、オタクは人として生きていかないといけない。セヨンはそういうメッセージを本作に込めたのだ。よって、涙は不要なのだ。例え、オタクたちが未だに心で泣いていたとしても。
 本作は当然ながら、韓国人監督が製作した韓国国内で起きた出来事を描いた作品だ。
 しかし、このストーリーが海の向こうのことだと、とても思えないのだ。この国でも似たようなスキャンダルが起きているからだ。さらに言えば、アイドル業界に限らず、お笑い芸人や劇団、加えて、その内容も性加害のみならず、自殺に追い込むほどのパワハラなど、韓国よりも、その問題は幅広く根深いとも感じる。
 日本のオタクも芸能界の性加害についてもっと怒った方が良いという意見もあるだろう。しかし一方で、怒ること自体が苦しいという人も多いのも現実だ。
 日本の芸能界でも、こうしたスキャンダルがいつ起こるとも限らない。いや、既に起きているものの、メディアスクラムによって何とか抑えつけられている状態なのかも知れない。
 だからこそ、推し活をしているファンのみならず、芸能関係者も必見の作品といっていいだろう。こうした作品を、日本の映画会社が製作することはないと思えるからだ。
<評価>★★★★☆
<公式サイト>https://alfazbetmovie.com/otaku/
<公式X>https://twitter.com/seikouotakujp
<公式Instagram>https://www.instagram.com/alfazbettokyo
<監督・製作・撮影・編集・出演>オ・セヨン
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成功したオタク 3枚 ドキュメンタリー フライヤー 映画

成功したオタク 3枚 ドキュメンタリー フライヤー 映画

  • 出版社/メーカー: ノーブランド品
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【映画レビュー】「毒舌弁護人~正義への戦い~」(原題「毒舌大狀」/英題「A Guilty Conscience」/2023 香港) [映画]

【映画レビュー】「毒舌弁護人~正義への戦い~」(原題「毒舌大狀」/英題「A Guilty Conscience」/2023 香港)
 治安判事として働いていたラム・リョンソイ(ダヨ・ウォン)。裁判への遅刻は当たり前、法廷でもぞんざいな態度で、それによって、新しい上司からクビ宣告される・
 職を失ったラムは、友人の勧めで、50代にして新たに弁護士に転身する。そして、初めて弁護を担当したのは児童虐待事件。複雑には思えない案件だったが、その事件が思いもよらない展開をみせ、ラムとパートナーの若き女性法廷弁護士のフォン・カークワンとともに、大きな権力闘争に巻き込まれていく…。
 自らの失敗で冤罪を招いてしまった弁護士が心を入れ替え、仕事に真摯に向き合っていく中で、いわゆる“上級国民”に対してバッサリ切り込んでいく痛快なストーリーだ。法廷のシーンは、香港ならではで、裁判官、検察官、弁護士がそれぞれ白いカツラを被っている。いくら香港に中国共産党の支配が及んでも、こうした文化は健在のようだ。英国領だった名残を感じさせる。
 物語序盤はコメディー色強めで、「自分には実力が有るからクズには媚びない」と自信満々だったラム。しかし、自らの弁護士事務所を立ち上げて2年。ラムは成長し、児童虐待で収監された母親のツァン・キッイ(ルイーズ・ウォン)に、当初のいい加減な対応を謝罪。さらに、“御曹司”と呼ばれる同じく弁護士の弟(ホー・カイワ)の協力も得て、細心に漕ぎ着ける。
 当初のツァンの裁判では、無実であったにもかかわらず、証人全員が裏切り、母親が不利になる証言をする。結局、裁判中に娘は死亡、母親は傷害致死で実刑を受け、ツァンは裁判制度に不信感を抱いていた。そんなツァンを説き伏せ、ラムは再審の弁護を引き受けらのだ。
 2年がかりで再審請求が通ったものの、事件の鍵を握るのは、チュン・ニンワー(フィッシュ・リウ)を筆頭とする香港有数の名家。ありとあらゆる手段で母親を犯人に仕立て上げ、口封じのために傷害致死ではなく殺人罪にしようとしてくる。さらに、裁判相手の検事も不正を一切許さない堅物。その法廷劇は、ヒリヒリするものだ。
 加えて、ラムたちは裁判と並行して真犯人探しも始める。
 香港の裁判は陪審員制度。よって、いかにして陪審員を納得させるかが勝負で、その法廷も、自ずと劇場型となる。
 再審でもラムは、証拠申請していなかった録音テープを流すなどの“奇襲”を仕掛ける。しかし、それが原因で、ラムは逮捕されてしまう。全てはチュン家の陰謀だ。
 追い込まれるラム。裏で操っていたのは、チュン家の顧問弁護士で、検察側証人のトン・ワイクオ(マイケル・ウォン)だ。
 一方、“裏技”を使って檻から脱したラムは、まさに公判が行われている裁判所へと向かう。既にチュン一族は海外に脱出しようとし、傍聴席にはチュン家関係者しかいない完全アウェーだ。
 しかしラムは、法廷で大演説をやってのけ、トンを挑発する。さらに加わってきたチュン家側の証人を、完膚なきまでにやりこめるのだ。
 “毒舌”というほど口が悪いわけではなく、タイトルにミスリードされそうではあるが、法廷劇の本流をいくようで、勧善懲悪のストーリーには胸がすく思いだ。
 香港に限らず、権力や金の力ですべてがコントロールされる社会は、やはり不健全だ。法の下では平等ということが守られる世の中であってほしいと感じさせるドラマだった。
<評価>★★★★☆
<公式サイト>https://www.dokuzetsubengonin.com/
<公式X>@DokuzetsuRmovie
<監督・脚本>ジャック・ン
<製作>ビル・コン、アイヴィ・ホー
<撮影監督>アンソニー・プン
#毒舌弁護人 #映画 #ジャック・ン #ダヨ・ウォン #ツェ・クワンホー #ルイーズ・ウォン #フィッシュ・リウ #オマイケル・ウォン #ホー・カイワ
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【映画レビュー】「宇宙探索編集部」(原題「宇宙探索編輯部」/英題「Journey to the West」/2021 中国) [映画]

【映画レビュー】「宇宙探索編集部」(原題「宇宙探索編輯部」/英題「Journey to the West」/2021 中国)
 北京電影学院の大学院生だったコン・ダーシャンが卒業制作として作った初長編にして、アジア各国の映画祭で数々の賞に輝き、中国全土で劇場公開されることになった作品。
 UFOブームに沸いた1980年から、宇宙人の存在を信じ続け、純粋でありながら痛々しくもあるUFO雑誌「宇宙探索」編集長のタン・ジージュン(ヤン・ハオユー)と、一癖も二癖もある編集部員たちの姿が描かれている。本人たちは至って真面目に仕事に向き合っているのだが、雑誌は廃刊寸前。それでもなお宇宙人やUFOを追い続ける姿には、思わず笑いを誘うロードムービーだ。
 のっけから、どこから仕入れてきたかも分からない宇宙服を着るタン。ところが、脱ごうとしてもヘルメットが取れず、タンは酸欠で失神。救急車や消防車が出動する騒ぎとなる。
 そんな中、四川省の怪現象の映像が、ネット上でバズり出す。超常現象のようにも見えるその映像の真偽を探るべく、タン以下3人しかいない編集部員たちは、映像の撮影場所である村を目指して、長い旅に出る。
 物語冒頭では、UFOブームに乗り、宇宙人研究の第一人者だった若かりし頃のタンのインタビュー映像が流れる。当時のタンは自信に満ち溢あふれ、宇宙人の実在を語り、いつの日か彼らと交信するという夢を語る。
 時は流れて30年後。そこには現在の老いたタンの姿があった。
 UFOブームは去り、雑誌の発行部数も落ち込み、廃刊寸前に追い込まれ、妻とも離婚し、一人娘を自殺で亡くした落ちぶれた男の姿だ。
 家族も失い、事業も破綻寸前…。それでも過去の栄光と夢を忘れられないタンは、30年前と同じように、宇宙人との出会いを夢見ている。
 しかし、老いて落ちぶれた現在のタンは、狂気ともいえそうな執念を湛えている。タンの言動は、科学雑誌の編集長らしいにも思われるが、どこか浮世離れしている。
 タンが、安い麺を啜すする夕食の場面では、「必要最低限の栄養摂取で十分」「セックスは生殖のためにするものだ。快楽のためのセックスは無駄な行為」と持論を語る。
 さらには、「テレビの砂嵐の映像には、宇宙人からの信号が含まれている」などと言い出し、手作りの器具を頭に装着してテレビのアンテナに接続する。
 場面は変わり、精神科病院。「娘は鬱病だった。鬱病は遺伝する」というタンのモノローグだ。ここで示されるのは、タン自身が鬱病であること、そして娘の死に対して責任を感じていることだ。
 しかし、タンら編集部員らは、至って真面目に宇宙人との交信に臨もうとしている。テレビと自分の頭を接続したとしても、それは奇行ではなく、あくまで「研究」なのだ。
一時的に精神に変調を来きたしていたのだろうけれど、病院での治療を経て、現在の彼は正 では何故、タンは、宇宙人を追い求めて長い旅を続けているのか?彼を駆り立てているものは何か?
 これは、「人生の意味を追い続けた男の物語」であり、「自分の人生の意味を探し続けることに、自分の人生を費やしてしまった男」の哀しさを表現しているのだ。
 若かりし頃、「宇宙人と交信する」という壮大な夢を持ち、一時期は、ブームに乗って大成功を収めた。しかしやがてブームは去り、没落が始まる。
 この時点で、人生をやり直すこともできたはず。しかしタンには、それが出来ず、壮大な夢と、大きな成功体験を捨てきれないまま、30年の歳月が経ち、夢を諦あきらめきれず人生を費やし、老いて孤独な男になってしまったのだ。
 老いなお、タンを駆り立てているのは、「自分の人生が無意味だなんて思いたくない」という感情だ。
 エピローグでは、「宇宙探索」は廃刊となり、編集部は解散。タンが新たな人生の一歩を踏み出したところで、物語は終わる。
 いわゆる「モキュメンタリー」に分類される作品だが、タンの哀しき人生を描いたストーリーともいえる。
 作中、「西遊記」へのオマージュが感じ取れるシーンがあるが、旅の真の目的は、怪奇現象の調査ではなく、タンの魂の救済のための「巡礼」だという解釈もできる。そう思うと、実に奥深いテーマを含んだ作品だと感じ入る。
 我々が目にする中国といえば、北京や上海のメガシティーがほとんどだが、奥地の田舎のリアルを、ハンディーカメラで臨場感タップリに収めている点も興味深い。日本人にとってはなかなか目にできない映像だからだ。
 少々、中だるみしている点は否めないが、学生監督が撮った長編デビュー作と考えれば、出色の出来だろう。
 タンという時代に取り残された男、ブームが去って廃刊に追い込まれた雑誌、そしてその後の再出発…。その全てに意味を持たせ、鑑賞者に人生というものを考えさせ、単なるB級SF映画ではないことを示していた。
<評価>★★★☆☆
<公式サイト>https://moviola.jp/uchutansaku/#
<公式X>https://twitter.com/uchutansaku_jp
<映画配給・宣伝会社ムヴィオラ公式Facebook>https://www.facebook.com/moviolaeiga
<監督>コン・ダーシャン
<脚本>コン・ダーシャン、ワン・イートン
<製作>ゴン・ゴーアル
<製作総指揮>ワン・ホンウェイ、グオ・ファン
<撮影>マティアス・デルボー
<主題歌> スー・ユンイン「生活倒影」 https://www.youtube.com/watch?v=i35lMQxak4c
#宇宙探索編集部 #映画 #コン・ダーシャン #ヤン・ハオユー #アイ・リーヤー #ワン・イートン #ロイ・ワン #チミー・ジャン #ション・チェンチェン #宇宙探索 #宇宙人 #UFO #雑誌 #中国 #SF #飛碟探索 #怪現象 #ムヴィオラ

映画 宇宙探索編集部 フライヤー3枚

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  • 出版社/メーカー: ノーブランド品
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【映画レビュー】「午前4時にパリの夜は明ける」(原題「Les passagers de la nuit」/2022 フランス) [映画]

【映画レビュー】「午前4時にパリの夜は明ける」(原題「Les passagers de la nuit」/2022 フランス)
 1981年、大統領選挙の祝賀ムードに包まれ、希望と変革の雰囲気に満ちていたフランスのパリは希望と変革の雰囲気に満ちていた。
 そんな雰囲気とは正反対に、夫と別れ、子どもたちを養うため、働く必要に迫られるエリザベート(シャルロット・ゲンズブール)。エリザベートは深夜ラジオ番組の人気パーソナリティーであるヴァンダ・ドルヴァル(エマニュエル・ベアール)に手紙を送り、番組のアシスタントとして働き始める。
 ある晩、番組のリスナーである孤独な少女タルラ(ノエ・アビタ)と出会い、彼女が家出してきたことを知ったエリザベートは、自宅に彼女を招き、共に暮らし始める。タルラとの出会いによって、エリザベートは自身の境遇を悲観していたこれまでを見つめ直すのだが、そんなタルラに、エリザベートの息子マチアス(キト・レイヨン=リシュテル)が恋心を抱き、不思議な家族での生活が始まる。7年もの年月を過ごしていく中で、変わっていくもの、また変わらないものを、じっくりと描き出していく。
 プロットにも奇をてらったものはなく、派手な出来事は起こらない。誰の人生にも起こり得そうな、ささやかな出来事が一つひとつ積み上げらえていくストーリーだ。
 就業経験がなく、不眠体質であるという理由で、深夜ラジオの仕事に就き、その帰路に家出少女と出会い、家族として迎え入れる。実子はその少女に片思いするが、少女はあっさりと彼の前から立ち去ってしまう。少年は永遠を求めるが、それは叶わず、少女はすれ違って消えていくという物語。
 エリザベートの日記の形で語られる「他者は過去の私たち」「他者が垣間見せるのは私たちの破片や断片」「彼らは私たちの夢を見る。でも他人同士」「私たちはいつも素晴らしき他人」などといた言葉。が、本作のテーマだ。
 本作の原題を直訳すると「夜の乗客たち」で、深夜ラジオの番組名でもある。リスナーたちとのすれ違いが、家族や人生を象徴していく。人はみな他人だが、他者は過去や現在、未来の自分自身を写す鏡であって、どこか寂しさや切なさを感じる、でも同時に暖かみや希望も感じる、そんな人生観を表現している。この、寂しさと暖かみが共にある感じは、午前4時という空気感とどこか共通するものがある。
 どこかアンニュイでありながら、切実さを味わう作品で、独特な作品だ。
 しかし、7年もの間に何も起こらなかったわけではない。薬物に手を出すタルラ、エリザベートを襲う病、そして貧困…。それでもなお、前を向いて生きようとする逞しさを得ていく。
 劇的な展開がないにも関わらず、いつの間にかストーリーに没入させられるのは、監督と脚本を務めたミカエル・アースの手腕だろう。
 本作には、シャンゼリゼ通りも凱旋門賞も登場しない。エッフェル塔すら、パリの一風景として映し出されているに過ぎない。登場人物も、変革していくフランス社会から取り残されたような、下町の等身大のパリっ子たちだ。
 性的な描写は生々しいものだが、不思議といやらしさは感じない。これはフランス映画の持つ、独特の感性なのだろう。ドロドロしたように感じさせない美しさを湛えたシーンだ。
 タルラを見送るラストシーン。シャンソンに合わせて家族みんなでダンスし、タルラも一緒になって踊るのが微笑ましい。
 深夜ラジオは物語の最初の設定に過ぎず、メインのストーリーは、1人のシングルマザーの生き様と成長を描いた人間ドラマだ。フランス映画らしい映像と音楽の美しさが、それを彩っている佳作といえよう。
<評価>★★★☆☆
<公式サイト>https://www.bitters.co.jp/am4paris/#
<公式X>https://twitter.com/am4_paris
<公式Facebook>https://www.facebook.com/am4paris/
<監督>ミカエル・アース
<脚本>ミカエル・アース、モード・アメリーヌ、マリエット・デゼール
<製作>ピエール・ガイヤール
<製作総指揮>エブ・フランソワ・マシュエル
<撮影>セバスティアン・ビュシュマン
<美術>シャルロット・ドゥ・カドビル
<編集>マリオン・モニエ
<音楽>アントン・サンコー
#午前4時にパリの夜は明ける #映画 #ミカエル・アース #シャルロット・ゲンズブール #キト・レイヨン=リシュテル #ノエ・アビタ #メーガン・ノーサム #ティボー・バンソン #エマニュエル・ベアール #ロラン・ポワトルノー #ディディエ・サンドル #パリ #深夜ラジオ #シングルマザー #ヌーベルバーグ #フランス #ベルリン国際映画祭 #ビターズエンド

午前4時にパリの夜は明ける

午前4時にパリの夜は明ける

  • 出版社/メーカー:
  • 発売日: 2023/12/15
  • メディア: Prime Video






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【映画レビュー】「リバー、流れないでよ」(2023 日本) [映画]

【映画レビュー】「リバー、流れないでよ」(2023 日本)
 京都・貴船にある老舗料理旅館「ふじや」を舞台に巻き起こるタイムループ系コメディ。劇団ヨーロッパ企画を主宰する上田誠が原案と脚本を担当し、同劇団所属の山口淳太のメガホンを取っている。
 仲居のミコト(藤谷理子)は貴船川のほとりで佇んでいた。仕事に戻り、番頭と部屋の後片付けをするが、なぜか2分前にいた貴船川のほとりに何度も戻ってくる。
 他の旅館の従業員や宿泊客なども2分間のループに巻き込まれ異変を感じている。仲居のチノ(早織)は客から頼まれた熱燗ができず、客のノミヤ(諏訪雅)たちはひたすら同じ雑炊を食べ続け、作家のオバタ(近藤芳正)は書いたはずの原稿が白紙に戻るなど、それぞれが2分前に戻るタイムループに悩まされる。
 2分経つと時間が巻き戻り、その間の行動は全てなかったことになるが、記憶だけはリセットされることなく連続しているために、次第に感情を昂らせ、徐々に取り乱す者も現れる。
 また、その中から抜け出したいと思う人ばかりではなく、タイムループの状態にとどまりたい人も現れ、それぞれの思惑が入り乱れていく。そんな中で、ミコトは自身の思いがループに関係しているのではないかと思い始め、独り、複雑な思いを抱える。
 2分間のタイムループという斬新な設定で、片付けたはずのお膳が片付けられていない、食べているはずの雑炊が全く減らない、風呂で洗髪しているはずがシャンプーが洗い流せない…などといった、小ネタを散りばめたストーリーを、長回しで小気味よく描いており、飽きさせない作品に仕上がっている。
 典型的な低予算、かつアイデア勝負の作品だが、演者の芝居には見どころがあり、コントのようなやり取りも上手だ。
 コメディのみならず、ロマンスやサスペンス、そして最後にはSF要素も盛り込み、86分とい尺の中で、エンタメ要素が多分に込められている。
 タイムループに直面すると、人ってこうなるのだなぁと、人間の愚かさも見せつつ、ツボを心得た軽妙な展開によって、十分に楽しめる娯楽作に仕上がっている。
 冬の貴船の美しさも相まって、まるで「ふじや」にいるような没入感も得られる佳作だった。CGやVFXに頼らなくとも魅せられる、新感覚のSF作品でもあったように思う。
<評価>★★★★☆
<公式サイト>https://www.europe-kikaku.com/river/
<ヨーロッパ企画公式X>https://twitter.com/river_europe
<ヨーロッパ企画公式Instagram>https://www.instagram.com/river_europe/
<監督>山口淳太
<原案・脚本>上田誠
<プロデューサー>大槻貴宏
<撮影>川越一成
<照明>徳永恭弘、藤川達也
<録音>平川鼓湖、倉貫雅矢
<美術>相馬直樹
<装飾>角田綾
<衣装>清川敦子
<ヘアメイク>松村妙子
<編集>山口淳太
<音楽>滝本晃司
<助監督>渡邉新之輔
<宣伝美術>三堀大介
<スチール>濱田英明
<主題歌>くるり「Smile」 https://www.quruli.net/discography/%E6%84%9B%E3%81%AE%E5%A4%AA%E9%99%BD-ep/
#リバー流れないでよ #映画 #上田誠 #山口淳太 #藤谷理子 #鳥越裕貴 #永野宗典 #角田貴志 #久保史緒里 #本上まなみ #近藤芳正 #酒井善史 #諏訪雅 #石田剛太 #中川晴樹 #土佐和成 #早織 #コメディ #貴船 #京都 #タイムループ #トリウッド #ヨーロッパ企画







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【映画レビュー】「ツイスター スーパー・ストーム」(原題「Supercell」/2023 アメリカ) [映画]

【映画レビュー】「ツイスター スーパー・ストーム」(原題「Supercell」/2023 アメリカ)
 竜巻を追跡する「ストームチェイサー」だった父・ビル(リチャード・ガン)が、命知らずの探索により命を落とす場面から始まる本作。
 そして10年後、高校生となった息子のウィル(ダニエル・ディーマー)も父のように竜巻を追う「ストームチェイサー」を志すことを決意する。母・クイン(アン・ヘッシュ)は気象学の教授だったが、ビルの死によって辞職し、ウィルの挑戦にも反対するが、そんなウィルのもとにビルが残した分厚い手帳が届き、送り主のおじ、ロイ(スキート・ウーリッチ)を訪ねると、ロイは竜巻観光ツアー業者のゼイン(アレック・ボールドウィン)のもとで働いていた。
 父に憧れてるウィルは危険なツアーに参加すう。一方、ウィルが心配なクインは息子の友人を連れてツアーの現地に向かう。
 1996年に公開された『ツイスター』によってクローズアップされた「ストームチェイサー(竜巻研究者)」なる仕事。巨大な竜巻に自ら突っ込んでいく危険極まりないが、まれに巨大竜巻が襲う北米大陸では、必要されている仕事だ。
 本作は、進化したVFX技術によって、竜巻の様子を迫力十分に描いたディザスターサスペンスだ。
 しかしながら、ストーリーには特段、意外性がなく、ただ淡々と進むことで、退屈さは否めない。
 予算のほとんどをグリーンスクリーンを使用したVFXに注ぎ込んだような作品で、プロットも独創的ではなく、好感を持てるキャラクターも登場しない。
 結局のところ、ウィルが独り立ちするまでの成長物語か、竜巻研究の危険さを見せたかったのか分からないまま終わる本作。典型的な低予算B級映画となってしまった印象だ。
 本国での公開直前に、母親役のアン・ヘッシュが交通事故死し、遺作となった作品でもあるが、キャスト陣唯一といっていいほどの好演を見せていた。
<評価>★☆☆☆☆
<監督・原案>ハーバート・ジェームズ・ウィンタースターン
<製作>ライアン・ドネル・スミス、ライアン・ウィンタースターン、ネイサン・クリンガー
<脚本>ハーバート・ジェームズ・ウィンタースターン、アンナ・エリザベス・ジェームズ
<撮影>アンドリュー・ジェリック
<音楽>コリー・ウォレス
<インターネットムービーデータベース>https://www.imdb.com/title/tt10559102/
#ツイスター #スーパーストーム #映画 #竜巻 #ハーバート・ジェームズ・ウィンタースターン #スキート・ウーリッチ #アン・ヘッシュ #アレック・ボールドウィン #ダニエル・ディーマー #ストームチェイサー」(原題「Supercell」/2023 アメリカ)
 竜巻を追跡する「ストームチェイサー」だった父・ビル(リチャード・ガン)が、命知らずの探索により命を落とす場面から始まる本作。
 そして10年後、高校生となった息子のウィル(ダニエル・ディーマー)も父のように竜巻を追う「ストームチェイサー」を志すことを決意する。母・クイン(アン・ヘッシュ)は気象学の教授だったが、ビルの死によって辞職し、ウィルの挑戦にも反対するが、そんなウィルのもとにビルが残した分厚い手帳が届き、送り主のおじ、ロイ(スキート・ウーリッチ)を訪ねると、ロイは竜巻観光ツアー業者のゼイン(アレック・ボールドウィン)のもとで働いていた。
 父に憧れてるウィルは危険なツアーに参加すう。一方、ウィルが心配なクインは息子の友人を連れてツアーの現地に向かう。
 1996年に公開された『ツイスター』によってクローズアップされた「ストームチェイサー(竜巻研究者)」なる仕事。巨大な竜巻に自ら突っ込んでいく危険極まりないが、まれに巨大竜巻が襲う北米大陸では、必要されている仕事だ。
 本作は、進化したVFX技術によって、竜巻の様子を迫力十分に描いたディザスターサスペンスだ。
 しかしながら、ストーリーには特段、意外性がなく、ただ淡々と進むことで、退屈さは否めない。
 予算のほとんどをグリーンスクリーンを使用したVFXに注ぎ込んだような作品で、プロットも独創的ではなく、好感を持てるキャラクターも登場しない。
 結局のところ、ウィルが独り立ちするまでの成長物語か、竜巻研究の危険さを見せたかったのか分からないまま終わる本作。典型的な低予算B級映画となってしまった印象だ。
 本国での公開直前に、母親役のアン・ヘッシュが交通事故死し、遺作となった作品でもあるが、キャスト陣唯一といっていいほどの好演を見せていた。
<評価>★☆☆☆☆
<監督・原案>ハーバート・ジェームズ・ウィンタースターン
<製作>ライアン・ドネル・スミス、ライアン・ウィンタースターン、ネイサン・クリンガー
<脚本>ハーバート・ジェームズ・ウィンタースターン、アンナ・エリザベス・ジェームズ
<撮影>アンドリュー・ジェリック
<音楽>コリー・ウォレス
<インターネットムービーデータベース>https://www.imdb.com/title/tt10559102/
#ツイスター #スーパーストーム #映画 #竜巻 #ハーバート・ジェームズ・ウィンタースターン #スキート・ウーリッチ #アン・ヘッシュ #アレック・ボールドウィン #ダニエル・ディーマー #ストームチェイサー







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【映画レビュー】「パリ・ブレスト 夢をかなえたスイーツ」(原題「A la belle etoile」/2024 フランス) [映画]

【映画レビュー】「パリ・ブレスト 夢をかなえたスイーツ」(原題「A la belle etoile」/2024 フランス)
 本作は、22歳でパティスリーの世界選手権のチャンピオンに輝いた天才パティシエ、ヤジッド・イシェムラエンの自伝を基にした物語だ。
 イシェムラエンは、世界各地の最高級ホテルのコンサルタントや高級ブランドとのコラボレーションを手がけ、南フランスの歴史ある街・アヴィニョンや、パリにも自身の店舗を持つ、世界でも指折りの人気パティシエだ。
 14歳でパリのデザート職人の見習いになると、著名なパティシエの下で修行を重ね、モナコのホテル「ル・メトロポール」でスーシェフ(副料理長)に。そして2014年、「ジェラート世界選手権(Gelato World Cup)」のチャンピオンに輝いた。
 本作の主人公は、育児放棄の母親の下、過酷な環境で暮らす少年ヤジッド(少年時代=マーウェン・アムスケール、青年期=リアド・ベライシュ)。彼にとって唯一の楽しみは、里親の家で食べる手作りのデザートだった。
 いつしか自分がパティシエになることを夢みるようになるが、児童養護施設育ちのヤジッドは、10代にしてパリの高級レストランに、半ば潜り込むような形で、見習いとして雇ってもらう。しかし、修業の日々を過ごす中、シェフに気に入られたヤジッドを妬む同僚の策略で警察に拘留され、クビになってしまう。
 しかしヤジッドは、自力で職を求め、店を転々とし、時にはバーテンダーとして生活を維持しながら、再起を期し、パティスリー世界選手権に出場するという目標に突き進み、そのチャンスを得る。国内予選では、ヤジッドを罠に嵌め、失職に追い込んだ元同僚を破ってみせる。
 同時にヤジットは、病に伏す養母を見舞う代わりに、自ら作ったデザートをプレゼントする。特訓に明け暮れる日々を送り、会いに行けない代わりに、最上級の見舞いの品を送ったことで、養母は元気を少し取り戻し、世界一を目指すヤジットにエールを送る。
 パティスリー世界選手権出場への道のりは険しいもので、様々な妨害や苦難がありながらも、ヤジットを応援するかつての同僚や、その才能に惚れ込んだパトロンの協力を得て、ついにヤジットらのフランスチームは栄冠を手にする。その困難なミッションの達成に至るまでには、その過程で、ヤジットを支える人々との出会いが、本作を語る上で、欠かせないポイントだ。
 ヤジットが才能あるパティシエであり、努力を惜しまなかったことはもちろん、出会いにも恵まれ、その地位を得たことは、本作を見れば明らかだ。優勝後、世界中の一流ホテルからのオファーを受けながらも、フランスにとどまり、自らの店舗で「パリ・ブレスト」をはじめとするデザートを提供しながら、故郷のエペルネに住む養父母に元にも訪れているという。それがヤジットなりの恩返しなのだろう。
 主人公のヤジッドを演じたのは、TikTokで6600万人のフォロワーを持つ映像クリエイターのリアド・ベライシュ。インフルエンサーであると同時に俳優としても活躍する彼は、本作に出演するために料理を一から学び、原作者のイシェムラエンから直々にパティスリーの作法を伝授してもらいながら役作りに励み、映画初主演を果たした。
 作品を彩っているのは俳優だけではない、劇中に登場する煌びやかで、いかにも美味しそうなデザートの数々が、観る者の食欲を刺激すること請け合いだ。これらのデザートはすべてイシェムラエン本人が監修している。
 フランス映画としては珍しく、ヌーヴェルヴァーグと呼ばれる前衛的作品ではなく、官能的な恋愛要素も社会風刺的な描写もない。まるでアメリカ映画のようなド直球のサクセスストーリーを描いており、そのエンディング爽快なものだ。
 おそらくは、ヤジッド・イシェムラエンの自伝に忠実に製作されたのであろう。華やかな数々のデザートの造形美とは裏腹に、常にピリピリとした厨房の様子、野心を隠そうともしない若きパティシエたちのキャラクターも細かく描かれている。
 厨房を舞台とする作品は、映画、テレビドラマ問わず、日本においても数多く製作されている。フランス同様、「食」や「料理」に対する厳しさや妥協を許さない姿勢は、我が国と共通する部分もあり、共感できる部分も多い。
 その事実は、本作にも反映されている。ヤジッドらフランス代表チームが制した2014年のパティスリー世界選手権で、2位の座に就いたのは、日本代表チームだった。
 この物語は、あくまでもヤジッドの半生を描いたストーリーなのだが、洋食の世界でも世界に伍するレベルにある日本の料理人たちにも拍手を送りたくなる。そして、観終わった後、ちょっと奮発して、美味しいものを食べたくなる衝動にも駆られる作品だ。
<評価>★★★★☆
<公式サイト>https://hark3.com/parisbrest/#
<公式X>https://twitter.com/parisbrest_
<公式Instagram>https://www.instagram.com/parisbrest_movie
<公式TikTok>https://www.tiktok.com/@hark_official
<監督>セバスチャン・テュラール
<脚本>セドリック・イド
<撮影>ピエール・デジョン
<美術>アン・チャクラバティ
<衣装>ポリーヌ・バーランド
<編集>マリエル・バビネ
<音楽>ブリス・ダボリ
<原作>ヤジッド・イシェムラエン「Un rêve d’enfant étoilé: Ccomment la pâtisserie lui a sauvé」(スターを夢見た幼少時代:パティシエが彼を救った理由)
#パリ・ブレスト #夢をかなえたスイーツ #映画 #ヤジッド・イシェムラエン #セバスチャン・テュラール #リアド・ベライシュ #ルブナ・アビダル #マーウェン・アムスケール #フェニックス・ブロサール #エステバン #クリスティーヌ・シティ #パスカル・レジティミュス #ジャン=イブ・ベルトルート #パスカルパトリック・ダスマサオ #ディコシュ #源利華 #アニ・マンスール #ジョージ・コラフェイス #フランス #スイーツ #パティシエ #パティスリー #自伝 #実話 #ハーク







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