【映画レビュー】「マイスモールランド」(2022 日本・フランス) [映画]
【映画レビュー】「マイスモールランド」(2022 日本・フランス)
“祖国を持たない民族”といわれるクルド人の家族をめぐる、日本社会の不都合な真実を詳らかにしている同作。
サーリャ（嵐莉菜）は、生まれた地を逃れて家族と来日し、幼い頃から日本で育ったクルド人、しかし、日本語もペラペラの普通の女子高生だ。母は既に他界し、父のマズルム（アラシ・カーフィザデー）、妹のアーリン（リリ・カーフィザデー）、弟のロビン（リオン・カーフィザデー）とともに埼玉・川口市のクルド人コミュニティーで暮らしている。
サーリャには、小学校の先生になりたいという夢があり、そのためにコンビニでバイトもしていた、バイト先も高校も同じの聡太（奥平大兼）と出会い、仲を深めていく。
しかし突然、一家の難民申請が不認定となり、在留資格を失ってしまう。就労さえ禁じられたが、生きるために働いたことで、父は逮捕されて入管に収容されてしまう。サーリャたち兄弟はアパートに子どもだけで取り残されることになる。
マズルムは収容先で接見した弁護士の山中（平泉成）に、滝川クリステルの、あのジェスチャーとともに「最高の『お・も・て・な・し』を受けています」とブラックジョークを語る。日本の在日外国人政策を皮肉った、象徴的な場面だ。
そしてサーリャも、不法就労でコンビニでのバイトをクビになり、聡太の親から交際も止められる。ビザが無いため、大学の推薦入学の道も閉ざされ、家賃滞納でアパートから追い出されそうになる。
切羽詰まったサーリャはパパ活を始めるが、相手の男にキスを迫られて逃げ出してしまう。背に「お前なんか日本から出ていけ！」と罵声を浴びながら…。
入管から出られず、居場所を失った父マズルムが危険を顧みず、帰国を決意する。反政府デモに參加し逮捕歴のある彼は、帰国すれば逮捕される身なのにもかかわらずだ。しかしその裏には、親が日本を出れば、残るサーリャたち子どもにはビザが下りる可能性があるという親心からの行動だった。
“絶望の国”日本で生きる中で、朝焼けに向かって光を見出そうとするサーリャの強い眼差しで物語は終わる。
新人監督とは思えないドキュメンタリー映画のような作品を送り出したのは、脚本も手掛けた川和田恵真。是枝裕和監督率いる映像制作者集団「分福」の所属だ。まさに是枝イズムを継承する、綿密な取材を通して製作された作品だと、納得させられる。
物語をどう決着させるのかと思っていたが、ラストシーンには大いなる空白を含ませており、あえて答えを示していない点も、一人ひとりの日本人に問いを与えているかのようだ。同情や怒り、悲しみなどの感情が同時に噴き出してくる秀作だ。
＜評価＞★★★★★
＜公式サイト＞https://mysmallland.jp/
＜公式Twitter＞https://twitter.com/mysmallland
＜公式Instagram＞https://www.instagram.com/mysmallland/
＜監督・脚本＞川和田恵真
＜製作＞河野聡、小林栄太朗、潮田一、是枝裕和、依田巽、松本智
＜エグザクティブプロデューサー＞濱田健二
＜プロデューサー＞森重宏美、伴瀬萌
＜企画プロデューサー＞北原栄治
＜共同プロデューサー＞藤並英樹、渋谷悠、アントワーヌ・モラン
＜アソシエイトプロデューサー＞西川朝子、加倉井誠人、大古場栄一
＜ラインプロデューサー＞田口聖
＜撮影＞四宮秀俊
＜照明＞秋山恵二郎
＜音響＞弥栄裕樹
＜美術＞徐賢先
＜装飾＞福岡淳太郎
＜衣装＞馬場恭子、中村祐実
＜ヘアメイク＞那須野詞
＜編集＞普嶋信一
＜音楽＞ROTH BART BARTON
＜カラリスト＞アレクサンドラ・ボケ
＜ダビングミキサー＞グザビエ・トュラン
＜キャスティング＞森万由美
＜クルド監修＞ワッカス・チョーラク
＜助監督＞森本晶一
＜制作担当＞藤原恵美子
＜主題歌＞ROTH BART BARTON「New Morning」(SPACE SHOWER MUSIC) https://www.rothbartbaron.com/
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“祖国を持たない民族”といわれるクルド人の家族をめぐる、日本社会の不都合な真実を詳らかにしている同作。
サーリャ（嵐莉菜）は、生まれた地を逃れて家族と来日し、幼い頃から日本で育ったクルド人、しかし、日本語もペラペラの普通の女子高生だ。母は既に他界し、父のマズルム（アラシ・カーフィザデー）、妹のアーリン（リリ・カーフィザデー）、弟のロビン（リオン・カーフィザデー）とともに埼玉・川口市のクルド人コミュニティーで暮らしている。
サーリャには、小学校の先生になりたいという夢があり、そのためにコンビニでバイトもしていた、バイト先も高校も同じの聡太（奥平大兼）と出会い、仲を深めていく。
しかし突然、一家の難民申請が不認定となり、在留資格を失ってしまう。就労さえ禁じられたが、生きるために働いたことで、父は逮捕されて入管に収容されてしまう。サーリャたち兄弟はアパートに子どもだけで取り残されることになる。
マズルムは収容先で接見した弁護士の山中（平泉成）に、滝川クリステルの、あのジェスチャーとともに「最高の『お・も・て・な・し』を受けています」とブラックジョークを語る。日本の在日外国人政策を皮肉った、象徴的な場面だ。
そしてサーリャも、不法就労でコンビニでのバイトをクビになり、聡太の親から交際も止められる。ビザが無いため、大学の推薦入学の道も閉ざされ、家賃滞納でアパートから追い出されそうになる。
切羽詰まったサーリャはパパ活を始めるが、相手の男にキスを迫られて逃げ出してしまう。背に「お前なんか日本から出ていけ！」と罵声を浴びながら…。
入管から出られず、居場所を失った父マズルムが危険を顧みず、帰国を決意する。反政府デモに參加し逮捕歴のある彼は、帰国すれば逮捕される身なのにもかかわらずだ。しかしその裏には、親が日本を出れば、残るサーリャたち子どもにはビザが下りる可能性があるという親心からの行動だった。
“絶望の国”日本で生きる中で、朝焼けに向かって光を見出そうとするサーリャの強い眼差しで物語は終わる。
新人監督とは思えないドキュメンタリー映画のような作品を送り出したのは、脚本も手掛けた川和田恵真。是枝裕和監督率いる映像制作者集団「分福」の所属だ。まさに是枝イズムを継承する、綿密な取材を通して製作された作品だと、納得させられる。
物語をどう決着させるのかと思っていたが、ラストシーンには大いなる空白を含ませており、あえて答えを示していない点も、一人ひとりの日本人に問いを与えているかのようだ。同情や怒り、悲しみなどの感情が同時に噴き出してくる秀作だ。
＜評価＞★★★★★
＜公式サイト＞https://mysmallland.jp/
＜公式Twitter＞https://twitter.com/mysmallland
＜公式Instagram＞https://www.instagram.com/mysmallland/
＜監督・脚本＞川和田恵真
＜製作＞河野聡、小林栄太朗、潮田一、是枝裕和、依田巽、松本智
＜エグザクティブプロデューサー＞濱田健二
＜プロデューサー＞森重宏美、伴瀬萌
＜企画プロデューサー＞北原栄治
＜共同プロデューサー＞藤並英樹、渋谷悠、アントワーヌ・モラン
＜アソシエイトプロデューサー＞西川朝子、加倉井誠人、大古場栄一
＜ラインプロデューサー＞田口聖
＜撮影＞四宮秀俊
＜照明＞秋山恵二郎
＜音響＞弥栄裕樹
＜美術＞徐賢先
＜装飾＞福岡淳太郎
＜衣装＞馬場恭子、中村祐実
＜ヘアメイク＞那須野詞
＜編集＞普嶋信一
＜音楽＞ROTH BART BARTON
＜カラリスト＞アレクサンドラ・ボケ
＜ダビングミキサー＞グザビエ・トュラン
＜キャスティング＞森万由美
＜クルド監修＞ワッカス・チョーラク
＜助監督＞森本晶一
＜制作担当＞藤原恵美子
＜主題歌＞ROTH BART BARTON「New Morning」(SPACE SHOWER MUSIC) https://www.rothbartbaron.com/
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- 出版社/メーカー:
- 発売日: 2022/11/25
- メディア: Prime Video
![マイスモールランド（特装限定版）【Blu-ray】 [ 嵐莉菜 ]](https://thumbnail.image.rakuten.co.jp/@0_mall/book/cabinet/8072/4934569368072_1_2.jpg?_ex=128x128 "マイスモールランド（特装限定版）【Blu-ray】 [ 嵐莉菜 ]")
