SSブログ

【映画レビュー】「モガディシュ 脱出までの14日間」(原題「모가디슈」/英題「Escape from Mogadishu」/2021 韓国) [映画]

【映画レビュー】「モガディシュ 脱出までの14日間」(原題「모가디슈」/英題「Escape from Mogadishu」/2021 韓国)
 ソウル五輪を成功させた韓国は1990年、国連への加盟を目指してアフリカでロビー活動を展開し、その中で、ソマリアの首都モガディシュに駐在する韓国大使ハン・シンソン(キム・ユンソク)は、ソマリア政府の支持を取り付けようと奔走するが、アフリカ諸国との外交において韓国をリードしていた北朝鮮も同じく国連加盟を目指しており、両国間の妨害工作や情報操作はエスカレートしていく。
 そんな中、ソマリアで内戦が勃発。各国の大使館は略奪や焼き討ちにあい、外国人にも命の危険が迫る。大使館を追われた北朝鮮のリム・ヨンス大使(ホ・ジュノ)は、職員と家族たちを連れ、“敵国”である韓国大使館へ助けを求める。
 大使館員、そしてその家族たちは、お互いのことは疑心暗鬼だ。北朝鮮側は、韓国側が用意した食事に手を付けないほどに不信感と敵意に満ちている、しかし、生き延びるという目的のため、徐々に距離を縮めていく。
 そして、イタリア大使館の協力を取り付けた韓国側は、イタリアと国交のない北朝鮮の人々も引き連れ、反乱軍の弾丸が飛び交う中、脱出機に乗り込み、ケニアへの脱出に成功する。
 その迫力あるアクションはもちろん、脱出成功後、「お互いに知らない人のふりをしよう」という決まり事に粛々と従い、ハッピーエンドでありながら、韓国と北朝鮮という、同じ民族でありながら分断された国家の悲しい運命に心を動かされる。
 多分に脚色されていると思われるものの、実話ベースの作品であり、また、大迫力のアクションのみならず、ブラックユーモアを含めたセリフも含め、韓国映画の底力を感じる大作だ。
<評価>★★★★☆
<公式サイト>https://mogadishu-movie.com/
<配給会社ツイン公式Twitter>https://twitter.com/movietwin2
<監督・脚本>リュ・スンワン
<製作>チョ・ソンミン、カン・へジョン、キム・ヨンファ
<撮影>チェ・ヨンファン
<美術>キム・ボムク
<衣装>チェ・ギョンファ
<編集>イ・ガンヒ
<音楽>バン・ジュンソク
#モガディシュ #脱出までの14日間 #映画 #リュ・スンワン #韓国 #北朝鮮 #ソマリア #内戦 #大使館 #キム・ユンソク #チョ・インソン #チョン・マンシク #ホ・ジュノ #ク・ギョファン #キム・ソジン #キム・ジェファ #パク・ギョンヘ

モガディシュ 脱出までの14日間(字幕版)

モガディシュ 脱出までの14日間(字幕版)

  • 出版社/メーカー:
  • 発売日: 2022/12/02
  • メディア: Prime Video






nice!(0)  コメント(0) 
共通テーマ:映画

【映画レビュー】「大河への道」(2022 日本) [映画]

【映画レビュー】「大河への道」(2022 日本)
 立川志の輔の創作落語を、中井貴一の企画によって映画化するという挑戦的作品。千葉県香取市役所の職員が町おこしのため、初めて日本地図を作った、郷土の偉人・伊能忠敬を主人公にした大河ドラマの売り込みをかける。しかし、脚本の段になると、忠敬が地図が完成する3年前に亡くなっていたという事実が発覚してしまう。1818年、江戸の下町で、忠敬は日本地図の完成を見ることなく他界していたのだ。
 その弟子たちは、忠敬の死を隠し、日本地図の完成を急ぐために一世一代の隠密作戦に乗り出す。名もなき弟子たちの功績を、香取市の「伊能忠敬の大河ドラマをつくる」というミッションの中で描いていくという、面白い着想だ
 しかも、現代と江戸時代を、同じキャストを演じるという、現代劇と時代劇をミックスさせるという面白い試みだ。
 ストーリーもさることながら、そんな難しい2つの役柄を、中井貴一、松山ケンイチ、北川景子などのキャストが全く違和感なく演じ切っており、特に中井貴一の三枚目ぶりや、北川景子の美しさもいかんなく発揮されている。脇を固めるキャストも豪華な名前が並ぶが、こうした超一流の俳優陣の演技力があってこその作品といえよう。
 現代パートで描かれているシビアな現実と、時代劇パートのコメディー要素、そして感動的シーンも盛り込み、そのバランスもいい。
 教科書に載っている話だけが真実ではない。歴史のサイトストーリーに切り込み、高橋景保(中井貴一)の下で、忠敬の弟子たちの“偽装工作”も含めた日本地図の完成計画を完遂させる姿が涙ぐましい。
 そして、完成させた日本地図を幕府に献上し、その地図を見て「これが余の国のカタチなのじゃな」と徳川斉昭(草刈正雄)がつぶやく。そして「伊能はどこにいる?」と聞くと、景保は「ここに居られまする」と忠敬の遺品である草履を差し出すシーンが同作のクライマックスだ。
 同作は、現代劇か時代劇か、あるいはコメディー作品か感動作か、カテゴライズが非常に難しい作品ではある。しかし、そんな細かいことを超越したエンタメ作品に仕上がっていることは確かだ。
<評価>★★★★☆
<公式サイト>https://movies.shochiku.co.jp/taiga/
<公式Twitter>https://twitter.com/taiga_michi
<監督>中西健二
<脚本>森下佳子
<企画>中井貴一
<撮影>柴主高秀
<照明>長田達也
<録音>尾崎聡
<美術>倉田智子
<音楽>安川午朗
<原作>立川志の輔「大河への道」(河出書房新社) https://www.kawade.co.jp/np/isbn/9784309418759/
<主題歌>玉置浩二「星路(みち)」(日本COLUMBIA) https://columbia.jp/artist-info/tamakikoji/discography/COCA-17997.html
#大河への道 #映画 #立川志の輔 #森下佳子 #中西健二 #中井貴一 #松山ケンイチ #北川景子 #岸井ゆきの #和田正人 #田中美央 #溝口琢矢 #立川志の輔 #西村まさ彦 #平田満 #玉置浩二 #草刈正雄 #橋爪功 #大河ドラマ #香取市 #伊能忠敬 #地図 #日本史 #松竹

大河への道

大河への道

  • 出版社/メーカー:
  • 発売日: 2022/10/05
  • メディア: Prime Video









nice!(0)  コメント(0) 
共通テーマ:映画

【映画レビュー】「モーリタニアン 黒塗りの記録」(原題「The Mauritanian」/2021 イギリス・アメリカ) [映画]

【映画レビュー】「モーリタニアン 黒塗りの記録」(原題「The Mauritanian」/2021 イギリス・アメリカ)
 2001年の同時多発テロ事件に絡み、テロの首謀者として突然、逮捕され、裁判も行われないまま4年にわたり、キューバにある米軍のグアンタナモ基地に収容され続けた実在の人物モハメドゥ・ウルド・スラヒの手記を映画化した作品。よって、作中にもある通り、これは実話だ。
 モハメドゥは従兄弟がビンラディンの衛星携帯電話を使った記録が残されたとして、テロ実行犯のリクルーターとみなされる。ブッシュ大統領とラムズフェルド国防長官をトップとするアメリカ政府は正義の鉄槌を求めて、米軍にグアンタナモに収容中のテロ組織のメンバーを戦犯法廷で裁くよう命じ、モハメドゥを死刑第1号とするよう、中佐のスチュアート・カウチ(ベネディクト・カンバーバッチ)に依頼する。スチュアートは9.11でハイジャックされた飛行機の副操縦士だった親友を持っていたことから、その任務に全力で取り組んでいた。
 片や、人権派弁護士であるナンシー・ホランダー(ジョディ・フォスター)は、この案件をどうしても放っておくことができず、無償奉仕活動として、モハメドゥの弁護を買って出る。
 モハメドゥと接見するためにグアンタナモに到着したナンシーと、通訳兼アシスタントのテリー・ダンカン(シャイリーン・ウッドリー)が異様なほど厳重な警備を通過すると、足かせをしたモハメドゥがおびえた様子で待っていました。尋問官に知られることを恐れていた彼にナンシーは証言の代わりに手記を書くよう提案する。
 帰国したナンシーとテリーは、モハメドゥの手記を食い入るように読み、彼のユーモアと人柄に徐々に引き込まれていきました。そんな中、ナンシーが政府に請求していた軍による調査資料が到着するが、中身はほとんど黒くに塗りつぶされているものだった。
 加えて、スチュアート中佐が目にした報告書も同様に黒塗りされたものだった。彼は報告書に訓練生時代に同期だったニール・バックランド(ザッカリー・リーヴァイ)の名前を見つけ、相談を持ち掛けたが「機密だ」と一蹴されてしまう。
 ナンシーとテリーは再びグアンタナモを訪れ、モハメドゥに政府が握る証拠の強制開示を訴える提案する。2008年、ワシントンへ赴いたナンシーとテリーは「9.11を忘れるな」と叫ぶ民衆に囲まれ、危険を感じながら連邦地方裁判所に入る。裁判長から政府へ10日以内の書類の提出命令を獲得できたが、届いた書類にはモハメドゥの自白が記されていた。
 ナンシーは「3000人を殺した犯罪者を弁護できない」と怒りを募らせたテリーを外し、独りでモハメドゥを訪ねる。そしてモハメドゥにこれまで以上に真実を書くよう強く求め「このままなら弁護できない」と言い捨て去っていく
 一方、スチュアートは自分の知らないところで陰謀が動いていることを感じ、ニールに真実を迫る。
 そしてナンシーはモハメドゥからの真実の手記を読み、スチュアートはニールの指示で取り調べのすべてを記した覚書を読み、2人は収容所で行われた拷問などの違法な取り調べについて知ることとなる。
 グアンタナモでの取り調べは地獄そのものだった。暴行や水責め、閃光や大爆音のヘビメタや何時間もの苦痛な姿勢、性的屈辱を与えるなど睡眠や休息もさせてもらえず、自白の強要は何か月も続く。そして「お前の母親を逮捕した」と言われ、モハメドゥはついに自白してしまう。
 この事実を知ったスチュアートは、「裏切り者」との誹りを受けつつも、任務を降りることを決意、ナンシーは裁判にてモハメドゥの発言権を得る。
 モハメドゥは中継でつながれた法廷で「自分の国では法律が機能しておらず警察が腐っているが、アメリカでは法律の基で守れていることを信じたい」と証言する。
 このモハメドゥの心からの叫びは連邦判事の心を動かし、2010年、政府へモハメドゥを即座に釈放するよう命令が下りる。
 その後、アメリカ政府側は上訴し、数年間の法廷闘争の後、モハメドゥは、検閲による数千か所の黒塗りが入る手記を出版。世界中で翻訳されベストセラーとなる。
 拘禁は14年2か月にも及び、2016年、モハメドゥはついに釈放される。帰国後、2018年にアメリカ人弁護士と結婚し子も授かったモハメドゥ。
 一方で、グアンタナモ収容所の現実が明らかとなり、国際社会や人権団体からの非難が相次いだことで、ブッシュから大統領の座を引き継いだオバマ政権が閉鎖を表明したものの、いまだ実現には至っていない。
 エンドロールで陽気にボブ・ディランの歌を口ずさむモハメドゥ本人の姿があった。モハメドゥは笑顔で「それでも私はあなたたちを許します」と語るのだった。
 ジョディ・フォスターが演じる弁護士のナンシーは、時に熱く、また時には同僚を案件から外す冷徹さを持ちながらも、少しずつ真実を明らかにしていく様には迫力すら感じる。
 テロ自体は卑劣で許されない行為だが、その出来事によって、アメリカ政府、司法、軍の“不都合な真実”が詳らかになったことも事実だ。これを境に、アメリカの国力は低下し、アフガンを見捨てISの横暴を許し、侵略戦争を始めたロシアを止められず、中国の海洋進出も傍観しているしかない有り様だ。もはや、アメリカは“世界の警察”の立場を自ら手放したのだ。
 それは当然の成り行きではないか。このような人権を無視した制度が旧態依然としてはびこっている国を、どこの国民が信用できようか。
 それは、我が国にとっても無関係ではない。堕落し切ったこの国家に何から何まで頼り切りの現状を憂えすにはいられないのだ。
<評価>★★★★☆
<公式サイト>https://kuronuri-movie.com/
<公式Twitter>https://twitter.com/kuronuri_kiroku
<監督>ケビン・マクドナルド
<原作>モハメドゥ・ウルド・スラヒ
<原案>M・B・トレイブン
<製作>アダム・アクランド、リア・クラーク、ベネディクト・カンバーバッチ、ロイド・レビン、ベアトリス・レビン、マーク・ホルダー、クリスティーン・ホルダー、ブランウェン・プレストウッド・スミス、マイケル・ブロナー
<製作総指揮>マイカ・グリーン、ダニエル・ステインマン、ダン・フリードキン、マイケル・ブルーム、マリア・ザッカーマン、ライアン・ヘラー、ザック・キルバーグ、ラッセル・スミス、ロバート・ハルミ、ジム・リーブ、ローズ・ガーネット、ロバート・シモンズ、アダム・フォーゲルソン、ジョン・フリードバーグ
<脚本>M・B・トレイブン、ローリー・ヘインズ、ソフラブ・ノシルバニ
<撮影>アルウィン・H・カックラー
<美術>マイケル・カーリン
<編集>ジャスティン・ライト
<衣装>アレクサンドラ・バーン
<音楽>トム・ホッジ
#モーリタニアン #黒塗りの記録 #映画 #モーリタニア #ケビン・マクドナルド #モハメドゥ・ウルド・スラヒ #トラーヴェン #ジョディ・フォスター #タハール・ラヒム #シャイリーン・ウッドリー #ベネディクト・カンバーバッチ #ザッカリー・リーヴァイ #サーメル・ウスマニ #冤罪 #グアンタナモ #9.11 #同時多発テロ #アメリカ #闇 #実話 #ゴールデングローブ賞

モーリタニアン 黒塗りの記録(字幕版)

モーリタニアン 黒塗りの記録(字幕版)

  • 出版社/メーカー:
  • 発売日: 2022/02/16
  • メディア: Prime Video






nice!(0)  コメント(0) 
共通テーマ:映画

【映画レビュー】「地下室のヘンな穴」(原題「Incroyable mais vrai」/2022 フランス・ベルギー) [映画]

【映画レビュー】「地下室のヘンな穴」(原題「Incroyable mais vrai」/2022 フランス・ベルギー)
 新居を購入すべく一軒家を探すアラン(アラン・シャバ)とマリー(レア・ドリュッケール)の中年夫婦が気に入った、ある森の中に建つ物件。不動産会社によると、家の地下室に空いた穴に入ると「時間が12時間進み、肉体が3日分若返る」らしい。夫婦は半信半疑で住み始めるが、真贋はともかく、その穴の存在によって妻マリーは若返ったつもりになって、モデルになろうとする、それを冷めた目で見る夫アラン。夫婦の間にはすきま風が吹き始める。
 さらにその友人夫婦の夫ジェラール(ブノワ・マジメル)に至っては、自由自在に操れる電子ペニスを装着するという、なかなかブッ飛んだキャラクター設定とストーリー展開だ。しかも、その手術を行うのが、日本人の闇医者…。しかも、せっかく取り替えた電子ペニスが故障してしまい、突如発火。炎上、日本に修理手術を受けに行くシーンも登場する。もはやカオスといえる状態だ。
 ただ、穴に関しても電子ペニスに関しても、人間が誰しも持っている老いへの抵抗、若返り願望のようなものが、コメディーを交えながら描かれている点で共通している。
 そして、自然の摂理に反するとどうなるかという点もしっかりと描かれて、オチを付けている。74分と短い作品だが、カンタン・デュピュー氏のの突き抜けた発想力が存分に反映された作品だ。ただ、見る人を選ぶ作品であることは間違いない。
<評価>★★★☆☆
<公式サイト>https://longride.jp/incredible-but-true/
<公式Twitter>https://twitter.com/chika_no_ana
<監督・脚本・撮影>カンタン・デュピュー
<製作>トマ・ベルアエジュ、マチュー・ベルアエジュ
<美術>ジョアン・ル・ボル
<衣装>イザベル・パネッティエ
<編集>カンタン・デュピュー
<音楽>ジョン・サント
#地下室のヘンな穴 #映画 #カンタン・デュピュー #アラン・シャバ #レア・ドリュッケール #ブノワ・マジメル #アナイス・ドゥムースティエ #コメディー #フランス #ベルギー #ロングライド

地下室のヘンな穴

地下室のヘンな穴

  • 出版社/メーカー:
  • 発売日: 2023/02/15
  • メディア: Prime Video



nice!(0)  コメント(0) 
共通テーマ:映画

【映画レビュー】「世界が引き裂かれる時」(原題「Klondike」/2023 ウクライナ・トルコ) [映画]

【映画レビュー】「世界が引き裂かれる時」(原題「Klondike」/2023 ウクライナ・トルコ)
 「ロシアによるウクライナ侵略はいつ始まったのか」という問いに対し、「2022年2月」と答える人がほとんどであろう。筆者もその一人だった。この実話に基づいた作品を見るまでは…。
 時は2014年にさかのぼる。ロシア国境に近いウクライナ・ドネツク州の小さな村。一見、のどかな風景が広がる田舎町なのだが、その住民も親ロシア派と反ロシア派に分かれ、対立し、その争いに、出産間近の妻・イルカ(オクサナ・チャルカシナ)とその夫・トリク(セルゲイ・シャドリン)が巻き込まれていく。
 ある日、爆撃の衝撃で、家の壁に大きな穴が開き、2人の平穏な日常は一変。夫婦は壁の修復に取り掛かるが、親ロシア派と反ロシア派の対立は、友人関係や家族関係まで壊し、衣食住すら、ままならない状態に陥る。
そんな事情に加え、ロシア軍の地対空ミサイルによって、アムステルダム発クアラルンプール行きのマレーシア航空の民間機が撃墜され、乗客乗員298人が全員死亡するという痛ましい事件が起きる。
 しかし航空機が撃墜された事実だけしか知らされず、その裏に何があるのかまったく知らされない住民たちは、互いに疑心暗鬼を生むことに繋がる。
 機体の残骸に群がるように軍や警察が押し寄せる。そして、オランダからは娘の生存を信じてやまない老夫婦に道案内を頼まれる2人…。生存している可能性など限りなく低いにもかかわらず、「私には分かる。彼女は生きている」と言い張る母の姿が痛々しいまでに、胸に迫る。
 そもそも航空機はなぜ墜落したのか。なぜ、ロシアにもウクライナにも関係ないマレーシア機が攻撃にターゲットになり、何の罪もないオランダ人をはじめとする外国人が犠牲にならなければならなかったのか…。
作品を通して、一貫して描かれているのは、トリクを含め、登場する男たちの“女々しさ”だ。
 戦時体制で、物資の確保にも事欠く事態をよそに、国家に対する“忠誠”や“思想”などといった些末なものに拘泥し、人間関係を複雑なものにし、結果、自らの首を絞めている様子には、イライラするほど愚かに映る。
 一方、何ら正確な情報が得られない中で、運命に翻弄されながらも毅然と振る舞うイルカの姿には、間もなく母親になろうとする女性の底知れぬ強さ、たくましさを感じ取ることができる。
最終盤に描かれているのは、深まる民族間の衝突と差し迫ってくる戦争の緊迫感だ。後に現実となってしまうロシアのウクライナ侵攻を予見させる絶望的なラストシーンとなっている。
 そんな悲惨な状態の中で、たった独りで子どもを産み落とすイルカ。彼女の壮絶なまでに痛ましい姿で、本作は締めくくられている。そのシーンはかろうじて、未来へのかすかな希望を持たせるものでもある。
本作が長編5作目となるウクライナ人女性監督マリナ・エル・ゴルバチ監督は、長回しや遠近法を数多く用い、ワンカットで美しい自然と悲惨な爆撃現場や死体を同時にカメラに収め、すぐそばに「死」が待ち受ける逃げ場のない閉塞感を醸し出している。
 そして、ポスタービジュアルには「私はこの狂気の世界で生きていく」というコピーと共に、出産を控えるイルカの姿と、爆撃によって大きな穴が空いた家が写し出されている。
 つまり、イルカをはじめ、ドネツク州に住まうウクライナの人々は、この狂った世界を生き続け、2022年2月に始まったロシア軍の侵攻によって、またも人生を狂わされ続けているのだ。
 ロシアのウクライナ侵攻は、終息する気配すら見えない。爆撃や民間人殺害のニュースが毎日のように伝えられるうちに、それが日常になってしまい、麻痺している自分に気付く。
 おそらくは、戦闘の現場では、日本人には想像もできないような過酷な現実があるのだろう。そして、その前段階として、同作に描かれているような現実があったことを、我々は知っておかなければならないのだ。
<評価>★★★★☆
<公式サイト>https://www.unpfilm.com/sekaiga/#
<公式Twitter>https://twitter.com/sekaiga2023
<アンプラグド公式Facebook>https://www.facebook.com/unpfilm.inc
<アンプラグド公式Instagram>https://www.instagram.com/unplugged_movie/
<監督・脚本>マリナ・エル・ゴルバチ
<製作>マリナ・エル・ゴルバチ、メフメット・バハディール・エル、スベトスラフ・ブラコブスキー
<撮影>スベトスラフ・ブラコフスキー
<音楽>ズビアド・ムゲブリー
#世界が引き裂かれる時 #映画 #マリナ・エル・ゴルバチ #ウクライナ #ロシア #戦争 # #サンダンス映画祭 #ベルリン国際映画祭 #東京国際映画祭 #トルコ #オクサナ・チャルカシナ #セルゲイ・シャドリン #オレグ・シチェルビナ #オレグ・シェフチェフ #アルトゥール・アラミアン #エフゲニー・エフレモフ #アンプラグド

欧州戦争としてのウクライナ侵攻(新潮選書)

欧州戦争としてのウクライナ侵攻(新潮選書)

  • 作者: 鶴岡路人
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2023/02/22
  • メディア: Kindle版






nice!(0)  コメント(0) 
共通テーマ:映画

【映画レビュー】「ブレット・トレイン」(原題「Bullet Train」/2022 アメリカ・日本・スペイン) [映画]

【映画レビュー】「ブレット・トレイン」(原題「Bullet Train」/2022 アメリカ・日本・スペイン)
 世界で最も運の悪い殺し屋“レディバグ”(ブラッド・ピット)が、東京発の新幹線に乗り込みブリーフケースを盗み出し、品川駅で降りるというミッションを与えられる
 しかし、次々と世界中の殺し屋が同じ新幹線に乗り込みレディバグに立ちふさがる。降りたくても降りられないまま、新幹線は終点の京都駅に到着する。そこには世界最大の犯罪組織のボスであるホワイト・デス(マイケル・シャノン)が待ち受けていた…。
 大ヒットを記録した伊坂幸太郎の小説『マリアビートル』原作としており、日本が舞台とされているが、新幹線が近未来的に描かれているのとは対照的に、東京など日本の街の描き方は、まるで昭和そのもので違和感を禁じ得ない。
 主演のブラッド・ピットはじめ、キャストは豪華だ。超高速で走り続ける新幹線の中で繰り広げられる会話劇とアクションも、同作の見どころとしているのだろう。
 しかしながら、日本を舞台としている割に、日本人キャストが少な過ぎる。日本人殺し屋の木村を演じたアンドリュー・小路にしても、英国籍のハーフだ。これでは。いわゆる“ホワイトウォッシング”との批判を受けるのも致し方なかろう。
 格闘の中で、新幹線の非常扉を開けてしまったり、他車両に激突して大爆発してしまう迫力のラストなど、よくJRがOKしたなと感じるシーンもあるが、徐々に物語が冗長に感じられてしまう。挿入されている音楽も、スペインのフラメンコ風のものや、日本の懐メロなどが使われ、唐突さは否めないところだ。
 結局は“プラピを楽しむ作品”に終始しており、それ以外の見どころは少ない作品だ。
<評価>★☆☆☆☆
<公式サイト>https://www.sonypictures.jp/he/2469353
<監督>デビッド・リーチ
<製作>ケリー・マコーミック、デビッド・リーチ、アントワン・フークア
<製作総指揮>ブレント・オコナー、カット・サミック、寺田悠馬、三枝亮介
<脚本>ザック・オルケウィッツ
<撮影>ジョナサン・セラ
<美術>デビッド・ショイネマン
<衣装>セーラ・イブリン
<編集>エリザベット・ロナルズドッティル
<音楽>ドミニク・ルイス
<挿入歌>アヴちゃん、奥田民生
<視覚効果監修>マイケル・ブラツェルトン
<原作>伊坂幸太郎「マリアビートル」(角川書店) https://www.kadokawa.co.jp/product/321302000007/
#ブレット・トレイン #映画 #デビッド・リーチ #伊坂幸太郎 #ブラッド・ピット #ジョーイ・キング #サンドラ・ブロック #アーロン・テイラー=ジョンソン #ブライアン・タイリー・ヘンリー #アンドリュー・小路 #真田広之 #マイケル・シャノン #バッド・バニー #ザジー・ビーツ #ローガン・ラーマン #福原かれん #殺し屋 #新幹線 #ソニー

ブレット・トレイン ブルーレイ&DVDセット [Blu-ray]

ブレット・トレイン ブルーレイ&DVDセット [Blu-ray]

  • 出版社/メーカー: ソニー・ピクチャーズエンタテインメント
  • 発売日: 2022/12/07
  • メディア: Blu-ray






nice!(0)  コメント(0) 
共通テーマ:映画

【映画レビュー】「生きる LIVING」(原題「Living」/2022 イギリス) [映画]

【映画レビュー】「生きる LIVING」(原題「Living」/2022 イギリス)
 実に70年も前、1952年に製作された黒澤明による監督・脚本の邦画の名作『生きる』を、当時のイギリスを舞台とし、ノーベル文学賞作家のカズオ・イシグロ(石黒一雄)の脚本の下、リメイクされた同作。
 堅物の主人公・ウィリアムズ(ビル・ナイ)はピン・ストライプの背広に身を包み、山高帽を目深に被った、絵に描いたような堅物の英国紳士だ。
 場面は、役所の市民課に配属された新入りのピーター(アレックス・シャープ)の初出勤のシーンから始まる。先輩たちと同じ車両に乗り込み、次の駅で、課長のウィリアムズも乗り込んでくるが、全く違う車両だ。その堅すぎる性格ゆえ、部下たちにも煙たがられているのだ。ウィリアムズ自身も、それを薄々感じており、部下と距離を置いている。
 職場でも黙々と事務作業をこなす仕事人間のウィリアムズ。家庭でも妻に先立たれ、息子夫婦にも相手にされずに孤独と虚しさを感じていた。
 そんな時、がんに侵され、余命いくばくもないことを知ったウィリアムズ。何を思ったのか。財産の半分の預金を下ろし、睡眠薬を大量に持って、役所を無断欠勤し、イギリス有数のリゾート地・ボーンマスへ向かう。そこで知り合ったサザーランド(トム・バーク)とともに、酒を飲んで、スコットランド民謡「ナナカマドの木」を歌い、バカ騒ぎするが、どこか満たされないでいた。
 さらに、役所に戻った彼は、転職していったかつての部下マーガレット(エイミー・ルー・ウッド)と再会する。とにかく前向きで明るい彼女と過ごす中で、彼女に自らの病を告白し、自分も背中を押される。父娘ほど年の離れた2人の“密会”は、たちまち近所の噂話になるが、ウィリアムズにとって、そんなことは些末な問題だ。彼にとっては肉体的のみならず、精神的にも“生きる”ことが最優先なのだから。
 ウィリアムズ以下、市民課にとっては、頭の痛い問題を抱えていた。下層階級の夫人たちから再三、公園建設の陳情を受けており、その陳情は、縦割り行政の弊害でたらい回しとなっていたのだ。
 市民課長のウィリアムズは、その陳情を一手に背負う形で部下と一丸となり、自ら先頭に立って問題の解決に動く。
 そして、簡単な遊具しかないものの、ウィリアムズはじめ、市民課の努力によって、公園は完成し、子どもたちの遊び場所となる。
 場面は変わり、ウィリアムズの葬儀のシーンとなる。そこで息子から若き部下ピーターに手紙が託される。そこには、役人としてキャリアをこれから積み上げようとしている彼への人生訓がしたためられていた。他の市民課のメンバーも、公園建設に携わったことで、仕事への向き合い方に変化を与えた。「人を残して死ぬのが上なり」と語った後藤新平の名言のように、ウィリアムズはピーターはじめ、公園建設に奔走した市民課のメンバーという「人」を遺したのだ。
 誰しも、若い頃は希望にあふれ、社会に貢献したいと思っているはず。しかし、徐々にそうした情熱は日々のルーティンと共に消え失せ、いつしか、組織の歯車になり果ててしまうのが世の常だろう。同作は、そうなる前に見ておくべき人生の教科書といえそうだ
 黒澤明が残した不朽の名作に敬意を表しつつ製作された同作は、ウィリアムズを演じるビル・ナイの存在感が圧倒的でありながらも、押し付けがましくないキャラクターに好感を持てる。
 黒澤明版の『生きる』は、143分という長尺作品だったが、同作は102分だ。しかしながら、押さえるべきプロセスは押さえられており、40分も端折った感じはしない。加えて、当時のイギリス社会に厳然として残っていた階級制度や、洋の東西を問わず存在する“お役所仕事”の現実をも描き切っている。
 アカデミー賞監督賞を受賞し「黒澤天皇」とまで呼ばれ、世界中にシンパがいる映画人が製作したオリジナルに、ノーベル賞を受賞したイシグロ氏の脚本によるリメイクという贅沢な作品だ。ラストシーンも含め、その名にふさわしい感動を覚える作品に仕上がっている。「“リメイク”とはかくあるべき」と強く感じる作品でもある。
<評価>★★★★★
<公式サイト>https://ikiru-living-movie.jp/
<公式Twitter>https://twitter.com/ikiru_living
<監督>オリバー・ハーマナス
<製作>スティーブン・ウーリー、エリザベス・カールセン
<製作総指揮>ノーマン・メリー、ピーター・ハンプデン、ショーン・ウィーラン、トーステン・シューマッハー、エマ・バーコフスキー、オリー・マッデン、ダニエル・バトセック、カズオ・イシグロ、ニック・パウエル
<原作>黒澤明「生きる」(1952)、橋本忍、小国英雄
<脚本>カズオ・イシグロ
<撮影>ジェイミー・D・ラムジー
<美術>ヘレン・スコット
<衣装>サンディ・パウエル
<編集>クリス・ワイアット
<音楽>エミリー・レビネイズ=ファルーシュ
#生きるLIVING #生きる #LIVING #映画 #カズオ・イシグロ #黒澤明 #オリバー・ハーマナス #ビル・ナイ #エイミー・ルー・ウッド #アレックス・シャープ #トム・バーク #リメイク #アカデミー賞 #ゴールデングローブ賞 #東宝

生きる LIVING(Blu-ray Disc)

生きる LIVING(Blu-ray Disc)

  • 出版社/メーカー: 東宝
  • 発売日: 2023/08/16
  • メディア: Blu-ray






nice!(0)  コメント(0) 
共通テーマ:映画

【映画レビュー】「由宇子の天秤」(2020 日本) [映画]

【映画レビュー】「由宇子の天秤」(2020 日本)
 父・政志(光石研)が経営する学習塾で講師として手伝いながらドキュメンタリー番組のディレクターを務める木下由宇子(瀧内公美)は、3年前の女子高生いじめ自殺事件のドキュメンタリー番組の制作に携わる。
 被害者の広美は、生前に学校でいじめを受けていることを訴えていたが、学校側は広美が教師の矢野と交際していると主張して広美に自主退学を迫り、その翌日に広美は自殺する。このことはマスコミの格好のネタとなり、広美の遺族や矢野、矢野の家族にまで心ない誹謗中傷などが相次ぎ、耐えかねた矢野は「広美との交際の主張は学校側がいじめの隠蔽を図るためのねつ造であり、広美と交際したことはなく、報道や学校の主張は事実無根。死をもって抗議する」との遺書を残して自殺する。
 由宇子は事件の真相を独自に探るべく、広美の父・仁(松浦祐也)、矢野の母・登志子(丘みつ子)や姉の志帆(和田光沙)ら遺族に取材し、その前にテレビ局のプロデューサーらに仮編集した映像を見せるプレゼンテーションを行い、その中で事件報道のあり方に問題提起する内容を盛り込もうとしましたが、局側は身内批判だとして却下し、由宇子に再構成を命じる。
 由宇子は加熱報道に問題提起するようなアプローチではなく、広美の遺族、矢野の遺族、学校側といった三者の立場や主張をフラットに並べ、そこから出てくるであろう意見の相違を明らかにすることで、真実がどこで歪み曲げられていったかを炙り出すことを試みる。
 登志子は顔を映さないという条件で由宇子のインタビューに応じ、矢野が生前、学校側とトラブルを起こしていたを明らかにする。さらに、登志子が世間の誹謗中傷から逃れるために、真っ暗なアパートで、息を潜めて生活している現状を目の当たりにする。登志子から誰が本当の加害者なのかと問われた由宇子は、自分は誰の味方にもなれないけど光を当てることはできると答える。
 しかしながら、政志の塾に通う女子高生の小畑萌(河合優実)が教室内で嘔吐し、萌は妊娠していることがわかる、さらにその相手は、父の政志だという衝撃の事実が明らかになる。
 萌は滞納していた塾の月謝を帳消しにしてもらうために政志と寝たことを明かし、こうした事実を父の哲也(梅田誠弘)や学校側、友人たちには絶対に知られたくないので助けてほしいと由宇子に懇願する。
 由宇子は政志に、スマホで録画しながら事情聴取する。政志は萌と性的関係を持ったことは認めたが、月謝をタダにすると持ちかけたことはないと答える。由宇子は悩んだ末、政志の不祥事が表沙汰になった時の影響を考え、萌の件は内密に処理しようとする。
 由宇子は産婦人科医の知人・小林(池田良)に極秘裏に萌の中絶を依頼する。その後、由宇子は萌のさまざまな面倒を見ていくようになり、2人は交流を深めていく。
 図らずも“加害者”の立場になってしまったことで、皮肉にもドキュメンタリーの視点が鋭くなった由宇子は、プロデューサーの富山宏紀(川瀬陽太)から高評価を得るようになる。
 ところが、広美の父である仁は、番組の方向性が変わってしまったことにクレームをつけたため、由宇子は仁が営むパン屋へ出向く。由宇子は仁に登志子の映像を見せ、被害者側の現実は加害者側の現実と繋がっていると語る。
 由宇子は萌をビジネスホテルに連れて行き、極秘裏に小林によるエコー検査を受けさせました。その結果、萌は子宮外妊娠の可能性があり、早急に精密検査を受けないと命に関わるということが明らかになる。
 政志は意を決して哲也に全てを話すことにしたが、由宇子は社会的に抹殺されている取材対象者を救いたいとの思いから、2週間後に控えた番組の放送まで待ってくれるよう懇願する。
 由宇子は再び矢野の姉・志帆の取材をし、志帆とその家族も心ない誹謗中傷を受けて苦しんでおり、何度も住所や職場を転々としていることを知る。
 その後、萌と一緒に映画を見に行く約束をしていた由宇子は、萌の自宅アパート周辺をうろついている男子高生のダイチ(河野宏紀)と出会う。政志の塾に通っていたダイチは、萌は“売り”に手を染めており、嘘つきだと証言する。
 さらに追い打ちをかけるように、由宇子は志帆に呼び出され、衝撃の真実を告げられる。志帆が渡してきた矢野のスマホには、矢野が広美をレイプする映像が残っていたのだ。さらに志帆は、矢野の遺書は実は弟の淫行が発覚することを恐れて自分が捏造したものだと打ち明ける。
 これまで真実を伝えることを目指していた由宇子は、自らの信念に疑問を抱き、番組の放送中止を訴える。その後、萌に会った由宇子はダイチから聞いた噂の真相を確かめようとするが、追い詰められた萌は衝動的にその場から逃げ出し、その際に車にはねられてしまう。
 由宇子は政志と共に病院に向かうが、哲也は萌が妊娠していたことを知り、ショックを受ける。由宇子は意を決して、哲也に真相の全てを打ち明けるが、激昂した哲也は由宇子に掴みかかり、首を絞める。哲也は動かなくなった由宇子を置き去りにして立ち去る。
 しばらくして、由宇子のスマホに番組の放送が中止になったとの留守番が入る。意識を戻した由宇子はスマホのカメラを自分に向け記録し始めるのだった。
 真実の報道とはかけ離れた週刊誌報道へのアンチテーゼ、ジャーナリズム精神に富んだ女性ディレクターの闘い、そんな人物に降りかかった身内の不祥事、信念を曲げてまで、それに対して“隠蔽工作”を図る大いなる矛盾を背負い込み苦しむ女性を瀧内公美が、迫力をもって好演している。
 終始、シリアスな物語が進行するが、日本社会のさまざまな場で見られる“臭い物に蓋をする”という問題を突きつけている。
 さらに、“正義の味方”と自任しているであろうはずのジャーナリストとて、一人の人間に過ぎず、その置かれた状況によっては、その立場を一変させることもあるはずだ。
 しかしながら、それを指して、我々は“マズゴミ”と批判できるだろうか。少なくとも由宇子は、入念な取材を基に、真実に辿り着こうとしていたことは事実なのだ。彼女を変えてしまったのは、アホな父親に他ならない。
 気が遠くなるほどのインタビュー取材を重ねながらも、思わぬ真実に触れ、それらを全てボツにした由宇子は、本物のジャーナリストなのではないだろうか。そうした人々は日々、自らが持っている内なる“天秤”と闘っているのだ。
<評価>★★★★☆
<公式サイト>https://bitters.co.jp/tenbin/
<公式Twitter>https://twitter.com/yuko_tenbin
<公式Facebook>https://www.facebook.com/yuko.tenbin.film/
<監督・脚本・編集>春本雄二郎
<プロデューサー>春本雄二郎、松島哲也、片渕須直
<ラインプロデューサー>深澤知
<キャスティング>藤村駿
<撮影>野口健司
<照明>根本伸一
<録音・整音>小黒健太郎
<美術>相馬直樹
<装飾>中島明日香
<小道具>福田弥生
<衣装>星野和美
<ヘアメイク>原田ゆかり
<音響効果>松浦大樹
<医療監修>林恭弘
<ドキュメンタリー監修>鎌田恭彦、清水哲也
<メイキング>荒谷穂波
#由宇子の天秤 #映画 #春本雄二郎 #松島哲也 #片渕須直 #瀧内公美 #河合優実 #梅田誠弘 #光石研 #丘みつ子 #松浦祐也 #和田光沙 #池田良 #木村知貴 #前原滉 #永瀬未留 #河野宏紀 #根矢涼香 #川瀬陽太 #マスコミ #ドキュメンタリー #ベルリン国際映画祭 #釜山国際映画祭 #ビターズエンド

由宇子の天秤

由宇子の天秤

  • 出版社/メーカー:
  • 発売日: 2022/04/23
  • メディア: Prime Video






nice!(0)  コメント(0) 
共通テーマ:映画

【映画レビュー】「355」(原題「The 355」/2022 イギリス) [映画]

【映画レビュー】「355」(原題「The 355」/2022 イギリス)
 ストーリーは非常に明快だ。携帯電話から旅客機までハッキング可能なデバイスが、コロンビアで開発され、諜報員ルイス(エドガー・ラミレス)の手に渡り、行方をくらます。国際テロ組織に渡れば、世界中を大混乱に陥れることも可能なデバイスに各国の諜報機関は脅威を察知し、取り戻そうと動く。
 実際に航空機の墜落や、通信障害が相次ぎ、世界を震撼させる。
 そのために集ったのが、本来であればライバルである米CIAのメイス(ジェシカ・チャステイン)、コロンビアDNIのグラシエラ(ペネロペ・クルス)、中国政府の工作員リン(ファン・ビンビン)、ドイツBNDのマリー(ダイアン・クルーガー)、イギリスMI6のハディージャ(ルピタ・ニョンゴ)が手を組み、コードネーム「355」と呼ばれるチームを結成し、デバイスを追う。
 「355」とは18世紀の米独立戦争時代に実在した女性スパイにちなんでいるという。
 とにかく過剰なほどに派手なガンアクションが繰り広げられる。豪華キャストによる、パリやロンドンを舞台としたアクションシーンも見どころの一つだ。英国映画であるが故、「CIA=絶対的な善」として描いていない点も目新しい視座だ。
 こういた作品にストーリー性を求めるのは野暮というもの。全くといっていいほど捻りのないストーリー展開だが、とにかく爽快なほど銃をブッぱなし、人がコロコロ死んでいく。
 全くリアリティーのない脚本と、贅沢とも無駄遣いともいえるキャスティング。難しいことは抜きにして鑑賞するには楽しめる一作だ。
<評価>★★★☆☆
<公式サイト>https://355-movie.jp/
<公式Twitter>https://twitter.com/355movie_JP
<監督>サイモン・キンバーグ
<原案>テレサ・レベック
<脚本>テレサ・レベック、サイモン・キンバーグ
<製作>ジェシカ・チャステイン、ケリー・カーマイケル、サイモン・キンバーグ
<製作総指揮>リチャード・ヒューイット、エスモンド・レン、ワン・ルイ・ファン
<撮影>ティム・モーリス=ジョーンズ
<美術>サイモン・エリオット
<衣装>ステファニー・コーリー
<編集>ジョン・ギルバート リー・スミス
<音楽>トム・ホルケンボルフ
#355 #映画355 #映画 #サイモン・キンバーグ #テレサ・レベック #ジェシカ・チャステイン #ペネロペ・クルス #ファン・ビンビン #ダイアン・クルーガー #ルピタ・ニョンゴ #エドガー・ラミレス #セバスチャン・スタン #スパイ #アクション #敵の敵は味方 #キノフィルムズ

355(字幕版)

355(字幕版)

  • 出版社/メーカー:
  • 発売日: 2022/07/17
  • メディア: Prime Video






nice!(0)  コメント(0) 
共通テーマ:映画

【映画レビュー】「ブラッド・チェイサー 沈黙の儀式」(原題「Muti(The Ritual Killer)」/2022 アメリカ) [映画]

【映画レビュー】「ブラッド・チェイサー 沈黙の儀式」(原題「Muti(The Ritual Killer)」/2022 アメリカ)
 イタリアのローマで女性が儀式めいた方法で惨殺される殺人事件が発生する。刑事たちが犯人と思われる男を置くが、取り逃がしてしまう。
 一方、アメリカのミシシッピ州では、娘を亡くしたことをひきずるルーカス・ボイド刑事(コール・ハウザー)は、捜査中に犯人を射殺したことを問題視される。その後、意図的に体の一部を切り取られた少女の死体が発見され、似たような事件が続けて起きる。
 連続発生した儀式的な猟奇殺人の捜査に、ボイドらは黒魔術の呪術師でもある大学教授のマッキーズ(モーガン・フリーマン)に協力を求め、犯人を追い詰めるというサイコサスペンス作品だ。
 物語の序盤はイタリア・ローマで発生した猟奇殺人と犯人の追跡、モーガン・フリーマン扮するアメリカ(出身地はアフリカのレソト王国という設定)の大学教授の日常、そして別の事件を追いかけているアメリカの刑事の話が同時進行で描かれていく。
 このような作品は、“誰が殺人鬼なのか”を軸にストーリー展開させていくものだが、早々に犯人が特定されてしまい、サスペンス要素はそこで半減してしまう。
 さらに、アクションシーンも今ひとつで、アメリカの作品としては、物足りなさを感じる。
 謎多き役柄をモーガン・フリーマンが演じているが、脚本の陳腐さのせいで、“無駄遣い”の印象が強い。日本の配給会社から買い手が付かず、WOWOWでの放映にとどまったことからも分かるように、興行的には大失敗したのだろう。
 殺人の方法としては無残そのものなのだが、その描写は極力抑え気味だ。ラストシーンになって初めて、サイコパスっぽい映像が登場するものの、シリアルキラーと対決するというストーリーの割には、グロテスクなシーンが少なく、こうした作品が好きな人にとって、満足させるだけの作品ではなくなっている。さしずめ“B級映画”といっても過言ではない印象だ。
<評価>★☆☆☆☆
<監督>ジョージ・ギャロ
<製作>ジョー・レモン、ブレット・サクソン、ジェフ・ボウラー、アンドレア・イェルボリーノ、モニカ・バカルディ、ダニエレ・マローニ
<製作総指揮>ルカ・マトンルンドーラ、リチャード・サルバトーレ、デビッド・E・オーンストン、ネイト・アダムス、ゲイレン・スミス、マーク・ダノン、ジョバンナ・トリシッタ、ナット・マコーミック
<原案>ジョー・レモン、フランチェスコ・チンクェマーニ、ジョージア・イアンノーネ
<脚本>
ロバート・T・バウワーソックス、ジェニファー・レモン、フランチェスコ・チンクェマーニ、ルカ・ジルベルト、フェルディナンド・デルオモ
<撮影>アンジェイ・セクラ
<美術>ジョー・レモン、マルコス・キート、フランチェスコ・コトネ
<衣装>レンカ・パディサコバ
<編集>イバン・ゴティエ
<音楽>トム・ラスブエルト
#ブラッド・チェイサー #沈黙の儀式 #Muti #映画 #ジョージ・ギャロ #モーガン・フリーマン #コール・ハウザー #バーノン・デイビス #ジュゼッペ・ゼーノ #ミュリエル・ヒラリー #ルーク・ストラット=マクルーア #ブライアン・カーランダー #ジュリー・ロット #デスティニー・ローレン #ピーター・ストーメア #黒魔術 #イタリア #アメリカ #ローマ #ミシシッピ #猟奇殺人 #ミステリー #サスペンス #スリラー

ポイズン・ローズ(字幕版)

ポイズン・ローズ(字幕版)

  • 出版社/メーカー:
  • 発売日: 2019/12/04
  • メディア: Prime Video






nice!(0)  コメント(0) 
共通テーマ:映画