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【映画レビュー】「午前4時にパリの夜は明ける」(原題「Les passagers de la nuit」/2022 フランス) [映画]

【映画レビュー】「午前4時にパリの夜は明ける」(原題「Les passagers de la nuit」/2022 フランス)
 1981年、大統領選挙の祝賀ムードに包まれ、希望と変革の雰囲気に満ちていたフランスのパリは希望と変革の雰囲気に満ちていた。
 そんな雰囲気とは正反対に、夫と別れ、子どもたちを養うため、働く必要に迫られるエリザベート(シャルロット・ゲンズブール)。エリザベートは深夜ラジオ番組の人気パーソナリティーであるヴァンダ・ドルヴァル(エマニュエル・ベアール)に手紙を送り、番組のアシスタントとして働き始める。
 ある晩、番組のリスナーである孤独な少女タルラ(ノエ・アビタ)と出会い、彼女が家出してきたことを知ったエリザベートは、自宅に彼女を招き、共に暮らし始める。タルラとの出会いによって、エリザベートは自身の境遇を悲観していたこれまでを見つめ直すのだが、そんなタルラに、エリザベートの息子マチアス(キト・レイヨン=リシュテル)が恋心を抱き、不思議な家族での生活が始まる。7年もの年月を過ごしていく中で、変わっていくもの、また変わらないものを、じっくりと描き出していく。
 プロットにも奇をてらったものはなく、派手な出来事は起こらない。誰の人生にも起こり得そうな、ささやかな出来事が一つひとつ積み上げらえていくストーリーだ。
 就業経験がなく、不眠体質であるという理由で、深夜ラジオの仕事に就き、その帰路に家出少女と出会い、家族として迎え入れる。実子はその少女に片思いするが、少女はあっさりと彼の前から立ち去ってしまう。少年は永遠を求めるが、それは叶わず、少女はすれ違って消えていくという物語。
 エリザベートの日記の形で語られる「他者は過去の私たち」「他者が垣間見せるのは私たちの破片や断片」「彼らは私たちの夢を見る。でも他人同士」「私たちはいつも素晴らしき他人」などといた言葉。が、本作のテーマだ。
 本作の原題を直訳すると「夜の乗客たち」で、深夜ラジオの番組名でもある。リスナーたちとのすれ違いが、家族や人生を象徴していく。人はみな他人だが、他者は過去や現在、未来の自分自身を写す鏡であって、どこか寂しさや切なさを感じる、でも同時に暖かみや希望も感じる、そんな人生観を表現している。この、寂しさと暖かみが共にある感じは、午前4時という空気感とどこか共通するものがある。
 どこかアンニュイでありながら、切実さを味わう作品で、独特な作品だ。
 しかし、7年もの間に何も起こらなかったわけではない。薬物に手を出すタルラ、エリザベートを襲う病、そして貧困…。それでもなお、前を向いて生きようとする逞しさを得ていく。
 劇的な展開がないにも関わらず、いつの間にかストーリーに没入させられるのは、監督と脚本を務めたミカエル・アースの手腕だろう。
 本作には、シャンゼリゼ通りも凱旋門賞も登場しない。エッフェル塔すら、パリの一風景として映し出されているに過ぎない。登場人物も、変革していくフランス社会から取り残されたような、下町の等身大のパリっ子たちだ。
 性的な描写は生々しいものだが、不思議といやらしさは感じない。これはフランス映画の持つ、独特の感性なのだろう。ドロドロしたように感じさせない美しさを湛えたシーンだ。
 タルラを見送るラストシーン。シャンソンに合わせて家族みんなでダンスし、タルラも一緒になって踊るのが微笑ましい。
 深夜ラジオは物語の最初の設定に過ぎず、メインのストーリーは、1人のシングルマザーの生き様と成長を描いた人間ドラマだ。フランス映画らしい映像と音楽の美しさが、それを彩っている佳作といえよう。
<評価>★★★☆☆
<公式サイト>https://www.bitters.co.jp/am4paris/#
<公式X>https://twitter.com/am4_paris
<公式Facebook>https://www.facebook.com/am4paris/
<監督>ミカエル・アース
<脚本>ミカエル・アース、モード・アメリーヌ、マリエット・デゼール
<製作>ピエール・ガイヤール
<製作総指揮>エブ・フランソワ・マシュエル
<撮影>セバスティアン・ビュシュマン
<美術>シャルロット・ドゥ・カドビル
<編集>マリオン・モニエ
<音楽>アントン・サンコー
#午前4時にパリの夜は明ける #映画 #ミカエル・アース #シャルロット・ゲンズブール #キト・レイヨン=リシュテル #ノエ・アビタ #メーガン・ノーサム #ティボー・バンソン #エマニュエル・ベアール #ロラン・ポワトルノー #ディディエ・サンドル #パリ #深夜ラジオ #シングルマザー #ヌーベルバーグ #フランス #ベルリン国際映画祭 #ビターズエンド

午前4時にパリの夜は明ける

午前4時にパリの夜は明ける

  • 出版社/メーカー:
  • 発売日: 2023/12/15
  • メディア: Prime Video






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【映画レビュー】「リバー、流れないでよ」(2023 日本) [映画]

【映画レビュー】「リバー、流れないでよ」(2023 日本)
 京都・貴船にある老舗料理旅館「ふじや」を舞台に巻き起こるタイムループ系コメディ。劇団ヨーロッパ企画を主宰する上田誠が原案と脚本を担当し、同劇団所属の山口淳太のメガホンを取っている。
 仲居のミコト(藤谷理子)は貴船川のほとりで佇んでいた。仕事に戻り、番頭と部屋の後片付けをするが、なぜか2分前にいた貴船川のほとりに何度も戻ってくる。
 他の旅館の従業員や宿泊客なども2分間のループに巻き込まれ異変を感じている。仲居のチノ(早織)は客から頼まれた熱燗ができず、客のノミヤ(諏訪雅)たちはひたすら同じ雑炊を食べ続け、作家のオバタ(近藤芳正)は書いたはずの原稿が白紙に戻るなど、それぞれが2分前に戻るタイムループに悩まされる。
 2分経つと時間が巻き戻り、その間の行動は全てなかったことになるが、記憶だけはリセットされることなく連続しているために、次第に感情を昂らせ、徐々に取り乱す者も現れる。
 また、その中から抜け出したいと思う人ばかりではなく、タイムループの状態にとどまりたい人も現れ、それぞれの思惑が入り乱れていく。そんな中で、ミコトは自身の思いがループに関係しているのではないかと思い始め、独り、複雑な思いを抱える。
 2分間のタイムループという斬新な設定で、片付けたはずのお膳が片付けられていない、食べているはずの雑炊が全く減らない、風呂で洗髪しているはずがシャンプーが洗い流せない…などといった、小ネタを散りばめたストーリーを、長回しで小気味よく描いており、飽きさせない作品に仕上がっている。
 典型的な低予算、かつアイデア勝負の作品だが、演者の芝居には見どころがあり、コントのようなやり取りも上手だ。
 コメディのみならず、ロマンスやサスペンス、そして最後にはSF要素も盛り込み、86分とい尺の中で、エンタメ要素が多分に込められている。
 タイムループに直面すると、人ってこうなるのだなぁと、人間の愚かさも見せつつ、ツボを心得た軽妙な展開によって、十分に楽しめる娯楽作に仕上がっている。
 冬の貴船の美しさも相まって、まるで「ふじや」にいるような没入感も得られる佳作だった。CGやVFXに頼らなくとも魅せられる、新感覚のSF作品でもあったように思う。
<評価>★★★★☆
<公式サイト>https://www.europe-kikaku.com/river/
<ヨーロッパ企画公式X>https://twitter.com/river_europe
<ヨーロッパ企画公式Instagram>https://www.instagram.com/river_europe/
<監督>山口淳太
<原案・脚本>上田誠
<プロデューサー>大槻貴宏
<撮影>川越一成
<照明>徳永恭弘、藤川達也
<録音>平川鼓湖、倉貫雅矢
<美術>相馬直樹
<装飾>角田綾
<衣装>清川敦子
<ヘアメイク>松村妙子
<編集>山口淳太
<音楽>滝本晃司
<助監督>渡邉新之輔
<宣伝美術>三堀大介
<スチール>濱田英明
<主題歌>くるり「Smile」 https://www.quruli.net/discography/%E6%84%9B%E3%81%AE%E5%A4%AA%E9%99%BD-ep/
#リバー流れないでよ #映画 #上田誠 #山口淳太 #藤谷理子 #鳥越裕貴 #永野宗典 #角田貴志 #久保史緒里 #本上まなみ #近藤芳正 #酒井善史 #諏訪雅 #石田剛太 #中川晴樹 #土佐和成 #早織 #コメディ #貴船 #京都 #タイムループ #トリウッド #ヨーロッパ企画







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【映画レビュー】「ツイスター スーパー・ストーム」(原題「Supercell」/2023 アメリカ) [映画]

【映画レビュー】「ツイスター スーパー・ストーム」(原題「Supercell」/2023 アメリカ)
 竜巻を追跡する「ストームチェイサー」だった父・ビル(リチャード・ガン)が、命知らずの探索により命を落とす場面から始まる本作。
 そして10年後、高校生となった息子のウィル(ダニエル・ディーマー)も父のように竜巻を追う「ストームチェイサー」を志すことを決意する。母・クイン(アン・ヘッシュ)は気象学の教授だったが、ビルの死によって辞職し、ウィルの挑戦にも反対するが、そんなウィルのもとにビルが残した分厚い手帳が届き、送り主のおじ、ロイ(スキート・ウーリッチ)を訪ねると、ロイは竜巻観光ツアー業者のゼイン(アレック・ボールドウィン)のもとで働いていた。
 父に憧れてるウィルは危険なツアーに参加すう。一方、ウィルが心配なクインは息子の友人を連れてツアーの現地に向かう。
 1996年に公開された『ツイスター』によってクローズアップされた「ストームチェイサー(竜巻研究者)」なる仕事。巨大な竜巻に自ら突っ込んでいく危険極まりないが、まれに巨大竜巻が襲う北米大陸では、必要されている仕事だ。
 本作は、進化したVFX技術によって、竜巻の様子を迫力十分に描いたディザスターサスペンスだ。
 しかしながら、ストーリーには特段、意外性がなく、ただ淡々と進むことで、退屈さは否めない。
 予算のほとんどをグリーンスクリーンを使用したVFXに注ぎ込んだような作品で、プロットも独創的ではなく、好感を持てるキャラクターも登場しない。
 結局のところ、ウィルが独り立ちするまでの成長物語か、竜巻研究の危険さを見せたかったのか分からないまま終わる本作。典型的な低予算B級映画となってしまった印象だ。
 本国での公開直前に、母親役のアン・ヘッシュが交通事故死し、遺作となった作品でもあるが、キャスト陣唯一といっていいほどの好演を見せていた。
<評価>★☆☆☆☆
<監督・原案>ハーバート・ジェームズ・ウィンタースターン
<製作>ライアン・ドネル・スミス、ライアン・ウィンタースターン、ネイサン・クリンガー
<脚本>ハーバート・ジェームズ・ウィンタースターン、アンナ・エリザベス・ジェームズ
<撮影>アンドリュー・ジェリック
<音楽>コリー・ウォレス
<インターネットムービーデータベース>https://www.imdb.com/title/tt10559102/
#ツイスター #スーパーストーム #映画 #竜巻 #ハーバート・ジェームズ・ウィンタースターン #スキート・ウーリッチ #アン・ヘッシュ #アレック・ボールドウィン #ダニエル・ディーマー #ストームチェイサー」(原題「Supercell」/2023 アメリカ)
 竜巻を追跡する「ストームチェイサー」だった父・ビル(リチャード・ガン)が、命知らずの探索により命を落とす場面から始まる本作。
 そして10年後、高校生となった息子のウィル(ダニエル・ディーマー)も父のように竜巻を追う「ストームチェイサー」を志すことを決意する。母・クイン(アン・ヘッシュ)は気象学の教授だったが、ビルの死によって辞職し、ウィルの挑戦にも反対するが、そんなウィルのもとにビルが残した分厚い手帳が届き、送り主のおじ、ロイ(スキート・ウーリッチ)を訪ねると、ロイは竜巻観光ツアー業者のゼイン(アレック・ボールドウィン)のもとで働いていた。
 父に憧れてるウィルは危険なツアーに参加すう。一方、ウィルが心配なクインは息子の友人を連れてツアーの現地に向かう。
 1996年に公開された『ツイスター』によってクローズアップされた「ストームチェイサー(竜巻研究者)」なる仕事。巨大な竜巻に自ら突っ込んでいく危険極まりないが、まれに巨大竜巻が襲う北米大陸では、必要されている仕事だ。
 本作は、進化したVFX技術によって、竜巻の様子を迫力十分に描いたディザスターサスペンスだ。
 しかしながら、ストーリーには特段、意外性がなく、ただ淡々と進むことで、退屈さは否めない。
 予算のほとんどをグリーンスクリーンを使用したVFXに注ぎ込んだような作品で、プロットも独創的ではなく、好感を持てるキャラクターも登場しない。
 結局のところ、ウィルが独り立ちするまでの成長物語か、竜巻研究の危険さを見せたかったのか分からないまま終わる本作。典型的な低予算B級映画となってしまった印象だ。
 本国での公開直前に、母親役のアン・ヘッシュが交通事故死し、遺作となった作品でもあるが、キャスト陣唯一といっていいほどの好演を見せていた。
<評価>★☆☆☆☆
<監督・原案>ハーバート・ジェームズ・ウィンタースターン
<製作>ライアン・ドネル・スミス、ライアン・ウィンタースターン、ネイサン・クリンガー
<脚本>ハーバート・ジェームズ・ウィンタースターン、アンナ・エリザベス・ジェームズ
<撮影>アンドリュー・ジェリック
<音楽>コリー・ウォレス
<インターネットムービーデータベース>https://www.imdb.com/title/tt10559102/
#ツイスター #スーパーストーム #映画 #竜巻 #ハーバート・ジェームズ・ウィンタースターン #スキート・ウーリッチ #アン・ヘッシュ #アレック・ボールドウィン #ダニエル・ディーマー #ストームチェイサー







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【映画レビュー】「パリ・ブレスト 夢をかなえたスイーツ」(原題「A la belle etoile」/2024 フランス) [映画]

【映画レビュー】「パリ・ブレスト 夢をかなえたスイーツ」(原題「A la belle etoile」/2024 フランス)
 本作は、22歳でパティスリーの世界選手権のチャンピオンに輝いた天才パティシエ、ヤジッド・イシェムラエンの自伝を基にした物語だ。
 イシェムラエンは、世界各地の最高級ホテルのコンサルタントや高級ブランドとのコラボレーションを手がけ、南フランスの歴史ある街・アヴィニョンや、パリにも自身の店舗を持つ、世界でも指折りの人気パティシエだ。
 14歳でパリのデザート職人の見習いになると、著名なパティシエの下で修行を重ね、モナコのホテル「ル・メトロポール」でスーシェフ(副料理長)に。そして2014年、「ジェラート世界選手権(Gelato World Cup)」のチャンピオンに輝いた。
 本作の主人公は、育児放棄の母親の下、過酷な環境で暮らす少年ヤジッド(少年時代=マーウェン・アムスケール、青年期=リアド・ベライシュ)。彼にとって唯一の楽しみは、里親の家で食べる手作りのデザートだった。
 いつしか自分がパティシエになることを夢みるようになるが、児童養護施設育ちのヤジッドは、10代にしてパリの高級レストランに、半ば潜り込むような形で、見習いとして雇ってもらう。しかし、修業の日々を過ごす中、シェフに気に入られたヤジッドを妬む同僚の策略で警察に拘留され、クビになってしまう。
 しかしヤジッドは、自力で職を求め、店を転々とし、時にはバーテンダーとして生活を維持しながら、再起を期し、パティスリー世界選手権に出場するという目標に突き進み、そのチャンスを得る。国内予選では、ヤジッドを罠に嵌め、失職に追い込んだ元同僚を破ってみせる。
 同時にヤジットは、病に伏す養母を見舞う代わりに、自ら作ったデザートをプレゼントする。特訓に明け暮れる日々を送り、会いに行けない代わりに、最上級の見舞いの品を送ったことで、養母は元気を少し取り戻し、世界一を目指すヤジットにエールを送る。
 パティスリー世界選手権出場への道のりは険しいもので、様々な妨害や苦難がありながらも、ヤジットを応援するかつての同僚や、その才能に惚れ込んだパトロンの協力を得て、ついにヤジットらのフランスチームは栄冠を手にする。その困難なミッションの達成に至るまでには、その過程で、ヤジットを支える人々との出会いが、本作を語る上で、欠かせないポイントだ。
 ヤジットが才能あるパティシエであり、努力を惜しまなかったことはもちろん、出会いにも恵まれ、その地位を得たことは、本作を見れば明らかだ。優勝後、世界中の一流ホテルからのオファーを受けながらも、フランスにとどまり、自らの店舗で「パリ・ブレスト」をはじめとするデザートを提供しながら、故郷のエペルネに住む養父母に元にも訪れているという。それがヤジットなりの恩返しなのだろう。
 主人公のヤジッドを演じたのは、TikTokで6600万人のフォロワーを持つ映像クリエイターのリアド・ベライシュ。インフルエンサーであると同時に俳優としても活躍する彼は、本作に出演するために料理を一から学び、原作者のイシェムラエンから直々にパティスリーの作法を伝授してもらいながら役作りに励み、映画初主演を果たした。
 作品を彩っているのは俳優だけではない、劇中に登場する煌びやかで、いかにも美味しそうなデザートの数々が、観る者の食欲を刺激すること請け合いだ。これらのデザートはすべてイシェムラエン本人が監修している。
 フランス映画としては珍しく、ヌーヴェルヴァーグと呼ばれる前衛的作品ではなく、官能的な恋愛要素も社会風刺的な描写もない。まるでアメリカ映画のようなド直球のサクセスストーリーを描いており、そのエンディング爽快なものだ。
 おそらくは、ヤジッド・イシェムラエンの自伝に忠実に製作されたのであろう。華やかな数々のデザートの造形美とは裏腹に、常にピリピリとした厨房の様子、野心を隠そうともしない若きパティシエたちのキャラクターも細かく描かれている。
 厨房を舞台とする作品は、映画、テレビドラマ問わず、日本においても数多く製作されている。フランス同様、「食」や「料理」に対する厳しさや妥協を許さない姿勢は、我が国と共通する部分もあり、共感できる部分も多い。
 その事実は、本作にも反映されている。ヤジッドらフランス代表チームが制した2014年のパティスリー世界選手権で、2位の座に就いたのは、日本代表チームだった。
 この物語は、あくまでもヤジッドの半生を描いたストーリーなのだが、洋食の世界でも世界に伍するレベルにある日本の料理人たちにも拍手を送りたくなる。そして、観終わった後、ちょっと奮発して、美味しいものを食べたくなる衝動にも駆られる作品だ。
<評価>★★★★☆
<公式サイト>https://hark3.com/parisbrest/#
<公式X>https://twitter.com/parisbrest_
<公式Instagram>https://www.instagram.com/parisbrest_movie
<公式TikTok>https://www.tiktok.com/@hark_official
<監督>セバスチャン・テュラール
<脚本>セドリック・イド
<撮影>ピエール・デジョン
<美術>アン・チャクラバティ
<衣装>ポリーヌ・バーランド
<編集>マリエル・バビネ
<音楽>ブリス・ダボリ
<原作>ヤジッド・イシェムラエン「Un rêve d’enfant étoilé: Ccomment la pâtisserie lui a sauvé」(スターを夢見た幼少時代:パティシエが彼を救った理由)
#パリ・ブレスト #夢をかなえたスイーツ #映画 #ヤジッド・イシェムラエン #セバスチャン・テュラール #リアド・ベライシュ #ルブナ・アビダル #マーウェン・アムスケール #フェニックス・ブロサール #エステバン #クリスティーヌ・シティ #パスカル・レジティミュス #ジャン=イブ・ベルトルート #パスカルパトリック・ダスマサオ #ディコシュ #源利華 #アニ・マンスール #ジョージ・コラフェイス #フランス #スイーツ #パティシエ #パティスリー #自伝 #実話 #ハーク







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【映画レビュー】「スクロール」(2023 日本) [映画]

【映画レビュー】「スクロール」(2023 日本)
 YOASOBIのヒット曲「ハルジオン」の原作者・橋爪駿輝による小説を、清水康彦監督、北村匠海&中川大志のダブル主演で映画化した青春群像劇。社会に居場所がなく、SNSでストレスを発散しているだけの4人の若者が、友人の自殺をきっかけに自身を見つめ直していくというストーリーだ。
 学生時代の友人である「僕」(北村匠海)とユウスケ(中川大志)は、友人・森が自殺したことを知る。上司からのパワハラに苦しみ、SNSで上司の悪口を書くことでなんとか自分を保っている「僕」と、刹那的に生きてきたお調子者のユウスケ。友人の死をきっかけに、生き方を見つめ直すようになる。
 そんな彼らに、「僕」のSNSの書き込みに共鳴している「私」(古川琴音)と、ユウスケとの結婚によって、空虚な心を満たしてくれると信じる菜穂(松岡茉優)の時間が交錯していく。
 終始、暗いストーリー。特に主人公の「僕」は、口を開けば「死にたい死にたい」ばかりで、その原因とされるパワハラの描写も、現実社会に照らせば大したことではない。作中で、そのパワハラ上司はクビになり、その憂さ晴らしの放火で捕まってしまうのだが、この程度で会社をクビになるのだとしたら、日本中の管理職は誰も部下を叱れなくなってしまうだろう。
 とにかく、北村匠海演じる「僕」のメンタルが弱すぎてイライラさせられる。今の若者ってみんなそうなの?と思わされ、それに共鳴する女性がいるというのも驚き。もはやここまでくるとメンヘラ集団の傷の舐め合いだ。
 原作者の橋爪駿輝は元フジテレビ勤務らしいが、30歳で辞めたところを見ると、対して優秀でもなかったのだろう。こんな社会に斜に構えたような人物がテレビ番組を作っていたとしら、そりゃ面白いわけがないよなと、妙に納得させられる。原作本は未読だが、読む気にもなれないほどのストーリーだ。
 北村匠海、中川大志、松岡茉優、古川琴音という豪華キャストを無駄遣いしており、最後まで「結局、何が言いたいの?」と、鑑賞者側から問いたくなるような意味不明さ。自殺、パワハラ、放火などといったエピソードを適当に放り込んで、若者の生きづらさを描いているつもりなのだろうが、何から何まで中途半端。
 これを商業映画にしたこと自体が謎に思えるほど、稀にみる駄作と断言できる。出演した俳優陣が不憫でならない。
<評価>★☆☆☆☆
<公式サイト>https://scroll-movie.com/
<公式X>https://twitter.com/scroll_movie
<公式Instagram>https://www.instagram.com/scroll_movie/
<監督>清水康彦
<原作>橋爪駿輝
<脚本>清水康彦、金沢知樹、木乃江祐希
<製作>坂本香、鷲見貴彦、小山洋平、佐久間大介、浅田靖浩
<エグゼクティブプロデューサー>麻生英輔、木村麻紀
<チーフプロデューサー>小林有衣子
<プロデューサー>八木佑介、野村梓二
<キャスティングプロデューサー>本多里子
<撮影>川上智之
<照明>穂苅慶人
<録音>桐山裕行
<音響効果>桐山裕行
<美術>松本千広
<衣装>服部昌孝
<ヘア>HORI
<メイク>NOBUKO MAEKAWA
<編集>清水康彦
<音楽>香田悠真
<監督補>長田亮
<VFX>宮城雄太
<助監督>草場尚也
<ラインプロデューサー>門馬直人、安藤光造
<アシスタントプロデューサー>金川紗希子
<制作担当>小林慶太郎
<原作>「スクロール」(講談社) https://bookclub.kodansha.co.jp/product?item=0000372142
<主題歌>Saucy Dog「怪物たちよ」 https://saucydog.jp/news/detail/1316
#スクロール #映画】#清水康彦 #橋爪駿輝 #北村匠海 #中川大志 #松岡茉優 #古川琴音 #水橋研二 #莉子 #三河悠冴 #MEGUMI #金子ノブアキ #忍成修吾 #相田翔子 #宮田早苗 #SaucyDog #ショウゲート

スクロール (講談社文庫)

スクロール (講談社文庫)

  • 作者: 橋爪 駿輝
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2022/12/15
  • メディア: 文庫






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【映画レビュー】「グランツーリスモ」(原題「Gran Turismo」/2023 アメリカ) [映画]

【映画レビュー】「グランツーリスモ」(原題「Gran Turismo」/2023 アメリカ)
 ソニー製のドライビングシミュレーター「グランツーリスモ」に夢中なヤン・マーデンボロー(アーチー・マデクウィ)。元プロサッカー選手の父、スティーブ・マーデンボロー(ジャイモン・フンスー)からは「現実を見ろ」とあきれられる日々だったが、ある日ヤンにビックチャンスが訪れる。
 世界中から集められたグランツーリスモのプレイヤーたちを、本物の国際カーレーサーとして育成するため、競い合わせて選抜するプログラム「GTアカデミー」の参加権を得る。バーチャルなゲームの世界では百戦錬磨のトッププレイヤーたちが、想像を絶するトレーニングやアクシデントを乗り越え、リアルのカーレースに挑む、実話を基にしたストーリーだ。
 「GTアカデミー」には、プレイヤーの才能と可能性を信じてアカデミーを発足したダニー・ムーア(オーランド・ブルーム)と、ゲーマーが活躍できるような甘い世界ではないと考えながらも指導を引き受けた元レーサーのジャック・ソルター(デビッド・ハーバー)、そして世界中から集められたトッププレイヤーたちがいた。厳しいトレーニングに耐え、ついにデビュー戦を迎える。
 初のレースは最下位に終わるが、あきらめずにレースを続け、少しずつ総合順位を上げていく。しかし、4位入賞まであと一歩というところで、チームのドライバーの姑息な手により順位を下げてしまう。
 ドバイでの最終レースを迎えたヤン。4位に入賞しなければ夢を諦めなくてはならず、後がない状態だ。大きなプレッシャーの中、4位でゴール。FIAライセンスを手に入れる。
 ヤンは恋人オードリー(メーブ・コーティア=リリー)と来日し、日産と正式に契約を交わす。本格的にレーサーとして歩み始め、レースに出場していく。。
 そんな中、ドイツでのレース中、ヤンは激しいクラッシュを起こす。意識を取り戻したヤンは、その事故で観客が亡くなったことを知り、罪悪感に苦しむ。
 ジャックはそんなヤンを車に乗せてクラッシュした場所まで連れていく。「かつて自分は他のドライバーの事故に巻き込まれたことがあって、それが原因でレーサーを辞めた」と告白する。
 車を降りたジャックは、そのままヤンにハンドルを握らせて、ラップを完走させる。しかし、死亡事故を起こしたことにより、日産本社から撤退をほのめかされているダニーは新たな挑戦として、ル・マン24時間レースに参戦する。アカデミー生だったマティ・デイビス(ダレン・バーネット)とアントニオ・クルス(ペペ・バロッソ)を加えて3人で24時間のレースに臨む。
 レース当日、父スティーブが「もっと早く応援してあげるべきだった」と涙ながらに伝え、ヤンは強く勝利を誓っう。
 しかし、ヤンはクラッシュに巻き込まれたドライバーを見て、過去の恐怖が蘇る。ジャックはヤンが好きな音楽をマイク越しに流してヤンを勇気づける。再びレースに集中したヤンは、不調のアントニオをカバーし、順位を上げていく。
 残り1時間。ヤンはゲームの中で何度も走ったル・マンでの経験を思い出し、レースで実践する。次々とライバルを抜き、4位につける。そしてファイナルラップ、ヤンは3位に浮上し、初出場にして表彰台に上がる。祝福と喜びに包まれ、ヤンは家族やチームメイトと共に祝うのだった。
 実話ベースのサクセスストーリーだけに、結末が分かり切っている作品ではあるものの、様々な撮影手法を駆使してのレースシーンは迫力十分。門外漢に対する嫌がらせも、カーレースの世界の現実を映し出しているものだろう。
 ヤン・マーデンボローというカーレーサーを生んだのは、ソニーと日産のバックアップによるものであり、日本人キャストがほぼいなくとも、日本がカーレースの世界で重要な役割を果たしていることを実感できる。ヤンが東京を訪れるシーンも、変にデフォルトされておらず、好感が持てる。
 しかし、難点があるとすれば、シンプルなストーリーの割には、134分という尺は少々長く、冗長さも感じる。映像や音楽も含めて、スピード感溢れるレースシーンが秀逸だっただけに、少々もったいない。最後に、本物のヤン・マーデンボローの写真とともに、実話であることを示すラストシーンも余韻を残すものだったが、レース好きやゲーマー以外に訴えるものがあったかといえば、そうでもない作品だった。よって“まぁまぁ”の評価にとどまる。それにしても、レース観戦中にクラッシュで観客が死んだら、補償などはどうなるのだろう…。その辺り、ツッコミどころのある作品でもあった。
<評価>★★☆☆☆
<公式サイト>https://www.sonypictures.jp/he/1183995
<ソニー・ピクチャーズ公式X>https://twitter.com/SonyPicturesJP
<ソニー・ピクチャーズ公式Instagram>https://www.instagram.com/sonypicturesjp/
<ソニー・ピクチャーズ公式Facebook>https://www.facebook.com/SonyPicturesJP
<監督>ニール・ブロムカンプ
<原案>ジェイソン・ホール、アレックス・ツェー
<原作>PlayStation Studios「グランツーリスモ」
<脚本>ジェイソン・ホール、ザック・ベイリン
<製作>ダグ・ベルグラッド、デイナ・ブルネッティ、アサド・キジルバシュ、カーター・スワン
<製作総指揮>マシュー・ハーシュ、ジェイソン・ホール、山内一典、ヘルマン・フースト
<撮影>ジャック・ジューフレ
<美術>マーティン・ホイスト
<衣装>テリー・アンダーソン
<編集>コルビー・パーカー・Jr.、オースティン・デインズ
<音楽>ローン・バルフェ、アンドリュー・カフチンスキ
<キャスティング>メアリー・バーニュー、レイリン・サボ
<主題歌>T-SQUARE「CLIMAXE」
<日本語版主題歌>T-SQUARE「MOON OVER THE CASTLE」
#グランツーリスモ #映画 #ニール・ブロムカンプ #ジェイソン・ホール #アレックス・ツェー #ザック・ベイリン #冨林勇佑 #ヤン・マーデンボロー #デビッド・ハーバー #オーランド・ブルーム #アーチー・マデクウィ #平岳大 #ダレン・バーネット #ジェリ・ハリウェル・ホーマー #ジャイモン・フンスー #ヨシャ・ストラドフスキー #ダニエル・プイグ #メーブ・コーティア=リリー #レース #eスポーツ #ゲーム #ソニー #日産

グランツーリスモ

グランツーリスモ

  • 出版社/メーカー:
  • 発売日: 2023/12/13
  • メディア: Prime Video






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【映画レビュー】「アステロイド・シティ」(原題「Asteroid City」/2023 アメリカ) [映画]

【映画レビュー】「アステロイド・シティ」(原題「Asteroid City」/2023 アメリカ)
 “奇才”ウェス・アンダーソン監督のよって、アメリカ南西部にの砂漠の街「アステロイド・シティ」に宇宙人が到来したことから起こる大騒動を、独特の世界観で描いたコメディ作品。
 ジェイソン・シュワルツマン、エドワード・ノートンなどアンダーソン監督作の常連俳優陣に加え、スカーレット・ヨハンソン、トム・ハンクス、マーゴット・ロビーら豪華キャスト陣が名を連ねている。
 物語冒頭でテレビ司会者が番組の趣旨を說明する。これは新作舞台劇の制作過程を舞台裏から見ていくテレビ番組で、そのために創られた架空のドラマだと紹介する。
 アメリカが輝いていた1955年、隕石が落下して出来た巨大なクレーターが観光名所である「アステロイド・シティ」に、ジュニア宇宙科学大会の栄誉に輝いた5人の天才的な子どもとその家族が招待される。
 子どもたちに母親が亡くなったことを伝えられない父親のオーギー(ジェイソン・シュワルツマン)、マリリン・モンローを彷彿とさせるグラマラスな映画スターのシングルマザーのミッジ・キャンベル(スカーレット・ヨハンソン)、それぞれが様々な思いを抱えつつ授賞式は幕を開けるが、祭典の最中にUFOが飛来し、宇宙人は展示品の隕石を持ち去る。とっさに宇宙人を撮影するオーギー。一方で、人々は大混乱に陥る。
 街は封鎖され、軍は宇宙人の存在を隠蔽しようとするが、子どもたちは、宇宙人の情報を伝えようと学校新聞に記事を掲載する。
 それを聞きつけ、アステロイド・シティには観光客が押し寄せ、宇宙人みやげの露店が並ぶ。そこに再びUFOが現れ、奪った隕石を落としていく。
 その頃、テレビ番組では、優秀な俳優志望の人々が学ぶ演劇ゼミで討論した劇作家が、「目覚めたければ眠れ」という結論に辿り着く。
 翌朝、オーギーが寝坊して起きると、ミッジをはじめ、軍人も少年少女たちも全員が姿を消していた。深夜に拘束の解除が発表され、皆が帰途についたのだ。表彰式が流れたことで、どさくさ紛れにウッドロウ(ジェイク・ライアン)が奨学金の小切手を受け取る。妻の死で子どもたちを義父のスタンリー(トム・ハンクス)に預けることを考えていたオーギーだが、絆が戻り、一家は全員で家に帰って行った。
 非常にややこしい構造の作品で、「アステロイド・シティ」という舞台劇、その舞台劇を紹介するテレビ番組、そのテレビ番組の舞台裏という3重構造になっている。モノクロ画面で映画は幕を開け出たと思えば、テレビ司会者(ブライアン・クランストン)が劇作家のコンラッド・アープ(エドワード・ノートン)の戯曲を紹介。そして画面はカラーのスコープサイズに変貌し、劇中劇「アステロイド・シティ」が始まる。そして時折、テレビ番組の舞台裏が挿入される。途中で付いていくことを諦めさせるほどの目まぐるしさだ。
 シュールなアメリカンジョークが散りばめられ、多重構造のストーリー、美しい映像には見どころはあるものの、とにかく難解。それがウェス・アンダーソンを言ってしまえばそれまでなのだが、かなり見る人を選ぶ作品であることは確か。しかし、これだけの豪華キャストが集っていることから、ハリウッドの中に彼のファンが多いことの証明だろう。
 ウェス自身も、鑑賞者に対して、この世界観を完全に理解することは求めていないのではないだいだろうか。「なんだこの映画!?」と思わせることが狙いのようにすら思える。
 この作品を通じて、ウェスは何を訴えたいのかなど考える必要もないと思えるほどの異色作だ。もはやコメディでも群像劇でもない“ウェス・アンダーソン作品”という新たなジャンルといえる本作。日本では全くといっていいほど話題にならなかったが、それも致し方ないだろう。この作品を日本人の感性で理解するのは不可能と感じるからだ。
<評価>★☆☆☆☆
<公式サイト>https://asteroidcity-movie.com/#
<公式X>https://twitter.com/asteroidcity_jp
<公式Instagram>https://www.instagram.com/asteroidcity_jp
<監督・脚本>ウェス・アンダーソン
<原案>ウェス・アンダーソン、ロマン・コッポラ
<製作>ウェス・アンダーソン、スティーブン・レイルズ、ジェレミー・ドーソン
<製作総指揮>ロマン・コッポラ、ヘニング・モルフェンター、クリストフ・フィッサー、チャーリー・ウォーケン
<撮影>ロバート・イェーマン
<美術>アダム・ストックハウゼン
<衣装>ミレーナ・カノネロ
<編集>バーニー・ピリング、アンドリュー・ワイスブラム
<音楽>アレクサンドル・デスプラ
<音楽監修>ランドール・ポスター
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【映画レビュー】「The Son/息子」(原題「The Son」/2022 イギリス・フランス) [映画]

【映画レビュー】「The Son/息子」(原題「The Son」/2022 イギリス・フランス)
 本作は、初監督作『ファーザー』(2022)でアカデミー脚色賞を受賞した、フロリアン・ゼレール監督による“家族3部作”の2作目。ゼレールが手掛けた戯曲「Le Fils 息子」を原作にし、親と子の心の距離を描いている。
 主人公の一流弁護士・ピーター(ヒュー・ジャックマン)は、再婚した妻のベス(バネッサ・カービー)と生まれたばかりの息子とともに、幸福で充実した日々を過ごしていた。
 そんな彼の家を、前妻のケイト(ローラ・ダーン)が訪れ、同居している17歳の長男・ニコラス(ゼン・マクグラス)の様子がおかしいと相談される。
 ニコラスは噓をついて学校へも行かず、心に闇を抱えながら、生きる気力を失っていた。彼は父であるピーターと暮らすことを望み、引っ越したいと懇願する。ニコラスは、ニコラスはピーターとケイトが離婚する際、ケイトが激しくピーターを罵ったことによるトラウマを抱えていた。ピーターはニコラスを受け入れ、一緒に暮らし始める。
 ピーターが出勤した後、ニコラスはベスに既婚者だと知っていて、父と付き合ったのかと聞く。ベスはそんなニコラスに警戒心を抱き始める。
 ニコラスは近くの高校へ転校、ピーターはニコラスにセラピーを受けさせたりする。
 一方で、ニコラスの様子が気になるケイトは、メールや電話をしても返事がないと、ピーターに訴え、母親としての自信を失ったと告白する。ピーターはケイトに「立派な母親」だと励ます。また、ベスにも贈り物をしながら、感謝の気持ちを伝える。
 ピーターとベスが愛し合おうとした時、ニコラスがその様子を目の当たりにしてしまう。そしてある日、ベスは帰宅したピーターにニコラスのマットレスの下から、ナイフを見つけたと告げる。驚いたピーターはニコラスに、ナイフを隠し持っていた理由を聞く。彼は護身用と言うが、ピーターは必要ないはずだと答える。逆にニコラスはピーターに銃は何のために持っているのかと聞く。ピーターはその銃は、成人した時に父親から貰った猟銃で、置いてあるだけだと返す。はぐらかされたと感じたピーターは自傷するためではないかと聞き返す。そしてニコラスは、ピーターに自傷行為をする理由を問い質す。ニコラスは生きている実感がなく、自傷し苦痛を感じる時だけ唯一、生きていることを実感するのだと説明する。
 ピーターはそんなニコラスの気持ちが全く理解できず、ニコラスに二度としないよう厳しく言い、ニコラスが傷つくと自分も傷つくとなだめるが、ニコラスはピーターの行動が母のケイトと自分を傷つけたと反論する。
 ピーターは親しい上院議員が大統領予備選に出馬することになり、その参謀チームに誘われ、度々、ワシントンに出張することになる。
 ある日、知人からピーターの父親が病気だと聞かされる。ピーターは父親とは疎遠だったが、ワシントンでの会議の帰りに父親を訪ねる。父親は病気のことを聞いてきたのなら大したことはないと、元気で現役を続けていると告げ、ピーターは大統領予備選の参謀として声がかかっていることを伝える。
 そしてニコラスのことがあり、参謀チームに参加するかどうか迷っていると打ち明けるが、父親はピーターに、良い父親であることをアピールに来たのかと一蹴される。
 そんな父親にピーターは40年前、病気で死に直面した母親を、仕事を理由に一度も見舞わなかったことを非難する。しかし父親は、50歳にもなって、40年も前のことを引きずっているとは情けないと一喝する。
 ある日、ピーターとベスは友人のパーティーに行くことになる。ベスは久しぶりの外出を心待ちにしていたが、アクセサリーがなくなったりシッターが急病になるなど、アクシデントが続きイラ立つ。ニコラスが弟の面倒なら見ると申し出ると、ピーターは容認したが、ベスはそれを拒否し、「頭のおかしい彼には任せられない」と訴える。その言葉を聞いたニコラスはケイトの元に逃げ帰り、「苦しむのに疲れた」と泣きじゃくる。ピーターはニコラスを案じるが、そこに学校から電話が入り登校初日以降、学校に来ていないことを知らされる。
 ピーターはケイトの家を訪ねニコラスと対峙する。最初は穏やかに学校に行かない理由を聞き、前の学校で何かあったのかと追及する。しかし、ニコラスは「分からない」の一点張り。ピーターは自分の経験を持ち出し、あれほど嫌っていた父親と同じようなことを言い、ニコラスを追い詰める。するとニコラスの感情も爆発し、母や自分を捨てたくせに偉そうなことを言うなと、ピーターをクズ呼ばわりする。
 そして再びニコラスは自傷し病院へ搬送され、そこで医師から「急性うつ病」と診断を受ける。加えて、両親が原因で発症しているため、落ち着くまで面会できないと告げる。
 ニコラスとの面会が叶い、ベスは息子を連れて彼女の実家へと帰省する。ピーターとケイトは医師と介護士を交え、ニコラスと面会し今後の治療について話し合う。
 医師は入院の継続を勧めるが、ニコラスは医師をヤブ医者呼ばわりし、余計におかしくなると言う。そして、「もう大丈夫だから、よくなると約束する」と連れて帰ると懇願する。
 医師は精神的な病気は“愛”だけでは治せないと言い、未成年の入院には保護者の了解が必要だと、ニコラスの安全のためにも同意してほしいと訴える。ピーターとケイトは医師の意見を聞き、ニコラスの入院を決めるが、泣き叫びながら両親に助けを求めるニコラスの顔を見て、ピーターは退院させ自分たちで看護しようと決める。
 ピーターの家に3人で帰り、ニコラスにとって久しぶりの3人家族に戻り、穏やかな空気になる。ニコラスは1週間も体を洗っていないと、シャワーを浴びにバスルームへ向かう。ピーターとケイトは今後のことを話し、とりあえず3人で映画でも観に行こうと、ニコラスの快方を信じる。
 しかし突然、バスルームから銃の発砲音が響く。ピーターとケイトは慌ててバスルームに向かうが、「ニコラス!目を開けて!ママを見て!」と泣き叫ぶ声だけが響き渡る。ニコラスは自殺するタイミングを見計らっていたのだ。
 年月が経ち、ピーターの家では会食の準備がされ、ベスと成長した息子もいる。ベルが鳴り玄関のドアを開けると、ニコラスが立っていてケイトと恋人は後から来ると言う。
 ニコラスは、病気と向き合い、立ち直るまでの経験を本にし、最初に父に渡したかったと話し、ピーターに差し出す。ピーターは本を握りしめ立ち上がり、バスルームの方を見つめるが、ベスが「どうしたの?大丈夫?」と声をかける。しかし、そこにはニコラスの姿も本もなかった。ニコラスの自殺から4年が経ったものの、ピーターは悲しみと苦しみから乗り越えられず、空虚の中で暮らしており、その情景は白昼夢だったのだ。
 ベスは、ニコラスの自殺はピーターのせいじゃないと擁護し、4歳になった二男のために立ち直ってほしいと言うが、ピーターは幼い頃のニコラスとの思い出の中で、泣き崩れるのだった。
 自分のことを完璧だと思っている父親が、我が子の心の病を理解しようともしない様を描き、さらにはその父親も輪をかけて無理解な人物であったことを示したことで、息子である少年の自殺という最悪の結果をもたらすストーリーが、観る者の心に突き刺さる。
 ピーターは、社会的な身分は一流だが、父親としては失格といえる人物。さらにはピーターの父親にも同じことが言える。毒親の連鎖が、自殺という最悪の結果を以て、ニコラスは負のスパイラルから解放されたとも言える。
 ヒュー・ジャックマンが演じる父親のピーターは、まるで悪意などないようにニコラスと接し、“正しい道”へ導こうとするが、その道とはニコラスにとっては“正しい道”ではなかったことから起きた悲劇だ。
 さらに、離婚時にニコラスを激しく罵り、ニコラスにトラウマを植えつけたケイトと、最後までニコラスに心を開くことなく、危険視していたベスにも、その責はあるだろう。
 決して登場人物が多いわけではない作品だが、それが奏功し、ストーリーの軸がしっかり押さえられた作品で、見応えある秀作だ。とかく、自分の子どもを型に嵌めたがる親世代には必見の一作だ。
<評価>★★★★☆
<公式サイト>https://www.theson.jp/
<公式X>https://twitter.com/TheSon_jp
<監督>フロリアン・ゼレール
<脚本>フロリアン・ゼレール、クリストファー・ハンプトン
<製作>ジョアンナ・ローリー、イアン・カニング、エミール・シャーマン、フロリアン・ゼレール、クリストフ・スパドーヌ
<製作総指揮>サイモン・ギリス、フィリップ・カルカソンヌ、ヒュー・ジャックマン、ダニエル・バトセック、オリー・マッデン、ローレン・ダーク、ピーター・タッチ、クリステル・コナン、ヒューゴ・グランバー、ティム・ハスラム
<撮影>ベン・スミサード
<美術>サイモン・ボウルズ
<衣装>リサ・ダンカン
<編集>ヨルゴス・ランプリノス
<音楽>ハンス・ジマー
<音楽監修>イアン・ニール
<原作>フロリアン・ゼレール「Le Fils 息子」
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  • 出版社/メーカー: バップ
  • 発売日: 2023/09/13
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【映画レビュー】「山女」(2022 日本・アメリカ) [映画]

【映画レビュー】「山女」(2022 日本・アメリカ)
 18世紀末の東北の寒村を舞台に、過酷な運命に翻弄されながらも、たくましく生きる女性・凛(山田杏奈)を描いている。脚本も務める福永壮志監督が、柳田國男の「遠野物語」に着想を得たとされる作品だ。
 冷害で食糧難に苦しむ村。農家で子が産まれるが、食わせられないという理由で、両親はすぐに窒息死させるショッキングなシーンでストーリーが始まる。死体処理の汚れ仕事をやっている凛は遺体と料金を受け取り、凛は川に遺体を流して山に向けて祈る。
 そんな彼女の心の救いは、盗人の女神が宿るといわれる早池峰山。ある日、村で米泥棒の事件を起こし、村人から責められる父親・伊兵衛(永瀬正敏)に代わって罪を被った凛は、殴られ、山に逃げ込む。そして、決して越えてはいけないと言い伝えられる山神様の祠を越えた凛は、さらに山の奥深くへと進んでいく。そんな凛の前に現れたのは、人間なのかもわからない不思議な山男(森山未來)だった。
 凛と山男の親子のような共同生活を送っていたが、村長(品川徹)にマタギを雇って凛を捜索させる。火炙りの儀式を行う生贄にするためだ。凛は山男の上着を織ってやり、山男の髪を手入れしてやる。マタギ集団と泰蔵は祠を越えて山に入る。泰蔵(二ノ宮隆太郎)は凛を見つけて説得するが拒否される。そこに山男が現れてマタギと殺し合いになり、山男はマタギを何名か撲殺するが、結局は火縄銃を受け絶命する。凛はその場で自分も殺せと懇願するが、村に連行される。
 村に帰った凛は監禁され、伊兵衛は罪の帳消しと引き換えに凛の生贄を受け入れる。泰蔵は黙っていた春(三浦透子)を責めるが、春は村の掟には逆らえないと一蹴する。夜に父から生贄のお勤めを告げられて凛は了承する。泰蔵は牢屋の前で泣き崩れて凛に謝罪するが、結局家に帰って春を抱く。
 真夜中の牢屋で、凛は馬の銀色に光る立髪に、山男の面影を見る。
 村人総出で火炙りの儀式を行う。凛が磔にされながら山を見つめ、天国へと思いを馳せる。凛の足元に火が着けられた直後、激しい雨が降り、火は消えてしまう。雷が磔の柱を直撃し、縄が解ける。気絶から目覚めた凛は朦朧としたまま山へと歩き出す。村人達は神が降りたと恐れ慄く。
 そして凛は山へと姿を消し、山女の伝説として後世まで村で語り継がれることになるのだ。
 遠野物語から着想を得たと言ってはいるが、その内容は、貧しい寒村で苦しみ、1人の女性を生贄にしようとする救いようもないストーリーだ。
 山男の存在も、ストーリーに大きく影響を与えることはなく、ただファンタジー要素を描きたかったが故に、無理やりネジ込んだような印象を受ける。
 実際に、こういう時代があったのかも知れない。しかし、「東北=貧しい・寒い・意味のない神頼み・生贄・村八分」といったステレオタイプの描写にはウンザリしてしまう。日米合作の作品だが、これは米国側からの視点なのか。だとしても、あまりにも遠野物語と柳田邦男を愚弄してはいまいか。
 主人公を演じた山田杏奈が、新境地を開拓したかのような好演を見せている。逆をいえば、それがなければ何も印象に残らない作品だった。
<評価>★☆☆☆☆
<公式サイト>https://www.yamaonna-movie.com/
<公式X>https://twitter.com/yamaonna_movie
<公式Instagram>https://www.instagram.com/yamaonna_movie/
<監督>福永壮志
<脚本>福永壮志、長田育恵
<プロデューサー>エリック・ニアリ、三宅はるえ、家冨未央、白田尋晞
<エグゼクティブプロデューサー>安田慎、中林千賀子、白田正樹
<撮影>ダニエル・サティノフ
<照明>宮西孝明
<美術>寒河江陽子
<録音>西山徹
<整音>チェ・ソンロク
<装飾>柴田博英
<衣装>宮本まさ江
<メイク>金森恵
<かつら>荒井孝治
<特殊メイクデザイン>百武朋
<VFXスーパーバイザー>オダイッセイ
<編集>クリストファー・マコト・ヨギ
<音楽>アレックス・チャン・ハンタイ
<助監督>北川博康
<制作担当>大村昌史
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山女

山女

  • 出版社/メーカー: TIME
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【映画レビュー】「ザ・ホエール」(原題「The Whale」/2022 アメリカ) [映画]

【映画レビュー】「ザ・ホエール」(原題「The Whale」/2022 アメリカ)
 劇作家サミュエル・D・ハンターの舞台劇を、ダーレン・アロノフスキー監督が映画化した作品。家族を捨て、極度の肥満に陥った男が自らの死期を悟り、疎遠になっていた娘と寄りを戻そうとするヒューマンドラマ。主演のブレンダン・フレイザーは本作で第95回アカデミー主演男優賞を受賞した。
 家族を捨て、同性恋人アランの元に走った男・チャーリー(ブレンダン・フレイザー)。その後、アランが亡くなり、そのショックからチャーリーは暴飲暴食の日々を送り、体重272キロの極度の肥満体になってしまう。
 そんなチャーリーは唯一の友人である看護師のリズ(ホン・チャウ)の手を借りながら、大学のオンライン授業でエッセイの書き方を指導する講師として生計を立てていた。しかし、自分の太った姿を見られないように、自分の姿が映らないということにしていた。
 ある月曜日、チャーリーの元に、新興宗教「ニューライフ」の宣教師トーマス(タイ・シンプキンス)が訪れた際、チャーリーは発作を起こす。すぐさまリズが駆け付け、チャーリーに病院に行くよう勧める、チャーリーは治療費用も健康保険証もないと言って断る。
 リズは、トーマスがニューライフの宣教師であることを知るや、彼を追い返す。リズは父がニューライフ信者であり、この宗教に不快感を抱いていたのだ。
 翌日の火曜日、チャーリーは、自身の症状をネットで調べ、鬱血性心不全のステージ3で余命は長くないことを知る。そこでチャーリーは約10年もの間、音信不通だった娘のエリー(セイディー・シンク)を呼び寄せる。
 チャーリーはエリーが8歳の時に家族を捨てたのだが、17歳になったエリーは、未だにチャーリーを憎んでいた。家族を捨ててからもなおチャーリーはエリーに未練を残していたのだが、元妻のメアリー(サマンサ・モートン)は決してエリーをチャーリーに会わせようとはしてこなかったのだ。
 チャーリーはエリーに自分の有り金を全てやると言い出す。この頃のエリーは家庭でも学校でも荒れ果て、学校も停学処分になっていた。そんなエリーに、チャーリーは勉強を見てやると持ち掛ける。エリーは自分のレポートを書き直してほしいと頼み、チャーリーは書き直すことの条件としてエリーも自分にエッセイを書くよう頼むが、エリーは立ち去ってしまう。
 さらに翌日の水曜日も、エリーが訪ねてくるが、チャーリーがまだ書き直しに手を付けていないことを知るや帰っていく。
 入れ替わるかのように現れたトーマスは何とかしてチャーリーの役に立とうとしましたが、またもやリズに追い出される。その際、リズはチャーリーと付き合っていたアランは自分の兄であることをトーマスに打ち明けましる。アランはニューライフの宣教師だったのだが、チャーリーとの出会いを機に脱会したため、父や教会から仕打ちを受け、心を病んだ末に自殺していたのだ。
 木曜日、再びチャーリーのもとを訪れたエリーは、チャーリーに睡眠薬入りのサンドイッチを食べさせ、チャーリーが眠っている間、トーマスが訪ねてくる。エリーは大麻を吸い始め、誘われるかのようにトーマスも吸い始める。実はトーマスも教会との問題を抱えている最中で、故郷での布教活動がパンフレットを配るだけだったことに疑問を持ったトーマスは教会に相談しようとしましたが相手にされなかった。そこでトーマスは教会から金を盗んで逃げていた。エリーはトーマスの発言の一部始終を録音していた。
 その時、リズがメアリーを連れて訪ねてくる。リズはエリーがチャーリーに睡眠薬を飲ませたことに激怒するが、チャーリーが目を覚まし、エリーにレポートを渡すと、エリーはその場を立ち去っていく。チャーリーとメアリーとの間には気まずい空気が漂うが、メアリーはエリーの育て方を間違えたことを嘆き、それ故、チャーリーに今のエリーを見せたくなかったのだと明かす。
 2人の会話を聞いていたリズは、チャーリーが隠れてお金を貯め込んでいたことを知り、その金さえあればきちんとした医療を受けられるはずだと嘆くが、チャーリーはあくまでも自分のことよりもエリーのためにそのお金を残そうと考えており、メアリーはチャーリーは金銭面で、自分は子育てで、それぞれ役目を果たしたのだと述べる。
 全員が引き揚げ、独り残ったチャーリーは、冷蔵庫から食べ物を出して食べていたところ、トーマスが戻ってくる。エリーは隠し撮った音声データと写真を、ニューライフ教会とトーマスの両親に送ったそうで、エリーがどんな意図でやったのかはわからないけど両親も教会も許してくれたと語る。チャーリーはトーマスに両親のもとに戻るように告げる。
 そして金曜日、チャーリーはこの日のオンライン授業を最後の授業にすることと決めた。生徒たちに正直な文章を書くよう呼びかけたチャーリーは、今まで決して見せたことのない自分のありのままの姿を見せ、授業が終わるとパソコンを破壊する。
 そこにリズが訪ね、チャーリーはトーマスが自分のせいでアランが死んだと話していたことを伝えると、リズはチャーリーがアランのことを愛してくれていなければアランはもっと早く死んでいただろうと返答する。そしてチャーリーは、エリーがトーマスの写真と音声を教会と家族に送ったのは、トーマスを家に返すためにやったのだとだろうと語る。リズが帰った後、エリーがやってきて、チャーリーに書き直してもらったレポートが不合格になったことを伝える。説明を求めるエリーに、チャーリーは、声に出して読んでくれと頼く。
 実はこのエッセイは、エリーが数年前に書いたものであり、アメリカの小説家ハーマン・メルヴィルの小説「白鯨」に関してのもの。チャーリーは我が娘のこのエッセイをずっと心の支えにしてきたのだ。
 チャーリーはエリーに今までのことを素直に謝罪し、エリーには才能があること、そしてエリーは自分の“最高傑作”であることを伝える。そしてチャーリーはエッセイを読むエリーを見ながら、その巨体を、全身全霊を込めて歩行器なしで立ち上がり、エリーの元に歩み寄る。それはまさに小説で描かれた白鯨のようだった。チャーリーはエリーがエッセイを読み終え、お互いが目を合わせて微笑み合った時、チャーリーは白い光の中に包まれ、消えていくのだった。
 同性愛や新興宗教、そして精神的ショックからの過食症といった、米国ならではの問題を盛り込み、救いようもない現実を描いているのだが、最後の最後で、チャーリーは正直になることで自身を救い、エリーにも希望を残すことができたのではないかと感じさせるラストシーンだ。
 ダーレン・アロノフスキー監督の演出力と、ブレンダン・フレイザーとホン・チャウをはじめとするキャスト陣の演技が素晴らしく、1人の男の人生とその最期の1週間を、ほぼワンシチュエーションの会話劇で描き切っている。ある男を軸としたヒューマンドラマとしての脚本も出色だ。
 ほとんど自暴自棄となり、身動きも取れない巨漢が、命尽きる直前に、自身の過去を悔い改め、生き別れの娘のために懸ける姿には感動を禁じ得ない。
 そして、特殊メイクを施されながら巨漢を演じ、アカデミー賞主演男優賞を獲得したのも納得のフレイザーの演技には圧倒させられた。
<評価>★★★★☆
<公式サイト>https://whale-movie.jp/
<公式X>https://twitter.com/thewhale_jp
<監督>ダーレン・アロノフスキー
<原作・脚本>サム・D・ハンター
<製作>ダーレン・アロノフスキー、アリ・ハンデル、ジェレミー・ドーソン
<製作総指揮>スコット・フランクリン、タイソン・ビドナー
<撮影>マシュー・リバティーク
<美術>マーク・フリードバーグ、ロバート・ピゾーチャ
<衣装>ダニー・グリッカー
<編集>アンドリュー・ワイスブラム
<音楽>ロブ・シモンセン
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