SSブログ

【映画レビュー】「映画 イチケイのカラス」(2023 日本) [映画]

【映画レビュー】「映画 イチケイのカラス」(2023 日本)
 浅見理都の原作マンガを2021年、フジテレビの“月9枠”でドラマ化された作品の劇場版。“職権発動”を乱発する型破りな裁判官・入間みちお(竹野内豊)が事件の真相に迫る姿を描いている。
 本作はドラマ版から2年後を舞台に、東京地方裁判所第3支部第1刑事部、通称“イチケイ”を去り、岡山県秋名市に異動した入間と、「他職経験制度」で弁護士として働く坂間千鶴(黒木華)が、傷害事件と船の衝突事故から浮かんできた地元大企業が絡む疑惑に切り込む。竹野内演じる入間の飄々としたキャラクターはそのままに、正反対な性格の千鶴とのやりとりが楽しく、事件の意外な方向へと繋がっていくストーリーだ。
 入間はある傷害事件を担当する。事件は主婦の島谷加奈子(田中みな実)が、史上最年少で防衛大臣に就任したエリート政治家・鵜城英二(向井理)に包丁を突き付けたというもの。その背後には島谷の夫・秀彰(津田健次郎)が犠牲となった貨物船と海上自衛隊イージス艦の衝突事故があった。その事故も不審点だらけのものだったが、イージス艦の航海記録は国家機密に該当するため、入間の伝家の宝刀である“職権発動”もできない。
 一方、弁護士に転身していた坂間は、奇しくもみちおの赴任先の隣町に配属され、地元の人権派弁護士・月本信吾(斎藤工)とバディを組む。
 人の悩みに寄り添う月本に惹かれていく坂間だったが、町を支える地元の大企業であるシキハマ株式会社のある疑惑が浮上する。
 2つの事件に隠された衝撃の真実。それは、町ぐるみで結託して、誘致した企業を守ろうとする、決して開けてはならない「パンドラの箱」だった。その企業がどんな汚染物資を出していても隠蔽する体質に、“よそ者”である入間は鉄槌を下す。
 ドラマ版ではコミカルなシーンが多かった印象だったが、劇場版では重厚なテーマの下、リーガルサスペンスに重きを置いている。よって、お笑いパートはやや少なめ。しかも、物語中盤で月本が殺されるというシリアスな展開で進む。
 しかし、法廷での入間の言葉一つ一つが、胸に迫るものがある。そのあたりのテイストは、上手くドラマ版を引き継いでいる。
 入間は裁判官でありながら、法律は万能ではないことを知っている。そして、法廷で堂々とその思いを口にする気骨ある裁判官でもあるのだ。相手がどれだけの大物であっても、その思いには微塵の狂いもない。
 劇場版ということで、サイドストーリー的な脚本だったが、やはり入間の活躍の場は、東京地裁の“イチケイ”であってほしい。ドラマ版が良作だったからこそ、なおさらそう感じる。
 豪華なキャスティングによって紡がれた作品だけあって、締まった作品だったことは間違いない。しかしながら、せっかくの劇場版ならば、もっとスケールアップした舞台設定が見たかった気もする。
<評価>★★★☆☆
<公式サイト>https://ichikei-movie.jp/
<公式X>https://twitter.com/ichikei_cx
<公式Instagram>https://www.instagram.com/ichikei_mimamoru
<監督>田中亮
<脚本>浜田秀哉
<製作>大多亮、市川南、大川ナオ、高見洋平
<プロデューサー>高田雄貴、八尾香澄
<ラインプロデューサー>大西洋志
<撮影>四宮秀俊
<照明>木村匡博
<録音>加藤大和
<美術>あべ木陽次、永井達也
<装飾>稲場裕輔、近藤美緒
<編集>河村信二
<音楽>服部隆之
<選曲>大森力也
<VFXプロデューサー>長井由実
<音響効果>壁谷貴弘
<助監督>岩城隆一
<スクリプター>荒澤志津子
<スケジュール>中西正茂
<制作担当>碓井祐介、齋藤勲
<原作>浅見理都「イチケイのカラス」(講談社) https://kc.kodansha.co.jp/product?item=0000312446
<主題歌>Superfly「Farewell」(UNIVERSAL MUSIC JAPAN) https://sp.universal-music.co.jp/superfly/heatwave/
#イチケイのカラス #映画イチケイ #映画 #浅見理都 #田中亮 #竹野内豊 #黒木華 #斎藤工 #向井理 #尾上菊之助 #宮藤官九郎 #吉田羊 #小日向文世 #津田健次郎 #庵野秀明 #山崎育三郎 #柄本時生 #西野七瀬 #田中みな実 #桜井ユキ #水谷果穂 #平山祐介 #八木勇征 #みちもる会 #法廷 #イチケイ #第一刑事部 #判事 #裁判# #Superfly #東宝 #フジテレビ

映画『イチケイのカラス』DVD 通常盤 [DVD]

映画『イチケイのカラス』DVD 通常盤 [DVD]

  • 出版社/メーカー: 東宝
  • 発売日: 2023/08/16
  • メディア: DVD






nice!(0)  コメント(0) 
共通テーマ:映画

【映画レビュー】「ノック 終末の訪問者」(原題「Knock at the Cabin」/2023 アメリカ) [映画]

【映画レビュー】「ノック 終末の訪問者」(原題「Knock at the Cabin」/2023 アメリカ)
 「シックス・センス」(1999年)や「サイン」(2002年)など、奇妙さが魅力のスリラー映画の鬼才であるシャマラン監督。本作はキリスト教の終末論をモチーフとしている。主演は元格闘家のデイヴ・バウティスタが務め、屈強な外見だが知的で優しい教師だ。侵入される側はゲイのカップル、エリック(ジョナサン・グロフ)とアンドリュー(ベン・オルドリッジ)と、その養子である中国系の少女ウェン(クリステン・ツイ)。グロフとオルドリッジは実際にゲイだと公表している俳優でもある。
 ゲイの男性、エリックとアンドリューの養子として、幸せに暮らしているウェン。家族は森の中のロッジに静養に行く。ウェンがバッタの採集をしていると、屈強な黒人男性が話しかけてくる。「知らない人とは話さない」と警戒するウェンに、彼は自らレナードと名乗り、友だちになろうと話しかけてくる。
 2人が会話をしていると、さらに凶器を持った男女3人が近づいてくる。レナードはウェンに、危害は加えたくないと言いながらも「歴史上で一番大切な仕事がある」と語る。しかし他の3人はそれぞれ凶器を持っており、ウェンは急いでロッジへ戻り、エリックとアンドリューに「彼らを中に入れないで」と訴える。
 始めは相手にしていなかった2人だったが、ドアがノックされ「中に入れてください」と言われ警戒する。電話線は切られ、携帯電話は圏外。ウェンらは窓の鍵を閉め、ドアを塞ぐが、4人は窓ガラスを割り、ドアを破壊して侵入してくる。
 エリックは黒人女性のサブリナ(ニキ・アムカ=バード)に殴られ失神するが、殴った当の本人は、自身は看護師だと言い、傷を診ると主張する。やがて他の3人もロッジに突入し、ウェンを人質に取られたアンドリューは、レナードらに従わざるを得なくなる。
 アンドリューとエリックは後ろ手に縛り付けられる。エリックとアンドリューはゲイのカップルとして偏見や差別を受けてきたことから、自分たちを迫害しに来たのか、あるいはカルト宗教の勧誘かと考えていたが、レナードたちはぞれぞれに自己紹介をした後、ここに来た目的を語り始める。
 リーダー格のレナードが、「ゲイだから襲ったのか」と問うアンドリューに「ゲイに偏見はない。ここに来るまで知らなかった」と答える。そして「そろそろ時間だ」と言って自分たちが何者で、なぜここに来たのか語り始める。
「君たち3人の中で、誰かが死ななければならない。もし誰も死ななければ、全人類が死滅する」
 突拍子もない言葉に、エリックは「俺たちは何もしていない」と反論するが、レナードも「その通り、君たちは何も悪くない。たまたま選ばれただけだ」と答える。
 そしてレナードらも以前から知り合いだったわけではなく、4人が同じ「世界が滅びるビジョン」を見て、導かれるように集まったの集団だった。そしてビジョンの中で見た、人類が救われる唯一の方法が、エリックらの中の誰かが死ぬ選択をすることだった。
「そんな妄想、信じられるか!」とアンドリューは怒り呆れるが、レナードは「我々の使命は終末を止めること」と言うばかり。すると、前科持ちのレドモンド(ルパート・グリント)は「時間のムダだった」と怒り出す。
 するとレナードは「時間だ」と告げ、レドモンドが歩み出る。レドモンドがエリックたちの前に膝を付き、白い袋を被ると、レナードはレドモンドを背後から殴り殺す。
 レナードらは、自分たちがこうして順番に死んでいくこともビジョンで見ており、ビジョンの通りに実行したのだった。レナードらはレドモンドの死体をキャビンの外に運び出すと、テレビをつける。テレビではニュース速報で、地震による大津波が海岸を襲う様子が映し出されていた。
 レナードたちは順番に仲間の命を奪い、その度に世界に天変地異が起き、最後にレナードが死ぬことで、世界の終わりが訪れると信じていた。「次の順番」であるエイドリアン(アビー・クイン)という女性は、幼い息子が死ぬビジョンを何度も見たとエリックらに訴えるが、信じてもらえないと覚悟を決め、跪いて白い布を被る。
 レナードとサブリナはエイドリアンを殺害し、再びテレビをつけると、今度は新種のウイルスが世界中で猛威を振るい始めたというニュース映像が流れていた。
 アンドリューは紐が緩んだことに気付き、隙をついてロッジの外へ逃げ出す。サブリナが追って来るが、アンドリューは車の中にあった拳銃を使い、サブリナに向けて発砲する。
 レナードは、次の順番だったサブリナにとどめを刺し、テレビをつける。ニュース映像では、世界の旅客機が次々に墜落している様子が報じられていた。そしてレナードはロッジの外へ出ると、世界の未来をエリックとアンドリューに託して、自分の首をナイフでかき切り、絶命する。
 レナードの死と同時に、空は雲に覆われ、雷鳴が轟き始める。エリックはアンドリューに「君とウェンの未来を見た」と告げ、自分を殺してくれと訴える。アンドリューが涙ながらにエリックを撃つと、荒れた天気は静まっていくのだった。
 アンドリューはウェンと共にロッジを離れ、立ち寄ったレストランで、飛行機事故もウイルスの脅威も沈静化したことを知る。
 再び車に戻ると後部座席にはレナードがコーチをしているバスケチームの写真と表彰状があった。サブリナの正看護師の身分証やエイドリアンが息子と写った写真も。そしてオバノン名のガス会社のIDカードもありました。
 アンドリューが音楽を聞こうとスイッチを入れると、「ブギー・シューズ」のメロディが流れてるた。彼はそれを止めますが、ウェンが再びそれをつける。やはり思い直してウェンがそれを消すと、最後にはアンドリューがまたその音楽をつけ、車は再び走り出すのだった。
 「シックス・センス」で一気に名を売ったシャマラン。その“ジワジワと恐怖が迫ってくる”作風は健在で、バッドエンドを迎えてしまうのも、彼の特徴だ。
 とはいえ、このスタイルが飽きられてきているのも事実。そもそも、キャラクター設定の時点で様々な部分に粗が目立ち、ストーリー展開も強引で、無理があり過ぎるのだ。
 こうした作品はカルト的な人気はあるのだろうが、“分かる人には分かる”というスタンスで映画を作り続けていたら、飽きられてしまうのは必定。本作も“自分のファン向け”に製作したのではないかと思えるほど、鑑賞者を置いてけぼりにするような作品だった。
 そもそも、これはホラー映画なのだろうか。どちらかといえば、“一番怖いのは人間”というテーマを盛り込んだサスペンスに近い印象を受ける。例えそうなのだとしたら、登場人物の心理描写が少な過ぎる。この点で、本作は破綻しているとさえいえよう
<評価>★☆☆☆☆
<公式サイト>https://www.universalpictures.jp/micro/knock-at-the-cabin
<ユニバーサルピクチャーズ公式X>https://twitter.com/universal_eiga
<ユニバーサルピクチャーズ公式公式Instagram>https://www.instagram.com/universal_eiga
<ユニバーサルピクチャーズ公式Facebook>https://www.facebook.com/universal.eiga
<ユニバーサルピクチャーズ公式TikTok>https://www.tiktok.com/@universal_eiga
<監督>M・ナイト・シャマラン
<製作>M・ナイト・シャマラン、マーク・ビエンストック、アシュウィン・ラジャン
<製作総指揮>スティーブン・シュナイダー、クリストス・V・コンスタンタコプーロス、アシュリー・フォックス
<脚本>M・ナイト・シャマラン、スティーブ・デスモンド、マイケル・シャーマン
<撮影>ローウェル・A・マイヤー、ジェアリン・ブラシュケ
<美術>ネイマン・マーシャル
<衣装>キャロライン・ダンカン
<編集>ノエミ・プライスベルク
<音楽>ヘルディス・ステファンスドッティル
<音楽監修>スーザン・ジェイコブス
<原作>ポール・トレンブレイ「終末の訪問者」(竹書房) https://www.takeshobo.co.jp/book_d/shohin/6039501
#ノック #終末の訪問者 #映画 #シャマラン #トレンブレイ #デイブ・バウティスタ #ジョナサン・グロフ #ベン・オルドリッジ #ニキ・アムカ=バード #クリステン・ツイ #アビー・クイン #ルパート・グリント #終末思想 #サスペンス #ミステリー #ホラー #スリラー #ユニバーサル #東宝

ノック 終末の訪問者 ブルーレイ+DVD [Blu-ray]

ノック 終末の訪問者 ブルーレイ+DVD [Blu-ray]

  • 出版社/メーカー: NBCユニバーサル・エンターテイメントジャパン
  • 発売日: 2023/06/28
  • メディア: Blu-ray






nice!(0)  コメント(0) 
共通テーマ:映画

【映画レビュー】「メグレと若い女の死」(原題「Maigret」/2022 フランス・ベルギー) [映画]

【映画レビュー】「メグレと若い女の死」(原題「Maigret」/2022 フランス・ベルギー)
 舞台は1953年のフランス・パリ。モンマルトルのバンティミーユ広場で、シルクのイブニングドレスを着た若い女性の遺体が発見される。遺体には5か所の刺し傷があった。
 事件を担当するのは、名優ジェラール・ドパルデューが演じるメグレ警視。働き過ぎて、体は悲鳴を上げている老刑事だ。さっそく踏査に取り掛かるが、被害者の身元特定は困難を極める。
 司法解剖の結果、メグレは医師から「死因は刺し傷ではない」と言われ困惑する。どこかで殺された後に遺棄され、そこで死んだ状態で刺された可能性が浮上してくる。
 歳に不釣り合いな高級ドレスを纏った被害者はなぜ殺されたのかと思案するメグレ。そして、メグレは万引きをしようとしていた家出少女のベティ(ジャド・ラベスト)と出会う。彼女はベティと仲良くなり、妻のルイーズ(クララ・アントゥーン)も優しく接していく。
 一方で、メグレは遺体の身元を割り出すことに成功する。彼女は、名をルイーズといい、女優を夢見て、ニースからパリへやって来た貧しい少女であることが分かる。その素性と生涯を探るうちに、メグレはこの事件にのめり込んでいく。メグレ自身も、娘を若くして亡くした過去があったからだ。その中で、ルイーズがある一家と関わりがあることが判明する…。
 犯行が起こった日が、ジャニーヌ(メラニー・ベルニエ)の婚約の日であることから、メグレは疑いの目を向ける。ジャニーヌは女優として御曹司をゲットした“勝ち組”だったからだ。ルイーズの出身地であるニースは、現在では、南フランスを代表する地中海に面した大都市だが、当時はパリからみれば、ただの“田舎町”だった。
 田舎から出てきた女たちが、花の都パリで、どのように成り上がっていくのかが、当時のフランスの時代背景も踏まえて、描かれている。
 ルイーズ、ジャニーヌ、ベティという3人の女性を通じて、同じような境遇にありながら、それぞれの人生が分岐していく様を追っていく。
 刑事ドラマのようでありながら、ミステリーというよりはヒューマンドラマに近い印象だ。終始暗めのテイストだが、それが物語に重厚感を与えてもいる。
 推理ものとしては物足りなさも残るが、89分という尺の中で、ストーリーが過不足なく収められており、冗長さもない。ちょうどいい長さだ。
 物語の最後、子どものために人生を投げ出すと言う意味を履き違えた結末は、人間の醜さを露悪的に描いているようでもあり、恐ろしくもあり、悲しくもある。
 決して派手さはないし、ラストの部分も拍子抜けするほどで、奇を衒ったような演出がなく、落ち着いて見られる一方、サスペンスドラマを期待する向きには、消化不良感が残るようなエンディングでもある。しかしながら、フランス映画らしい、淡々とした会話劇を楽しむには十分といえる作品だ。
<評価>★★★★☆
<公式サイト>https://unpfilm.com/maigret/index.html
<公式X>https://twitter.com/maigret_jp
<アンプラグド公式Instagram>https://www.instagram.com/unplugged_movie/
<アンプラグド公式Facebook>https://www.facebook.com/unpfilm.inc/
<監督>パトリス・ルコント
<製作>ジャン=ルイ・リビ
<脚本>パトリス・ルコント、ジェローム・トネール
<撮影>イブ・アンジェロ
<美術>ロイック・シャバノン
<衣装>アニー・ペリエ
<編集>ジョエル・アッシュ
<音楽>ブリュノ・クーレ
<原作>ジョルジュ・シムノン「メグレと若い女の死」(早川書房) https://www.hayakawa-online.co.jp/shopdetail/000000015357/
#メグレと若い女の死 #映画 #パトリス・ルコント #ジョルジュ・シムノン #ジェラール・ドパルデュー #ジャド・ラベスト #メラニー・ベルニエ #オーロール・クレマン #アンドレ・ウィルム #エルベ・ピエール #クララ・アントゥーン #ピエール・モウレ #ベルトラン・ポンセ #アン・ロワレ #エリザベート・ブールジーヌ #フィリップ・ドゥ・ジャネラン #フランス #ベルギー #パリ #ミステリー #アンプラグド

メグレと若い女の死 [DVD]

メグレと若い女の死 [DVD]

  • 出版社/メーカー: アルバトロス
  • 発売日: 2023/11/03
  • メディア: DVD






nice!(0)  コメント(0) 
共通テーマ:映画

【映画レビュー】「オットーという男」(原題「A Man Called Otto」/2022 アメリカ) [映画]

【映画レビュー】「オットーという男」(原題「A Man Called Otto」/2022 アメリカ)
 2012年に発表されたスウェーデン人作家フレドリック・バックマンの小説を原作とし、2015年に同国で映画化された「幸せなひとりぼっち」の、ハリウッド版リメイク作品。妻を亡くし、ピッツバーグ郊外に住む63歳の老人、オットー・アンダーソン(トム・ハンクス)。鉄鋼会社を定年退職した彼は、半年前に教師だった妻ソーニャ(レイチェル・ケラー)を亡くしており、職も妻も失い、孤独の中で生きていた。また彼は、何かにつけて文句を付ける偏屈ジジイとして、街一番の嫌われ者である一方で、生きる希望をなくし、自殺を考えていた。
 首吊り自殺を実行しようと考えているオットーの家に、マリソル(マリアナ・トレビーニョ)一家が引っ越しのあいさつにやってくる。明るいマリソル一家を見たオットーは、ソーニャとの思い出がフラッシュバックし、自殺を思いとどまる。その後もマリソルやその夫トミー(マヌエル・ガルシア=ルルフォ)に自殺の企てを邪魔をされる。
 次は電車に飛び込もうと考えるオットー。しかし、その前に老人が気絶し線路に倒れ込んだのを目撃し、オットーが助けに行く。その様子がSNSで拡散され、オットーは有名人となるが、スマホもパソコンも持っていないオットーは気づくことなく、日常をやり過ごす。
 ガレージに住みついた野良猫を飼ってみたり、マリソルを運転の練習に付き添った帰りのソーニャとの思い出のパン屋で、旧友のルーベンの話をしたり、近所に住むトランスジェンダーのマルコムと仲良くなったりと、なかなか自殺に至らないオットー。
 今度は散弾銃で自殺を図るが、父親と喧嘩して家出してきたマルコムに、またしても邪魔される。
 オットーは旧友のルーベンの妻アニタがパーキンソン病ということを知る。さらに、病で体が不自由になっているルーベンを悪徳不動産屋が施設に押し込み、家を奪おうとしていることも知る。
 オットーはルーベンとアニタを助けるため、不動産業者に乗り込む。その後、オットーが人命救助で話題になったことで取材に来たSNSジャーナリストのシャリー・ケンジーに明かし、悪徳不動産屋の不正を暴くことに成功する。
 そして、近所に住むジミーが、万が一の際、2人の面倒を見ることで、この後も家に住むことが出来るようにする。
 騒動が収まり、猫と一緒に帰ろうとしたオットーは体調を突然悪くし、病院に運ばれる。心臓が大きすぎるとの診断で命には別状はなかったが、その病状は青年期のオットー(トルーマン・ハンクス)を苦しめたものだった。そのせいでオットーは兵役にも行っていなかったのだ。
 すると突然、妊娠していたマリソルの陣痛が始まり、無事の男の子を出産する。オットーは自分たちが使うはずだったベビーベッドをマリソルに贈り、その赤ちゃんを寝かしつける。そしてソーニャの墓参りにマリソルたちを連れて行く。
 しばらく穏やかな日々を過ごしていたオットーだったが、突如、胸が痛み出す。オットーは死期が近いことを知り、遺書を残す。
 オットーは愛車のシボレーをマルコムに譲り、トヨタの新車を購入する。そして、マリソルたちとドライブを楽しむ。
 そしてある日、トミーはオットーが雪かきをしていないことに気づき、家を覗くと、オットーが心臓発作で亡くなっているのを発見する。親しい友人や隣人たちがオットーの葬儀を執り行う。オットーが残した遺書には、自分の預金と車をマリソルに譲り、これで幸せに暮らしてほしいと書かれていたのだった。
 偏屈ジジイで嫌われ者だったオットーだったが、多くの人に見送られたオットー。その墓は、愛するソーニャの隣に建てらたのだった。
 独居老人の絶望や孤独と、その再生を描いた感動的なストーリーはもちろん、トム・ハンクスが演じるオットーの“老害”ぶり、その一方で、気絶し線路に倒れ込んだ老人を命を賭して助ける優しさも併せ持つ主人公を、さすが名優とばかりに哀愁たっぷりに演じている。さらに青年期のオットーを演じたトム・ハンクスの三男であるトルーマン・ハンクスが、映画デビュー作とは思えないほどの好演を見せている。
 他人を受け入れようとしなかったオットーが、人との交流によって、次第に心を開いていく様が感動を呼ぶ。最後には静かに孤独死してしまうオットーだが、その葬儀には、オットーを愛する人々が集ったことが、彼の人生の価値を示している。
 人は誰しも、独りで生きていくことはできないし、誰かの役に立つことでその存在価値を示す生き物だ。その誰かとは、偶然、引っ越してきた隣人かも知れないし、野良猫かも知れない。しかし、そんな当たり前のことを、本作を通じて、改めて考えさせられる名作だった。
<評価>★★★★★
<公式サイト>https://www.sonypictures.jp/he/11330696
<ソニー・ピクチャーズ 公式X>https://twitter.com/SonyPicsEiga
<ソニー・ピクチャーズ 公式Instagram>https://www.instagram.com/SonyPicsEiga/
<ソニー・ピクチャーズ 公式Facebook>https://www.facebook.com/SonyPicsEiga
<監督>マーク・フォースター
<製作>フレドリク・ビークストレム・ニカストロ、リタ・ウィルソン、トム・ハンクス、ゲイリー・ゴーツマン
<製作総指揮>マーク・フォースター、レネ・ウルフ、ルイーズ・ロズナー、デビッド・マギー、ティム・キング、スティーブ・シェアシアン セリア・コスタス
<オリジナル脚本>ハンネス・ホルム
<脚本>デビッド・マギー
<撮影>マティアス・クーニクスビーザー
<美術>バーバラ・リング
<衣装>フランク・フレミング
<編集>マット・チェシー
<音楽>トーマス・ニューマン
<原作>フレドリック・バックマン「幸せなひとりぼっち」(早川書房) https://www.hayakawa-online.co.jp/shopdetail/000000013353/
<主題歌>リタ・ウィルソン「Til You're Home」
<サウンドトラック>https://www.universal-music.co.jp/p/550-1914/(UNIVERSAL MUSIC)
#オットーという男 #映画 #マーク・フォースター #フレドリック・バックマン #デビッド・マギー #ハンネス・ホルム #トム・ハンクス #マリアナ・トレビーニョ #マヌエル・ガルシア=ルルフォ #レイチェル・ケラー #トルーマン・ハンクス #スウェーデン #小説 #幸せなひとりぼっち #ソニー

オットーという男

オットーという男

  • 出版社/メーカー:
  • 発売日: 2023/06/07
  • メディア: Prime Video






nice!(0)  コメント(0) 
共通テーマ:映画

【映画レビュー】「沈黙の艦隊」(2023 日本) [映画]

【映画レビュー】「沈黙の艦隊」(2023 日本)
 本作は、かわぐちかいじ氏により、1988年から1996年まで「モーニング」にて連載されていたマンガを原作としている。
 根本的なストーリーは潜水艦戦を描いた戦記ではあるものの、核戦争や国際情勢などを絡め、当時の東西冷戦を描くなど、かなり踏み込んだ内容で、国会の場でも注目されたほどだ。
 それからおよそ30年。主役の大沢たかおがプロデュースにも名を連ね、製作を日本の劇場版映画では初となるAmazon スタジオが担当、配給を東宝が担当するという形を取り、かつ、大沢が自ら動き、防衛省や海上自衛隊からの協力を取り付け、実写化にこぎ着けた。
 上級自衛官が、核ミサイルを搭載した米国の原子力潜水艦を乗っ取るという衝撃的なストーリーであるにも関わらず、本作の製作に協力し、実物の潜水艦を作中で披露するなど、防衛省と海上自衛隊のバックアップがなければ、本作の売りであるリアリティーは表現できなかったに違いない。両省庁には、製作陣のみならず、鑑賞者も感謝しなければならないだろう。
 メガホンを取った吉野耕平氏は、『ハケンアニメ!』(2022)、『水曜日が消えた』(2020)など、ヒューマンドラマやサスペンスで名を上げた監督だが、アニメーションやミュージックビデオ、さらにはVFX作品も製作するなど、多才な映像作家だ。今回、この“実写化不可能”ともいわれた本作の製作にあたって、白羽の矢が立った。
 前述したように、本作では主人公・海江田四郎を演じた大沢たかおがプロデューサーも兼任している。大沢にとって思い入れのある本作を通じて、世界に向け、大きなメッセージを投げかけている。
 物語は、日本の近海で海上自衛隊の潜水艦「やまなみ」がアメリカの原子力潜水艦に衝突し沈没。艦長の海江田を含む乗員全76名の死亡が報じられる場面から始まる。
 その報に、海江田の後輩であり、同時に尊敬の念も抱いていた、同じく海自の潜水艦「たつなみ」艦長の深町洋(玉木宏)は疑念を抱く。
 深町の読み通り、「やまなみ」の乗員は全員生存しており、事故は日米の政府が極秘に建造した高性能の原子力潜水艦「シーバット」に彼らを乗務させるための偽装工作だった。
 「シーバット」の艦長に任命された海江田。乗船直前に“最終確認”として、密かに「シーバット」に核ミサイルを搭載する。その上で出航し、海底の中で突然、乗員と共に米軍に反旗を翻す。米国政府は海江田らをテロリストとみなし、太平洋上に展開する第七艦隊を総動員して「シーバット」を追う。
 多勢に無勢の状況でも、米軍が誇る世界一の大型戦艦「ロナルド・レーガン」からの対潜ミサイル攻撃や、第七艦隊の潜水艦から放たれる魚雷をかわし続ける海江田。しかも、「音」を頼りに敵を追跡する潜水艦の特徴を利用し、モーツァルトの交響曲第41番「ジュピター」を大音量で流し、米軍からの追っ手を手玉に取り、かく乱する。
 日本政府も知らせを受け、右往左往する中、海江田は、自らを国家元首とした独立戦闘国家「やまと」の建国を宣言する。
 海江田は、「やまと」建国の理由を「世界中の国を一つにするため」と語る。あまりにも矛盾した行動に、日米両政府は困惑し、その真意を測りかねる。
 米国はホワイトハウス主導で、あくまで「シーバット」撃沈を遂行しようとする。一方、日本政府は、「やまと」との距離感を巡って、堂々巡りの話し合いが続き、首相の竹上登志雄(笹野高史)、国会のドンにして内閣参与の海原大悟(橋爪功)らは、何も決断できずにいる。この政治パートは、約30年前に原作が描かれた作品とは思えないほど現実感たっぷりだ。見方を変えれば、この間、日本の政治家は全く成長していないことを実感できる。
 もちろん、海自も黙って見ているわけにはいかず、海江田の後輩であると同時に、性格は正反対の深町は、海江田と刺し違える覚悟で海自のディーゼル潜水艦「たつなみ」に乗船、「シーバット」に乗り込む。
 海江田と対峙する深町。深町は、かつて海江田の下官として同じ潜水艦に乗り込み、機械室に海水が浸入する事故を起こしていた。潜水艦内部への浸水は防げたものの、潜水艦が沈む危険性があることから、艦長の海江田は機械室を封鎖し、海水の侵入を防ぐために命を張った船員を犠牲にした過去がある。この件を機に、海江田に対し、深町は疑問を持つようになっていた。
 それから時が経ち、今回の事件が起こる。海江田が起こした暴走を、ただ止めるのではなく、そんな男に“国家元首”の資格などないと、深町は伝え、「シーバット」を離れる。
 深町の右腕にして「たつなみ」の副長、速水貴子(水川あさみ)、耳だけで海中の情報を把握し、艦長に伝える役割を果たすソナーマンの南波栄一(ユースケ・サンタマリア)らは、そんな深町を不安げに見守ることしかできない。彼ら“追う側”の視点から見ることで、「海江田の真の目的とは何か?」というサスペンス要素が加わっている。
 さらに、日本政府側の、内閣官房長官・海原渉(江口洋介)や、防衛大臣・曽根崎仁美(夏川結衣)ら、様々な立場の人物の思惑も混ざり合い、そこに、事件の真相を報じようと躍起になるキャスターの市谷裕美(上戸彩)や、海江田と深町、双方の下で勤務した経験のある入江蒼士(中村倫也)の存在が、物語にさらなる奥行きを与えている。
 とにかく大沢たかおが演じる、この海江田という男、全く表情を変えない。まるで能面のようだ。そして冷酷なまでに声音を変えず、部下に「発射」と命令する様子には不気味さすら感じる。
 事の重大さなど気にも留めないかのように全く動じない大沢の演技と、映画館だからこそ、その迫力が伝わる海中戦のシーンが、見事なコントラストを成している。
 本作は「『やまと』はある国と軍事同盟を結ぶ」として、意外な国名を深町に伝えるシーンで幕を閉じる。
 国土を持たないながらも核武装している国家を建国するという手法で、自らが目指す世界を作ろうとする道を選んだ男・海江田が、イチかバチかの賭けに出る物語でありながら、核によって世界の秩序を保たれている今の世界に一石を投じている。
 劇中で、日本政府側は「力がなくては話し合いができない」「力あっての国家」といった会話が飛び交い、敵が核を保有しているかもしれない状態での攻撃は、結局のところ威嚇しかできない弱さを詳らかにし、米国側にも“世界の警察”と呼ばれた頃の強さはなく、たった1隻の潜水艦すら沈めることができない。それが今の世界だという海江田なりの皮肉を見せつけている。
 現在、ロシアによるウクライナ侵攻では、プーチン大統領が核の使用を示唆し始めている。北朝鮮もイランも核武装によって主権をかろうじて維持している。様々な国際問題が同時に起きているこの時代に、本作は強烈なメッセージを突き付けている。
 翻って我ら日本人はどうか。ロシアによるウクライナ侵攻に関して「関心がある」と答えた割合は9割を超えるが、その実、「光熱費や生活必需品の価格に影響するから」といった後ろ向きの理由というのが本音だろうと容易に想像できる。真にウクライナに住まう人々の生命に寄り添った考えを持つ心ある人はどれだけいるのか…。結局、現在の日本人は自分の生活のことで精いっぱいなのだ。
 現実として、日本は非核三原則に縛られ、敵国から攻撃されても専守防衛しかできない。北朝鮮が日本海に向けてミサイルを撃ち込み、国連安保理の常任理事国であるロシアが核使用をチラつかせて領土拡大のためにウクライナに侵攻している今、日本は国をどうやって守るべきなのか。
 いつ中国から攻め込まれてもおかしくない現在の情勢で、いつまでも米国の“核の傘”の下にいていいのか。そうしたジレンマを抱えながらも、戦後70年以上が過ぎ、平和ボケした日本人に、海江田は劇薬を投じたのだ。
 深町に言葉を残し、潜水艦「シーバット」内に作られた国家「やまと」は姿をくらます。「やまと」の向かう先はどこなのか…。大作でありながら、どこか、壮大なプロローグを見たような感覚になる作品でもある。おそらく、次回作も製作されることだろう。いや、製作されない方が不自然といった方がいいかもしれない。そしてその次回作は、その時代の国際情勢を反映されたものとなるだろう。
 その頃、世界はどうなっているのだろうか。プーチンは本当に核のボタンに手をかけてしまうのか…。思わず、悲観的な未来を想像してしまうが、海江田には海江田なりの“平和”を実現してほしい。そんな思いで続編を待ちたい。
<評価>★★★★★
<公式サイト>https://silent-service.jp/
<公式X>https://twitter.com/silent_KANTAI
<監督>吉野耕平
<脚本>高井光
<プロデューサー>戸石紀子、松橋真三、大沢たかお、千田幸子、浦部宣滋
<ラインプロデューサー>濱崎林太郎、眞保利基
<撮影>小宮山充
<照明>加藤あやこ
<録音>林栄良
<美術>小澤秀高
<装飾>秋田谷宣博
<衣装>渡辺文乃
<ヘアメイク>本田真理子
<VFXスーパーバイザー>西田裕
<CGスーパーバイザー>宗片純二
<スーパーバイジングサウンドエディター>勝俣まさとし
<リレコーディングミキサー>古谷俊幸
<編集>今井剛
<音楽>池頼広
<監督補>中村哲平
<助監督>蔵方政俊、岸塚祐季
<スクリプター>増子さおり、尾和茜
<制作担当>鳥越道昭、阿部史嗣
<原作>かわぐちかいじ「沈黙の艦隊」(講談社) https://kc.kodansha.co.jp/title?code=1000000105
<主題歌>Ado「DIGNITY」(UNIVERSAL MUSIC) https://www.universal-music.co.jp/ado/products/uv1as-01218/
<主題歌楽曲提供>B'z
#沈黙の艦隊 #映画 #かわぐちかいじ #吉野耕平 #大沢たかお #玉木宏 #上戸彩 #ユースケ・サンタマリア #中村倫也 #中村蒼 #橋爪功 #夏川結衣 #江口洋介 #松岡広大 #前原滉 #水川あさみ #手塚とおる #酒向芳 #笹野高史 #岡本多緒 #アレクス・ポーノビッチ #リック・アムスバリー #B'z #Ado #防衛省 #海上自衛隊 #クレデウス #東宝 #Amazonスタジオ

沈黙の艦隊

沈黙の艦隊

  • 出版社/メーカー:
  • 発売日: 2019/10/01
  • メディア: Prime Video






nice!(0)  コメント(0) 
共通テーマ:映画

極私的ドラマランキング(2023/11/23現在) [ドラマ]

【極私的ドラマランキング(2023/11/23現在)】
(1)セクシー田中さん(日本テレビ系)
(2)下剋上球児(TBS系)
(3)夜ドラ ミワさんなりすます(NHK総合)
(4)コタツがない家(日本テレビ系)
(5)ブラックファミリア~新堂家の復讐~(日本テレビ系)
(6)あたりのキッチン!(フジテレビ系)
(7)ゆりあ先生の赤い糸(テレビ朝日系)
(8)東京貧困女子。―貧困なんて他人事だと思ってた―(WOWOWプライム)
(9)ガラパゴス(NHK総合)
(10)ゼイチョー~「払えない」にはワケがある~(日本テレビ系)
#ドラマ #テレビ #ランキング #NHK #日テレ #TBS #フジ #テレ朝 #WOWOW
セクシー田中さん コミック 1-7巻セット

セクシー田中さん コミック 1-7巻セット

  • 作者: 芦原妃名子
  • 出版社/メーカー: 小学館_
  • 発売日: 2023/10/10
  • メディア: コミック






nice!(0)  コメント(0) 
共通テーマ:テレビ

【映画レビュー】「シン・ウルトラマン」(2022 日本) [映画]

【映画レビュー】「シン・ウルトラマン」(2022 日本)
 日本を代表するSF特撮ヒーロー「ウルトラマン」を、「シン・ゴジラ」を手掛けた庵野秀明と樋口真嗣のタッグで製作。「禍威獣(カイジュウ)」と呼ばれる謎の巨大生物が次々と日本に出現する。通常の兵器では対抗できない禍威獣を対すため、政府は「禍威獣特設対策室専従班」、通称「禍特対(カトクタイ)」を設立する。班長の田村君男(西島秀俊)、作戦立案担当官の神永新二(斎藤工)ら禍特対のメンバーが任務にあたるが、ある時、大気圏外から銀色の巨人が出現する。巨人対策のため禍特対には新たに分析官の浅見弘子(長澤まさみ)が配属され、銀色の巨人を「ウルトラマン」と名付ける。そして浅見は神永とバディを組み、現代に現れたカイジュウ、そしてウルトラマンと禍特対の奮闘を描いている。
 日本に現れた9体目のカイジュウ・ザラブ星人は、地球人の持つ技術を操ることができ、友好的な関係を求めてくる。しかし、ザラブ星人は裏でウルトラマンの正体である神永を拉致監禁し、ニセウルトラマンを出現させ、街を破壊させる。ウルトラマンの信用をなくさせ戦争を引き起こし、日本を破滅に追いやろうとする作戦だ。
 ネットでは神永がウルトラマンの正体であるという書き込みで溢れるす。浅見は神永の居場所を特定。そして、変身用のベータカプセルを神永に返すと、神永はウルトラマンに変身し、浅見を襲ったザラブ星人が化けたニセウルトラマンを八つ裂き光輪で倒す。
 その直後に現れたメフィラス星人(山本耕史)が浅見を巨大化させ、街はパニックになる。自身の力を地球人に見せ付け、侵略にかかるメフィラス星人。神永はウルトラマンに変身し、メフィラス星人と対峙するが、ウルトラの星からの使者ゾーフィがやってくると退散する。
 ゾーフィは星の掟を破り人間と融合したウルトラマンに、地球の廃棄処分が決まり最終兵器ゼットンを使用して破壊すると告げる。
 神永という人間と同一化したことによって情が移っていたウルトラマンはこれに反対する。最強の敵ゼットンに挑み、負傷する。そしてウルトラマンである神永が残したメモリから、禍特対のメンバーが対抗できる知識を授ける。
 ウルトラマンの思いに応えた禍特対は人類の英知を集め、ゼットンをマルチバースの別次元へ飛ばす作戦を考え出す。しかし、それはウルトラマンを犠牲にするという作戦でもあった。
 神永は「必ず帰る」と約束し、作戦を実行すべく再びゼットンに挑む。そしてウルトラマンはゼットンと共にマルチバースへ送るブラックホールへと吸い込まれていく。
 マルチバースへ吸い込まれていくウルトラマンを助けに向かうゾーフィ、そしてウルトラマンに問い質す。「そんなに人間を好きになったのか?」
 そしてゾーフィは、ウルトラマンの人間への思いを知る。心を打たれたゾーフィは、ウルトラマンと神永を分離させ、地球へと送り返すのだった。ウルトラマンと分離した神永は、浅見たちに囲まれながら目を覚ます。その神永は、ただの1人の男として蘇ったのだった。
 「シン・ゴジラ」でもそうだったように、政府の対応や、世の中の人々の行動を描きたいがため、どうしてもドラマパートの比重が重くなり、ウルトラマンそのものの描写が少ない点で、少々不満が残る。メフィラス星人やゼットンとの格闘シーンが見どころタップリだっただけに、もったいない印象を与える。
 ウルトラマンが地球人を愛するようになるというストーリーは、初代のハヤタ隊員と同様の設定で、過去作へのオマージュを感じさせるが、ウルトラマンの正体である神永が、なぜそう思い至ったのかの描写が少なく、納得感がない。かつてのハヤタ隊員と神永のキャラクターが違い過ぎているのだ。
 原作ファンである大人の世代には、少なくない違和感を抱かせ、かと言って、子ども向けでもない。非常に美しい作品なのは確かだが、どんな客層を想定して製作したのかが、今一つ見えて来ず、消化不良感が残った。
<評価>★★☆☆☆
<公式サイト>https://shin-ultraman.jp/
<公式X>https://twitter.com/shin_ultraman
<総監修・脚本・企画>庵野秀明
<監督>樋口真嗣
<准監督>尾上克郎
<副監督>轟木一騎
<監督補>摩砂雪
<製作代表>山本英俊
<製作>塚越隆行、市川南、庵野秀明
<共同製作>松岡宏泰、緒方智幸、永竹正幸
<原作監修>隠田雅浩
<エグゼクティブプロデューサー>臼井央、黒澤桂
<プロデューサー>和田倉和利、青木竹彦、西野智也、川島正規
<協力プロデューサー>山内章弘
<ラインプロデューサー>森賢正
<プロダクション統括>會田望
<撮影>市川修、鈴木啓造
<照明>吉角荘介
<録音>田中博信
<整音>山田陽
<美術>林田裕至、佐久嶋依里
<装飾>坂本朗、田口貴久
<スタイリスト>伊賀大介
<ヘアメイク>外丸愛
<デザイン>前田真宏、山下いくと
<VFXスーパーバイザー>佐藤敦紀
<ポストプロダクションスーパーバイザー>上田倫人
<アニメーションスーパーバイザー>熊本周平
<音響効果>野口透
<装置設計>郡司英雄
<VFXプロデューサー>井上浩正、大野昌代
<カラーグレーター>齋藤精二
<編集>栗原洋平、庵野秀明
<音楽>宮内國郎、鷺巣詩郎
<音楽プロデューサー>北原京子
<音楽スーパーバイザー>島居理恵
<キャスティング>杉野剛
<スクリプター>田口良子
<助監督>中山権正
<製作担当>岩谷浩
<主題歌>米津玄師「M八七」(SONY MUSIC) https://reissuerecords.net/M87/
#シンウルトラマン #ウルトラマン #映画 #庵野秀明 #樋口真嗣 #斎藤工 #長澤まさみ #有岡大貴 #早見あかり #田中哲司 #西島秀俊 #山本耕史 #竹野内豊 #高橋一生 #岩松了 #嶋田久作 #益岡徹 #長塚圭史 #山崎一 #和田聰宏 #津田健次郎 #山寺宏一 #堀内正美 #小林勝也 #利重剛 #円谷プロ #特撮 #空想 #SF #リブート #日本アカデミー賞 #東宝







nice!(0)  コメント(0) 
共通テーマ:映画

【映画レビュー】「シン・ゴジラ」(2016 日本) [映画]

【映画レビュー】「シン・ゴジラ」(2016 日本)
 「シン・ゴジラ」は日本版ゴジラとしては12年ぶりの映画化作品で、ゴジラシリーズ第29作目。
 東京湾で水蒸気爆発が起きる。慌ただしく動く日本政府。その原因は海の中に潜むゴジラだった。目的も正体も分からないゴジラに翻弄される日本。そんな中内閣官房副長官を務める矢口蘭堂(長谷川博己)はゴジラに対抗する術を見つける。しかし多国、および国連安保理は核兵器を使い、東京もろとも破壊しようと考える。
 東京湾で漂流する1隻のクルーザーが発見される。内部を調査するが人はおらず折り鶴が置かれている。その直後、海で爆発が起こり東京湾アクアラインのトンネルが崩れるなど被害をもたらしたが原因は分からず日本政府はパニックに陥る。
 内閣官房副長官の矢口はそこに巨大な生物がいる可能性を示唆するも取り入ってもらえず政府の役人達はただひたすら意味のない会議を続ける。
 そんな時、爆発の起こった場所で、巨大な尻尾のようなものが海面から飛び出す。矢口の言っていたことが現実となってしまったことですぐに専門家数名を招集する。 しかし尻尾だけでは何も言えないと話は振り出しに戻ってしまう。その巨大な生物は東京に侵攻を始める。そしてついに上陸しその姿を現す。
 まるで巨大なトカゲのようなその生物は街を破壊しながら進んでいたものの、その目的はその時点では分からない。街の真ん中で突然動きを止めたその生物は這っていた身体を起こし立ち上がる。すると身体に合わない小さな腕をはやすなどまるで進化のようにその姿を変える。
 矢口の元に、米国の要人カヨコ・アン・パタースン(石原さとみ)がやってくる。カヨコと名乗る彼女は今回の騒動の鍵を握るある人物を探してほしいというが、その人物の姿は見つけられない。代わりに彼の残したものと思われるある資料を発見する。そこにはある名前「GODZILLA」が刻まれていた。それはカヨコの研究でも使われていた名前だった。
 「ゴジラ」それはある街では神の化身として崇められている存在。それがあの不明生物の正体だった。とはいえゴジラの謎は深まるばかり。先日、街で姿を変えたと思ったら海に引き返し、また姿を消してしまった。
 矢口はゴジラに対抗するため特別チームを設立。各分野のスペシャリストの人間を集めゴジラの謎を解明しようとする。そんなある日、またゴジラが姿を現す。その姿は先日のものより倍近くに巨大化していた。ついに自衛隊によるゴジラへの攻撃が行われる。ヘリコプターや戦車などでゴジラを撃ち続けるが、傷一つ付けられなかった。
 ゴジラはなおも進撃を続け、東京に迫っていた。そこへ米軍の爆撃機が駆け付け、上空からミサイルを放つ。そのミサイルはゴジラの体を傷つけることができたが、次の瞬間、ゴジラの背びれが紫色に光る。そして口から真っ黒な煙を吐くと同時に街に衝撃波が広がる。その煙は真っ赤な炎に変わり、紫色の細い光線に変わる。ゴジラの口から放たれたその光線は街を破壊し、上空を飛んでいた爆撃機をも破壊する。さらにゴジラは背中からも同じような光線を無数に放ち街は破壊されていく。そして破壊の限りを尽くしたゴジラはエネルギーが切れたのか、眠るように静止する。
 次の日、矢口はチームの半分が消息不明で戻らないことを悔やむ。しかし今こそ彼らが立ち上がり日本を救わなければならなかった。そのためにゴジラを倒す術を確立しなければいけなかった。
 ゴジラを倒すため思いついたのはゴジラを凍結させることだった。そう思った彼らだったが、まだゴジラそのものの解明には至らず時間を要していた。しかしゴジラが動き出すまであまり時間はない。それはもはや日本だけの問題でもなくなっていた。
 多国籍軍による東京での核攻撃によるゴジラ破壊が、国連安保理の場で決議される。その頃にはゴジラの身体の謎は解明されつつあり、後はゴジラ凍結のための血液凝固薬を作るだけだった。そこで矢口を信じる彼の仲間の数人により核攻撃までの時間を稼ぐことにする。
 その間に矢口らはゴジラ凍結のための薬の確保を急ぐ。そしてそれはぎりぎりの所で間に合い矢口の指揮のもとゴジラ凍結の「ヤシオリ作戦」が決行される。作戦は危険なものだった。ゴジラの本能で近くを飛ぶ物は全て撃墜されてしまう、よってゴジラに薬を投与するには近くまで車で行くしかない。そのための足止め作戦をすることになる。
 それは日本の力を全て発揮しなければならなかった。まず無人戦闘機のミサイルによりゴジラのエネルギーを使い果たさせる、次に無人の新幹線をゴジラに衝突させる。さらにビルを破壊しゴジラにぶつけたり、無人の電車をいくつもぶつけることによりゴジラを転倒させることに成功する。倒れたゴジラの口に血液凝固剤を注ぎ込むことに成功する。2度に渡る作戦によりついにゴジラの身体を凍結させ、ヤシオリ作戦は成功。日本は救われる。
 しかし次に矢口らがしなければいけないのは破壊されたこの東京の復興だった。そしてそれはゴジラの凍結された体と共に暮らしていくことになる。矢口は既に未来に目を向けていた。ラストシーン、ゴジラの尻尾には人間の体が浮き上がっていた…。
 怪獣映画でありながら、そこに政府の動きを中心に描写することで、よりリアリティーのある“政治ドラマ”の側面もある本作。さすが庵野秀明といった切り口だ。
 その反面、自衛隊にも手に負えないゴジラが、主人公な考えた作戦によって、アッサリと倒されてしまう点にはご都合主義が見え隠れし、前半に見せていたゴジラの圧倒的強さを半減させてしまってもいる。
 おそらく1作目から見ているような筋金入りのゴジラファンからは受け入れられないのではないだろうか。だからこそ、「シン・ゴジラ」と銘打っているのだ。単なる怪獣映画から脱却した、社会背景をも映し出す、新たなゴジラ像を示したといえる。
 そして、そのテイストは最新作「ゴジラ-1.0」にも受け継がれているともいえる。
<評価>★★★☆☆
<公式サイト>http://shin-godzilla.jp/
<公式X>https://twitter.com/godzilla_jp
<公式Facebook>https://www.facebook.com/godzilla.jp
<総監督・脚本>庵野秀明
<監督・特技監督>樋口真嗣
<准監督・特技統括>尾上克郎
<製作>市川南
<エグゼクティブプロデューサー>山内章弘
<プロデューサー>佐藤善宏、澁澤匡哉、和田倉和利
<プロダクション統括>佐藤毅
<ラインプロデューサー>森徹、森賢正
<撮影>山田康介
<照明>川邉隆之
<美術>林田裕至、佐久嶋依里
<美術デザイン>稲付正人
<装飾>坂本朗、高橋俊秋
<録音>中村淳
<整音>山田陽
<音響効果>野口透
<編集>佐藤敦紀
<音楽>鷺巣詩郎、伊福部昭
<VFXスーパーバイザー>佐藤敦紀
<VFXプロデューサー>大屋哲男
<扮装統括>柘植伊佐夫
<スタイリスト>前田勇弥
<ヘアメイク>須田理恵
<ゴジライメージデザイン>前田真宏
<ゴジラキャラクターデザイン>竹谷隆之
<ゴジラアニメーションスーパーバイザー>佐藤篤司
<特殊造形プロデューサー>西村喜廣
<カラーグレーダー>齋藤精二
<音楽プロデューサー>北原京子
<スクリプター>田口良子、河島順子
<キャスティングプロデューサー>杉野剛、南明日香
<総監督助手>轟木一騎
<助監督>足立公良
<自衛隊担当>岩谷浩
<製作担当>片平大輔
<撮影>鈴木啓造、桜井景一
<B班照明>小笠原篤志
<B班美術>三池敏夫
<B班操演>関山和昭
<B班スクリプター>増子さおり
<B班助監督>中山権正
<C班監督>石田雄介
<C班助監督>市原直
<D班撮影・録音・監督>摩砂雪 轟木一騎 庵野秀明
#シンゴジラ #ゴジラ #映画 #庵野秀明 #樋口真嗣 #長谷川博己 #竹野内豊 #石原さとみ #高良健吾 #大杉漣 #柄本明 #余貴美子 #市川実日子 #國村隼 #平泉成 #松尾諭 #高橋一生 #光石研 #古田新太 #松尾スズキ #鶴見辰吾 #ピエール瀧 #片桐はいり #小出恵介 #斎藤工 #前田敦子 #岡本喜八 #野村萬斎 #嶋田久作 #手塚とおる #野間口徹 #三浦貴大 #渡辺哲 #中村育二 #矢島健一 #津田寛治 #塚本晋也 #浜田晃 #黒田大輔 #吉田ウーロン太 #橋本じゅん #小林隆 #諏訪太朗 #藤木孝 #神尾佑 #モロ師岡 #犬童一心 #原一男 #緒方明 #KREVA #石垣佑磨 #森廉 #日本アカデミー賞 #自衛隊 #怪獣 #特撮 #東宝

シン・ゴジラ 巨災対 ツールボックス

シン・ゴジラ 巨災対 ツールボックス

  • 出版社/メーカー: グルーヴガレージ
  • 発売日: 2016/12/23
  • メディア: おもちゃ&ホビー






nice!(0)  コメント(0) 
共通テーマ:映画

【映画レビュー】「七人の秘書 THE MOVIE」(2022 日本) [映画]

【映画レビュー】「七人の秘書 THE MOVIE」(2022 日本)
 2020年10月期に放送され、最高視聴率16.7%を記録。本編終了後も、スペシャルドラマやスピンオフ版が製作されたテレビ朝日のドラマ「7人の秘書」の劇場版。 ドラマ版に登場した7人の秘書、七菜(広瀬アリス)、望月千代(木村文乃)、長谷不二子(菜々緒)、パク・サラン(シム・ウンギョン)、風間三和(大島優子)、鰐淵五月(室井滋)、萬敬太郎(江口洋介)が再結集し、新たな敵であり、北アルプスを根城とする豪族「九十九一族」との対決を描いている。
 七菜が牧場を経営する九十九家の御曹司・二郎(濱田岳)と結婚することになり、千代は結婚式へと向かうが、新郎が現れない。
 そんな中、牧場が爆破され、市長の遺体が発見されます。二郎は行方不明のままで、牧場の経営難から保険金目当ての二郎の犯行が疑われる。
 七菜は二郎を探すが、ある日、千代を山道で道案内してくれた緒方航一(玉木宏)と牧場の子どもたちを連れ、七菜が萬のラーメン屋「味噌いち」にやってくる。緒方は二郎を探し子どもたちを助けるため依頼にやってきたと話す。
 一族を仕切るドンは九十九道山(笑福亭鶴瓶)。道山は牧場跡地をリゾート開発する腹積もりだった。身辺が一気にきな臭くなり、不二子と三和は秘書として、五月は家政婦として九十九家に潜入する。そこに緒方と七菜も現れる。二郎と婚約した自分にも意見する権利があると考え、リゾート開発に反対する。
 道山はその案を鼻で笑い、養女で道山の顧問弁護士でもある美都子(吉瀬美智子)を使って、七菜を説得するよう命じる。美都子は七菜に3000万円を渡し、この件から手を引くよう命じる。
 しかしその後、七菜は姿を消してしまう。お金と共に消えた七菜に、他のメンバーは動揺するが、牧場の従業員が道山によって過酷な労働を強いられていることを知り、「懲らしめてやりましょう」と道山を引きずり下ろすことを決める。
 メンバーは、道山が官僚などに根回しをしつつリゾート開発を進めていることを知り、その証拠を公の場で暴露する計画を立てる。しかし、道山は白々しく、信州の発展のためだと言う。そこに、行方不明だた二郎と七菜が現れる。
 二郎は道山に命を狙われ、七菜もまた暴行を受けていましたことが発覚する。立場の悪くなった道山は逃げ出す。不二子らがスノーモービルで追うが、そこで見つけた道山は影武者だった。道山は牛小屋で事態が落ち着くのを待っていたのだが、七菜が仕込んでいた発信機で居場所がバレてしまい、ついには観念する。
 道山の失脚により、息子の1人である五郎丸(川原瑛都)が動揺のあまり蝋燭を倒してしまう。火は燃え移り、屋敷は火に包まれる。九十九家に絶望し、このまま死のうと考えた美都子を萬が助ける。千代は何かを探している緒方を追い、火の中へと向かう。
 緒方が探していたのは、九十九家に代々伝わるブルーゴールドの地図だった。千代は緒方もまた自らの欲のために周囲を利用していたことを知り、ショックを受ける。しかし、千代と緒方は燃え盛る屋敷を抜け出す。
 緒方は千代に、愛の告白をし、中東に行く自分についてきて欲しいと懇願するが、千代はそれを断り、泣きながら去っていく。
 最後、萬が東京で開いたラーメン屋に秘書たちが集まる。3000万円は二郎に渡ったようだ。結局、何の収穫もなかったと、秘書たちはため息をつくのだった。
 テレビドラマ版よりスケールアップしているのは確かであり、鶴瓶の“ラスボス感”もハマっており、アクションシーンやド派手な火災シーンも取り入れるなど、何とか劇場版に沿う工夫は読み取れた。
 しかしながら、本作はやはり“スペシャルドラマ”の延長線上にしか感じられないのだ。観終わって、「これ、映画化する必要があったのか?」という印象は拭えなかった。
 どうもテレビ朝日は、人気ドラマの映画化が不得手なのではないか。ドラマの劇場版を数多くヒットさせ、映画事業に成功している日テレやフジテレビとは対照的だ。実際、興行収入は7億円にも届かなかった。
 そもそも、ドラマ製作については、他のキー局に後れを取っているテレ朝。豪華キャストのお陰で当たったドラマを安直な考えで映画化したとしか思えない出来栄えだった。
<評価>★☆☆☆☆
<公式サイト>https://7-hisho-movie.jp/
<公式X>https://twitter.com/7_hisho_tvasahi
<公式Instagram>https://www.instagram.com/7_hisho_tvasahi/
<監督>田村直己
<脚本>中園ミホ
<製作総指揮>早河洋
<製作>西新、市川南、野村英章、今村俊昭、藤川克平、飯田雅裕、田中祐介、渡辺章仁、伊藤貴宣、寺内達郎、平城隆司、森君夫
<エグゼクティブプロデューサー>内山聖子
<プロデューサー>大江達樹、浜田壮瑛、峰島あゆみ、村上弓、遠藤光貴、大垣一穂、角田正子
<撮影>五木田智
<映像>服部正邦
<照明>花岡正光
<録音>福部博国
<美術プロデューサー>根古屋史彦
<美術制作>木村正宏
<デザイン>秋元博
<装飾>春藤雄
<スタイリスト>西ゆり子
<スタイリスト(江口洋介)>Babymix
<衣装>斧木妙恵
<ヘアメイク>若林幸子
<VFXスーパーバイザー>道木伸隆
<編集>河村信二
<音響効果>木村実玖子
<選曲>藤村義孝
<音楽>沢田完
<音楽プロデューサー>野口智
<助監督>高橋貴司
<スクリプター>岩井茂美
<アクションコーディネーター>和田三四郎
<ラインプロデューサー>田中敏雄
<制作担当>町田虎睦
<主題歌>milet「Final Call」(Sony Music) https://www.sonymusic.co.jp/artist/milet_music/discography/SECL-2910
#七人の秘書 #映画 #劇場版 #中園ミホ #田村直己 #木村文乃 #広瀬アリス #菜々緒 #シム・ウンギョン #大島優子 #室井滋 #江口洋介 #玉木宏 #濱田岳 #吉瀬美智子 #笑福亭鶴瓶 #内村遥 #岐洲匠 #川原瑛都 #秘書 #ドラマ #milet #仕返し屋 #エージェント #テレ朝 #東宝







nice!(0)  コメント(0) 
共通テーマ:映画

【映画レビュー】「愛なのに」(2022 日本) [映画]

【映画レビュー】「愛なのに」(2022 日本)
 今泉力哉と城定秀夫が互いに脚本を持ち寄りR15+指定のラブストーリーを製作するコラボ企画「L/R15」の1本として製作されたラブコメディー。
 30歳独身で古本屋の店主・多田浩司(瀬戸康史)、多田に突然求婚する女子高生・矢野岬(河合優実)。店主が片思いしているものの、婚約者のいる女性・佐伯一花(さとうほなみ)、さらには一花の婚約者でありながら、結婚式の準備を一花に任せきりにし、ウェディングプランナーの隈本美樹(向里祐香)と浮気をしている亮介(中島歩)が、それぞれの感情や愛情表現を描いている。
 物語は、多田の店で岬が本を万引きし、走り去る場面から始まる。当然、多田は岬を追いかけるが、途中で息が上がってしまう。岬は、追いかけて来ない多田を振り返り、自動販売機で水を買って多田に手渡した後、再び逃げようとする。
 岬は多田と一緒に店に戻り、「二度と万引きはしない」との誓約書を書かせる。多田は「もうこんなことしないよね?」念押しするが、岬は「電話番号も書きますか?」と聞く。
 多田は名前だけでいいと答えたが、岬は携帯番号を書き、突然、「多田浩司さんが好きで、この店に通っていました。名前を覚えてほしくて」と、万引きした理由を話した後、多田に「結婚して下さい」と告白する。
 唐突な求婚に多田は戸惑い、「それは難しい」とだけ答え、岬が万引きしようとした本を「あげるよ」と渡して帰らせる。
 岬はその後も再三、多田の店に通い、結婚を求めるラブレターを多田に手渡し続ける。
 岬は、多田が自分の申し出を断る理由が、歳の差にあると知ると「高校卒業まで待ちます」と言うが、多田は「好きな人がいる」と告げ、何とか振ろうと試みる。
 実際、多田には忘れられない人がいた。かつてのバイト仲間だった佐伯一花だ。告白して振られた多田は「俺はずっと好きだから」「いつでも気軽に連絡して」というラインを残し、その返事はもらえないままになっていた。
 多田が岬からラブレターをもらうことが日常的になったある日、親友から、一花が結婚することを知らされる。一花は結婚式の準備に忙しかった。婚約者の亮介は仕事を理由に、準備を一花に任せきりだからだ。
 一花は気付いていなかったが、亮介はウェディングプランナーの美樹と関係を持っていたが、美樹は「本気にならない」「結婚したら合わない」割り切った関係だった。
 岬は、同級生の正雄(丈太郎)から告白され断ったが、次の日、正雄は花を持って岬を待っていた。
多田はそれを聞いて動揺する。
 岬を諦められない正雄は岬に、岬の好きな人である多田に会いたいと懇願する。岬は、多田に迷惑をかけないことを条件に、正雄を多田の店に連れて行く。
 正雄に、岬をどう思っているのかと聞かれた多田は「素敵な人だと思いますよ」と答えるが、そんな多田に対し正雄は多田を殴ってしまう。
 その後、岬は正雄と付き合ってみることにしたと多田に告げる。岬が「これで最後にするから、返事が欲しい」と言って多田に渡したラブレターは白紙だった。
 一花は亮介のポケットからラブホテルのライターを見つけ、亮介に相手は誰なのかと詰問する。亮介は、前の職場で自分に片思いをしていた女の子だと嘘をつく。
 一花は、仕返しに「同じことをする」と亮介に宣言、多田に連絡をし、ホテルに呼び出す。
 多田は「こういうことは良くない」と誘いを肉体関係を断ろうとするが、一花は「だったら他の人に頼む」と言うので、多田は「最悪だ」と言いながらも関係を持つことになる。
 一花は男性経験が2人と少なく、亮介以外の男とのセックスを比較したことがなかったが、多田と寝たことで、亮介のセックスが下手だと気付く。
 一花は多田の自宅を訪れ、セックスをせがみ、多田もそれに応じる。行為の後、一花は「婚約者以外の男性とのセックスに快感を覚えたと神父に懺悔したら、神父は『御心に従いなさい』と言ったから、自分の心のままに、多田とセックスをしていいのだ」と話す。
 しかし多田は「御心」は「神の心」のことで、不貞行為は許されないと話す。
 亮介は美樹に不倫関係の清算を切り出す。その際、美樹は亮介に「群を抜いて(セックスが)下手」と言い放ったことで、亮介は愕然とする。
 それもそのはず、美樹は学生時代から学費を稼ぐために風俗で働いていたのだ。
 プライドを傷つけられた亮介は「どうやったら上手くなれますかね」と聞き、美樹は「風俗に通ってみれば」とアドバイスする。
 一方その頃、一花は結婚後も多田との関係を続けたいと言い出す。多田は自分との関係も結婚もやめたほうがいいと話し、一花の相手は自分でも亮介でもないと語る。
 その後、多田はやっと岬にラブレターの返事を書く。岬は希望の持てるその手紙の内容に喜び、多田に「絶対結婚しようね」と告げる。
 多田の元に、一花から結婚式の招待状が送られてくる。一花は予定通り亮介と結婚することにしたのだ。その後、多田のアパートには岬の両親が押しかけてくる。
 岬の両親は、岬の鞄を勝手に開けて手紙を読んでいたのだ。淫行だと騒ぎ立て、警察に通報すると脅し、多田を罵る岬の両親。対して多田は「愛を否定するな」と怒りを露わにし、父親を殴り、警察沙汰になってしまう。しかし、取り調べでも、多田は自説を曲げることはなかった。
 その後、岬は変わらず、多田の店を訪れては一緒に過ごす。一花の披露宴に出席した友人の広重(毎熊克哉)が多田を訪れ、引き出物を渡す。広重は多田に岬のことを尋ねると、岬は「ただの常連客です」と、「只の常連」とも「多田の常連」とも取れる言葉を語る。
 引き出物の中身は夫婦茶碗だった。多田は赤い茶碗を岬にプレゼントするのだった。
 登場人物のそれぞれがコンプレックスを抱えながら生きている様を、瀬戸康史をはじめとするキャスト陣がコミカルに演じていて、テンポもいい。
 リアルなセックスシーンがあるためR15+指定となっているが、本作の見どころはそこではなく、若者たちの会話劇にある。それがとても自然なのだ。
 本当はドロドロな関係のハズなのに、全くそれを感じさせない。多田を罵る品格のかけらもない岬の両親を看破するシーンには快哉を叫んだ。
 その行動・言動はともかく、最も人間味があって優しいのは主人公の多田だったと感じさせるラストシーンも、さすがの脚本、そして演技だった。
<評価>★★★★☆
<公式サイト>https://lr15-movie.com/ainanoni/
<公式X>https://twitter.com/Lr15Movie
<公式NOTE>https://note.com/fair_nerine35/
<監督・編集>城定秀夫
<脚本>今泉力哉、城定秀夫
<エグゼクティブプロデューサー>佐藤現
<プロデューサー>久保和明
<企画>直井卓俊
<撮影>渡邊雅紀
<照明>小川大介
<録音>松島匡
<美術>禪洲幸久
<スタイリスト>小宮山芽以
<ヘアメイク>唐澤知子
<助監督>山口雄也
<スチール>柴崎まどか
<キャスティング>伊藤尚哉
<宣伝美術>寺澤圭太郎
<主題歌>みらん「低い飛行機」(HOLIDAY! RECORDS) https://holiday2014.thebase.in/items/58367161
#愛なのに #映画 #今泉力哉 #城定秀夫 #瀬戸康史 #さとうほなみ #河合優実 #中島歩 #向里祐香 #丈太郎 #毎熊克哉 #みらん #L/R15 #R15+ #スポッテッド

「愛なのに」「猫は逃げた」L/R15コンプリートBlu-ray

「愛なのに」「猫は逃げた」L/R15コンプリートBlu-ray

  • 出版社/メーカー: TOEI COMPANY,LTD.(TOE)(D)
  • 発売日: 2022/08/03
  • メディア: Blu-ray






nice!(0)  コメント(0) 
共通テーマ:映画