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【映画レビュー】「渇水」(2023 日本) [映画]

【映画レビュー】「渇水」(2023 日本)
 停水執行を仕事としている水道職員・岩切俊作(生田斗真)は、後輩の木田拓次(磯村勇斗)とともに、料金を滞納している家庭を回り、料金徴収、支払わない者には水道を停止する「停水執行」の業務に就いている。日照り続きで給水制限される酷暑の夏、市内に給水制限が発令される中、貧しい家庭を訪問しては忌み嫌われる日々だ。妻・和美(尾野真千子)や子とも別居し、心の渇きは強くなるばかり。そんな中、小出有希(門脇麦)によってネグレクトされている姉妹の恵子(山崎七海)、久美子(柚穂)と出会う。その姉妹を自分の子どもと重ね合わせ、救いの手を差し伸べる。
 日照り続きの夏、給水制限が発令される中、貧しい家庭を訪問しては忌み嫌われ、公私両面で多大なストレスを感じながらも、自身の家庭問題とも向き合う仲で、前に進んでいく姿を描いている。貧困などの社会問題をダイレクトに表現しているが、本作は、1990年に文學界新人賞を受賞した、元市役所職員の作家・河林満が、自身の経験を基にした小説が原作となっている。
 1990年といえばバブル真っ盛りだ。本作は現代にマッチするように、多少の改変がなされているだろが、バブル期にこのようなストーリーを描くなど、あたかも未来を予見していたかのようで驚かされる。
 水道料金を払わない者の言い分は人それぞれ。「水なんかタダだろ」と開き直るろくでなし、単に怠慢な者、本当にお金がない者…。中でも有希は、パパ活も上手くいかずに万引きにまで手を染めるまでに追い込まれていた。2人の娘も、他人の家のベランダから水を汲もうとし、怒鳴られる有り様だ。恵子が万引きで捕まりそうなところを救った俊作は、自身の独断で小出家の水栓を開ける。さらに俊作は、恵子と久美子を連れて公園に向かい、憑りつかれたように、水遊びに興じる。
 同僚達に取り押さえられ、警察に連行されるその時、恵みの雨が降り出す。俊作は退職届を出すよう強要され、それに従う。唯一、信頼できる後輩だった木田は寂しがるが、俊作は水道局を後にする。恵子と久美子の動向を気にする俊作だが、個人情報として教えてはもらえなかった。
 その頃、恵子と久美子は、児童養護施設に入ることになり、町を離れていた。2人は、世話になった俊作に絵を残し、俊作もその絵を自室に飾る。
 物語の最後、俊作の携帯が鳴る。相手は、別居していた息子の崇で、「お父さんと海に行きたい!」というのだった。
 生田斗真はじめ、名キャストが揃う中、彼らを食う活躍ぶりを見せたのが、2人の子役といっていいだろう。もちろん、生田斗真が演じる俊作の人格が崩壊していく様、シングルマザーの有希を演じる門脇麦のやさぐれっぷりも見どころの一つだ。
 一見、シンプルなストーリーだが、そこに登場する人物像は多種多様で、各々のキャストがそれを表現している。原作本では、恵子と久美子の姉妹が自殺するという結末らしいが、本作では希望の持てるラストシーンで救われるものとなった。
<評価>★★★★☆
<公式サイト>https://movies.kadokawa.co.jp/kassui/
<公式X>https://twitter.com/kassui_movie
<公式Instagram>https://www.instagram.com/kassui_movie/
<監督>高橋正弥
<脚本>及川章太郎
<企画プロデュース>白石和彌
<製作>堀内大示、藤島ジュリーK.、徳原重之、鈴木仁行、五十嵐淳之
<企画>椿宜和
<プロデューサー>長谷川晴彦、田坂公章
<ラインプロデューサー>原田耕治
<撮影>袴田竜太郎
<照明>中須岳士、小迫智詩
<録音>石貝洋
<整音>劉逸筠
<美術>中澤正英
<スタイリスト>清藤美香
<ヘアメイク(生田斗真)>酒井啓介
<ヘアメイク>渡辺順子
<編集>栗谷川純
<音楽>向井秀徳
<助監督>山下久義
<キャスティング>田端利江
<カラリスト>高山春彦
<企画協力>佐久田修志
<制作担当>土田守洋
<原作>河林満「渇水」(角川書店) https://www.kadokawa.co.jp/product/322107000437/
<主題歌>向井秀徳「渇水」
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渇水 (角川文庫)

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  • 出版社/メーカー: KADOKAWA
  • 発売日: 2023/04/24
  • メディア: Kindle版






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