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【映画レビュー】「かぞくのくに」(2012 日本) [映画]

【映画レビュー】「かぞくのくに」(2012 日本)
 本作はフィクション作品ではあるが、在日コリアン2世のヤンヨンヒ監督が自身の経験を基にした実話ベースのストーリーだ。
 25年前、在日コリアン2世のソンホ(井浦新)は、“地上の楽園”という謳い文句に騙され、北朝鮮の帰国事業に参加し、単身、海を渡る。しかし25年間もの間、ソンホは家族の住む日本に、帰国することは許されなかった。
 しかしソンホは、脳腫瘍の治療を理由に、特例措置として一時帰国を許可される。25年ぶりの帰国に父(津嘉山正種)と母(宮崎美子)、そして、妹のリエ(安藤サクラ)は温かく迎え、久しぶりの家族団らんの時間を過ごす。
 旧友と飲み会を開いたソンホとリエ。25年間、何があったのかと、旧友でバイセクシャルのチョリ(省吾)が質問攻めにするが、監視役の男・ヤン(ヤン・イクチュン)が付きまとい、久しぶりの旧友との再会でも、ソンホは、何も話すことはできない。北朝鮮の真実を明かしてしまうと、すぐに罰則となるからだ。北朝鮮の市民の真の姿は、栄養失調者が続出するほどの困窮していた。
 ソンホがリエと歩いていると、街のカバン屋に入る。そこで見つけた銀色のスーツケースをリエに勧めるが、あまりにも高額なことに驚き、すぐに外に出てしまう。
 ある夜、ソンホは上の指示で、リエを工作員に勧誘する。リエは激昂し、ヤンに八つ当たりする。そして、脳腫瘍の治療も3か月という時間はあまりにも短すぎた。そして突然、ソンホの帰国が決定する。ソンホの家族は怒るが、ソンホは覚悟していたかのように、独り冷静だった。北朝鮮の決定に反発するリエをなだめ「自由に生きることを大切に」と説くと、ソンホは、リエが差し出した手を払いのけて北朝鮮へ戻る。リエは、兄が勧めてくれたスーツケースを持ち、兄が叶えられなかった自由に生きることを実現していくという物語だ。
 今なお、北朝鮮で暮らす家族を思うヤン・ヨンヒ監督が、在日朝鮮人を取り巻く真実を描いた作品であり、限りなく、ノンフィクションに近い印象の本作。
 すっかり洗脳され、考えることも語ることも諦めたかのように感情を押し殺したソンホを井浦新が好演している。さらにその家族を演じる安藤サクラ、津嘉山正種、宮崎美子といったキャストも同様だ。
 ヨンヒ監督が伝えたかったことは十分に伝わってくる。しかし本作は、一家族の出来事だけを切り取って「北朝鮮=悪」というイメージを刷り込むために作った作品だ。脳腫瘍の身でありながら、ソンホがリエをスパイに勧誘するシーンなどは恣意的に作られたエピソードとも感じる。
 そもそも、自らの意思で北朝鮮に渡り、四半世紀にも渡り音信不通だった人物を“家族”といえるのだろうか。例え血の繋がりがあったとしても、もはや思考回路は相容れないものとなったソンホは、既に家族の一員ではないといえるのではないのか。しかも、リエにとって、ソンホを別れ別れとなったのは幼少期だ。両親ならともかく、リエがここまでソンホに関わろうとするのは、逆に違和感を感じざるを得ない。
 リアリティに拘泥する余り、テンポもイマイチで、物語への没入感も少ない。ヨンヒ監督やその家族には同情するが、それ以上の感情を揺さぶられることはなかった。
<評価>★★☆☆☆
<監督・原案・脚本>ヤンヨンヒ
<企画・製作総指揮>河村光庸
<製作>佐藤順子、越川道夫
<撮影>戸田義久
<照明>山本浩資
<音響>菊池信之
<美術>丸尾知行
<装飾>藤田徹
<衣装>宮本まさ江
<編集>菊井貴繁
<音楽>岩代太郎
<原作>ヤンヨンヒ「兄 かぞくのくに」(小学館) https://www.shogakukan.co.jp/books/09408833
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