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【映画レビュー】「ゴッドマザー」(原題「La daronne」/英題「Mama Weed」/2020 フランス) [映画]

【映画レビュー】「ゴッドマザー」(原題「La daronne」/英題「Mama Weed」/2020 フランス)
 2020年にラルプデュエズ映画祭でワールドプレミア上映され、フランスでは2020年9月9日に公開。日本では、「フランス映画祭2020横浜」で上映された犯罪コメディ作品。
 ペイシェンス・ポルトフォ(イザベル・ユペール)は、フランス警察署の麻薬対策課に属するアラビア語の通訳。一方で私生活は、バツイチ子持ちで、元夫の借金を肩代わりし、母親(リリアン・ロベール)は高額な介護施設に預けており、とても余裕があるとはいえない生活状況だ。
 アラブ系の麻薬売人の取り締まりを補助する仕事なのだが、ある日、刑事のフィリップ(イポリット・ジラルド)が追う麻薬売人の1人が、母親の世話をしてくれている介護士の息子だと知り、彼を助けることを決意する。そして、ひょんな事から1トン以上もある押収した麻薬を奪い、内部情報と警察のリソースを利用して独自のネットワークを築き、売りさばく売人「ママ・ウィード」となる。しかし、そのせいで今度は麻薬組織から追われるハメになってしまう。
 ストーリー的はサスペンスともいえるものだが、ユペールをはじめ、キャスト陣のかなりコメディに寄った演技によって、肩の力が抜けた痛快な作品となっている。
 数々の賞に輝き、カンヌ国際映画祭では審査委員長まで務めるほどの大物であるイザベル・ユペールの軽妙な芝居によって、生きるか死ぬかの密売組織との対決もポップに描かれている。
 いい意味で、フランス映画っぽくないハイテンポの作品で、結末までアッという間だが、本作に関しては、それほど深みが要求されるわけでもなく、70歳を迎えようとしているユペールが麻薬組織や警察から追われ、疾走するなど、衰えを全く感じさせない姿も見せ、健在ぶりを示した形だ。
<評価>★★★☆☆
<監督>ジャン=ポール・サロメ
<原作>アンヌロール・ケール
<脚本>ジャン=ポール・サロメ、アンヌロール・ケール
<製作>クリスティナ・ラルサン、ジャン=バティスト・デュポン
<撮影>ジュリアン・ハーシュ
<音楽>ブリュノ・クーレ
<インターネットムービーデータベース>https://www.imdb.com/title/tt9288726/
#ゴッドマザー #映画 #ジャン=ポール・サロメ #アンヌロール・ケール #イザベル・ユペール #イポリット・ジラルド #ヤン・サンベール #コメディ #サスペンス #警察 #麻薬 #通訳 #フランス #映画祭 #ル・パクテ

グレタ GRETA(字幕版)

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  • 出版社/メーカー:
  • 発売日: 2020/09/02
  • メディア: Prime Video






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極私的ドラマランキング(2023/2/13現在) [ドラマ]

【極私的ドラマランキング(2023/2/13現在)】

(1)闇バイト家族(テレビ東京系)
(2)正直不動産2(NHK総合)
(3)不適切にもほどがある!(TBS系)
(4)仮想儀礼(NHK BS)
(5)グレイトギフト(テレビ朝日系)
(6)離婚しない男―サレ夫と悪嫁の騙し愛―(テレビ朝日系)
(7)消せない「私」―復讐の連鎖―(日本テレビ系)
(8)夫を社会的に抹殺する5つの方法 Season2(テレビ東京系)
(9)春になったら(フジテレビ系)
(10)となりのナースエイド(日本テレビ系)
#ドラマ #テレビ #ランキング #NHK #日テレ #TBS #フジ #テレ朝

正直不動産 DVDBOX

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  • 出版社/メーカー: NHKエンタープライズ
  • 発売日: 2022/10/21
  • メディア: DVD






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【映画レビュー】「その鼓動に耳をあてよ」(2024 日本) [映画]

【映画レビュー】「その鼓動に耳をあてよ」(2024 日本)
 本作は、愛知県名古屋市中村区、名古屋港近くにある名古屋掖済会(えきさいかい)病院の救命救急センターの内部を追ったドキュメンタリー作品だ。
 この病院は1948年に開院。開院当初から救急医療に注力し、1978年には交通事故や工場での事故による救急患者に対応するため、東海地方で初めての救命救急センター(ER)を開設。現在、診療科36科、病床数602床を有し、救急車の受け入れ台数は年間1万台と、愛知県内随一の規模を誇る。
 救急医15人、看護師・救命士30人が在籍し、開院当時からの信念である「断らない救急」を掲げ、24時間365日、動き続けており、他院から受け入れを断られた救急患者も受け入れる“最後の砦”だ。
 この病院には様々な患者が訪れる。ある日は耳に異物が入った女の子、飛び降り自殺を図った男性、精神薬をオーバードーズしたことにより意識を失った女性など次から次へと運び込まれ、患者を区別することなく、全ての初期診療を行っている。
 ストーリーは、36歳の救急医・蜂矢康二を中心に展開する。蜂矢は、名古屋大学工学部で情報工学を学んでいたが中退し、岐阜大学医学部へ入り直し、医者となった変わった経歴を持つ。遠回りした分、狭く深く診る特定の診療科ではなく、どんな患者でも診られるようになりたいと救急医を志望したという。
 そんな蜂矢だからこそ、症状の程度によって患者を選別するといった考え方は皆無だ。「肺ガンの人が肺炎で亡くなるのと、精神疾患の人が自殺をしてしまうのは、そんなに変わらない。肺ガンの人は助けるのに精神疾患の自殺を助けないというのはありえない」とも語る。
 そんな病院だからこその問題も抱える。会計せずに病院から逃げてしまう不届き者、無保険者で支払い能力のない者も運び込まれてくる。ファイルには、支払いの済んでいない大量の未払い請求書がビッシリと綴じ込んである。そのファイルを手に、救急科センター長の北川喜己は思わずボヤキを漏らす。
 そんな環境でも生き生きと働く研修医がいる。櫻木佑という若者だ。研修医は専修する科を決める前に2年間、様々な科を回る。「人気があるのは内科系。救急科は全然人気ないですよ」と蜂矢は話す。金銭面で問題のある患者にも対応しなければならない上に、助からずに絶命していく患者を目にすることも少なくないからだ。蜂矢からも「救急をやろうって人は珍しい、変わっている」と言われていたという。
 ドラマで登場するような医師に憧れて医者を目指した櫻木は救急科を好きだという。「安直かもしれないけど」と笑いながら「全身診られるし、単なる風邪から、足に釘が刺さったケガ、中には重症患者もいる。幅広く診られるのが楽しい」と語る。ドングリを鼻に詰めて取れなくなってしまった男の子が搬送されてきても、平常心で処置する姿は頼もしく映る。
 朝も夜もなく絶え間なく救急車がやってくる。「他の病院が断るので、ここで受けざるをえない」と夜勤明けの蜂矢が言う。「この地域から掖済会がなくなったら?どこかに第二の掖済会ができるんじゃないですか。そこが頑張る。さすがにやばいと思います。年間1万台どこに行くんですか?」。蜂矢は救急医療の現実を吐露しつつ、束の間の帰宅の途に就く。
 新型コロナで1か月もの間、意識不明で入院していた女性が、退院後の診察に訪れる。「必ず歩いて帰らせますと言われたので救われた」と女性は打ち明ける。肺にダメージは残ったものの、しっかり歩いて帰宅する彼女を見て治療にあたっていた医療チームは感慨深げだ。
 全国で救急搬送される高齢者の数は1982年の37万人から2021年には340万人と激増している。ある日運ばれてきたのは食べ物や飲み物が摂れなくなってしまった高齢者。認知症で寝たきりだったという。家族の強い希望で救急車が呼ばれたというが、蜂矢曰く「認知症で寝たきりでご飯が食べられなくなる……医学的には自然な経過なんですけど、納得されない家族は結構いる」。長年連れ添った老夫婦の突然の、しかしひっそりとした別れに付き添うこともある。
 蜂矢と櫻木が初めてお酒を交えて語り合う。蜂矢が櫻木の進路を尋ねると、櫻木は「救急科以外考えられない」と語る。浪人生時代、駅で倒れた男性を見つけ119番通報した経験のある櫻木。当時、「こういう時に対応できる医者ってかっこいい」と救急医療に抱いた憧れを語る。
 蜂矢は「究極の社会奉仕じゃない?」と笑うが、「救急の“なんでも診る”とは、年齢と病気の“なんでも”を診るという意味だと思っていたら、社会的な問題の“なんでも”まで含まれている」と語る。
 一方、救急医学の学会に出席した北川が、救急病院の減少と経営悪化、救急医の不足と労働時間の問題が議題に上げる。
 北川は「救急医は専門医より少し立場が下に見られる」と話す。「救急医は初期対応だけして各科に振り分けているだけ」「忙しいところに患者を押し付けてくる」と考える専門医もいると訴える。
「専門医と救急医との立場が平等になることが願いです。ずっとそれを目指しているが、なかなか難しい」と苦しそうに話す。
 そんな救命救急センターが、いよいよカオスと化す。2022年初めの、新型コロナの第6波だ。
 感染者数は日々、過去最多を更新し続ける。掖済会病院のERも病床に余裕がなくなっているが、蜂矢は「ここで踏ん張り切るのが自分たちのプライド」と、ギリギリまで受け入れると断言する。
 近隣の病院は閉院してしまったところもあり、10件以上断られているケースばかりだ。鳴りやまない電話、発熱や咳で動けなくなった患者で溢れ、ER内は大混乱する 。そこへ消防から、海に車ごと飛び込んだ男性の救急要請の連絡が入る。
 電話を取り、受け入れ可能かどうかを判断する医師も動揺を見せるほどの状況になっていた。騒然とするERに河野弘院長が激励にやってくる。
 まだ受け入れる余地はあるとスタッフたちを諭し、「このERが最後の砦だ」と念を押す。懸命に対応を続ける 救急医たちだが、集中治療室、救命救急室、一般病棟と次々に病床が埋まっていき、すべての病床が埋まってしまう。
 そこにさらに電話がかかってくる。ついに「他の病院にもあたってもらい、ダメならもう一度」と伝えるのが精一杯。それは「断らない救急」の限界を示していた。
 医学生向けのセッションに蜂矢が講師として参加する。救急科に興味を持つ医学生から「どこから手をつけていいか分からない患者が来た場合に、うまく対応できるようになるまでにどのくらい頑張ればいいのか」という質問を受ける。
 蜂矢は以前、櫻木に話したように、“なんでも”みる必要があるのは病気だけではなく患者の背景、人そのものの“なんでも”であることを伝え、1000の症例ほど経験すれば、病気も人も、ある程度分かってくると教える。
「これから救急科がどうなっていくのかは分からない。それを僕らが作っていく分野なので、一緒に頑張りましょう。(みなさんの)行く先がERだったら嬉しい」と笑顔で呼びかける。
 研修医たちと各科の医師たちが一堂に会する。研修医たちが現時点でのそれぞれの進路志望を発表するのだ。「誰が何を言うんだろうって、緊張する場です」と蜂矢が言う。一人ひとり壇上に上がった研修医たちの様子から、みなそれぞれがどの道の専門医になろうかと見極めている最中であることが伺える。櫻木の順番が来て、蜂矢が心配そうに見守る。そんな蜂矢の心配の裏腹に櫻木の発表は簡潔だった。「当院の救急科に残りたいと思っているので、これからもよろしくお願いします」。
 それを聞いた蜂矢やERのメンバーは、安堵の表情を見せる。そして今日も、ひっきりなしの救急車を受け入れる名古屋掖済会病院救命救急センターの日常は続く。
 片や、北川は病院初の救急医出身の院長に就任する。救急医療の未来にかすかな希望を示したエンディングだ。
 本作は一切の演出はおろか、ナレーションすらない“純度100%”のドキュメンタリー作品だ。東海テレビの撮影クルーが、慌ただしく動くER内部を克明にカメラに収め、そこで働く救急医や看護師・救命士の姿をありのままに映し出している。
 今では過去のことのように思えるコロナパニック。そこで指摘された救急医療の問題は、ウイルスとともに“なかった事”にされた感がある。しかし、この問題は解決されることなく、放置されたままだ。人々にとっては「思い出したくもない過去」かも知れないが、今だからこそ、もう一度立ち止まって、医療の問題を考えるきっかけとなる作品だ。
 ヤクザと人権問題に迫った『ヤクザと憲法』(2016)や、凋落するテレビの現場を探った『さよならテレビ』(2020)など、硬派なドキュメンタリー作品に携わった阿武野勝彦と土方宏史がプロデュースを務め、足立拓朗が初監督を務めた本作。
 この作品でも、阿武野と土方のコンビによって、目を背けがちな現実を露わにしている。当たり前の日常が、実は朝も夜もなく働く救急医によって支えられていることを知り、そんな彼らにありったけの賛辞を贈りたい。
<評価>★★★☆☆
<公式サイト>https://tokaidoc.com/kodo/
<公式X>https://twitter.com/tokaidocmovie?ref_src=twsrc%5Egoogle%7Ctwcamp%5Eserp%7Ctwgr%5Eauthor
<東海テレビドキュメンタリー劇場公式Instagram>https://www.instagram.com/tokaidocmovie/
<東海テレビドキュメンタリー劇場公式Facebook>https://www.facebook.com/tokaidoc.movie/
<東海テレビドキュメンタリー劇場公式TikTok>https://www.tumblr.com/tokaidocmovie
<監督>足立拓朗
<プロデューサー>阿武野勝彦、土方宏史
<撮影>村田敦崇
<音声>栗栖睦巳
<TK>清水雅子
<音響効果>宿野祐
<編集>高見順
<音楽>和田貴史
<音楽プロデューサー>岡田こずえ
#その鼓動に耳をあてよ #映画 #足立拓朗 #土方宏史 #阿武野勝彦 #ドキュメンタリー #ドキュメント #救急 #医療 #救命医 #看護師 #救命士 #ER #病院 #名古屋掖済会病院# #東海テレビ #東風

その鼓動に耳をあてよ#1

その鼓動に耳をあてよ#1

  • 出版社/メーカー: CRESCENTE
  • 発売日: 2024/01/16
  • メディア: MP3 ダウンロード






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【映画レビュー】「渇水」(2023 日本) [映画]

【映画レビュー】「渇水」(2023 日本)
 停水執行を仕事としている水道職員・岩切俊作(生田斗真)は、後輩の木田拓次(磯村勇斗)とともに、料金を滞納している家庭を回り、料金徴収、支払わない者には水道を停止する「停水執行」の業務に就いている。日照り続きで給水制限される酷暑の夏、市内に給水制限が発令される中、貧しい家庭を訪問しては忌み嫌われる日々だ。妻・和美(尾野真千子)や子とも別居し、心の渇きは強くなるばかり。そんな中、小出有希(門脇麦)によってネグレクトされている姉妹の恵子(山崎七海)、久美子(柚穂)と出会う。その姉妹を自分の子どもと重ね合わせ、救いの手を差し伸べる。
 日照り続きの夏、給水制限が発令される中、貧しい家庭を訪問しては忌み嫌われ、公私両面で多大なストレスを感じながらも、自身の家庭問題とも向き合う仲で、前に進んでいく姿を描いている。貧困などの社会問題をダイレクトに表現しているが、本作は、1990年に文學界新人賞を受賞した、元市役所職員の作家・河林満が、自身の経験を基にした小説が原作となっている。
 1990年といえばバブル真っ盛りだ。本作は現代にマッチするように、多少の改変がなされているだろが、バブル期にこのようなストーリーを描くなど、あたかも未来を予見していたかのようで驚かされる。
 水道料金を払わない者の言い分は人それぞれ。「水なんかタダだろ」と開き直るろくでなし、単に怠慢な者、本当にお金がない者…。中でも有希は、パパ活も上手くいかずに万引きにまで手を染めるまでに追い込まれていた。2人の娘も、他人の家のベランダから水を汲もうとし、怒鳴られる有り様だ。恵子が万引きで捕まりそうなところを救った俊作は、自身の独断で小出家の水栓を開ける。さらに俊作は、恵子と久美子を連れて公園に向かい、憑りつかれたように、水遊びに興じる。
 同僚達に取り押さえられ、警察に連行されるその時、恵みの雨が降り出す。俊作は退職届を出すよう強要され、それに従う。唯一、信頼できる後輩だった木田は寂しがるが、俊作は水道局を後にする。恵子と久美子の動向を気にする俊作だが、個人情報として教えてはもらえなかった。
 その頃、恵子と久美子は、児童養護施設に入ることになり、町を離れていた。2人は、世話になった俊作に絵を残し、俊作もその絵を自室に飾る。
 物語の最後、俊作の携帯が鳴る。相手は、別居していた息子の崇で、「お父さんと海に行きたい!」というのだった。
 生田斗真はじめ、名キャストが揃う中、彼らを食う活躍ぶりを見せたのが、2人の子役といっていいだろう。もちろん、生田斗真が演じる俊作の人格が崩壊していく様、シングルマザーの有希を演じる門脇麦のやさぐれっぷりも見どころの一つだ。
 一見、シンプルなストーリーだが、そこに登場する人物像は多種多様で、各々のキャストがそれを表現している。原作本では、恵子と久美子の姉妹が自殺するという結末らしいが、本作では希望の持てるラストシーンで救われるものとなった。
<評価>★★★★☆
<公式サイト>https://movies.kadokawa.co.jp/kassui/
<公式X>https://twitter.com/kassui_movie
<公式Instagram>https://www.instagram.com/kassui_movie/
<監督>高橋正弥
<脚本>及川章太郎
<企画プロデュース>白石和彌
<製作>堀内大示、藤島ジュリーK.、徳原重之、鈴木仁行、五十嵐淳之
<企画>椿宜和
<プロデューサー>長谷川晴彦、田坂公章
<ラインプロデューサー>原田耕治
<撮影>袴田竜太郎
<照明>中須岳士、小迫智詩
<録音>石貝洋
<整音>劉逸筠
<美術>中澤正英
<スタイリスト>清藤美香
<ヘアメイク(生田斗真)>酒井啓介
<ヘアメイク>渡辺順子
<編集>栗谷川純
<音楽>向井秀徳
<助監督>山下久義
<キャスティング>田端利江
<カラリスト>高山春彦
<企画協力>佐久田修志
<制作担当>土田守洋
<原作>河林満「渇水」(角川書店) https://www.kadokawa.co.jp/product/322107000437/
<主題歌>向井秀徳「渇水」
#渇水 #映画 #河林満 #白石和彌 #高橋正弥 #及川章太郎 #生田斗真 #門脇麦 #磯村勇斗 #宮藤官九郎 #宮世琉弥 #尾野真千子 #柴田理恵 #山崎七海 #柚穂 #田中要次 #大鶴義丹 #吉澤健 #池田成志 #篠原篤 #柴田理恵 #森下能幸 #水道 #文學界 #貧困 #ネグレクト #PG12 #KADOKAWA

渇水 (角川文庫)

渇水 (角川文庫)

  • 作者: 河林 満
  • 出版社/メーカー: KADOKAWA
  • 発売日: 2023/04/24
  • メディア: Kindle版






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【映画レビュー】「ビヨンド・ユートピア 脱北」(原題「Beyond Utopia」/2023 アメリカ) [映画]

【映画レビュー】「ビヨンド・ユートピア 脱北」(原題「Beyond Utopia」/2023 アメリカ)
 本作は、死の覚悟を持ちながら脱北を試みた、ある家族の逃避行に密着したドキュメンタリー作品だ。
 そこには、一切の演出や再現ドラマもなく、家族、支援者、ブローカーなどの登場人物、隠し撮りした映像や写真のみによって製作された“完全ドキュメンタリー”ともいえる作品だ。
 まずは、本作に出演したロ一家と、命の危険にさらされながら旅を続けた撮影クルーの勇気を褒めたたえたい。
 韓国で脱北者を支援する活動を続け、これまで1000人以上の脱北者を支援してきた韓国のキム・ソンウン牧師。物語は彼を軸に進行していく。
 彼の携帯電話には、脱北を希望する人や、それを仲介するブローカーからの連絡が引っ切り無しに入る。
 本作では、幼児2人と老いた女性も含む5人家族のロ一家の脱北を手伝うことになる。ソンウンの指揮の下、各地に身を潜めながら散らばっている50人以上のブローカーとも連携し、まずは中国に渡り、そこからベトナム、ラオス、タイを経由して亡命先の韓国を目指す、移動距離1万2000キロメートルにもおよぶ決死の脱出作戦に密着している。
 撮影は製作陣のほかにも、地下に潜りながら活動する人々によって行われ、一部の登場人物の詳細は安全のため伏せられている。
 さらに、世界に北朝鮮の実態と伝え続ける脱北者の人権活動家イ・ヒョンソが自らの意思で捨てた故郷・北朝鮮への郷愁や離ればなれとなった友人への思いを語り、数多くの脱北者やその支援者、そして、『シティ・オブ・ジョイ 世界を変える真実の声』(2016)も手掛けた社会派の米国人監督マドレーヌ・ギャビンも登場。過酷な北朝鮮の実像に迫っている。
 一方、韓国へ亡命したソヨン・リーは、息子のチョンを呼び寄せようとブローカーと連絡を取り続けている。刑務所に収監された後に脱北した彼女は、もう何年も息子の顔を見ていない。ついに脱北決行の日が来るが、チョンは中国で消息を絶つ。しかしながら、そのブローカーは悪徳で、チョンを裏切り当局に通報、身柄を拘束されてしまう。最悪、彼は強制送還され、強制収容所行きとなる。それでもソヨンは希望を捨てず、いつか必ず息子と再会できる日を待ち続けるのだ。
 ソンウン牧師に率いられながら長い旅路を続ける家族の様子とともに描かれている北朝鮮の現実には驚愕させられる。まるでゴミのように打ち捨てられる餓死者、物心つく前から「アメリカ人は鬼畜」と教え込まれる子どもたち、さらに、金日成から金正日、金正恩と続く独裁世襲体制の下、人民に相互監視を推奨し、徹底して異分子を根絶やしにする恐怖政治を、一切の脚色なく暴いていく。
 ロ一家は、中国を縦断し、ベトナム、ラオスを経由してタイに向かう。ベトナムのジャングルを通ってラオスへと渡る命懸けの越境、道なき道を行き、体を傷だらけにしながら突き進む様は、子どもや老人にとってはあまりにも酷な状況だが、なぜそこまでの移動を強いられたのか。
 それは中国、ベトナム、ラオスは北朝鮮の友好国であり、脱北者と知られたら、拘束され、強制送還された挙げ句、その先に待つのは強制収容所での「死」のみであるからだ。
 物語の中で、ソンウン牧師の妻も登場し、夫婦の馴れ初めを語るなど、仲睦まじい姿を見せるのだが、実のところ、夫婦には想像を絶する不幸な過去があり、その出来事によって、ソンウン牧師が自らの身の危険を犯してまで人道的活動を続けるモチベーションに転化させていくことが分かる。
 脱北支援者達が用意したタイとの国境近くにあるラオスの“安全な家”に身を潜めるロ一家。ここで撮影クルーが一家にインタビューする。
 子どもの両親は、金正恩の圧政を批判する一方で、2人の子ども、そして母である老女は「我が指導者、金正恩同志は偉大な人です」と語るのだ。物理的には北朝鮮を離れたものの、その頭の中には変化が見られず、思わず娘が「お母さん嘘を吐かないで!本当のことを話して!」とたしなめられる。ここに、北朝鮮政府による長年のプロバガンダ教育の恐ろしさを見て取れる。
 ロ一家の脱北も大詰めを迎える。深夜のメコン川を渡ればタイに入国できる。タイであれば、強制送還の危険は消える。しかし、ブローカーが用意したボートは、少しでもバランスを崩せば転覆のリスクが高く、そのルートは麻薬密売にも使われるため、国境警備が厳しい。仮に捕まれば、それまでの苦労は水泡に帰す。それでもロ一家にとって、選択肢は1つしか用意されていない。何も見えない闇夜に、一家全員がボートにすし詰め状態で乗り込み、ついにタイの地に降り立つ。
 場面は変わり、一家はコロナ禍のソウルのアパートにいた。もし、一家が脱北する決断がわずかにでも遅かったら、パンデミックによる国境封鎖が進み、ソンウン牧師の計画も白紙となるところだった。そう考えれば、ソンウン牧師とロ一家の例は、幸運続きであったと考えられる。その裏では、脱北に失敗し、無残に殺された多くの命があったことを、我々は忘れてはならないだろう。
 楽園(ユートピア)はどこにあるのか…。そもそも、何をもって「楽園」とするのか…。鑑賞者に強く問いかける本作は、2023年のサンダンス映画祭で圧倒的な支持を得てUSドキュメンタリー部門観客賞を受賞。全米批評家サイトRotten Tomatoesのメーターは100%と圧倒的な高評価を記録し、米国の映画メディアや評論家の間では2023年のベストドキュメンタリーの呼び声が高い。
 北朝鮮の隣国である我が国においても、この問題を他山の石と見過ごすことはできないだろう。奇しくも、世界の情勢が不安定となる流れに乗じるように、北朝鮮は中国、ロシアとの結束を強めている。今後、日米韓に対し、さらなる挑発を仕掛けてくるかも知れない。そうなれば、拉致問題の解決など夢のまた夢となってしまう可能性が高い。
 本作が持つ意味は、我が国と米国では微妙に異なるとも感じる。米国人にとっては、遠く離れたアジアの小国での話であり、まずは「こんな状態で、なぜ国民は蜂起しないのか?」という感想を抱くだろう。
 片や我が国では、ある程度、北朝鮮がどんな国なのかを理解している。その上で本作を見れば、「あぁ、やっぱり…」という感情と、「想像以上に悲惨だ」という印象が同時に沸き上がる。
 本作はアメリカ映画だ。しかし、アメリカからの視点で描かれてはいない。淡々と事実のみを並べることで、全世界から「北朝鮮」という国と、「金一族による世襲・独裁政権」の異常性を詳らかにする試みだ。
 残念ながら、この作品が公開されたところで、北朝鮮に住む人々が目にすることはできない。しかし、あまりの圧政に苦しみ、思い入れのある生まれ故郷を捨て、命を賭して国を脱出する人が絶えない北朝鮮という国がある事実を世界中に知らしめることはできる。
 そういう意味では、一切の演出を排したフルドキュメントとしたギャビン監督の意図も理解できるのだ。
<評価>★★★★☆
<公式サイト>https://transformer.co.jp/m/beyondutopia/#
<公式X>https://twitter.com/beyondutopia_jp
<映画配給・宣伝 株式会社トランスフォーマー公式Instagram>https://www.instagram.com/transformer_inc/
<映画配給・宣伝 株式会社トランスフォーマー公式Facebook>https://www.facebook.com/transformer.jp
<監督・編集>マドレーヌ・ギャビン
<製作>ジャナ・エデルバウム、レイチェル・コーエン、スー・ミ・テリー
<製作総指揮>シャロン・チャン、マイケル・Y・チョウ
<音楽>アダム・テイラー、テイラー・ペイジ
#ビヨンドユートピア #脱北 #映画 #マドレーヌ・ギャビン #ドキュメンタリー #楽園 #自由 #イ・ヒョンソ #北朝鮮 #ブローカー #トランスフォーマー #サンダンス映画祭

ビヨンド・ユートピア 脱北 声なき者たちの声

ビヨンド・ユートピア 脱北 声なき者たちの声

  • 出版社/メーカー: ノーブランド品
  • メディア:






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【映画レビュー】「かぞくのくに」(2012 日本) [映画]

【映画レビュー】「かぞくのくに」(2012 日本)
 本作はフィクション作品ではあるが、在日コリアン2世のヤンヨンヒ監督が自身の経験を基にした実話ベースのストーリーだ。
 25年前、在日コリアン2世のソンホ(井浦新)は、“地上の楽園”という謳い文句に騙され、北朝鮮の帰国事業に参加し、単身、海を渡る。しかし25年間もの間、ソンホは家族の住む日本に、帰国することは許されなかった。
 しかしソンホは、脳腫瘍の治療を理由に、特例措置として一時帰国を許可される。25年ぶりの帰国に父(津嘉山正種)と母(宮崎美子)、そして、妹のリエ(安藤サクラ)は温かく迎え、久しぶりの家族団らんの時間を過ごす。
 旧友と飲み会を開いたソンホとリエ。25年間、何があったのかと、旧友でバイセクシャルのチョリ(省吾)が質問攻めにするが、監視役の男・ヤン(ヤン・イクチュン)が付きまとい、久しぶりの旧友との再会でも、ソンホは、何も話すことはできない。北朝鮮の真実を明かしてしまうと、すぐに罰則となるからだ。北朝鮮の市民の真の姿は、栄養失調者が続出するほどの困窮していた。
 ソンホがリエと歩いていると、街のカバン屋に入る。そこで見つけた銀色のスーツケースをリエに勧めるが、あまりにも高額なことに驚き、すぐに外に出てしまう。
 ある夜、ソンホは上の指示で、リエを工作員に勧誘する。リエは激昂し、ヤンに八つ当たりする。そして、脳腫瘍の治療も3か月という時間はあまりにも短すぎた。そして突然、ソンホの帰国が決定する。ソンホの家族は怒るが、ソンホは覚悟していたかのように、独り冷静だった。北朝鮮の決定に反発するリエをなだめ「自由に生きることを大切に」と説くと、ソンホは、リエが差し出した手を払いのけて北朝鮮へ戻る。リエは、兄が勧めてくれたスーツケースを持ち、兄が叶えられなかった自由に生きることを実現していくという物語だ。
 今なお、北朝鮮で暮らす家族を思うヤン・ヨンヒ監督が、在日朝鮮人を取り巻く真実を描いた作品であり、限りなく、ノンフィクションに近い印象の本作。
 すっかり洗脳され、考えることも語ることも諦めたかのように感情を押し殺したソンホを井浦新が好演している。さらにその家族を演じる安藤サクラ、津嘉山正種、宮崎美子といったキャストも同様だ。
 ヨンヒ監督が伝えたかったことは十分に伝わってくる。しかし本作は、一家族の出来事だけを切り取って「北朝鮮=悪」というイメージを刷り込むために作った作品だ。脳腫瘍の身でありながら、ソンホがリエをスパイに勧誘するシーンなどは恣意的に作られたエピソードとも感じる。
 そもそも、自らの意思で北朝鮮に渡り、四半世紀にも渡り音信不通だった人物を“家族”といえるのだろうか。例え血の繋がりがあったとしても、もはや思考回路は相容れないものとなったソンホは、既に家族の一員ではないといえるのではないのか。しかも、リエにとって、ソンホを別れ別れとなったのは幼少期だ。両親ならともかく、リエがここまでソンホに関わろうとするのは、逆に違和感を感じざるを得ない。
 リアリティに拘泥する余り、テンポもイマイチで、物語への没入感も少ない。ヨンヒ監督やその家族には同情するが、それ以上の感情を揺さぶられることはなかった。
<評価>★★☆☆☆
<監督・原案・脚本>ヤンヨンヒ
<企画・製作総指揮>河村光庸
<製作>佐藤順子、越川道夫
<撮影>戸田義久
<照明>山本浩資
<音響>菊池信之
<美術>丸尾知行
<装飾>藤田徹
<衣装>宮本まさ江
<編集>菊井貴繁
<音楽>岩代太郎
<原作>ヤンヨンヒ「兄 かぞくのくに」(小学館) https://www.shogakukan.co.jp/books/09408833
#かぞくのくに #映画 #ヤンヨンヒ #安藤サクラ #井浦新 #ヤン・イクチュン #京野ことみ #大森立嗣 #村上淳 #宮崎美子 #津嘉山正種 #省吾 #塩田貞治 #鈴木晋介 #山田真歩 #井村空美 #吉岡睦雄 #玄覺悠子 #金守珍 #諏訪太朗 #在日 #コリアン #北朝鮮 #帰国事業 #朝鮮総連 #ブルーリボン賞 #ベルリン国際映画祭 #スターサンズ

かぞくのくに ブルーレイ [Blu-ray]

かぞくのくに ブルーレイ [Blu-ray]

  • 出版社/メーカー: 角川書店
  • 発売日: 2013/03/22
  • メディア: Blu-ray






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【映画レビュー】「わたしの幸せな結婚」(2023 日本) [映画]

【映画レビュー】「わたしの幸せな結婚」(2023 日本)
 顎木あくみの小説を実写映画化した作品。平安時代と大正時代をミックスさせたような架空の世界を舞台に、エリート軍人と家族に虐げられて育った女性の出会いと結婚までを描いたシンデレラストーリーだ。
 この世界では、恐怖心から生まれた異形の存在「異形」が災いをもたらしていた。特殊能力「異能」のひとつで未来を予知する「天啓の異能」を受け継ぐ一族が国を支配する「帝」となり、様々な異能を持つ家系が災いから守り続けてきた。
 そして、異能者の中で不遇な最期を迎え、成仏できなかった魂は「奥津城(おくつき)」なる場所に納められる。しかしある時、奥津城に何者かが現れ、その魂を開放してしまいまう。
 斎森美世(今田美桜)は異能の家系に生まれたが、異能の力を持ってはいなかった。実の母は美世が幼い時に亡くなり、父・真一(高橋努)は後妻として香乃子(山口紗弥加)と再婚、真一は香乃子との間に生まれた香耶(髙石あかり)ばかりを可愛がり、美世は香乃子と香耶から虐げられてながら育つ。
 ある日、美世は政略結婚として陸軍特殊部隊の隊長・久堂清霞(目黒蓮)へ嫁ぐことを命じられる。清霞は、その冷酷な性格で、数多くの婚約者候補が3日も持たずに逃げ出していた。
 久堂家に入った美世は、清霞から「出ていけと言ったら出ていけ、死ねと言ったら死ね」と冷たい言葉を吐きかけられる。しかし、斎森家に戻ったところで地獄のような生活が待つ美世は、清霞に気に入られようと必死に食らいつく。
 美世は、久堂家の使用人・ゆり江(山本未來)と親しくなる。ゆり江は美世と清霞の間柄を取り持ち、美世は清霞が悪評通りの人物ではないことに気づいていく。清霞もまた少しずつ美世に心を開くようになっていく。
 清霞は美世の実家である斎森家の内情について調べる。斎森家の内情は劣悪で、美世の母・澄美(土屋太鳳)は人の心に干渉する強力な異能を持つ薄刃家の出であることを知る。
 ある日、ゆり江と共に街に出かけた美世は、ゆり江が傍を離れている間に偶然にも香耶や幸次と出くわし、香耶は美世に痛烈な憎まれ口を叩き、美世はトラウマから過呼吸を起こす。そんな美世を助けたのは突然現れた鶴木新(渡邊圭祐)だった。
 清霞は斎森家に出向き、真一とに美世と結婚すると伝え、美世に過去の虐待と謝罪せよと要求するが、真一は「少し考えさせてほしい」とだけ答える。
 そんな中、美世は度々自分が香乃子と香耶から虐待を受ける悪夢にうなされていた。すると、斎森家の元使用人で、美世の数少ない味方の花(小林涼子)が訪ねてくる。美世は花に、自分が異能の力を持っていないため、清霞の妻には相応しくないのだと明かす。
 美世は清霞に自分には異能がないことを伝え、感謝の気持ちを示して久堂家を去ることにするが、清霞はそれでも一緒にいたいと引き留め、2人は改めて互いの気持ちを確認し合う。
 ところが、美世は突然現れた者たちに拉致されて連行されてしまう。美世を連れ去ったのは真一ら仕業だった。斎森家に連れ戻された美世は香乃子と香耶から折檻を受け、清霞と別れるよう脅されるが、美世は頑なに拒否する。知らせを受けた清霞は斎森家に駆けつけ、屋敷を異能の力で焼き払うと、監禁されていた美世を助け出す。
 その5日後、久堂家に新が現れ、澄美は鶴木家の出であることを美世に伝える。美世は清霞と共に鶴木家に出向くと、出迎えた新は自分の本名は「薄刃新」であることを明かす。新は美世の悪夢の原因は薄刃家の異能によるものであり、人の夢に入り込んで夢を操り精神を支配することができる異能「夢見の才」によるものだと言い当てる。
 美世は、自分自身も知らなかった夢見の才の異能の持ち主であり、いつかは自らを滅ぼすほどの力を持っていた。新は同じ異能を持つ自分しか美世を救うことができないと告げ、美世を助けることができないと悟った清霞は彼女を残して去る。美世は新の祖父で澄美の父である鶴木家当主・義浪(火野正平)と引き合わせられる。美世と新はいとこ同士であり、新は美世に求婚する。
 その頃、この国の最高権力者であり未来を予知する異能を持つ帝は重い病に臥せっていました。帝は奥津城の魂が解放されたがためにこの国には災いが訪れると予言し、後継者である皇子・堯人(大西流星)に後を託す。堯人は幼馴染である清霞の身を案じ、使いを出す。その直後に帝は亡くなり、堯人は奥津城の魂を解放したのは帝の専属医師だった枢木忠則(尾上右近)だったことを知る。
 帝都は奥津城の魂による災いに襲われ、人々は次々と謎の病にかかって暴れ出す。清霞の部下・望月東弥(佐藤新)も病に感染し、そのまま軍に戻ったために軍人の半数が感染して暴れ出す。
 清霞は被害の拡大を抑えるため結界を張るが、結界内では異能を使うことができず、苦戦を強いられる。感染拡大を食い止めるためには感染者を殺す以外の方法はなく、清霞は断腸の思いで望月を殺し、感染した仲間たちとの戦いを強いられる。
 清霞を助けたい美世は引き留める新を振り切り、軍へ向かう。そこで美世は、夢見の才を発動させ、清霞を救い、病に感染していた人々は元に戻る。そこに堯人が現れ、澄美は夢見の才を悪用しようと目論む者から美世を守るために異能を封印していたと伝える。清霞と美世は家に帰り、清霞は改めて美世に結婚を申し込み、美世は笑顔で受け入れる。
 一方で、行方をくらましていた枢木は面をつけた謎の人物に全てはつつがなく終わったことを報告していました。謎の人物は「迎えに行くよ、美世」と意味深な言葉を発するのだった。
 現代でも古代でもない不思議な世界観の作品だが、無表情で冷酷である一方、美世に心を開く際に見せる優しい表情が印象的な目黒蓮の演技の奥深さと、とことんまで悲劇のヒロインを演じ切り、最後の最後に幸せをつかんだ今田美桜によって、一本、芯の通った作品に仕上がっている。
 一見複雑なストーリーだが、善人と悪人のキャラクター設定がハッキリしており、ファンタジーさと、意味ありげなラストシーンも含めて、タイトルに負けていないシナリオとなっている。
<評価>★★★★☆
<公式サイト>https://watakon-movie.jp/
<公式X>https://twitter.com/watakon_movie
<公式Instagram>https://www.instagram.com/watakon_movie
<公式TikTok>https://www.tiktok.com/@watakon_movie
<監督>塚原あゆ子
<脚本>菅野友恵
<製作>堀内大示、市川南、安倍純子、藤島ジュリーK.、川村龍夫、池邉真佐哉、岡崎剛之、緒方寛治、長嶋潤二、Hide、五十嵐淳之
<企画>椿宜和、上田太地、渡辺信也
<プロデューサー>今安玲子、稲垣優、加藤章一、松本桂子
<スーパーバイジングプロデューサー>那須田淳
<撮影>江原祥二
<照明>杉本崇
<録音>加藤大和
<美術>佐久嶋依里、加藤たく郎
<装飾>堀口浩明
<衣装デザイン>宮本まさ江
<ヘアメイク>千葉友子、荻野さおり
<CGアーティスト>早野海兵
<VFX>小坂一順
<カラーグレーディング>齋藤精二
<選曲>遠藤浩二
<音響効果>花谷伸也
<編集>森本大輔
<音楽>立山秋航
<スクリプター>森本順子
<助監督>森裕史
<監督補>府川亮介
<制作担当>松岡利光 皆見栄伽
<ラインプロデューサー>塩村香里
<アソシエイトプロデューサー>天馬少京、本多航大、水木雄太
<原作>顎木あくみ「わたしの幸せな結婚」(KADOKAWA) https://www.ganganonline.com/title/30
<主題歌>Snow Man「タペストリー」(MENT RECORDING) mentrecording
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【映画レビュー】「湯道」(2023 日本) [映画]

【映画レビュー】「湯道」(2023 日本)
 放送作家として身を立て、その後、脚本家に転じた小山薫堂のもう一つの顔であるお風呂愛好家で、入浴文化を探求する「湯道」を提唱する視点から描いた、銭湯を舞台とした群像劇。
 銭湯「まるきん温泉」を経営する三浦家の長男であり、建築家の三浦史朗(生田斗真)は、父の葬儀にも出席しなかった親不孝者。反面、自身の仕事がうまくいかず、久々に帰省する。まるきん温泉は弟の悟朗(濱田岳)が継いでおり、秋山いづみ(橋本環奈)が住み込みで働いている。
 悟朗は、史朗とは犬猿の仲で、兄が本業で苦しんでいることを見抜いていた。
 史朗は、今どき銭湯など流行らないと、廃業してその土地にマンションを建てようと計画していた。そんなある日、まるきん温泉でボヤ騒ぎが起こり弟の悟朗が入院する。
 悟朗の不在時、彼の代わりに店を切り盛りすることになった史朗。そこで彼は、店に通う様々な客と関わりを持ち、その心境が徐々に変化していく。
 始めは乗り気ではなかった史朗は、常連客たちや、「湯道」を習っている・横山正(小日向文世)らとの交流を通じ、銭湯への情が芽生えるが、退院した悟朗は、史朗の提案したマンション建設計画を受け入れる。
 悟朗は、父が銭湯の将来性を案じ、自分の死後には廃業するように遺言を残していたと語る。兄弟の間では合意するが、人一倍、銭湯への思い入れが強いいづみは反対し、家出する。
 いづみのいないまるきん温泉は仕事が回らずに、兄弟は四苦八苦する。彼女が横山の話した「湯道」家元の語る「生涯最高の風呂」に強い興味を示していたと聞き、その風呂のある山中の茶屋を訪れる。
 謎の老婆・秋山夙子(夏木マリ)が暮らす茶屋はすでに廃業していたが、2人は風呂を見せてもらう。その風呂は五右衛門風呂で、兄弟は入ることにするが、風呂には水道がなく、自分たちで沢から水を汲み、薪を集めて沸かすという大変な手間がかかるもの。苦労の果てに風呂に入った兄弟は、最高の入浴体験をし、さらにいづみとも再会する。実はいづみは夙子の孫だった。兄弟は廃業までまるきん温泉を運営するためにも、いづみに戻ってくるように頼み込む。
 再開したまるきん温泉には、風呂評論家の太田与一(吉田鋼太郎)が訪れる。銭湯を時代遅れと見下す太田に対し、史朗や常連客らはまるきん温泉への思いを語って反論し、太田は入浴することなく出ていく。常連客たちにも廃業計画を明かしていた史朗らだったが、思い直し、まるきん温泉の営業を続けるのだった。
 心が温かくなるような作品だが、ストーリーそのものには、これといったヤマ場もなく、予定調和のエンディングには少々拍子抜けする。お笑いパートもどこか中途半端だ。
 ところが特筆すべきは、そのキャストの豪華さだ。ヒットメーカー・鈴木雅之を監督に迎え、錚々たる俳優が出演しており、その演技合戦だけでも見どころはある。
 しかし、興行収入は10億円に届かず、本作に出演したキャストや、優秀なスタッフに見合うものではなかった。
 「おくりびと」(2008年)では約65億もの大ヒットを飛ばした小山薫堂脚本作品ではあるが、本作に関しては、小山自身の思い入れが強すぎ、凡庸な物語となってしまった感がある。
<評価>★★☆☆☆
<公式サイト>https://yudo-movie.jp/
<公式X>https://twitter.com/yudo_movie
<公式Instagram>https://www.instagram.com/yudo_movie/
<監督>鈴木雅之
<脚本・企画>小山薫堂
<製作>大多亮、藤島ジュリーK.、市川南、堂山昌司、中沢敏明、川上純平、弓矢政法、小山薫堂
<プロデューサー>若松央樹、和田倉和利、厨子健介、山口敏功、加藤達也
<ラインプロデューサー>森賢正
<撮影>江原祥二
<照明>杉本崇
<録音>武進
<美術>あべ木陽次
<装飾>郷原慶太、竹原丈二
<美術コーディネート>坪井一春
<小道具>上田耕治
<編集>田口拓也
<音楽>佐藤直紀
<選曲>藤村義孝
<音響効果>壁谷貴弘
<スクリプター>戸国歩
<VFXスーパーバイザー>小坂一順
<カラーグレーダー>齋藤精二
<助監督>片島章三
<製作担当>鍋島章浩
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湯道 川崎フロンターレ コラボ サウナ タオル

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【映画レビュー】「ヤジと民主主義 劇場拡大版」(2023 日本) [映画]

【映画レビュー】「ヤジと民主主義 劇場拡大版」(2023 日本)
 「日本の民主主義は正当に機能していると思いますか?」
 この問いに対し肯定的な有権者は、ほぼいないといっていいだろう。
 不幸なことに我が国には、自民党に対抗できる党勢を持つ政党がなく、政治不信を抱きながらも、国政選挙の投票率は下がり続け、本作の端緒となる令和初の国政選挙である2019年7月の参議院議員選挙では、選挙権が18歳に引き下げられたにも関わらず、48.8%という低投票率に終わっている。
 この選挙では結果的に自民党は議席を減らしている。連立を組む公明党の躍進のお陰で安定多数を維持できたものの、“安倍一強”と呼ばれた党勢も、いわゆる「モリカケ問題」や、アベノミクスの失速により陰りが見えてきたことで、次第にアンチ安倍の声も多く聞かれるようになってきた。
 そんな中で行われた選挙で、安倍首相(肩書きはすべて当時)は、日本津々浦々に応援演説に駆り出される。指定難病である潰瘍性大腸炎を抱える身であるにも関わらずだ。
 安倍氏は2017年の東京都議会議員選挙での応援演説で失言を放っている。「安倍辞めろ!」のコールが巻き起こると、その集団を指差し「こんな人たちに負けるわけにはいかない!」と、ヤジに対して「誹謗中傷」と断じたのだ。
 この出来事によって、国会議員も有権者も、政治の本質を見失っていく。「親・安倍VS反・安倍」という二極化が進み、国民の分断を生むことになっていく。
 そして7月15日、札幌で事件は起こる。ある男性が安倍の応援演説の最中、「安倍やめろ!」とヤジを飛ばす。その瞬間、北海道警の警察官が複数でその男性を取り囲み、力ずくで排除したのだ。
 時を同じくして、吃音を抱えながらも増税反対を訴えた若い女性も警察官に引きずられるように移動させられ、その後もしつこくつきまとわれた。この日、札幌では少なくとも9人が警察の手によって排除されたといわれている。
 この行動を問題視した市民や弁護士らが道警と北海道庁に抗議し、デモ行進にまで発展する。
 しかし道警は7か月にわたり説明を拒否し。2020年2月になって道警は「ヤジを排除したのは適正だった」と結論付ける。そして、両者の対立は法廷の場に持ち込まれる。
 本作の基となったのは、元北海道警の幹部にして裏金問題を追及し続けた原田宏二氏や刑法を専門とする大学教授などへのインタビューを通じ、ヤジ、そして排除した警察の行動についての正当性について法的根拠に基づいて検証。
 さらに、警察に排除された2人に加え、プラカードを掲げるために演説会場に来たものの、自身の主張をぶつけることすら叶わなかった老いた女性の考えを訴えた、2020年放送のHBC(北海道放送)のドキュメンタリー番組だ。
 数々の証拠映像に衝撃を受けた人々から多くの声が湧きあがり、番組は、ギャラクシー賞や「地方の時代」映像祭賞などの賞を受賞する。
 そして、排除された市民2人が原告として道警と北海道庁を訴えたことによって、書籍化を経て、さらに映画化されたのが本作だ。ドキュメンタリー番組として放送されたものよりも、市民から提供された証拠映像も増え、正味46分のドキュメンタリー番組からほぼ倍の100分の作品となっている。監督・制作・編集を務めたのはHBC報道部デスクの山崎裕侍だ。
 2022年3月の1審札幌地裁判決は、2人について表現の自由などの侵害を認め、計88万円の賠償を命じ、“完全勝利”といっていい判決内容だった。
 道警と北海道庁は控訴。そして2023年6月、2審札幌高裁判決では、「警察官の行為は適法だった」とし、請求を棄却する。原告の2人にとっては“逆転敗訴”となってしまう。
 なぜこのような判決が導かれたのか。2022年の7月8日、参議院議員選挙での応援演説中に安倍氏が銃撃され死亡した事件が発生したことが影響していると考えるのが自然だ。裁判長の大竹優子は、銃弾とヤジを同列に考えたのだ。憲法の根幹をなし、中学生が社会科の時間で習う「三権分立」をも脅かす判決といっていいだろう。
 ここで今一度、冒頭の問いに立ち返ってみたい。日本では民主主義など全くといっていいほど機能していないのだ。「自由民主党」とは名ばかりで、その中身は中国共産党や朝鮮労働党を大差ないのだというのが、筆者が受けた印象だ。
 この作品、北海道放送報道部道警「ヤジ排除問題取材班」が、4年間に渡り追及し続けた記録でもある。そして、双方が最高裁に上告したことによって、彼らは今でもこの問題を追い続けているのだ。
 最高裁でこの問題が審理されるのか棄却されるのかの結論が出るのは、山崎によれば2、3年後だという。そして、審理されたとしても、最終的な判決が出るのはさらに先となる。とてつもなく長い道のりだ。事実この間、元北海道警の原田氏は鬼籍に入っている。
 安倍氏を死に追いやった凶行は、その理由はどうあれ許されることではない。しかし、安倍氏とその周囲が、小さいながらも自身にとって不都合な声に耳を傾けようともしなかったことが、この結末を招いたとはいえないだろうか。国民の不満のガスが溜まり続け、ついには爆発を起こしてしまったのが、奈良での銃撃事件だと感じてしまうのだ。死人に鞭打つようだが、この事件の背景を知るに連れ、“因果応報”という印象を受ける。
 そして安倍氏は死してなお、自民党最大派閥の領袖として名を残す。そして、その「安倍派」の派閥幹部は今、政治資金パーティーを巡る裏金疑惑の中心にいる。
 民主党から政権を奪い返し、自身のリーダーシップにより、経済を安定させ、大震災からの復興を前進させた安倍氏の功績は大きい。そこは否定しようのない事実だ。しかしながら、安倍氏は“強くなり過ぎた”のだ。常に神輿の上に担ぎ上げられ、後に続く人材にも恵まれなかった点で、その最期には同情する面もある。
 この作品を見る人は、多少なりとも政治に関心のある人だろう。もちろん選挙にも行くはずだ。
 その反面、有権者の半数以上にも上る「選挙にも行かない人」にとって、本作の登場人物はどう映るのだろうか。一銭の得にもならないのに声を上げ、挙げ句、警察のご厄介になる“単なるイタイ人”に見えるのだろうか。もし既に、そんな世の中になっていたとすれば、この国に待っているのは絶望的な未来しかないと感じるのだ。
<評価>★★★★★
<公式サイト>https://yajimin.jp/
<公式X>https://twitter.com/yajimin1209
<監督・制作>山崎裕侍
<プロデューサー>山岡英二、磯田雄大、鈴木和彦
<取材>長沢祐
<撮影>大内孝哉、谷内翔哉、村田峰史
<編集>山崎裕侍、四倉悠策
<MAエンジニア>西岡俊明
<音楽>織田龍光
<語り>落合恵子
#ヤジと民主主義 #映画 #山崎裕侍 #長沢祐 #民主主義 #道警 #安倍 #政治 #ヤジ #排除 #北海道放送 #HBC #TBS #KADOKAWA

ヤジと民主主義

ヤジと民主主義

  • 作者: 北海道放送報道部道警ヤジ排除問題取材班
  • 出版社/メーカー: ころから
  • 発売日: 2022/11/07
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)






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