SSブログ

【映画レビュー】「ぬいぐるみとしゃべる人はやさしい」(2023 日本) [映画]

【映画レビュー】「ぬいぐるみとしゃべる人はやさしい」(2023 日本)  大前粟生の小説を金子由里奈のメガホンにより映画化した青春ドラマ。大学の“ぬいぐるみサークル”を舞台に、男らしさや女らしさといった概念な苦手な大学生と、彼を取り巻く人々を描いている。
 京都の大学に進学した七森剛志(細田佳央太)は、異性が苦手で、ややコミュ障気味。七森は、ぬいぐるみに話しかけるという“ぬいぐるみサークル”に入る。心優しい部員たちと親しくなっていく中で、七森は同じ部員の麦戸美海子(駒井蓮)に淡い恋心を抱き、告白して交際に至る。
 サークルに集う学生たちは、みな優しいのだが、反面、センシティブで生きづらさを感じているようにも見える。その鬱憤を誰にも聞かれない状態で、LGBTQなどの自らの重苦しい悩みをぬいぐるみにぶつけている。
 あるサークルのメンバーが「優しさと無関心は似ている」と語るが、まさにその通りで、ぬいぐるみに語ったところで何の解決にもならない。
 ついにはその悩みがキャパオーバーとなって、ひきこもりになってしまう主人公。異常なまでに傷付くことを恐れるZ世代の生態を描いたのだろうが、これほどにもなぁまぁの集団で、人間的成長など望むべくもない。傷付き傷付けられ心の耐性を身に付くべき年代に、このような人間関係しか築けない若者が、ガラスのようなメンタルのまま社会に出ていくと思うと、現在の日本社会の生産性の低さの根底が透けて見える。
 リア充をSNSでアピールする若者も気持ち悪いが、本作に登場するような若者に対しても気持ち悪さを感じる。七森は、居酒屋に誘われても全く楽しそうじゃないし、イジられた途端にその場から逃げ出す始末だ。自分にとって都合のいい人間とだけ付き合い、その他は全て排除し、孤独を選び、ぬいぐるみと戯れるキャラクターには全く共感できない。
 その七森でさえも、自分では気付かないうちに美海子を傷付けている。その反省もない。どれだけ偉いんだ?どれだけ自分本位なんだ?と疑問を抱かずにはいられない。
 イライラさせる七森という主人公を演じているのは細田佳央太。彼の何を考えているのか分からないような演技によって、作品としては一応の体裁は整っている。ラストシーンも、原作の大前粟生が何を伝えたかったを示唆するような締め方だ。
 金子由里奈の商業映画デビュー作ということで、自身の母校・立命館大学をモデルとしているようだが、父であり、数々の名作を世に放った金子修介の足下にも及ばない薄っぺらい演出によって、凡庸な作品になってしまっている。本作は会話劇でもあるのだが、あまりにも間が悪く、睡魔を誘うほどだ。
 愛娘の監督作を見て、父・金子修介はどういう感想を持ったのかを聞いてみたいくらいだ。
<評価>★☆☆☆☆
<公式サイト>https://nuishabe-movie.com/
<公式X>https://twitter.com/nuishabe_movie
<公式Instagram>https://www.instagram.com/nuishabe_movie/
<監督>金子由里奈
<脚本>金子鈴幸、金子由里奈
<プロデューサー>髭野純
<ラインプロデューサー>田中佐知彦
<撮影>平見優子
<照明>加藤大輝、本間光平
<録音>五十嵐猛吏
<美術>中村哲太郎
<スタイリスト>中村もやし
<ヘアメイク>安藤メイ
<編集>大川景子
<音楽>ジョンのサン
<助監督>中村幸貴
<スチール>北田瑞絵
<主題歌>わがつま「本当のこと」(NEWFOLK) https://newfolkjp.stores.jp/items/645e0be838b3a5008115c686
<原作>大前粟生「ぬいぐるみとしゃべる人はやさしい」(河出書房新社) https://www.kawade.co.jp/np/isbn/9784309028743/
#ぬいぐるみとしゃべる人はやさしい #映画 #ぬいしゃべ #金子由里奈 #大前粟生 #細田佳央太 #駒井蓮 #新谷ゆづみ #細川岳 #真魚 #上大迫祐希 #若杉凩 #天野はな #小日向星一 #宮崎優 #門田宗大 #石本径代 #安光隆太郎 #上海国際映画祭 #TAMA映画賞 #イハフィルムズ

ぬいぐるみとしゃべる人はやさしい [DVD]

ぬいぐるみとしゃべる人はやさしい [DVD]

  • 出版社/メーカー: JIGGY FILMS
  • 発売日: 2024/01/01
  • メディア: DVD






nice!(0)  コメント(0) 
共通テーマ:映画