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【映画レビュー】「死刑にいたる病」(2022 日本) [映画]

【映画レビュー】「死刑にいたる病」(2022 日本)
 凶悪事件や裏社会を題材とする作品を数多く手掛けた白石和彌監督が、櫛木理宇原作のサスペンス小説を映画化。24件もの殺害事件を犯した死刑囚から、その中の1件の冤罪の真犯人を追うように依頼された大学生が、その真実を暴く姿を描いていく。
 三流大学の学生・筧井雅也(岡田健史)は、幼い頃から教育熱心な父・和夫(鈴木卓爾)からは、“出来の悪い息子”と疎まれ、母親の衿子(中山美穂)もまた、夫からは家政婦扱いされていた。
 祖母の葬儀のために久々に実家に帰った雅也。父親は相変わらず文句ばかりで、うんざりしていると、実家に届けられていた自分宛の手紙を見つける。その手紙の差出人は榛村大和(阿部サダヲ)。雅也がよく通っていたパン屋の店主だったが、その正体は、生爪を剥がしてなぶり殺し、24人を殺害していたシリアルキラーだった。
 雅也は刑務所に榛村の面会に行くと、すでに死刑が決まっている榛村は、立件された8件の事件の関与は認めているものの、最後の事件だけは自分がやってないのだと告白する。そして雅也に真犯人を見つけるようにお願いする。面会から帰る途中、雅也は髪の長い怪しい男に話しかけるが、逃げるように帰る。
 榛村の担当弁護士だった佐村(赤ペン瀧川)から事件に関する調書を見せてもらった雅也は、16、17歳の少年少女をターゲットに、最終的に殺害するという榛村の共通した手口に対し、最後の事件の被害者の24歳の根津かおる(佐藤玲)に対してだけは、榛村の手口とは違ったものだった。これに違和感を感じた雅也は調査を始めます。
 かおるの近辺を調べ始めた雅也、彼女は極度の潔癖症と偏食家で、ストーカー被害に遭っていたことを知る。そして同時に、祖母の遺留品を調べていると母が若い頃に榛村と繋がっていることも知ることになる。雅也は、過去の2人を知る滝内(音尾琢真)から話を聞く。
 親から虐待を受け、育ての親に育てられた榛村。育ての親とやっていたボランティアで玲子と出会う。幼い頃から人の心を掴むことに長けていた榛村。そして玲子も、榛村には心を開いていたが、やがて玲子は妊娠が発覚し、姿を消す。
 雅也の脳裏には、自分の父親は榛村なのではないかという疑念が沸く。榛村もその可能性を否定しなかった。それ以降、雅也が凶暴な一面を見せるようになり、雅也の中学時代の同級生である加納灯里(宮崎優)も心配して駆け付ける。
 榛村の調書を読んた雅也は、金山一輝(岩田剛典)という男が裁判に出廷し、榛村の犯行の目撃証言をしていたことを知る。その際、法廷では榛村から証言台が見えないようにする遮蔽措置を取っていたことに、雅也は違和感を感じる。
 弁護士の佐村から、金山が幼い頃、弟と傷つけ合う“痛い遊び”というものを榛村にやらされていたことが分かり、金山にはトラウマがあることを知る。そして父親に褒められたいというコンプレックスを榛村に利用され、次第に洗脳されていくことが分かる。
 そして金山の写真を見た雅也は驚く。刑務所の前で会った怪しい男が金山だったのだ。かおるの事件現場に現れた金山を雅也は追いかけ、真相を語らせることに成功する。その真相を榛村に伝えるため、面会に向かう雅也だったが、榛村はすでに刑務官の心をもコントロールしていた。
 雅也の話を聞いた榛村は、金山が犯人だと決めつけたように話し出す。しかし雅也は真相を話し続ける。実はかおるは過去に榛村が殺害に失敗した人物で、その後も榛村はかおるに執着し、狙い続けてきた。そして金山を利用し、かおるを次の殺人のターゲットに選ばせていた。
 金山はそのせいで、自分は榛村と共犯なのだと思い悩んでいた。真相を語り、榛村の元を去る雅也。そして、独房に戻った榛村は1枚の紙を開く。そこには、榛村がマインドコントロールしてきた人物の名前が記されていた。榛村は雅也の名前に線を引く。雅也もまた榛村にマインドコントロールされていたのだ。
 刑務所を出た雅也を待っていた灯里。雅也は灯里と交際に至っていたのだが、榛村のリストには灯里の名前もあった。過去に榛村と接触があり、マインドコントロールされたのだ。
 真相を暴いたことで、普段の生活を取り戻したかに見えた雅也に、灯里が不気味に笑いながら告げる。「最近、人の爪がとても気になるの、欲しくなるくらいに…。分かるよね…」。灯里は。榛村は灯里をもマインドコントロールに掛けていたのだった。
 脚本、演出、キャスティングとその演技、全てにおいて完璧といっていいほどの作品であり、猟奇殺人犯を演じた阿部サダヲ、秘密を持つ母親役の中山美穂、そして、表情やセリフ回しでその心情を表現する岡田健史の演技が光っている。原作の題名とはいえ「死刑にいたる病」とは、言い得て妙の見事なタイトルだ。
 PG12扱いになることを承知で、榛村による惨殺シーンを描いたのは、白石監督の心意気だろう。その異常性を示し、しかも、主人公がその血を引いている可能性があるというストーリーである以上、このシーンはなくてはならないものだったと、後になって知る。
 そして衝撃的なラストシーン。雅也を含めて、周囲の人物全員をマインドコントロールに掛けていた榛村の恐ろしさを知らしめたところでこの物語は終わる。ややもすれば人間不信に陥ってしまいそうな、余韻を残すミステリー作だった。
<評価>★★★★☆
<公式サイト>https://siy-movie.com/
<公式X>https://twitter.com/SIYmovie
<公式Instagram>https://www.instagram.com/siymovie/
<監督>白石和彌
<脚本>高田亮
<製作>藤本款、小坂恵一、和田佳恵
<企画>深瀬和美
<プロデューサー>深瀬和美、永井拓郎、堀慎太郎
<撮影>池田直矢
<照明>舘野秀樹
<録音>浦田和治
<美術>今村力、新田隆之
<装飾>多田明日香
<衣装>高橋さやか
<ヘアメイク>有路涼子
<VFXスーパーバイザー>朝倉怜
<音響効果>柴崎憲治
<撮影効果>実原康之
<編集>加藤ひとみ
<音楽>大間々昂
<助監督>渡辺圭太
<制作担当>篠宮隆浩
<原作>櫛木理宇「死刑にいたる病」(早川書房) https://www.hayakawa-online.co.jp/shopdetail/000000013678/
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死刑にいたる病 (ハヤカワ文庫JA)

死刑にいたる病 (ハヤカワ文庫JA)

  • 作者: 櫛木 理宇
  • 出版社/メーカー: 早川書房
  • 発売日: 2017/10/31
  • メディア: Kindle版






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