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【映画レビュー】「崖上のスパイ」(原題「懸崖之上」/英題「Cliff Walkers」/2021 中国) [映画]

【映画レビュー】「崖上のスパイ」(原題「懸崖之上」/英題「Cliff Walkers」/2021 中国)
 1934年、冬の満州。ソ連で特殊訓練を受けた、チャン・シエンチェン(チャン・イー)をリーダーとし、シャオラン(リウ・ハオツン)、チュー・リャン(チュー・ヤーウェン)、ワン・ユー(チン・ハイルー)の中国共産党のスパイ4人が、満州のハルビンへと潜入する。
 彼らに課せられた任務は、日本軍の秘密施設から脱走した同胞を国外へ脱出させ、その蛮行を世に広く知らしめる“ウートラ計画”を実行すること。4人は、チャンとシャオラン、そしてチャンの妻でもあるワン・ユーとチュー・リャンの二手に分かれて行動するが、しかし、その動きは仲間の裏切りによって特務警察に筒抜けとなってしまう。やがて特務の執拗な追跡の前に、リーダーのチャン・シエンチェンが捕まってしまい、窮地に陥る。
 ここから特務警察とスパイたちの逃亡劇と、チャンへの苛烈な拷問が始まる。
 中国映画界の巨匠チャン・イーモウが、1930年代の満州を舞台に描いたスパイサスペンスなのだが、日本の傀儡政権下のハルピン警察庁特務科と中国共産党のスパイとの対立のみにフォーカスされたストーリーであるため、日本人が1人も出で来ない上に、当時の日本の圧政に触れることもない。あくまで仮想のスパイ映画だ。
 終始、中国人同士の対立を描き、鉄道、自動車とあらゆる交通手段を使って、銃撃戦やカーアクションを盛り込みつつ、見応えのある頭脳戦・心理戦を展開する。そして最後に「革命に命を捧げた先人達に捧ぐ」をいうメッセージが込められる。
 しかしながら、歴史的に見ても、日本によって満州国が建国され、1937年から日中戦争が始まる直前の緊張状態下であるにも関わらず、日本人が全く出てこないのは、やはり不自然にも感じる。
「日本の傀儡政権」と「ソ連で訓練を受けたスパイ」の中国人同士の対決のみを描いているため、チャン達の目的であった「日本軍の悪事を暴く」というメインテーマも、薄まってしまった感がある。
 日本人と中国人では、この作品から受ける印象は異なるとは思うが、特務警察と中国共産党の対立構造が今ひとつ分かりにくく、日本人以上に、中国人がこのストーリーに満足したのか、疑問も残る。
 そもそも、「日本軍の悪事を暴く」ためだけに、ここまで命懸けの作戦を繰り広げる必要だったのかも、必然性に欠ける。
 実際に、当時の満州でこのような出来事があったのか不明だが、キャストの演技は切迫感が溢れ、アクションシーンも見事だっただけに、あくまで「かつての満州国を舞台にしたフィクションのスパイ映画」として見た方が良さそうだ。
<評価>★★★☆☆
<公式サイト>https://cliffwalkers-movie.com/
<監督>チャン・イーモウ
<脚本>チュアン・ヨンシェン、チャン・イーモウ
<公式Facebook>
<公式TikTok>
<撮影>チャオ・シャオティン
<音楽>チョ・ヨンウク
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