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【映画レビュー】「極限境界線 救出までの18日間」(原題「교섭」・英題「The Point Men」/2023 韓国) [映画]

【映画レビュー】「極限境界線 救出までの18日間」(原題「교섭」・英題「The Point Men」/2023 韓国)
 本作は、2007年にアフガニスタンで実際に起きた、武装組織タリバンによる韓国人23人の拉致事件を題材に描いた、実話に基づくサスペンスドラマだ。韓国政府が交渉役として現地に派遣したエリート外交官と現地工作員が協力し、タリバン政権を相手に人質救出作戦に挑む。
 『哭声/コクソン』(2016)のファン・ジョンミン、韓ドラの金字塔『愛の不時着』のヒョンビン、ドラマ『ウ・ヨンウ弁護士は天才肌』のカン・ギヨンら、豪華キャストが名を連ねている。
 冒頭、2001年9月11日、世界を震撼させた、米国同時多発テロが起き、ワールドトレードセンターにハイジャック機が激突する、あの衝撃的な映像が写し出される。
 それを機に、米軍とその同盟国によるアフガニスタン紛争が勃発。韓国軍も同盟国に名を連ねる。
 紛争の最中、当地に“平和布教”の活動に訪れていた「エホバ教」の信者である韓国人グループ23人が、テロ組織アルカイダに襲撃され、人質となってしまう。
 政府の命を受け、アフガニスタンに向かった外交官チョン・ジェホ(ファン・ジョンミン)は首都カブールに派遣され、現地工作員パク・デシク(ヒョンビン)と共に、困難な交渉に挑んでいく。
 現地では、米国などの肝いりで暫定政権が発足したものの、交渉の窓口としては、全くといっていいほど役に立たず、ジェホは途方に暮れる。刻一刻と迫るタイムリミット。タリバン側の要求は当初「タリバン収監者の解放」だったが、真の意図は分からないままだ。
 一度はデシクが現地のフィクサーと交渉し、人質解放の約束を取り付けるが、捕らえられた人質がボランティアを自称していたことがウソだったと知られ、決裂してしまう。
 性格的に全く水と油であるジェホとデシクは、事あるごと衝突する。あくまでも外交ルートで交渉しようとするジェホと、タリバン政権との直接交渉を主張するデシクの2人では、意見が合うはずもなかった。さらにデシクは、イラクでの人質救出作戦に失敗し、犠牲者を出した痛恨の過去を抱えていた。汚名返上のチャンスをうかがっていたのだ。
 遅々として進まない交渉、徐々に追い詰められていく人質たち…。彼らを救うため、ジェホとデシクは不本意ながらも手を組むことにし、身代金を用意する。しかし、身代金を要求した交渉相手は詐欺師であり、身代金を持ち逃げされてしまう。デシクは決死の覚悟で詐欺師を追い、過酷なアクションの末、カネを取り戻す。その後も政府には、タリバンの“将軍”や“司令官”を名乗る者から次々と連絡が入り、誰が本物で、何が起きているのかも分からず、政府職員は混乱する。
 ついには外相がアフガンに乗り込み、米軍と組んでの「軍事作戦」に打って出ようとする。既にこの時点で2人の犠牲者を出していたが、いよいよ人質全員の命が危うくなる。
 ジェホは“もう自分は用済み”とばかりに帰国の途に就こうとしたところ、大統領直々で「タリバン政権との直接交渉」にゴーサインが出る。面目を潰された形の外相は怒り狂うが、ジェホはデシクとともに、敵陣へと向かう。
 タリバン側が直接交渉に臨む際、「代表者と通訳1人ずつ」という条件を出してきたため、ジェホは通訳のカシム(カン・ギヨン)を引き連れ、交渉に向かう、そんな彼にデシクは、“万が一”と時のためとして、毒薬を渡して送り出す。
 命のやり取りをするような交渉の最中、米軍が交渉の場であるタリバンのアジトへの攻撃を開始する。タリバン側の代表者は「韓国人は二度とアフガニスタンの地を踏むな」と捨て台詞を残し、逃亡。ジェホは命を懸けた交渉に成功し、残りの人質全員の解放に繋げる。
 一方で、解放された民間人の代わりとして、デシクが自ら人質となるが、殺害されることはなく、その後、ジェホに電話してきた時にはターバンに身を包み、すっかり現地に馴染んでいる様子だった。こうして、激動の18日間は幕を閉じた。
 アフガニスタン紛争はアルカイダのトップ、オサマ・ビンラディンの殺害により、一応の決着を見た。しかしながら、2021年に米軍がアフガニスタンから全面撤退したタイミングでタリバンは全土を掌握。再び政権を握った。
 これにより、200人とも300万人ともいわれる難民が発生している。
 同作はあくまで、16年前の韓国人人質事件にフォーカスして、物語が進められているが、実際は“現在進行形”といっても過言ではない。
 ストーリーとしては、人質事件を巡り、国家同士の外交と、それに携わる人々の物語をテンポ良く描いており、さらに、ファン・ジョンミンやヒョンビンといったトップ俳優の演技はもちろん、ヒョンビンのアクションも見どころの一つであり、ただただ重いムードで進むことなく、観衆を楽しませようとしている姿勢が見て取れる。さらに韓国政府側、タリバン政権側のキャストの演技によって、より切迫した雰囲気が伝わってくる。
 日本でこのようなことが起きるとすぐに“自己責任論”が飛び交うが、本作で人質となってしまう「エホバ教」の信者たちは、あくまでも平和的に布教活動を行っていたはずであり、その責を負わせることはあまりに酷だろう。
 過去を振り返りながらも、現在のアフガニスタンの政情にも思いを馳せるような作品だ。
<評価>★★★☆☆
<公式サイト>https://gaga.ne.jp/thepointmen/
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<監督>イム・スルレ
<製作>シン・ボムス、ナム・ジョンイル
<脚本>アン・ヨンス
<撮影>イ・スンフン
<編集>キム・サンミン
<音楽>チョン・ヒョンス
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