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【映画レビュー】「そして僕は途方に暮れる」(2022 日本) [映画]

【映画レビュー】「そして僕は途方に暮れる」(2022 日本)
 シアターコクーンで上演された舞台を原作に、監督の三浦大輔、主演の藤ヶ谷太輔が舞台版から続投する形で映画化された作品。自堕落な生活を送る主人公のフリーター・藤ヶ谷太輔(菅原裕一)が追い込まれては逃げるを繰り返し、果ては全てを失う皮肉な結末までを描いている。Kis-My-Ft2の藤ヶ谷がクズすぎる主人公の演技は、観る側をイラつかせるほどの迫真に迫るものだ。
 裕一は、恋人の鈴木里美(前田敦子)と5年間も同棲生活をしているが、だらしない性格の裕一は里美に頼りきりの上に浮気までしてしまい、里美に詰められ、裕一は飛び出すように家を逃げ出す。
 地元の北海道に帰った裕一は、親友の今井伸二(中尾明慶)に泊めてもらうが、あれこれと口うるさい裕一は伸二を怒らせ、また逃げることになる。
 その後、バイトの先輩宅などを転々とし、大学の後輩・加藤(野村周平)を頼ろうとしたところ、加藤にはすでにお見通しだった。
 仕方なく東京にいる姉・香(香里奈)に連絡すると、金を借りに来たと思われ、説教される裕一。最後の頼みである母・智子(原田美枝子)を頼る。
 智子は裕一の帰宅を喜ぶが、「帰ってきて一緒に暮らそうかな」と言うと、智子は帰ってくるなら自分が入っている宗教に入信してほしいと言う。裕一が断り、逃げようとすると、姉も父も逃げたと怒鳴られるが、結局、実家からも逃げ出す。
 その後裕一は、かつて家族を裏切った父の浩二(豊川悦司)と偶然、再会する。浩二の家に行くことになったが、浩二は再婚したものの浮気が原因で離婚していた。浩二は逃げるために携帯を切り、そして1人になった時に、「面白くなってきやがった」と呟くと裕一に教える。浩二の“クズ度”は軽く裕一の上を行くダメ親父だった。
 何か動かないといけないと感じた裕一は、里美に電話をかけ、帰ったら話をしようとメッセージを残す。その後、携帯の電源を切っていた裕一は、しばらくして電源をつけた時に里美から大量の着信があったことに気付く。
 里美から留守電にメッセージが残され、智子が倒れて病院に運ばれたという。焦った裕一は浩二に急いで病院に行こうと急かが、浩二はバツが悪いからと動こうとしない。
 裕一は「こんな時まで逃げるのか!」と浩二に怒鳴るが、浩二は「お前には言われたくない」と返されてしまう。「あんたとは違う!」と言い放ち、裕一は病院へと向かう。
 病院に行く途中、裕一は里美に出会う。智子の様体は回復し、すでに家に帰ってきていた。心配した里美は家まで付いてきてくれ、さらに、伸二も合流します。実家に着くと香もいて、智子もすっかり元気になっていた。
 5人で食事をしながら、何も言い出せない裕一に、香は叱り、裕一は初めて涙を流して謝罪する。里美と伸二を駅まで送る裕一、こんな男でも、伸二はまだ親友だと言ってくれる。
 伸二と別れ、実家に帰ると浩二が帰ってきた。裕一が忘れていた年越し蕎麦を言い訳に帰った浩二は「俺は頑張った」と言う。その夜、菅原家は久々の一家団欒で年を越した。
 東京に戻った裕一は、迷惑をかけたバイトの先輩に謝りに行く。先輩は怒りながらも優しい言葉をかける。そして里美のマンションに行き、改めて謝罪すると、里美が泣きながら謝る。「好きな人が出来たから別れてほしい」というのだ。その相手はなんと親友の伸二だった。
 親友に恋人を同時に両方失い、何もなくなった裕一は、父の教え通り、「面白くなってきやがったぜ」と呟くのだった。
 “働いたら負け”を地で行くようなダメ男の裕一だが、自分勝手に生きる父・浩二、家族に見捨てられて新興宗教にハマる母・智子、そんな家庭と距離を置く姉・香…。まさに“この親にしてこの子あり”といった環境だ。
 たった6人のキャストしか登場しないものの、それぞれがキャラ立ちした役柄を好演しており、リアルにありそうな話だと感じさせる。
 救いようのない男が全てを失い、タイトル通り“途方に暮れる”ラストシーンだが、鉄槌を下されてもなお、反省の色を見せない裕一。最初はイラつくが、何故だか徐々に感情移入させられる不思議な主人公だ。
 現実、こうして図々しく世の中を渡り歩いているクズはゴマンといるのだろう。本作はコソコソとゴキブリのように生きている父と子、そしてクズ男を取り巻く複雑な環境を描いている物語でもあるのだ。
 鑑賞した後、心のどこかにモヤモヤが残るストーリーだが、それと同時に身につまされるような作品でもあった。
<評価>★★★★☆
<公式サイト>https://happinet-phantom.com/soshiboku/
<公式X>https://twitter.com/soshiboku_movie
<公式Instagram>https://www.instagram.com/soshiboku_movie/
<公式TikTok>https://www.tiktok.com/@soshiboku_movie
<監督・脚本>三浦大輔
<製作>小西啓介、藤島ジュリーK.、渡辺和則、荒木宏幸、中野哲夫
<企画・プロデュース>小西啓介
<プロデューサー>政岡保宏、澤岳司
<キャスティングディレクター>杉野剛
<音楽プロデューサー>和田亨
<アソシエイトプロデューサー>原田耕治
<ラインプロデューサー>尾形龍一
<撮影>春木康輔、長瀬拓
<照明>原由巳
<録音>加唐学
<整音>加藤大和
<美術>野々垣聡
<スタイリスト>小林身和子
<ヘアメイク>内城千栄子
<編集>堀善介
<音楽>内橋和久
<VFXスーパーバイザー>村上優悦
<サウンドエフェクト>小島彩
<助監督>高土浩二
<制作担当>土田守洋
<原作>舞台「そして僕は途方に暮れる」(作・演出 三浦大輔)
<エンディング曲>大澤誉志幸「そして僕は途方に暮れる 2023 movie version」(Sony Music Labels)
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