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【映画レビュー】「JFK 新証言 知られざる陰謀 劇場版」(原題「JFK Revisited: Through the Looking Glass」/2021 アメリカ) [映画]

【映画レビュー】「JFK 新証言 知られざる陰謀 劇場版」(原題「JFK Revisited: Through the Looking Glass」/2021 アメリカ)
 1963年11月23日の早朝、世界のテレビ放送史上に残る、太平洋を越えた日米間の衛星中継(当時は「宇宙中継」と呼ばれた)が行われた。午前5時28分、史上初めて海を越えてくる“憧れの国・アメリカ”の映像が、日本のお茶の間で鮮やかに映し出される、はずだった…。ところが、この歴史的な電波に乗って送られてきたのは、アメリカ合衆国第35代大統領ジョン・F・ケネディ暗殺の悲報。中継したNHKのアナウンサーは困惑の色を隠せず、「この電波でこのような悲しいニュースをお送りしなければならないのは誠に残念です」とだけ伝え、その衝撃は、米国のみならず、日本全国にも広がった。
 本作は、1992年に、188分(ディレクターズカット版は206分)の超大作『JFK』で、ケネディ暗殺事件に独自の視点で迫い、アカデミー賞で撮影賞と編集賞を受賞したオリヴァー・ストーン監督が、新たに解禁された数百万ページにおよぶ機密文書の中から重要な発見をあぶり出して再検証し、さらに、事件の目撃者など関係者へのインタビューから浮上した“新たな証拠”を深く掘り下げ、事件の真相に迫るドキュメンタリーだ。
 米国時間の1963年11月22日、オープンカーでダラス市内をパレードしていたケネディ大統領が銃撃され死亡する事件が起こる。容疑者として拘束された元海兵隊員オズワルドも移送中、公衆の面前で射殺され、真相は闇に葬られる。
 事件から28年後の1991年、ストーン監督による映画『JFK』が世界的ヒットにより機運が高まり、翌年には新法案が可決し、膨大な文書が機密解除されるなど事件の再調査が活気を帯びるが、真実はわからないまま年月だけが過ぎていく。
 本作は、『JFK』のロバート・リチャードソンが撮影を担当し、ナレーションは俳優のウーピー・ゴールドバーグとドナルド・サザーランドが担当するなど、ドキュメンタリーとすれば豪華なキャスティングで製作された。
 東西冷戦のさなか、選挙で選ばれた大統領としては史上最も若い43歳で大統領に就任したケネディは、世界平和を願う米国人の期待を一身に担う存在となる。歴代大統領の中で最も知名度が高く、ニューヨークの国際空港にもその名が刻まれているほど、現在でも尊敬の対象となっている。しかし、その在任期間は1036日で、現職のバイデン大統領を除くと歴代7番目の短さだ。
 1961年1月に大統領に就任し、その2年10か月後、ダラスで凶弾に倒れることになったからだ。米国の大統領はそれ以前にも、第16代のリンカーン、第20代のガーフィールド、第25代のマッキンリーが在任期間中に暗殺されている。また、第40代のレーガン大統領の暗殺未遂事件も起こった。
 日本で生きているとどうしても、「米国は治安が悪く、銃社会だから…」と感じてしまいがちだ。しかしながら、歴史を紐解いていくと、暗殺された米国大統領は4人。対して日本では、初代の伊藤博文から数えると6人もの総理大臣が暗殺され、昨年の安倍晋三前首相への銃撃事件を“暗殺”と定義するならば、米国で起きたで悲劇の数を上回るのだ。国家トップの暗殺という国を根幹を揺るがす事態として、この問題は他山の石ではないのだ。
 米国大統領の命が狙われるのは、絶えず分断が起きる多民族国家のトップの“宿命”ともいえるだろう。4件の大統領暗殺事件の中でも、今もなお注目を集め続けるのが、ケネディの事件だ。それはケネディの人気を裏付けるものだが、唯一、“真犯人”が不明なままだからだろう。
 オープンカーでダラス市街地をパレードするケネディの頭部を銃弾が貫く。沿道のビルから狙撃したのは、元海兵隊員のリー・ハーヴェイ・オズワルドとされ、その身柄が拘束される。
 しかしわずか2日後、移送中のオズワルドを、ナイトクラブのオーナーだったジャック・ルビーが射殺する。結果、「死人に口なし」となり、大統領暗殺の完全なる真相は闇に葬られる。
 世界の歴史でも最大の「ミステリー」のひとつ、ケネディ暗殺事件。その後、数々の謎、陰謀論が都市伝説的に広がり続ける中、オリヴァー・ストーンが事件の謎に迫る大作映画『JFK』を製作する。
 そして前作の1991年から時が経ち、新事実を追加する形でドキュメンタリー映画を製作したのが本作だ。
 ベトナム戦争で兵役に就いた経験を基に、その悲惨さを描いた『プラトーン』(1986年)や、9・11同時多発テロをストーリーに仕立てた『ワールド・トレード・センター』(2006年)など、社会派映画の第一人者であるストーンが、ここまでケネディ暗殺の謎に迫ろうと、背中を押すものは何なのか。単にミステリー映画の題材としてではなく、“ライフワーク”として、この問題に挑んでいる印象を受ける。
 ドキュメンタリー作品らしく、ストーリー的なものは存在しない。とにかくこの事件に少しでも関わった人へのインタビューがひたすら続く。あまりにも矢継ぎ早過ぎて、観る側として、頭が追いついていくのがやっとといった感じだ。
 それは、インタビューの対象は、ケネディが搬送されたパークランド記念病院で治療に携わった医師や看護師、法医学者、検視に関わった医師の元同僚、歴史学者、そして事件当日、パレード会場で惨劇を目の当たりにしたダラス市民にも渡る。
 数々の証言の中で、初動の過ちが明らかとなる。テキサス州法では、テキサス州で死亡した場合の検視は州内で行うことが規定されているが、CIAはそれを無視し、遺体をワシントンに移送する。まるで、証拠を隠すかのように…。
 その後、事件を検証するために「ウォーレン委員会」設立される。しかし、その検証は二転三転し、その被弾痕すら特定できない杜撰さだ。ついには同時に襲撃され重傷を負ったテキサス州知事ジョン・コナリーともども貫通した“魔法の銃弾”の存在を指摘するなど、あり得ないほどの機能不全ぶりを見せる。
 今もなお、ケネディ暗殺を謎たらしめているのは、ウォーレン委員会の無能さ、そしてオズワルドの単独犯行説を押し通そうとした姿勢にあるといえるだろう。
 こうして多くの事件関係者へのインタビューを重ねるものの、ストーン監督が思い描いたような真相の核心に辿り着くことはない。
 しかし、それも当然だ。「CIAの中の反ケネディ派、およびケネディの政敵が暗殺に関わっていました」などと今さら言えるはずはないからだ。仮にそんな発表をすれば、この事件は単なる殺人ではなく、クーデターとも呼べる事態となる。米国は社会不安に覆われ、治安の悪化は避けられないだろう。
 事件から60年。当時、事件に関わった人々も、次々と鬼籍に入りつつある。このタイミングで本作を作った意図として「証言を記録し、事件を風化させない」ことが主な目的だろう。
 あくまでも、“社会派ドラマ”として制作された1991年版の『JFK』から、さらに踏み込んだ内容で、米国の暗黒の歴史に挑んだ本作。ドキュメンタリーとしてだけではなく、記録映画としての役割も十分に果たしている一作だ。
<評価>★★★★☆
<公式サイト>https://www.star-ch.jp/jfk-shinshogen/
<監督>オリバー・ストーン
<製作>ロブ・ウィルソン
<製作総指揮>アンドレア・スカルソ、アミット・パンディヤ、ピーター・タッチ、フェルナンド・サリシン
<脚本>ジェームズ・ディユジニオ
<撮影>ロバート・リチャードソン
<編集>カート・マッティラ
<音楽>ジェフ・ビール
<ナレーション>ウーピー・ゴールドバーグ、ドナルド・サザーランド
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  • 発売日: 2020/04/22
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【映画レビュー】「JFK」(原題「JFK」/1991 アメリカ) [映画]

【映画レビュー】「JFK」(原題「JFK」/1991 アメリカ)
 1963年11月22日、テキサス州ダラスで起きたケネディ大統領暗殺事件の捜査に疑問を抱き、独自に捜査する地方検事ジム・ギャリソン(ケビン・コスナー)を主人公にした作品。あくまでフィクションとしているが、当時の映像や新聞報道が、ところどころに登場し、限りなくノンフィクションに寄せているといっていいだろう。
 本編は189分、ディレクターズ・カット版は206分という超大作だ。オリバー・ストーンがいかにこの事件に関心があったか、真実を追求しようとしたかが伝わってくる。
 独自捜査を進めていく中で、オズワルド(ゲイリー・オールドマン)による単独犯行説は否定され、陰謀説が色濃くなっていくが、証人の中には不審死を遂げる者も現れ、恐怖を感じて証言を拒否する人も増えていく。しかし、事件に関する重要人物としてニューオーリンズの実業家クレイ・ショー(トミー・リー・ジョーンズ)に行き当たる。
 事件の真相に迫るはずのウォーレン委員会は、証言を改竄し、事件を闇に葬ろうとするが、ギャリソンはワシントンで「X」と名乗る高官と会う。彼は暗殺が政府最高レベルでのクーデターであったことを示唆し、CIA、マフィア、軍、シークレットサービス、FBI、そして当時の副大統領リンドン・ジョンソンが共謀者であるか、暗殺の真実を隠蔽する動機を持っていたと仄めかす。
さらにXは、ケネディが米軍をベトナム戦争から撤退させ、CIAを解体したがっていたために殺されたのではないかとギャリソンに語る。
Xはギャリソンに捜査を続けてショーを起訴するよう勧め、ギャリソンはショーをケネディ殺害の共謀罪で起訴する。
 一方で、ギャリソンがあまりにも事件にのめり込んでいったことで、妻のリズ(シシー・スペイセク)は不満を溜め込み、家族関係はギクシャクする。遂にはギャリソン上に無言電話がかかってくるようになり、リズはギャリソンが自己中心的だと責め、同性愛者であるという理由だけでショーを攻撃していると非難する。対するギャリソンも言い返し、口論の末、「離婚」も口にする。
 ギャリソンのスタッフもショーの動機を疑い始め、ギャリソンのやり方に異を唱え、調査から離れていく。その中の1人、ビル・ブルサード(マイケル・ルーカー)は、実はFBIの内通者で、ギャリソンを誘拐、殺害するといった役割を担っていたことが、後に明らかになる。
 さらに、ギャリソンは陰謀論を裏付けるために税金を無駄にしているとしてメディアで批判される。対するギャリソンはマーティン・ルーサー・キング牧師の暗殺とケネディの暗殺との間に関係があると読む。
 ショーの裁判は1969年から始まる。ギャリソンは裁判所に対し、「1発の銃弾」という説の却下を提案し、ジョンソンを大統領の座に就かせることを目的として、3人の暗殺者が6発の発砲を行い、オズワルドをケネディ殺害の罪に陥れたという仮説を提示する。それはリンドン・ジョンソンが次期大統領になれば、ベトナム戦争を激化させ、防衛産業を儲けさせることが出来るからであるという根拠によるものだ。
 しかし、陪審は1時間足らずの審議の後、ショーに無罪判決を下す。この訴追は失敗に終わり、大統領暗殺という国家を揺るがす事件の真相は闇に葬られてしまうが、ギャリソンの信念は、妻リズや5人の子どもたちの尊敬を勝ち取り、家族との関係は修復するのだった。
 とにかく長尺の作品だが、矢継ぎ早に様々な出来事が起こり、米国の黒歴史を知る上で非常に重要な作品だ。
 オリバー・ストーン自身も「あくまでエンターテインメント」と語っている通り、作中で起こる出来事には、ある程度の誇張や脚色もある。しかしながら、自身の戦争体験を基に、数々の社会問題を題材としてきたオリバー・ストーンの真骨頂が垣間見える作品でもある。この作品のヒットによって、政府も対応を迫られ、翌年、機密文書の公開に至ることになる。1つの映画作品が国家をも動かした点で、歴史に残る偉業を成し遂げたといえよう。
<評価>★★★★★
<公式サイト>https://www.20thcenturystudios.jp/movies/jfk
<監督>オリバー・ストーン
<製作>A・キットマン・ホー、オリバー・ストーン
<製作総指揮>アーノン・ミルチャン
<脚本>オリバー・ストーン、ザカリー・スクラー
<撮影>ロバート・リチャードソン
<美術>ビクター・ケンプスター
<衣装>マーリーン・スチュワート
<編集>ジョー・ハッシング、ピエトロ・スカリア
<音楽>ジョン・ウィリアムズ
<原作>ジム・ギャリソン、ジム・マース「JFK ケネディ暗殺犯を追え」(早川書房)
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  • 出版社/メーカー: ウォルト・ディズニー・ジャパン株式会社
  • 発売日: 2018/03/16
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【映画レビュー】「極限境界線 救出までの18日間」(原題「교섭」・英題「The Point Men」/2023 韓国) [映画]

【映画レビュー】「極限境界線 救出までの18日間」(原題「교섭」・英題「The Point Men」/2023 韓国)
 本作は、2007年にアフガニスタンで実際に起きた、武装組織タリバンによる韓国人23人の拉致事件を題材に描いた、実話に基づくサスペンスドラマだ。韓国政府が交渉役として現地に派遣したエリート外交官と現地工作員が協力し、タリバン政権を相手に人質救出作戦に挑む。
 『哭声/コクソン』(2016)のファン・ジョンミン、韓ドラの金字塔『愛の不時着』のヒョンビン、ドラマ『ウ・ヨンウ弁護士は天才肌』のカン・ギヨンら、豪華キャストが名を連ねている。
 冒頭、2001年9月11日、世界を震撼させた、米国同時多発テロが起き、ワールドトレードセンターにハイジャック機が激突する、あの衝撃的な映像が写し出される。
 それを機に、米軍とその同盟国によるアフガニスタン紛争が勃発。韓国軍も同盟国に名を連ねる。
 紛争の最中、当地に“平和布教”の活動に訪れていた「エホバ教」の信者である韓国人グループ23人が、テロ組織アルカイダに襲撃され、人質となってしまう。
 政府の命を受け、アフガニスタンに向かった外交官チョン・ジェホ(ファン・ジョンミン)は首都カブールに派遣され、現地工作員パク・デシク(ヒョンビン)と共に、困難な交渉に挑んでいく。
 現地では、米国などの肝いりで暫定政権が発足したものの、交渉の窓口としては、全くといっていいほど役に立たず、ジェホは途方に暮れる。刻一刻と迫るタイムリミット。タリバン側の要求は当初「タリバン収監者の解放」だったが、真の意図は分からないままだ。
 一度はデシクが現地のフィクサーと交渉し、人質解放の約束を取り付けるが、捕らえられた人質がボランティアを自称していたことがウソだったと知られ、決裂してしまう。
 性格的に全く水と油であるジェホとデシクは、事あるごと衝突する。あくまでも外交ルートで交渉しようとするジェホと、タリバン政権との直接交渉を主張するデシクの2人では、意見が合うはずもなかった。さらにデシクは、イラクでの人質救出作戦に失敗し、犠牲者を出した痛恨の過去を抱えていた。汚名返上のチャンスをうかがっていたのだ。
 遅々として進まない交渉、徐々に追い詰められていく人質たち…。彼らを救うため、ジェホとデシクは不本意ながらも手を組むことにし、身代金を用意する。しかし、身代金を要求した交渉相手は詐欺師であり、身代金を持ち逃げされてしまう。デシクは決死の覚悟で詐欺師を追い、過酷なアクションの末、カネを取り戻す。その後も政府には、タリバンの“将軍”や“司令官”を名乗る者から次々と連絡が入り、誰が本物で、何が起きているのかも分からず、政府職員は混乱する。
 ついには外相がアフガンに乗り込み、米軍と組んでの「軍事作戦」に打って出ようとする。既にこの時点で2人の犠牲者を出していたが、いよいよ人質全員の命が危うくなる。
 ジェホは“もう自分は用済み”とばかりに帰国の途に就こうとしたところ、大統領直々で「タリバン政権との直接交渉」にゴーサインが出る。面目を潰された形の外相は怒り狂うが、ジェホはデシクとともに、敵陣へと向かう。
 タリバン側が直接交渉に臨む際、「代表者と通訳1人ずつ」という条件を出してきたため、ジェホは通訳のカシム(カン・ギヨン)を引き連れ、交渉に向かう、そんな彼にデシクは、“万が一”と時のためとして、毒薬を渡して送り出す。
 命のやり取りをするような交渉の最中、米軍が交渉の場であるタリバンのアジトへの攻撃を開始する。タリバン側の代表者は「韓国人は二度とアフガニスタンの地を踏むな」と捨て台詞を残し、逃亡。ジェホは命を懸けた交渉に成功し、残りの人質全員の解放に繋げる。
 一方で、解放された民間人の代わりとして、デシクが自ら人質となるが、殺害されることはなく、その後、ジェホに電話してきた時にはターバンに身を包み、すっかり現地に馴染んでいる様子だった。こうして、激動の18日間は幕を閉じた。
 アフガニスタン紛争はアルカイダのトップ、オサマ・ビンラディンの殺害により、一応の決着を見た。しかしながら、2021年に米軍がアフガニスタンから全面撤退したタイミングでタリバンは全土を掌握。再び政権を握った。
 これにより、200人とも300万人ともいわれる難民が発生している。
 同作はあくまで、16年前の韓国人人質事件にフォーカスして、物語が進められているが、実際は“現在進行形”といっても過言ではない。
 ストーリーとしては、人質事件を巡り、国家同士の外交と、それに携わる人々の物語をテンポ良く描いており、さらに、ファン・ジョンミンやヒョンビンといったトップ俳優の演技はもちろん、ヒョンビンのアクションも見どころの一つであり、ただただ重いムードで進むことなく、観衆を楽しませようとしている姿勢が見て取れる。さらに韓国政府側、タリバン政権側のキャストの演技によって、より切迫した雰囲気が伝わってくる。
 日本でこのようなことが起きるとすぐに“自己責任論”が飛び交うが、本作で人質となってしまう「エホバ教」の信者たちは、あくまでも平和的に布教活動を行っていたはずであり、その責を負わせることはあまりに酷だろう。
 過去を振り返りながらも、現在のアフガニスタンの政情にも思いを馳せるような作品だ。
<評価>★★★☆☆
<公式サイト>https://gaga.ne.jp/thepointmen/
<公式X>https://twitter.com/pointmen1020
<映画配給 ギャガ株式会社公式X>https://twitter.com/gagamovie
<映画配給 ギャガ株式会社公式Facebook>https://www.facebook.com/gagajapan
<映画配給 ギャガ株式会社公式Instagram>https://www.instagram.com/gagamovie_jp/
<映画配給 ギャガ株式会公式TikTok>https://www.tiktok.com/@gagamovie_jp
<監督>イム・スルレ
<製作>シン・ボムス、ナム・ジョンイル
<脚本>アン・ヨンス
<撮影>イ・スンフン
<編集>キム・サンミン
<音楽>チョン・ヒョンス
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極限境界線 救出までの18日間 [DVD]

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【映画レビュー】「理想郷」(原題「As besta」/2023 スペイン・フランス) [映画]

【映画レビュー】「理想郷」(原題「As besta」/2023 スペイン・フランス)
 本作は、2022年秋に開催された第35回東京国際映画祭に『ザ・ビースト』の題名で出品され、最優秀作品賞にあたる「東京グランプリ(東京都知事賞)」をはじめ、最優秀監督賞、最優秀主演男優賞の主要3部門を獲得したスペイン・フランス合作のサスペンスホラーだ。
 1997年、スペインの小村・サントアラに移住したオランダ人夫婦マーティンとマルゴが起こした事件に基づいており、2010年の事件発覚から裁判が終わるまでの8年間、多くの新聞が報道した実話ベースのストーリーで、この事件については、2016年に、ドキュメンタリー映画『サントアラ』が製作されるなど、スペイン全土を震撼させた。
 本作では、実際に事件を起こしたオランダ人夫婦を、アントワーヌ(ドゥニ・メノーシェ)とオルガ(マリナ・フォイス)のフランス人夫婦に置き換えた上で、田舎暮らしとその現実をテーマに、人間の暗部に迫っている。
 ストーリーは2部構成となっており、前半は、夫のアントワーヌと、移り住んだ村の住民たちの対立や度重なる嫌がらせを軸に描いた緊張感漂う心理スリラー、後半は、妻・オルガを中心としたラブストーリーが展開されている。
フランスから“スローライフ”に憧れ、スペイン北西部のガリシア地方の山中の村に移住し、古民家を買い取った上でリフォームし、フランスから仕入れた作物を、青空市場で販売し、生計を立てていたアントワーヌ夫妻。さらに、自ら農地を開墾し、有機野菜を栽培、商売を拡大しようとしていた。
 アントワーヌは、地元のコミュニティーに溶け込もうとするが、隣人の兄弟シャン(ルイス・サエラ)とロレンソ(ディエゴ・アニード)をはじめとする地元民は彼ら夫妻を受け入れようとはせず、「フランス野郎」と罵るのは日常茶飯事。さらには井戸にバッテリーを投げ込まれ、収穫寸前の作物を台無しにされてしまう。
 アントワーヌも黙ってはいられず、警察に相談するが相手にされない。ならばと隠しカメラを設置し、犯人を特定した上で反撃を試みるが、その行為によって、ますます村から居場所を失っていく。遂にはライフル銃を持ったシャン兄弟に待ち伏せされるなど、命にも危険が及ぶ。
 対立の発端は些細な出来事だった。村に建設される風力発電機の建設計画に、村の総意と反し、アントワーヌは反対していたことだった。
 対立はエスカレートし、アントワーヌもシャン兄弟も、互いに憎悪を隠そうともせず、徐々に凶暴性を帯びていく。やがて陰湿極まりない“村八分”が始まる。そしてついには、シャン兄弟がアントワーヌを襲い、その命を狙う。
 スペインの穏やかな田園風景をバックに、田舎暮らしの理想と現実を、残酷なまでに示しているが、程度の差こそあれ、“田舎暮らしブーム”が起きている、ここ日本でも田舎特有のコミュニティーに馴染めず、都会に舞い戻る例には暇がない。本作の邦題として採用された『理想郷』とは、最大級の皮肉であることを示しているのだ。
 後半ターンはかくして“未亡人”となってしまったオルガを中心にストーリーが展開する。夫に手をかけた殺人者が近所に住んでいるにも関わらず、女手一つで農地を管理し、市場で売りさばく生活を続ける。
 そんなオルガを心配し、村を訪れた一人娘のマリー(マリー・コロン)は、「こんな危険な村にいてはいけない」フランスに戻ることを提案するが、オルガはそれを拒み、母娘間でケンカになってしまう。
マリーは父が遺したビデオカメラ映像を手掛かりに、父の身に起きた真相を探ろうとする。
 一方、オルガは後日、森の中で、シャン兄弟がアントワーヌを殺害した証拠となるビデオカメラを発見する。カメラを警察に提出したその足で、シャン兄弟を訪ね「あなたたちはもうすぐ刑務所行きね」と告げ、さらに、兄弟の母には「あなたは私のように孤独になる」と語りかける。
 アントワーヌの遺体が発見され、検分のため警察の車に乗るオルガに向かって、シャン兄弟の母親が微笑みかけるところで、このおぞましい物語は終わる。
 監督・脚本を務めたのは、ヴェネチア国際映画祭で高く評価された前作『おもかげ』(2019)でスペインの新たな才能として名を知らしめた、新鋭ロドリゴ・ソロゴイェン。本作はスペインで2022年に公開され、独立系映画の興行収入1位を獲得し、世界中で50以上もの賞を獲得した注目作だ。鑑賞後は、これが実話だったことを思い出し、思わず戦慄するだろう。
<評価>★★★★☆
<公式サイト>https://unpfilm.com/risokyo/
<公式X>https://twitter.com/risokyoeiga
<映画配給会社アンプラグド公式Instagram>https://www.instagram.com/unplugged_movie/
<映画配給会社アンプラグド公式Facebook>https://www.facebook.com/unpfilm.inc
<監督>ロドリゴ・ソロゴイェン
<製作>トマ・ピバロ、アン=ロール・ラバディ、ジャン・ラバディ、ロドリゴ・ソロゴイェン、ナチョ・ラビージャ、エドゥアルド・ビジャヌエバ、サンドラ・タピア、イグナジ・エスタペ、イボン・コメンサナ
<製作総指揮>サンドラ・タピア
<脚本>ロドリゴ・ソロゴイェン、イザベル・ペーニャ
<撮影>アレハンドロ・デ・パブロ
<美術>ホセ・ティラド
<衣装>パオラ・トレス
<編集>アルベルト・デル・カンポ
<音楽>オリビエ・アルソン
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【映画レビュー】「劇場版 センキョナンデス」(2023 日本) [映画]

【映画レビュー】「劇場版 センキョナンデス」(2023 日本)
 投票日の前々日に起きた安倍元首相銃撃死傷事件や、ガーシー(NHK党)、水道橋博士(れいわ新選組、のちに体調不良を理由として議員辞職)の当選など、さまざまな出来事が記憶に新しい2022年の参議院議員選挙。しかしながら、その投票率は52.05%。前回より3.25ポイント上がったもののが、それでも投票したのは有権者の半分ほど、過去4番目の低さだった。
 国政選挙以上に深刻なのが、地方選挙の投票率の低さであり、50%を超えることすら珍しくなってきており、30%台を記録する自治体も現れてきているなど、投票率の低下に歯止めがかからない状況が浮き彫りになっている。
 2016年に、公職選挙法が改正され、選挙権年齢を20歳以上から18歳以上に引き下げたものの、18、19歳の投票率は30%ほどであり、全体の投票率を引き下げる要因となってしまっているのが現状だ。もはや「選挙離れ」などといった現象ではなく、政府、内閣、そして国会議員全員への期待など、端から持っていないといった方が近いのかもしれない。
 同作は、そんな選挙に魅せられ、野次馬根性丸出しで候補者を追い続けるロードムービーだ。その主人公は芸人とラッパーという異色の組み合わせ。主にYouTubeで活躍している2人だが、その行動力の源は、おふざけでもチャンネル登録者数アップなどではなく、純粋な興味だ。徹底して「誰かに伝えたい」よりも「自分が知りたい」を優先させていることから、ジャーナリズムとも違う。だからこそ、2021年の衆院選と2022年の参院選において、十数人もの候補者に突撃し、ズケズケを質問を浴びせていく様は痛快ですらある。しかしながら、取材相手を怒らせたり、重大なトラブルにならなかったのは、2人の知識の深さや行動力はもちろんのこと、その物腰の柔らかさにあるのではないだろうか。
 その2人とは、新聞14紙を購読しているという時事芸人のプチ鹿島と、ロンドンで育ち海外メディアの情報に精通する東大中退のラッパー・ダースレイダー。同作は、時事ネタをぶった切る絶妙な掛け合いが人気を博し、「ヒルマニア」というコアなファンを持つ2人のYouTube番組「ヒルカラナンデス(仮)」のスピンオフ企画として敢行された選挙取材のドキュメンタリーだ。
 そして、2人の活動を知り 「彼らは日本のマイケル・ムーアだ」と絶賛する『なぜ君は総理大臣になれないのか』(2020年)、『香川1区』(2021年)などの代表作を持つ映画監督の大島新が、プロデューサーとして関わり、異色のコラボによって、破天荒なドキュメンタリー映画に仕上がっている。
選挙取材の楽しさを知る2人は、2022年の参議院選挙を取材する。2人が取材をする基準は「ヒリヒリする現場」である。
 そこで目を付けたのが、立憲民主党の菅直人元首相だ。すっかり“隠居生活”に入ったと思われていた菅氏だが、2022年に入ってから、突如、日本維新の会に対して激しい批判をするようになる。ツイッターでは維新の政治家をヒトラーになぞらえて物議を醸す。維新のみならず、身内からも抗議を受けてもひるまず、「闘うリベラル宣言」と称して、参院選では維新の牙城である大阪に乗り込み、大阪特命担当として立憲民主党の候補者の応援に入ると聞きつけ、2人も大阪に乗り込む。菅氏vs維新のバトルを味わいつつ、各候補者に積極的に取材する。「野次馬系ユーチューバー」扱いを受けながらも、ドキュメンタリータッチの見応えある映像が続く。
 選挙戦後半には、自民・立憲・維新の三つ巴の激戦区と言われる京都にも乗り込む予定にしていた。しかし、思いもよらぬ事件が…。
 2022年7月8日金曜日。この日からまた関西での選挙取材を予定していた2人は、その前に大阪のホテルで毎週金曜に行っているYouTube配信を始めた。時刻は昼の12時。配信画面に映し出された2人の表情からは、いつもの明るさが消えていた。
 その直前に、奈良・西大寺駅前で安倍元首相が銃撃されたという一報が入ったのだ。
 状況をよく飲み込めず、沈痛な面持ちで訥々と語る2人。選挙の面白さや楽しさに気付き、「選挙は祭りだ」といって見てきた演説の現場で起きた言論を封殺する暴力は、全く容認できない。しかし、選挙をネタとして笑いに昇華させてきた2人のスタンスが、銃撃事件を受けて不謹慎だと思われてしまわないか…。
 配信を終え大阪の街に出た2人は、この日、自分たちも含め、誰が何をどう考えたかを記録として残そうと決意する。この日は街頭演説を中止する候補者がほとんどだったが、敢えて演説を行う候補者もいた。夕方の大阪・梅田駅前。ダースと鹿島の目の前に、辻元清美氏の姿があった。
 言論を封殺するような事件が起きたからこそ、それに屈するわけにはいかないと、党の方針に反して選挙活動を再開したのだ。安倍氏とは考え方に違いはあったが、徹底議論をしてきた辻元氏。悲壮感漂う表情で、安倍元首相の無事を願った。演説後の囲み取材の中で声を震わせながら「安倍さん、がんばってやという思い…」と話した直後、関係者から、「安倍氏死去」を報じたネットニュースを見せられる。
 口から生まれてきたようなキャラクターの辻元氏ですら、その一報を聞いた刹那、絶句する。しばしの沈黙の後、涙をぬぐいながら絞り出すように言葉を発する辻元氏。ダースと鹿島は、その数少ない目撃者であり、そして記録者となった。
 あってはならないことではあるが、安倍氏襲撃事件によって、“清き一票”よりも“卑劣な一発”(正確には2発だが)の方が政治を動かす力があることが白日の下にさらされてしまった。選挙という国家的イベントの真実、そして、民主主義とはいったい誰のために存在するのか…答えの出ない問いを胸に、この先も2人の旅路はまだ続く。
<評価>★★★★☆
<監督>ダースレイダー、プチ鹿島
<エグゼクティブプロデューサー>平野悠、加藤梅造
<プロデューサー>大島新、前田亜紀
<監督補>宮原塁
<撮影>LOFT PROJECT
<編集>船木光
<音響効果>中嶋尊史
<音楽>The Bassons
#センキョナンデス #映画 #選挙 #政治 #プチ鹿島 #ダースレイダー #大島新 #ドキュメンタリー #YouTube #ネツゲン

劇場版 センキョナンデス

劇場版 センキョナンデス

  • 出版社/メーカー:
  • 発売日: 2023/11/15
  • メディア: Prime Video






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【映画レビュー】「犬も食わねどチャーリーは笑う」(2022 日本) [映画]

【映画レビュー】「犬も食わねどチャーリーは笑う」(2022 日本)
 田村裕次郎(香取慎吾)はホームセンター「島忠」の副店長。客として訪れた日和(岸井ゆきの)と出会う。
 物語は2人の出会いから7年後、結婚から4年目の夫婦となったところから始まる。
 日和が「ふんばりくん」という耐震の棒を上から取ろうとしているところを、裕次郎が助けたことがきっかけだ。
 裕次郎は筋トレが趣味の平凡な男。子はいないものの、浮気などもせず、表向きは日和との夫婦仲にも問題ないようにも見える。しかし、セックスレスの期間は2年半にも及んでいた。
 一方、日和は、裕次郎に対し、ストレスを溜め込んでおり、その鬱憤を「旦那デスノート」なるSNSに吐き出していた。
 ある日、裕次郎は同僚の蓑山(余貴美子)に「旦那デスノート」の存在を教えられる。そして、自分のことを書いていると思えるような投稿を見つける。気になる投稿者のペンネームは「チャーリー」。チャーリーとは、夫婦で飼っているフクロウの名前だったのだ。
 投稿には。裕次郎が食べたキーマカレーに冷凍マウスのミンチを入れたと書かれていた。マウスのミンチは飼っているチャーリーの餌だ。裕次郎は吐き気を催しトイレに駆け込む。
 一方、日和はクレーム対応をするコールセンターで働いている。セクハラ上司の葛城周作(眞島秀和)は日和に気があるそぶりを見せてくる。
 ある日、出版社の男から、「旦那デスノート」の7人の投稿を集めて出版したいと話を持ち掛けられる。日和は自分の投稿が認められたことで喜びを感じる。
 裕次郎は、過去の日和の投稿を読みあさり、口が臭い、靴下が臭いなど、悪口ざんまいの内容にショックを受ける。
 日和が帰ってきてくるが、気づかないふりをして過ごす裕次郎。翌日は最悪な気分で仕事へ向かう。
 浦島店長(的場浩司)は、店員の若槻広人(井之脇海)が結婚式のスピーチを自分ではなく裕次郎に頼んだことで文句を言う。浦島店長はバツ3だったからなのだ。
 その後、店員のまやが接客で困っていたところを裕次郎が助ける。それをみんなから人気の汐音が遠くから見ていた。
 日和の高校の同級生・晶は、2歳の息子がいる。コインランドリーで待ち合わせると、晶は旦那が浮気していると愚痴る。日和もデスノートの本を出すかもしれないことを晶に伝えると喜ぶ。
 日和が家に帰ると義母の千鶴(浅田美代子)から電話が鳴る。電車に乗ると見せかけるため、アレクサに山手線の音楽をかけてもらう。千鶴は仕事を辞め、早く子どもを作るよう迫ってくるから苦手なのだ。 
 塚越から「デスノート」のメンバーで集まるからと誘われ、裕次郎から「夕飯はいらない」と連絡が来たので向かう日和。すると、みんな旦那への愚痴で盛り上がっていた。そこへ蓑山が現れ、お互いに驚く。
 裕次郎は帰る気にならず、近くのファミレスに行き、カレーを注文する。以前、日和とここで再会し、仲良くなったことを思い出していた。
 就活をしている日和に、緊張をほぐすためには肘をなめようとするといいと教えてあげ、楽しく話した。7年前の日和の笑顔が頭に浮かんでしまう。そこへ汐音が偶然来て、ドキドキする裕次郎。
 自分は結婚できないと言う汐音に、もしかして自分を好きだから?と裕次郎は思う。
 日和は酒で気分が良くなるが、外に出て荷物をぶちまけてしまい、蓑山に妊娠3か月のエコー写真を見られてしまう。2年前、日和は流産していたのだ。その時、裕次郎は自分に寄り添ってくれなかった。
 旦那デスノートに不満を書き込むようになったのは、それがきっかけだった。
 しかし蓑山は、チャーリーの投稿を裕次郎に見せたから、気づいているかもしれないと日和に謝る。日和は血の気が引く。だが、裕次郎に向けて書いているものだから、自分の苦しみ、怒りを知ればいいとも思っていた。
 裕次郎は汐音とラインを交換し、その名前を「きたろう」と変更する。家に帰り、結婚式の日に休みを取ったという日和に、「そんな仕事いつ辞めてくれてもいい」と伝える裕次郎。日和は「誰でもできる仕事って言いたいの?」と突っかかり2人は言い合いになる。
 その夜、日和が後からベッドに入ると、「きたろう」という名前で「明日ごはん行きたいです!」とハートマークもついたラインが来る。モヤモヤした日和は蓑山に連絡した。
 翌日、裕次郎は「残業で遅くなるから夕食はいらない」と日和に嘘をつき、汐音と近くのファミレスで飲む。日和から電話があったが無視して汐音と乾杯する裕次郎。日和はファミレスの外から裕次郎のにやけた顔を見て、気持ち悪いと感じる。しかも日和と裕次郎が仲良くなった席で他の女の子と笑ってるのが許せなかった。
 日和は昔、裕次郎といつも公園のベンチで待ち合わせ、「例のベンチ」と呼んでいた。2人で空を見上げると空からレジ袋が落ちてきた。それを取ったら幸せになると裕次郎が言い、2人でそれを拾い、笑い合った。そしてキスをした。あの頃は、裕次郎のことがただ好きだったと思い出す日和。
 裕次郎が帰ると日和は寝ていた。デスノートを開くと、投稿が目に入る。「浮気とはいいご身分ですね。いよいよ離婚の足音が近づいてまいりました」。裕次郎は思わず日和を起こして問い詰める。
 喧嘩になり、日和は流産した時、裕次郎が寄り添ってくれなかったことを逆に問い詰めるが、裕次郎はそっとしておいただけだと言い、話は平行線のまま終わる。
 日和は4年前のプロポーズを思い出す。例のベンチで、みんながフラッシュモブしてくれた。しかし、日和はOKしなければ、喜ばなければいけない状況に戸惑い、息苦しかった。裕次郎が普通に結婚してほしいと言ってくれたら喜べたのにと違和感を覚えた。それを今になって実感し、悲しくてしかたなかった。
 晶と会った日和は、昔からいつも人に流されると決めつける晶に言い返し、子供がいる晶に、「子どもいるからって偉いの?」と怒る。日和は自分にないものを持っている晶に嫉妬していた。
 日和は正式に出版の話を断る。裕次郎に向けて投稿できればいいと思ったからだった。それから日和は孤独を感じ、パソコンを購入し、仕事は有給を取り、毎日ひたすらデスノートに投稿する。家事もチャーリーの世話以外は何もしなかった。裕次郎も声を掛けられず家庭内別居になっていく。
 若槻の結婚式当日、日和はちゃんとメイクし、フォーマルなワンピースも身に着け、2人でタクシーで式場まで向かう。
 到着すると何と、新郎新婦が来ていないと大騒ぎになっている。しばらくすると、若槻と結婚相手の静が到着し、若槻は死んだ魚のような目をしていた。旦那デスノートを見て、マリッジブルーがひどくなったのだ。挙式も披露宴でも若槻は死んだような顔をしていた。静もふてくされていた。
 しかし、裕次郎のスピーチで空気が変わる。裕次郎はスピーチの紙をなくしていまい、ホームセンターの商品の説明を始めてしまう。異様な空気になったところで、日和が突然立ち上がり自分の肘をなめようとする。裕次郎もつられて同じことをして、緊張をほぐし、感動のスピーチとなる。
 若槻は生気を取り戻し、披露宴は最後まで和やかに終わった。日和の隣にいた浦島店長は泣きながら、裕次郎は日和と出会って変わり仕事を頑張るようになり、店にある17万の商品を全て覚えていると彼女に教えた。日和は、自分の知らない裕次郎のことを聞いて、彼がまぶしく見えた。
 まやと汐音が日和に近づき、汐音が日和に声をかけた。実は2人は付き合っていて、裕次郎とまやが仲良くしているのを見て嫉妬し、裕次郎を誘惑して職場を辞めさせようとしていた。だが裕次郎はびくともしなかったと汐音は説明した。
 タクシーで家に帰った裕次郎と日和は散らかった部屋を片付けた。裕次郎はシフトを合わせてくれたり、料理も作ってくれるようになった。買い物から2人で帰ると、出版社の男が考え直すよう日和にお願いするも、断ったため逆上し、裕次郎ともみあいになり、後頭部を地面にぶつける。日和は震えながら救急車を呼ぶ。千鶴にも連絡する。
 裕次郎は脳震盪だったようで、すぐに一緒に帰り夕食を作ろうとしたが、眠ってもらった。そこへ千鶴がやってきて、また子どものことを言ってきた。すると裕次郎が起きてきて、もういいとハッキリ言ってくれる。しかし、「たった1回失敗したくらいであきらめちゃだめ」と千鶴が言う。
日和は驚く。流産のことは誰にも言わないでおこうと約束したのに、裕次郎はその約束を破っていたのだ。
 翌朝、裕次郎が目覚めると、日和とチャーリーがいない。電話をかけるがつながらない。それでも仕事にはから元気に出勤した。
 数日後、日和から記入済みの離婚届が送られてきた。ショックを受けるも、仕事は欠かさず行く裕次郎。その方が余計なことを考えずに済むからよかった。
 女性客に「スーパーふんばりくん」について説明しながら、日和が「ふんばりくん」を出会った時の記念だからと捨てなかったことを思い出し、泣いてしまう裕次郎。
 裕次郎は走り出し、日和の職場に乗り込む。そして言い合いをする2人。葛城が裕次郎につかみかかると、日和が葛城にブチギレた。
 「夫婦のことも分からないくせにどんな女でも落ちると思ってるのが痛いんだよ」と叫ぶと、女子社員たちが次々に同調した。
 小杉という社員が、「全部システムが悪いんです!」と叫ぶのを聞き、日和と裕次郎は結婚というシステムの中で、夫、妻というものにとらわれて、自分がなくなっていたと感じた。
 お互いの気持ちを言い合い、涙と鼻水でぐちゃぐちゃになりながらも、裕次郎は言った。「お互いにもう一度1人の人間に戻って…日和と一緒にいたい」。外を見るとレジ袋が飛んでいた。2人は走って裕次郎が日和を肩車し、日和はその落ちそうなレジ袋を掴んだ。
 数日後、2人は揃って離婚届を出し、家のネームプレートには日和の旧姓の「杉本」という名前を足した。裕次郎が昼ご飯を作ってくれて、若槻の結婚式でもらったペア皿に料理をのせる。チャーリーが気持ちよさそうに羽根をゆらしながら「きゅるきゅる」と笑っていた。
 「旦那デスノート」というアイテムを軸に、夫婦とは何か?を問う作品かと思いきや、ストーリーに一貫性がなく、登場するキャラクターにも感情移入出来ない。もちろん香取慎吾と岸井ゆきのの演技には問題ないが、メンヘラかと思えるほど、感情が突然爆発してしまう主人公には、観ているこちらが逆にイライラしてしまう。
 この物語で「笑えるでしょ?」と、脚本家をはじめとする製作スタッフが思っているのだとしたら、そのセンスを疑う。それほどまでに全く笑えるポイントがないのだ。ブラックユーモアにすらなっていない。
 せっかく、芸達者の2人を主役に据えたのに、脚本の拙さで台無しにした残念な作品だ。これほどまで“超”の付く駄作に出合ったのも久しぶりだ。
<評価>★☆☆☆☆
<公式サイト>https://inu-charlie.jp/
<公式X>https://twitter.com/inucha2022
<公式TikTok>https://www.tiktok.com/@inucha2022
<監督・脚本>市井昌秀
<製作総指揮>木下直哉
<エグゼクティブプロデューサー>飯島三智
<プロデューサー>谷川由希子、石塚正悟、大塚健二
<音楽プロデューサー>緑川徹、濱野睦美
<撮影>伊集守忠
<照明>澤村圭祐
<録音>反町憲人
<美術>堀明元紀
<装飾>石上淳一
<衣装>渡部祥子、百井豊
<ヘアメイク>佐伯憂香
<ヘアメイク(香取慎吾担当)>澤田久美子
<音響効果>渋谷圭介
<編集>木谷瑞
<音楽>安部勇磨
<助監督>吉田亮
<キャスティング>細川久美子
<スクリプター>黒木ひふみ
<制作担当>高橋輝光
<主題歌>never young beach「こころのままに」 https://neveryoungbeach.jp/discography/229/
#犬も食わねどチャーリーは笑う #映画 #犬チャリ #旦那デスノート #市井昌秀 #香取慎吾 #岸井ゆきの #井之脇海 #浅田美代子 #余貴美子 #的場浩司 #眞島秀和 #菊地亜美 #きたろう #中田青渚 #小篠恵奈 #松岡依都 #田村健太郎 #森下能幸 #徳永えり #峯村リエ #有田あん #瑛蓮 #SNS #コメディ #キノフィルムズ







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【映画レビュー】「そして僕は途方に暮れる」(2022 日本) [映画]

【映画レビュー】「そして僕は途方に暮れる」(2022 日本)
 シアターコクーンで上演された舞台を原作に、監督の三浦大輔、主演の藤ヶ谷太輔が舞台版から続投する形で映画化された作品。自堕落な生活を送る主人公のフリーター・藤ヶ谷太輔(菅原裕一)が追い込まれては逃げるを繰り返し、果ては全てを失う皮肉な結末までを描いている。Kis-My-Ft2の藤ヶ谷がクズすぎる主人公の演技は、観る側をイラつかせるほどの迫真に迫るものだ。
 裕一は、恋人の鈴木里美(前田敦子)と5年間も同棲生活をしているが、だらしない性格の裕一は里美に頼りきりの上に浮気までしてしまい、里美に詰められ、裕一は飛び出すように家を逃げ出す。
 地元の北海道に帰った裕一は、親友の今井伸二(中尾明慶)に泊めてもらうが、あれこれと口うるさい裕一は伸二を怒らせ、また逃げることになる。
 その後、バイトの先輩宅などを転々とし、大学の後輩・加藤(野村周平)を頼ろうとしたところ、加藤にはすでにお見通しだった。
 仕方なく東京にいる姉・香(香里奈)に連絡すると、金を借りに来たと思われ、説教される裕一。最後の頼みである母・智子(原田美枝子)を頼る。
 智子は裕一の帰宅を喜ぶが、「帰ってきて一緒に暮らそうかな」と言うと、智子は帰ってくるなら自分が入っている宗教に入信してほしいと言う。裕一が断り、逃げようとすると、姉も父も逃げたと怒鳴られるが、結局、実家からも逃げ出す。
 その後裕一は、かつて家族を裏切った父の浩二(豊川悦司)と偶然、再会する。浩二の家に行くことになったが、浩二は再婚したものの浮気が原因で離婚していた。浩二は逃げるために携帯を切り、そして1人になった時に、「面白くなってきやがった」と呟くと裕一に教える。浩二の“クズ度”は軽く裕一の上を行くダメ親父だった。
 何か動かないといけないと感じた裕一は、里美に電話をかけ、帰ったら話をしようとメッセージを残す。その後、携帯の電源を切っていた裕一は、しばらくして電源をつけた時に里美から大量の着信があったことに気付く。
 里美から留守電にメッセージが残され、智子が倒れて病院に運ばれたという。焦った裕一は浩二に急いで病院に行こうと急かが、浩二はバツが悪いからと動こうとしない。
 裕一は「こんな時まで逃げるのか!」と浩二に怒鳴るが、浩二は「お前には言われたくない」と返されてしまう。「あんたとは違う!」と言い放ち、裕一は病院へと向かう。
 病院に行く途中、裕一は里美に出会う。智子の様体は回復し、すでに家に帰ってきていた。心配した里美は家まで付いてきてくれ、さらに、伸二も合流します。実家に着くと香もいて、智子もすっかり元気になっていた。
 5人で食事をしながら、何も言い出せない裕一に、香は叱り、裕一は初めて涙を流して謝罪する。里美と伸二を駅まで送る裕一、こんな男でも、伸二はまだ親友だと言ってくれる。
 伸二と別れ、実家に帰ると浩二が帰ってきた。裕一が忘れていた年越し蕎麦を言い訳に帰った浩二は「俺は頑張った」と言う。その夜、菅原家は久々の一家団欒で年を越した。
 東京に戻った裕一は、迷惑をかけたバイトの先輩に謝りに行く。先輩は怒りながらも優しい言葉をかける。そして里美のマンションに行き、改めて謝罪すると、里美が泣きながら謝る。「好きな人が出来たから別れてほしい」というのだ。その相手はなんと親友の伸二だった。
 親友に恋人を同時に両方失い、何もなくなった裕一は、父の教え通り、「面白くなってきやがったぜ」と呟くのだった。
 “働いたら負け”を地で行くようなダメ男の裕一だが、自分勝手に生きる父・浩二、家族に見捨てられて新興宗教にハマる母・智子、そんな家庭と距離を置く姉・香…。まさに“この親にしてこの子あり”といった環境だ。
 たった6人のキャストしか登場しないものの、それぞれがキャラ立ちした役柄を好演しており、リアルにありそうな話だと感じさせる。
 救いようのない男が全てを失い、タイトル通り“途方に暮れる”ラストシーンだが、鉄槌を下されてもなお、反省の色を見せない裕一。最初はイラつくが、何故だか徐々に感情移入させられる不思議な主人公だ。
 現実、こうして図々しく世の中を渡り歩いているクズはゴマンといるのだろう。本作はコソコソとゴキブリのように生きている父と子、そしてクズ男を取り巻く複雑な環境を描いている物語でもあるのだ。
 鑑賞した後、心のどこかにモヤモヤが残るストーリーだが、それと同時に身につまされるような作品でもあった。
<評価>★★★★☆
<公式サイト>https://happinet-phantom.com/soshiboku/
<公式X>https://twitter.com/soshiboku_movie
<公式Instagram>https://www.instagram.com/soshiboku_movie/
<公式TikTok>https://www.tiktok.com/@soshiboku_movie
<監督・脚本>三浦大輔
<製作>小西啓介、藤島ジュリーK.、渡辺和則、荒木宏幸、中野哲夫
<企画・プロデュース>小西啓介
<プロデューサー>政岡保宏、澤岳司
<キャスティングディレクター>杉野剛
<音楽プロデューサー>和田亨
<アソシエイトプロデューサー>原田耕治
<ラインプロデューサー>尾形龍一
<撮影>春木康輔、長瀬拓
<照明>原由巳
<録音>加唐学
<整音>加藤大和
<美術>野々垣聡
<スタイリスト>小林身和子
<ヘアメイク>内城千栄子
<編集>堀善介
<音楽>内橋和久
<VFXスーパーバイザー>村上優悦
<サウンドエフェクト>小島彩
<助監督>高土浩二
<制作担当>土田守洋
<原作>舞台「そして僕は途方に暮れる」(作・演出 三浦大輔)
<エンディング曲>大澤誉志幸「そして僕は途方に暮れる 2023 movie version」(Sony Music Labels)
#そして僕は途方に暮れる #映画 #三浦大輔 #そし僕 #藤ヶ谷太輔 #前田敦子 #中尾明慶 #毎熊克哉 #野村周平 #香里奈 #原田美枝子 #豊川悦司 #大澤誉志幸 #クズ男 #現実逃避 #ハピネットファントム

そして僕は途方に暮れる (豪華版 Blu-ray)

そして僕は途方に暮れる (豪華版 Blu-ray)

  • 出版社/メーカー: ジェイ・ストーム
  • 発売日: 2023/08/09
  • メディア: Blu-ray






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【映画レビュー】「NOPE ノープ」(原題「Nope」/2022 アメリカ) [映画]

【映画レビュー】「NOPE ノープ」(原題「Nope」/2022 アメリカ)
 コメディアンとして活躍していたジョーダン・ピールが、「ゲット・アウト」(2017年)の脚本を担当し、自らも出演したことで、ホラー映画監督としてブレーク、続く「アス」(2019年)もヒットさせ、期待されて製作された長編作品3作目が本作。カリフォルニアの田舎町にUFOが現れ、その謎を解くため撮影を試みる兄妹がたどる運命を描いている。
 OJ・ヘイウッド(ダニエル・カルーヤ)と、その妹エメラルド(キキ・パーマー)は、父オーティス(キース・デビッド)が経営するヘイウッド・ハリウッド牧場で、撮影に使う馬を調教している。
 ある日、OJが家に戻ろうとすると突然、空から何かが降ってくる。硬貨のようなものが当たりオーティスは死んでしまう。
 半年後、以前に父が受けた仕事をしにOJは撮影現場に馬を連れてやってくる。しかし無口なOJに現場は困惑、結局馬が暴れてしまいOJは仕事を失ってしまう。
 妹と帰宅途中、OJは牧場の隣りの西部劇のテーマパーク「ジュピターズ・クレイム」に立ち寄り、馬のラッキーを買い取ってもらう。既に10頭ほど売っているOJだったが、いずれすべて買い戻したいと考えていた。
 普段、一緒に住んでいないエメラルドは、OJが馬を安く買い叩かれていないか不安で交渉に同席する。そこでオーナーのリッキー・“ジュープ”・パク(スティーヴン・ユァン)が一斉を風靡した子役だと気づく。その話になると、気をよくしたジュープはかつての思い出を展示した部屋を見せる。しかしそのドラマは、出演していたチンパンジーが撮影中に暴れ出し、出演者にケガを負わせたせいで打ち切りになった曰くつきのドラマだった。
 帰宅した2人は、酒を飲みながら昔話をする。9歳の誕生日にもらえるはずだった“Gジャン”という馬が急な仕事のためもらえなかったと話すエメラルド。調教される様子を2階の窓から見ていたエメラルドに、OJは“わかっている”ことと示すハンドサインを送る。
 ここで「ゴースト」と名付けられた回想シーンが入る。ジュープはドラマの撮影現場にいた。風船が割れる音をきっかけにチンパンジーが暴れ、チンパンジーは射殺されてしまう。ジュープはそのことを思い出し、イベントに向けてリハーサルを開始する。
 イベントでジュープは特別な体験ができると盛り上げていた。ガラスケースには馬が入っていた。そこに突然、UFOが飛来してくる。ジュープは馬をケースから出そうとするが動かない。砂嵐とともにジュープや観客全員が吸い上げられてしまう。そこにOJが到着し、馬を助けようとする。
 OJからの電話で事件を知ったエメラルドは、UFOが家の真上にいることに気付く。馬を保護するため、OJは車で戻って来る。途中で車が動かなくなってしまったOJはドアを開けて周囲を伺う。UFOはOJの真上にいた。OJはドアを閉めて車をロックし、朝まで車で過ごす。
 夜が明け、車が動くようになったOJは家に帰り着く。すると、空から馬の像の首が落ちてくる。家にいたセールスマンのエンジェル・トーレス(ブランドン・ペレア)の車に乗り換え、エメラルドを連れて家から離れる。
 翌日、2人は監視カメラを増設するため家電量販店に向かう。UFOを撮影してテレビ局に売り込もうというのだ。技術者でもあるエンジェルは2人の思惑に気づき、サポートがいらないか聞いてくる。
 2人はエンジェルに依頼し、2台のカメラを屋根の上と柵に取り付け、機械を納屋に設置する。エメラルドは、ジュープから馬の像を盗み、それを牧場の中に置く。そしてもっと協力したいというエンジェルを追い返す。
 ここでさらに「クローバー」と名付けられた回想シーンとなる
 ある夜、厩舎の照明がついているのに気付いたOJが消しにいくと、何者かが再び照明をつける。そこには小さな宇宙人のような生物がおり、OJは怯えながらその場を離れようとしますが、その生物はOJの様子を伺いながら近づいてくる。しかも1体ではなく複数存在し、OJが叫び声を上げるとその生物は笑いながら走っていった。それはジュープの子どもたちの悪質ないたずらだった。
 そのころエメラルドは馬のクローバーが外に出ていることに気づき、OJに知らせる。屋根のカメラにはカマキリがくっついて、映像を確認することができない。するとエンジェルから、もう1台のカメラが止まっていると電話がかかってくる。彼は店で監視カメラの映像を勝手に見ていたのだった。
 OJは馬の像が空に吸い上げられるのを目撃し、その後、雲の中に何かがいることに気付く。エメラルドが声を掛け、建物に逃げ込んだOJだったが、クローバーは空に巻き上げられてしまう。エメラルドは恐怖に震え、急いでここから去るべきだと言いますが、OJは馬の世話があるからと動こうとしない。
 自分たちの手に負えないと思ったエメラルドは、動物の番組などで知られるカメラマンのアントレス・ホルスト(マイケル・ウィンコット)に電話をかけ、撮影を打診する。エメラルドのことを覚えていたホルストだったが、眉唾ものの話として、乗ってはくれなかった。
 その時、エンジェルがやってくる。盗撮行為を非難されるのは承知の上で、彼は牧場の上に動かない雲があることを知らせに来たのだ。UFO発見の糸口を得たエメラルドやエンジェルは興奮するが、OJだけは信じようとしない。
 再び、「ゴーディ」と呼ばれるシーンが展開する。
 かつて放送されていたホームコメディードラマ「ゴーディ、家に帰る」の撮影中、メアリーという子役の少女がチンパンジーのゴーディに誕生日プレゼントを渡すシーン。そばには子ども時代のジュープもいる。大きな箱が開くと中からたくさんの風船が飛び出し、それらが割れる大きな音をきっかけにゴーディが暴れ始めます。
 メアリーを襲うゴーディは血だらけだ。彼女が動くと再び襲いかかり、やがて動かなくなる。大人の俳優も攻撃され、ついにゴーディはテーブルの下に隠れたジュープに気付く。
 恐怖で動けないジュープににじり寄ってくるゴーディは拳を繰り出してくる。ジュープも同じように拳を出してタッチしようとしたとき、ゴーディは射殺され、ジュープはその血を浴びてしまう。
 当時の出来事を思い出す、現在のジュープ。心配そうに見守る妻の求めに応え、夜のイベントに向けてリハーサルを行う。
 今度は「ラッキー」というストーリーに移る。
 嵐の予報を聞き、エンジェルはカメラにシートをかける。しかしその頃“星との遭遇体験”というイベントが始まろうとしていた。そこには特別ゲストとして、ベールで顔を隠したメアリーも参加していた。
 派手な衣装に身を包んだジュープは、「これからここで人生を変えるような特別な体験ができる」と場を盛り上げる。そして隠していた布をはずすと、大きなガラスケースには馬のラッキーが入っていた。すると遠くから、帽子のような形のUFOが飛来してくる。ジュープはラッキーをケースから出そうとするが、ラッキーは動かず、ジュープは焦り出す。一方、妻のアンバーは「今夜は激しいわよ」と観客を煽る。すると砂嵐とともにジュープたちや観客・スタッフ全員が吸い上げられてしまう。口から食道のような器官に取り込まれ、人々は悲鳴を上げ、パニックに陥る。そこへOJが到着し、UFOから身を隠しながらラッキーを助けようとするが、砂嵐のせいで思うように動けない。
 その頃、家ではエンジェルが帰ろうとしていたが、車が動かなくなってしまい、急いでエメラルドのもとに引き返す。OJからの電話で惨劇を知ったエメラルドは、人々の悲鳴が聞こえたことで、UFOが家の上に来ていることを悟る。父のときと同様、コインや鍵などを吐き出しているUFO。さらに人々の血まで撒き散らし、家には血の雨が降り注がれる。
 ラッキーを保護したOJは車で戻ってくるが、自宅からもう少しのところで車がまた止まってしまう。恐ろしい姿になった我が家を見つめながらエメラルドのことを心配するが、なす術はない。一旦静かになり、OJは車のドアを開けて様子を伺う。UFOは真上にいたのだた。ドアを閉めてロックすると、OJは朝までそこで過ごす。
 夜が明け、エンジンがかかるとOJは家に近付こうとする。すると空から馬の像の首が落ちてきてフロントガラスに突き刺さる。OJはエンジェルの車に乗り換えて玄関に近づき、エメラルドとエンジェルを乗せてその場を逃げ出す。
 ジュープが率いるジュピターズ・クレイムの面々が姿を消したことがニュースで報じられ、マスコミの注目を集める。エンジェルの家に世話になっているOJは、目を見なければ襲われないと語り、馬の世話があるから家に戻るという。渋っていたエメラルドには、ホルストから撮影に協力したいと連絡があり、結局3人は戻ることになる。
 手回しのIMAXカメラなどを持ってやってきたホルスト。早速4人は作戦会議を始める。UFOを“Gジャン”と名付けたOJは、自ら囮となり、ホルストに離れた斜面から撮影するよう頼む。エンジェルはホルストのサポート、エムは家で監視カメラのチェックをする。
 彼らはまず、Gジャンの接近を知るために電気で動くスカイダンサーを大量に手に入れる。そしてそれを動かすバッテリーを駐車場の車から盗み出す。短期決戦で終わらせなければ、あっという間にマスコミが押し寄せ、手柄を横取りされてしまう。4人はトランシーバーを手に作戦を決行する。
 オレンジのパーカーを来たOJはラッキーに乗って疾走する。ホルストは薬を飲み、エムのかけた大音量のレコードの音でエンジェルはスカイダンサーを起動させる。50体ものスカイダンサーが踊り、その中をOJが走っていく。
 すると招かれざる1台のバイクが近付いてくる。外に出たエメラルドに、バイクからぶしつけにカメラを向けたのはゴシップサイトTMZの記者だった。質問に答えないエメラルドに悪態をついて走り出したその記者は、スカイダンサーが倒れている地帯に差し掛かり、バイクの不調で放り出されてしまう。
 エメラルドの意見を無視し助けに向かったOJだが、現れたGジャンを撮影しようとする記者を止めることができず仕方なく救出をあきらめる。その直後、記者はGジャンに食われてしまう。タイミングが合わず、その出来事はホルストのカメラのフィルム交換中で、決定的瞬間を収めることは出来なかった。
 OJは目のような模様のフードを被り、さらにGジャンを挑発する。そして狙い通りにGジャンの猛追を回避する。その様子を撮影していたホルストは、もっと凄い映像を撮ると飛び出し、自らGジャンに吸い込まれながらも撮影を続ける。
 エンジェルは突風で斜面を転がり落ち、防水シートや有刺鉄線が体に巻きついてしまう。しかしそのおかげで一度はGジャンに吸い上げられたものの吐き出されて助かる。エメラルドも風に乗って宙に浮いてしまうが、危うく難を逃れる。
 OJは記者の乗ってきたバイクに乗り、逃げるようエメラルドに指示するがエンジンがかからない。エメラルドの危機を救うため、OJはハンドサインを送りエメラルドもそれに応える。OJはラッキーに乗るとGジャンの注意を自分に引きつける。円盤の形から帆のような、クラゲのような形態に変化していたGジャンはOJに襲いかかり、OJとラッキーの姿は見えなくなってしまう。
 ようやくエンジンのかかったバイクにまたがると、エメラルドはUFOを誘うように走り始めう。エメラルドがやってきたのはジュピターズ・クレイム。そこにある大きなキャラクター人形のバルーンを留めていたガーランドを外すと、ヘリウムガスによってそれは空に上り始める。
 人の形をしたそれに興味を示したGジャン。エメラルドは園内の、井戸から頭上を撮影することができるスポットを使い、捕食の瞬間を撮影するつもりだ。地面に散らばっていたコインを拾って撮り始め、ようやく何枚目かにそのシーンを写真に撮ることに成功する。大きなバルーンを飲み込んだGジャンは消化しようと圧力をかけ、ガス爆発を起こし自爆する。
 UFOとの闘いに勝利を手にしたエメラルドは歓喜の声を上げ、そして、集まってきたマスコミに気付く。立ち上がったエメラルドはOJを失ったものを思い出し、涙を流す。すると視界の先に、ラッキーに乗ったOJの姿が現れたのだった。
 その不気味な雰囲気からホラー映画にカテゴライズされている本作だが、印象としてはSFに近い。ストーリーはかなり難解で、評価が真っ二つに分かれそうな作品だ。1回見ただけでは理解出来ないような作品だ。
 ラストシーンも尻すぼみな感じが否めず、自分とは感覚が合わなかった。しかし、恐怖を煽る魅せ方は斬新で、その点だけは評価したい。
<評価>★★☆☆☆
<公式サイト>https://www.uni-100.com/catalog/55462/
<公式X>https://twitter.com/nope_moviejp
<監督・脚本>ジョーダン・ピール
<製作>イアン・クーパー、ジョーダン・ピール
<製作総指揮>ロバート・グラフ、ウィン・ローゼンフェルド
<撮影>ホイテ・バン・ホイテマ
<美術>ルース・デ・ヨンク
<衣装>アレックス・ボーベアード
<編集>ニコラス・モンスール
<音楽>マイケル・エイブルズ
<視覚効果監修>ギョーム・ロシェロン
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