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【映画レビュー】「パリ・ブレスト 夢をかなえたスイーツ」(原題「A la belle etoile」/2024 フランス) [映画]

【映画レビュー】「パリ・ブレスト 夢をかなえたスイーツ」(原題「A la belle etoile」/2024 フランス)
 本作は、22歳でパティスリーの世界選手権のチャンピオンに輝いた天才パティシエ、ヤジッド・イシェムラエンの自伝を基にした物語だ。
 イシェムラエンは、世界各地の最高級ホテルのコンサルタントや高級ブランドとのコラボレーションを手がけ、南フランスの歴史ある街・アヴィニョンや、パリにも自身の店舗を持つ、世界でも指折りの人気パティシエだ。
 14歳でパリのデザート職人の見習いになると、著名なパティシエの下で修行を重ね、モナコのホテル「ル・メトロポール」でスーシェフ(副料理長)に。そして2014年、「ジェラート世界選手権(Gelato World Cup)」のチャンピオンに輝いた。
 本作の主人公は、育児放棄の母親の下、過酷な環境で暮らす少年ヤジッド(少年時代=マーウェン・アムスケール、青年期=リアド・ベライシュ)。彼にとって唯一の楽しみは、里親の家で食べる手作りのデザートだった。
 いつしか自分がパティシエになることを夢みるようになるが、児童養護施設育ちのヤジッドは、10代にしてパリの高級レストランに、半ば潜り込むような形で、見習いとして雇ってもらう。しかし、修業の日々を過ごす中、シェフに気に入られたヤジッドを妬む同僚の策略で警察に拘留され、クビになってしまう。
 しかしヤジッドは、自力で職を求め、店を転々とし、時にはバーテンダーとして生活を維持しながら、再起を期し、パティスリー世界選手権に出場するという目標に突き進み、そのチャンスを得る。国内予選では、ヤジッドを罠に嵌め、失職に追い込んだ元同僚を破ってみせる。
 同時にヤジットは、病に伏す養母を見舞う代わりに、自ら作ったデザートをプレゼントする。特訓に明け暮れる日々を送り、会いに行けない代わりに、最上級の見舞いの品を送ったことで、養母は元気を少し取り戻し、世界一を目指すヤジットにエールを送る。
 パティスリー世界選手権出場への道のりは険しいもので、様々な妨害や苦難がありながらも、ヤジットを応援するかつての同僚や、その才能に惚れ込んだパトロンの協力を得て、ついにヤジットらのフランスチームは栄冠を手にする。その困難なミッションの達成に至るまでには、その過程で、ヤジットを支える人々との出会いが、本作を語る上で、欠かせないポイントだ。
 ヤジットが才能あるパティシエであり、努力を惜しまなかったことはもちろん、出会いにも恵まれ、その地位を得たことは、本作を見れば明らかだ。優勝後、世界中の一流ホテルからのオファーを受けながらも、フランスにとどまり、自らの店舗で「パリ・ブレスト」をはじめとするデザートを提供しながら、故郷のエペルネに住む養父母に元にも訪れているという。それがヤジットなりの恩返しなのだろう。
 主人公のヤジッドを演じたのは、TikTokで6600万人のフォロワーを持つ映像クリエイターのリアド・ベライシュ。インフルエンサーであると同時に俳優としても活躍する彼は、本作に出演するために料理を一から学び、原作者のイシェムラエンから直々にパティスリーの作法を伝授してもらいながら役作りに励み、映画初主演を果たした。
 作品を彩っているのは俳優だけではない、劇中に登場する煌びやかで、いかにも美味しそうなデザートの数々が、観る者の食欲を刺激すること請け合いだ。これらのデザートはすべてイシェムラエン本人が監修している。
 フランス映画としては珍しく、ヌーヴェルヴァーグと呼ばれる前衛的作品ではなく、官能的な恋愛要素も社会風刺的な描写もない。まるでアメリカ映画のようなド直球のサクセスストーリーを描いており、そのエンディング爽快なものだ。
 おそらくは、ヤジッド・イシェムラエンの自伝に忠実に製作されたのであろう。華やかな数々のデザートの造形美とは裏腹に、常にピリピリとした厨房の様子、野心を隠そうともしない若きパティシエたちのキャラクターも細かく描かれている。
 厨房を舞台とする作品は、映画、テレビドラマ問わず、日本においても数多く製作されている。フランス同様、「食」や「料理」に対する厳しさや妥協を許さない姿勢は、我が国と共通する部分もあり、共感できる部分も多い。
 その事実は、本作にも反映されている。ヤジッドらフランス代表チームが制した2014年のパティスリー世界選手権で、2位の座に就いたのは、日本代表チームだった。
 この物語は、あくまでもヤジッドの半生を描いたストーリーなのだが、洋食の世界でも世界に伍するレベルにある日本の料理人たちにも拍手を送りたくなる。そして、観終わった後、ちょっと奮発して、美味しいものを食べたくなる衝動にも駆られる作品だ。
<評価>★★★★☆
<公式サイト>https://hark3.com/parisbrest/#
<公式X>https://twitter.com/parisbrest_
<公式Instagram>https://www.instagram.com/parisbrest_movie
<公式TikTok>https://www.tiktok.com/@hark_official
<監督>セバスチャン・テュラール
<脚本>セドリック・イド
<撮影>ピエール・デジョン
<美術>アン・チャクラバティ
<衣装>ポリーヌ・バーランド
<編集>マリエル・バビネ
<音楽>ブリス・ダボリ
<原作>ヤジッド・イシェムラエン「Un rêve d’enfant étoilé: Ccomment la pâtisserie lui a sauvé」(スターを夢見た幼少時代:パティシエが彼を救った理由)
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