SSブログ

【映画レビュー】「映画 マイホームヒーロー」(2024 日本) [映画]

【映画レビュー】「映画 マイホームヒーロー」(2024 日本)
 本作は、山川直輝(原作)、朝基まさし(作画)による講談社「週刊ヤングマガジン」連載の人気マンガを原作とし、2023年秋に深夜枠で放送されたドラマ「マイホームヒーロー」の完結編だ。
 TBSでは、深夜1時半という深い時間の放送で、しかも30分枠ながら、マニアックな人気を誇るドラマ枠だ。ここからは、『賭ケグルイ』や『映像研には手を出すな!』が映画化に至っている。
 一人娘の零花(齋藤飛鳥)の交際相手を装いながら、彼女に危害を加えようとしていた麻取延人(内藤秀一郎)を殺し、延人が所属する半グレ組織と命がけの闘いを繰り広げたおもちゃメーカー「HOLIDAY HOBBY」の営業マンであり、家庭では良き父である鳥栖哲雄(佐々木蔵之介)が主人公だ。
 ドラマ版では、哲雄に殺された延人の父・義辰(吉田栄作)と対峙しながらも、義辰はナイフで自らを刺す。哲雄は驚きながらも命拾いしたが、その死体を奥多摩町の御後山山中に埋めたところまで描かれている。
 そして劇場版では、その7年後からストーリーが始まる。哲雄家には長男も生まれ、零花は警察官となり、強行犯捜査の第一線である捜査一課に配属されていた。
 台風による土砂崩れによって、哲雄がかつて御後山に埋めた義辰の死体が発見されてしまう。
 居ても立っても居られなくなった哲雄は車を走らせ、御後山の土砂崩れ現場を見に行き、そこでマル暴刑事である安元浩司(立川談春)と出会う。
 安元は、見つかった死体が、義辰のものという情報をつかんでいたために派遣されたのだった。哲雄は安元に「バードウォッチングに来ました」などと、見え透いた嘘をついて、その場をやり過ごすが、安元は、この遺体に哲雄が関わっていたことを確信する。
 捜査本部が立ち上がるが、哲雄も“事件関係者”と目されていたため、その娘である零花は捜査から外されてしまう。さらに、当の零花も、父に疑いの目を向け始める。
 一方、死体とともに消えた、義辰の財産10億円の行方を追っていた半グレ集団「間野会」のボス・志野寛治(津田健次郎)は、哲雄に狙いを付ける。志野はその凶暴な性格とカリスマ性から、死んだ義辰の後を継いで、窪(音尾琢真)や竹田(淵上泰史)を差し置いて、トップの座に就いていた。
 手始めに志野は、窪を使って鳥栖の自宅を爆破する。その直前に哲雄が暗示めいたメールを受信しており、消火器を用意していたため、命は助かったものの、一家の思いでの品々はほとんど燃えてしまった。しかし、これは闘いの始まりを告げるゴングでしかなかった。
 佐々木蔵之介と津田健次郎といえば、テレビ朝日系ドラマ『グレイトギフト』でも共演し、ともに殺人球菌に憑りつかれ、人間性が崩壊していく様を好演していたが、本作では、主人公・哲雄を演じる佐々木は、部下の信頼も厚い理想の上司である半面、家族を守るためならその命をも賭す覚悟を持った父親となる二面性を持ち、片や志野役の津田の狂気に満ちた演技も迫力十分で、実に恐ろしい。
 独自に捜査していた零花は、ある男性を訪ねる。それはドラマ版最終回で哲雄らの策略によって、延人を殺した犯人に仕立て上げられ、逃亡した間島恭一(高橋恭平)だった。
 身分を隠して港湾工事の現場で働いていた恭一。事件のカギを握っているであろう彼を通して真相に迫ろうとする零花。一方で、哲雄への復讐と間野会への復帰の機会をうかがっていた恭一は、零花の提案に乗る。
 しかし、恭一の狙いは哲雄のクビでも、消えた10億円でもなかった。「10億円の在りかを知っている」と志野に近付き、最後には自分を見捨てた間野会の壊滅を目論んでいたのだ。
 ところが警察にも半グレにも追われるハメとなった哲雄は、志野に捕らえられてしまう。警察官で捜査本部にも名を連ねている薬師寺(大東駿介)が、間野会とつながっていたのだ。
 志野は、哲雄の妻・歌仙(木村多江)と息子の明(石塚錬)を人質に取り、10億円と引き換えに、哲雄を密室に追い込む。逃亡する中で、既に傷だらけの体の哲雄は、ともに閉じ込められた零花とともに、父娘ならではのコンビプレーでこの窮地を脱する。この伏線は、毎年恒例の鳥栖一家の家族旅行で、幼かったころの零花の思い出がヒントとなっている。なかなか手の込んだ仕掛けだ。
 志野との対決の中で、哲雄は正義を叫ぶが、一方の志野も、その思いは同じなのだ。かつて娘が命の危険にさらされた哲雄だが、志野は家族同然の仲間を殺されている。志野とて彼なりの“正義”に従って行動していたのだ。
 半グレ集団から娘を守るために殺人を犯した哲雄は最後、その愛する娘から、涙ながらに手錠を掛けられる。そして刑務所内、哲雄が家族から届いた手紙を読むシーンで、7年越しの物語は終わる。
 基本的には、娘への可愛さ余って人を殺めてしまうサスペンスドラマで、アクションシーンも本格的なのものだが、突飛なストーリーと、オーバーアクションなまでのキャストの演技によって、どこかコメディー色も帯びている本作。しかし「完結編」と銘打っただけに、哲雄が服役しているにもかかわらず、ありふれる家族愛に満ちた“ハッピーエンド”で締められている。
 冒頭に、ドラマ版の大まかなあらすじと、キャラクター設定がある程度、説明されており、初見でも楽しめる構成になっているが、ドラマのダイジェスト版が公式YouTubeで公開されているので、予習してから鑑賞すれば、さらに楽しめるだろう。
 演技に定評のあるキャストが名を連ねているだけに、どのような切り口からも楽しめる作品だ。
 佐々木蔵之介の多面的な表情を楽しむも良し、津田健次郎の狂気に怯えるも良し、美しいだけではなく、凛とした強さも兼ね備えたの齋藤飛鳥の魅力を味わうも良し、そして、大東駿介演じる薬師寺のように、刑事でありながら裏で半グレとつながっているという、ブラックな設定を楽しむも良しだ。
 優しく夫を支えつつも、ドラマ版で「あなた、人を殺すのは初めて?」というトンデモなセリフで爆笑を誘った木村多江演じる歌仙も、頭のネジが1本抜けたようなキャラクターの持ち味を十二分に発揮している。
 おそらく、初めから「殺人サスペンス」としてみれば物足りない作品かもしれない。しかし、親子愛をテーマとした娯楽作としてみれば、本作はその期待に十分に応えているのではないだろうか。
<評価>★★★☆☆
<公式サイト>https://wwws.warnerbros.co.jp/mhh-moviejp/
<公式X>https://twitter.com/mhh_drama_movie
<公式Instagram>https://www.instagram.com/mhh_drama_movie/
<公式TikTok>https://www.tiktok.com/@drama_mbs
<監督>青山貴洋
<脚本>船橋勧
<エグゼクティブプロデューサー>菊野浩樹、丸山博雄
<プロデューサー>松本桂子、水木雄太、尹楊会、村山えりか
<撮影>榊原直記
<照明>高橋謙太
<録音>矢野正人
<美術>小林蘭
<装飾>岩本智弘
<衣装>天野泰葉
<ヘアメイク>木戸出香
<CGアートディレクター>中島颯星
<DIプロデューサー>齋藤精二
<編集>佐藤和志
<音楽>堤博明
<スクリプター>杉本友美
<助監督>森裕史
<監督補>棚澤孝義
<制作担当>馬越昭光
<主題歌>Eve「インソムニア」 https://eveofficial.com/discography/insomnia.html
<原作・漫画>山川直輝・朝基まさし「マイホームヒーロー」(講談社) https://magazine.yanmaga.jp/c/myhomehero
#マイホームヒーロー #映画 #映画マイホームヒーロー #山川直輝 #朝基まさし #青山貴洋 #船橋勧 #佐々木蔵之介 #齋藤飛鳥 #高橋恭平 #なにわ男子 #宮世琉弥 #音尾琢真 #津田健次郎 #木村多江 #板倉俊之 #大東駿介 #立川談春 #淵上泰史 #西垣匠 #石塚錬 #金子隼也 #神野三鈴 #Eve #サスペンス #家族 #PG12 #ワーナー

映画『マイホームヒーロー』オリジナル・サウンドトラック

映画『マイホームヒーロー』オリジナル・サウンドトラック

  • 出版社/メーカー: Anchor Records
  • 発売日: 2024/03/06
  • メディア: MP3 ダウンロード






nice!(0)  コメント(0) 
共通テーマ:映画