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【映画レビュー】「空気殺人 TOXIC」(原題「공기살인」/英題「Air Murder」/2022 韓国) [映画]

【映画レビュー】「空気殺人 TOXIC」(原題「공기살인」/英題「Air Murder」/2022 韓国)
 1994年から2011年まで実際に起き、2万人以上の死者と出した「加湿器殺菌剤事件」。加湿器に入れる殺菌剤に、毒性のある物質が含まれていたものの、企業、さらに政府もが有害性を認識しながら販売し、事件が発覚した後も証拠を隠蔽したことから、「家の中のセウォル号事件」とも呼ばれる一大企業スキャンダルに発展する。
 テフン(キム・サンギョン)は、大学病院で救急救命室の医師としている。ある日、息子のミヌ(キム・ハオン)が意識を失い、病院に運び込まれる。最近体調がすぐれなかったミヌだったが、病院に運ばれたときには呼吸ができない状態になっていた。診察の結果、急性間質性肺炎と判明する。
 入院したミヌの身の回り品を自宅に取りに戻った妻・ギルジュ(ソ・ヨンヒ)が突然倒れ、同じ肺の病気で亡くなってしまう。テフンと義妹で、検事を務めるヨンジュ(イ・ソンビン)は、ギルジュの死因を不審に思い、テフンはギルジュが火葬される前に病院に遺体を運び込み、解剖。テフンの死因がミヌと同じ急性間質性肺炎だったことを突き止める。さらに調査を進めると、衝撃的な事実が明らかになる。
 原因は、加湿器用の殺菌剤に含まれている化学物質だった。世界的な企業でもあるオーツー社は、自社製品に有害な物質が含まれていることを隠し、17年間にもわたって販売してきたのだ。
 オーツー社は「殺菌剤を加湿器に入れれば風邪に効く」などと宣伝し、政府も安全性を保証していたため、商品はヒットしたが、一方で、殺菌剤を使用した多くの人々の命が奪われる。テフンは多くの被害者たちを募り、真実を明らかにするために、裁判を通じてオーツー社に立ち向かう。
 どこの国でも言えることだが、大企業、しかも政府とズブズブの関係にある相手とした裁判には困難が付きまとうもの。本作でも、被告側の弁護団は尊大な大度に終始し、陰でオーツー社は、示談金をちらつかせた被害者原告団の切り崩しと、検証結果の改ざんに動いていた。
 オーツー社のイギリス国籍を持つ社長は自社の商品が有害であることを否定し、裁判を起こさせないように、部下のソ・ウシク(ユン・ギョンホ)を呼び寄せる。
 ウシクは、裏で手を回し、政治家の力も借りてテフンの身内のヨンジュが検事として働けないようにする。そこでヨンジュは、原告側の弁護士を務めることになる。
 ヨンジュは尊敬する先輩弁護士に共同弁護士になってほしいと頼むが断られる、そして彼は、第1回目の公判に被告側の弁護士として現れる。彼は報酬が多い被告側につくことを選んだのだ。
 敏腕弁護士の彼は、ソウル大学の医学部教授に再検査を頼んだので、結果が出るまで公判を伸ばして欲しいと主張。ヨンジュは反論するが、結局、被告側の主張が通ってしまう。
 しばらくして、原告側の男性が、オーツー社と示談し、原告名簿を渡したという知らせが入る。テフンが彼に会いに行くと、彼は家族の病気の治療に費用がかかり、膨大な借金を背負っていたことを涙ながらに告白する。
 オーツー社を訪ねてきたソウル大学の医学部教授は、製品には有害物質が含まれていたと述べる。ウシクはもう一度、検査をするように伝えるが、それは「虚偽の報告をしろ」ということだ。さらにウシクはミヌの病室に現れる。彼はミヌへの移植の手配をすると約束し、こちらの条件を飲むよう資料を置いて出ていく。テフンはその封筒を引き裂く。
 ようやく開かれた公判で医学部教授は製品に有害物質は含まれていなかったと証言。さらに驚くべきことが発表される。その検査の立会人が、テフンだったのだ。原告側は、悲鳴をあげながら、テフンに「なぜだ?」と問いかける。
 ヨンジュが証人に反対尋問を行うが、逆転できる見込みはなく、次回公判で判決が言い渡されることになる。訴えた人々はヨンジュに迫るが、テフンは黙ってたたずむだけだった。
 オーツー社は早くもシャンペンを開けて勝利を祝う。当初の約束通り、社長はアジア総合部門のトップの座に移ることになり、ウシクが社長の座につくこととなる。
 社長はウシクにオーストラリアでの契約の件を処理しておくように、殺菌剤の在庫は処分せず、全て市場に回すようにと命じる。彼はそれで誰かが死んでもかまうものかと言い放つ。
 ウシクがすぐにオーストラリアに連絡すると、担当者はこのような危険な商品を扱う事はできない、韓国ではこれを使っているのかと驚きの声をあげる。
 あとは判決を待つだけになった時、衝撃的なニュースが流れる。ソウル大学医学部教授が虚偽の実験をし、虚偽のデータを発表したことを、立会人のテフンが映像と共に暴露したというのだ。
 そのニュースをウシクは冷静に見ていた。実はウシクもオーツー社の加湿器殺菌剤を使用していて、妻と娘を亡くしていたのだ。ショックで一時的に会社を離れていたウシクは、社長に呼び出され仕事をあてがわれた時から、復讐の計画を立てていたのだ。
 テフンは彼の意図を受け取り、立会人となり、調査が捏造される様子を撮影しており、ウシクは、これは民事では済まされない殺人事件だと訴える。
 こうしてオーツー社の面々は拘束され、事情徴収されることになる。弁護士が自信満々に立ち合っていましたが、検事として現れたのはヨンジュだった。彼女の上司が復職させていたのだ。
 一方、安全性を認可していた国の責任を問う裁判の場にはテフンが立ち会う。省庁同士で責任を押し付ける様子にテフンは激怒する。
 その時、外から大きな声が聞こえてきました。裁判所の周辺に多くの被害者たちが集まり、抗議の声を上げていました。その中にはウシクの姿もあった。
 あくまで韓国内の実話をベースにした作品だが、政治家や金を使って証拠隠滅に走る企業人たちの姿が赤裸々に描写されている様は、我が国の姿にも通じるものを感じる。
 主演を務めたユン・ギョンホのみならず、ヨンジュを演じたイ・ソンビンの存在感が目立ち、男勝りの性格で、時に感情が暴走する検事として、シリアスな中に、唯一のコメディーリリーフの役割を果たしており、湿っぽくなりがちな題材を、エンタメ作品足らしめている。
 他のキャスト陣も素晴らしく、名優たちの演技によって没入感が得られ、実際に起きた恐ろしい事件の背景に震撼させられる良質の社会派ドラマに仕上がっている。
<評価>★★★★☆
<原作>ソ・ジェウォ
<監督・脚本>チョ・ヨンサン
<製作>ユ・ジェファン
<製作総指揮>キム・サンユン
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