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【映画レビュー】「東京2020オリンピック SIDE:B」(2022 日本) [映画]

【映画レビュー】「東京2020オリンピック SIDE:B」(2022 日本)
 東京オリンピックの公式記録映画の2部作の後編編。「SIDE:A」ではアスリート視点での描かれ方がされている一方、本作は、それ以外の人々、大会を運営する側の“背広組”、コロナ禍の中で五輪どころではない医療従事者、五輪反対を叫ぶ人々に主眼を置いた作品となっている。
 冒頭にIOCのバッハ会長が「五輪は世界の分断を修復する」と語ったり、森喜朗は延期に対する記者会見で、質問者に対し、不躾となじる姿など、不愉快極まりないシーンが続く。森喜朗はその後、失言問題でその職を辞すことになるが、“黒幕”として、大会に関与し続けていたことは明らかであろう。そのあたりの取材も甘い。
 結果として、五輪後に数々の賄賂事件が発覚し、国内の「分断」は、さらに進んだ事実は明らかにも関わらず、開会式の演出の総合統括だった電通出身の佐々木宏に関してはその辞任も含めて悪意を持って描いているものの、過去のイジメ問題により直前で辞任することになった開会式の作曲担当だ小山田圭吾や、ユダヤ人虐殺を揶揄するコントを行っていたとして解任された開閉会式の演出ディレクターだったお笑い芸人の小林賢太郎については全く触れられていない。森や佐々木が辞任したことによって組織委には12人の新たな女性理事が誕生したが、河瀨はその様子を誇らしげに描き、組織委への批判が見られないどころか、持ち上げる始末だ。
 事あるごとに子どもを登場させ、汚れ切った大会を綺麗事として描こうとするプロバガンダ感が見え見えで、アスリートの感情にも全く触れられていない。
 加えて、五輪反対デモ参加者の心情を理解しようともしていない。それどころか、デモ参加者を“非国民”と印象付けるようなシーンが不愉快さを倍増させる。また、「復興五輪」と銘打ったにも関わらず、被災者の方の心情の描き方も著しく表層的だ。
 果たして、これを「記録映画」として残す意味はどこにあるのだろうか。「SIDE:A」とは違って、河瀬の自己満足を満たすために作られたとしか思えない。
 もう来年にはパリ五輪が迫っている。東京五輪のスローガンだった「新型コロナウイルスに打ち勝った証」としての五輪の役割は、パリに全て持っていかれるだろう。そして、東京五輪は日本人にとって、もう忘れたい日本の黒歴史として、“レガシー”を残すことになったのだ。
<評価>★☆☆☆☆
<公式サイト>https://tokyo2020-officialfilm.jp/
<総監督>河瀬直美
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東京2020オリンピック SIDE:B

東京2020オリンピック SIDE:B

  • 出版社/メーカー:
  • 発売日: 2022/12/22
  • メディア: Prime Video






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