【映画レビュー】「川っぺりムコリッタ」(2021 日本) [映画]
【映画レビュー】「川っぺりムコリッタ」(2021 日本)
タイトルにあるムコリッタは、時間の単位を表す仏教用語だ。ムコリッタは1日の30分の1、つまり48分で1ムコリッタとなる。こうした説明が映画の冒頭でなされる。
父親の顔も知らず、母親に捨てられた天涯孤独な青年の山田（松山ケンイチ）には前科がある。富山県の田舎町に小さな塩辛工場に働き口を見つけ、社長から紹介された古い安アパート「ハイツムコリッタ」で暮らし始める。隣人は、ドカドカと山田の部屋に上がり込み、勝手に風呂を借りる島田（ムロツヨシ）、息子を引き連れ墓石の訪問販売員をしているというインチキ臭い溝口（吉岡秀隆）など変人ばかりだ。
そんな中、父親が孤独死したという知らせが山田に届く。父の記憶が全くない山田は困惑するが、他に身寄りもないため、遺骨を受け取るため、役所に出向く。
相変わらず、山田の部屋に勝手に上がり込んでは食事を共にする島田だが、山田の部屋にある父の遺骨には、きちんと頭を下げるなど礼節は欠かさない意外な一面を見せる。
山田は、父の遺品である携帯電話の履歴から電話を掛けるが、その相手先は「いのちの電話」だった。父がひもじい思いをして孤独死したと感じた山田は、思わず電話を切ってしまう。
やがて少しずつ、距離が縮まる山田と島田だが、あることがきっかけで島田が山田が前科者であることを知ってしまう。
一方で、アパートの大屋である南詩織（満島ひかり）は、一見、常識人のように見えるが、「妊婦を見ると蹴りたくなる」という“心の闇”を持った女性だった。
ある日、町を台風が襲う。その台風一過の朝、山田は思い立って、河川敷で父の遺骨を砕き始める。そこにやってきた南に、自分は幸せを感じてもいいのかと山田はつぶやき、やがて泣いてしまう。南は「いいんだよ」とそっと山田を抱きしめ、「お葬式をしましょう。お父さんの」と語りかける。
借りもののスーツを着た山田は、ハイツムコリッタの人々、そして台風を生き延びたホームレスの男性とともに夕暮れの川辺を練り歩く。溝口の子の鍵盤ハーモニカとホームレスのウクレレの演奏とともに、山田は遺骨を砕いた粉をまいていくのだった。
「死」と隣り合わせで生きる人々の人間模様を、時にコミカルに描きながらも、根底には、誰しもが抱えている孤独や、家族という“呪縛”、精神的虐待、狂気性が、この作品のテーマであろう。
荻上直子監督は、『かもめ食堂』や、テレビドラマ『やっぱり猫が好き』など、ほっこりとした作品が有名だが、2017年、『彼らが本気で編むときは、』を発表と同時に、自ら“荻上直子の第2章”と称し、その作風を一変させ、社会的な問題を真正面から扱う作品を放っている。2023年公開の『波紋』でも、そのテイストは受け継がれ、非常に重いテーマを、コミカルを交えながら表現している。
主人公・山田を演じた松山ケンイチ、島田を演じたムロツヨシのみならず、インチキ臭い商売に手を染める溝口役に吉岡秀隆、山田を前科者を知っても雇い続ける人間味溢れる塩辛工場の社長・沢田役に緒形直人を配するなど、実力派を揃え、飽きさせないストーリー展開とともに、「生」と「死」について考えさせられる秀作だ。
＜評価＞★★★★★
＜公式サイト＞https://kawa-movie.jp/
＜公式Twitter＞https://twitter.com/kawa_movie
＜公式Instagram＞https://www.instagram.com/kawa_movie
＜監督・脚本＞荻上直子
＜製作＞堀内大示、五老剛、多湖慎一、中西一雄、益田祐美子、亀山暢央、竹内力、五十嵐淳之、鈴木貴幸、川村岬、中西修、駒澤信雄
＜企画プロデュース＞水上繁雄、飯田雅裕
＜プロデューサー＞野副亮子、永井拓郎、堀慎太郎
＜共同プロデューサー＞成瀬保則、神保友香
＜撮影監督＞安藤広樹
＜照明＞重黒木誠
＜録音＞池田雅樹
＜美術＞富田麻友美
＜装飾＞山崎悠里
＜衣装＞村上利香
＜スタイリスト＞堀越絹衣
＜ヘアメイク＞須田理恵
＜VFX＞古橋由衣
＜整音＞瀬川徹夫
＜音響効果＞大河原将
＜編集＞普嶋信一
＜助監督＞藤森圭太郎
＜フードスタイリスト＞飯島奈美
＜スクリプター＞天池芳美
＜制作担当＞鳥越道昭
＜音楽＞パスカルズ「川っぺりムコリッタ」オリジナル・サウンドトラック(Universal Music) https://store.universal-music.co.jp/product/poce12190/
＜原作＞荻上直子「川っぺりムコリッタ」(講談社) https://bookclub.kodansha.co.jp/product?item=0000322058
#川っぺりムコリッタ #映画 #荻上直子 #松山ケンイチ #ムロツヨシ #満島ひかり #吉岡秀隆 #江口のりこ #柄本佑 #田中美佐子 #緒形直人 #薬師丸ひろ子 #笹野高史 #吉岡秀隆 #パスカルズ #ムコリッタ #仏教タ #いのちの電話 #KADOKAWA
![川っぺりムコリッタ スペシャル・エディション（特典DVD付） [Blu-ray]](https://m.media-amazon.com/images/I/51DxAMR5uzL._SL160_.jpg "川っぺりムコリッタ スペシャル・エディション（特典DVD付） [Blu-ray]")
タイトルにあるムコリッタは、時間の単位を表す仏教用語だ。ムコリッタは1日の30分の1、つまり48分で1ムコリッタとなる。こうした説明が映画の冒頭でなされる。
父親の顔も知らず、母親に捨てられた天涯孤独な青年の山田（松山ケンイチ）には前科がある。富山県の田舎町に小さな塩辛工場に働き口を見つけ、社長から紹介された古い安アパート「ハイツムコリッタ」で暮らし始める。隣人は、ドカドカと山田の部屋に上がり込み、勝手に風呂を借りる島田（ムロツヨシ）、息子を引き連れ墓石の訪問販売員をしているというインチキ臭い溝口（吉岡秀隆）など変人ばかりだ。
そんな中、父親が孤独死したという知らせが山田に届く。父の記憶が全くない山田は困惑するが、他に身寄りもないため、遺骨を受け取るため、役所に出向く。
相変わらず、山田の部屋に勝手に上がり込んでは食事を共にする島田だが、山田の部屋にある父の遺骨には、きちんと頭を下げるなど礼節は欠かさない意外な一面を見せる。
山田は、父の遺品である携帯電話の履歴から電話を掛けるが、その相手先は「いのちの電話」だった。父がひもじい思いをして孤独死したと感じた山田は、思わず電話を切ってしまう。
やがて少しずつ、距離が縮まる山田と島田だが、あることがきっかけで島田が山田が前科者であることを知ってしまう。
一方で、アパートの大屋である南詩織（満島ひかり）は、一見、常識人のように見えるが、「妊婦を見ると蹴りたくなる」という“心の闇”を持った女性だった。
ある日、町を台風が襲う。その台風一過の朝、山田は思い立って、河川敷で父の遺骨を砕き始める。そこにやってきた南に、自分は幸せを感じてもいいのかと山田はつぶやき、やがて泣いてしまう。南は「いいんだよ」とそっと山田を抱きしめ、「お葬式をしましょう。お父さんの」と語りかける。
借りもののスーツを着た山田は、ハイツムコリッタの人々、そして台風を生き延びたホームレスの男性とともに夕暮れの川辺を練り歩く。溝口の子の鍵盤ハーモニカとホームレスのウクレレの演奏とともに、山田は遺骨を砕いた粉をまいていくのだった。
「死」と隣り合わせで生きる人々の人間模様を、時にコミカルに描きながらも、根底には、誰しもが抱えている孤独や、家族という“呪縛”、精神的虐待、狂気性が、この作品のテーマであろう。
荻上直子監督は、『かもめ食堂』や、テレビドラマ『やっぱり猫が好き』など、ほっこりとした作品が有名だが、2017年、『彼らが本気で編むときは、』を発表と同時に、自ら“荻上直子の第2章”と称し、その作風を一変させ、社会的な問題を真正面から扱う作品を放っている。2023年公開の『波紋』でも、そのテイストは受け継がれ、非常に重いテーマを、コミカルを交えながら表現している。
主人公・山田を演じた松山ケンイチ、島田を演じたムロツヨシのみならず、インチキ臭い商売に手を染める溝口役に吉岡秀隆、山田を前科者を知っても雇い続ける人間味溢れる塩辛工場の社長・沢田役に緒形直人を配するなど、実力派を揃え、飽きさせないストーリー展開とともに、「生」と「死」について考えさせられる秀作だ。
＜評価＞★★★★★
＜公式サイト＞https://kawa-movie.jp/
＜公式Twitter＞https://twitter.com/kawa_movie
＜公式Instagram＞https://www.instagram.com/kawa_movie
＜監督・脚本＞荻上直子
＜製作＞堀内大示、五老剛、多湖慎一、中西一雄、益田祐美子、亀山暢央、竹内力、五十嵐淳之、鈴木貴幸、川村岬、中西修、駒澤信雄
＜企画プロデュース＞水上繁雄、飯田雅裕
＜プロデューサー＞野副亮子、永井拓郎、堀慎太郎
＜共同プロデューサー＞成瀬保則、神保友香
＜撮影監督＞安藤広樹
＜照明＞重黒木誠
＜録音＞池田雅樹
＜美術＞富田麻友美
＜装飾＞山崎悠里
＜衣装＞村上利香
＜スタイリスト＞堀越絹衣
＜ヘアメイク＞須田理恵
＜VFX＞古橋由衣
＜整音＞瀬川徹夫
＜音響効果＞大河原将
＜編集＞普嶋信一
＜助監督＞藤森圭太郎
＜フードスタイリスト＞飯島奈美
＜スクリプター＞天池芳美
＜制作担当＞鳥越道昭
＜音楽＞パスカルズ「川っぺりムコリッタ」オリジナル・サウンドトラック(Universal Music) https://store.universal-music.co.jp/product/poce12190/
＜原作＞荻上直子「川っぺりムコリッタ」(講談社) https://bookclub.kodansha.co.jp/product?item=0000322058
#川っぺりムコリッタ #映画 #荻上直子 #松山ケンイチ #ムロツヨシ #満島ひかり #吉岡秀隆 #江口のりこ #柄本佑 #田中美佐子 #緒形直人 #薬師丸ひろ子 #笹野高史 #吉岡秀隆 #パスカルズ #ムコリッタ #仏教タ #いのちの電話 #KADOKAWA
川っぺりムコリッタ スペシャル・エディション（特典DVD付） [Blu-ray]
- 出版社/メーカー: KADOKAWA
- 発売日: 2023/02/03
- メディア: Blu-ray
![映画「川っぺりムコリッタ」オリジナル・サウンドトラック [ パスカルズ ]](https://thumbnail.image.rakuten.co.jp/@0_mall/book/cabinet/6569/4988031526569.jpg?_ex=128x128 "映画「川っぺりムコリッタ」オリジナル・サウンドトラック [ パスカルズ ]")
