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【映画レビュー】「アイ・アム まきもと」(2022 日本) [映画]

【映画レビュー】「アイ・アム まきもと」(2022 日本)
 本作は、2013年製作のイギリス・イタリア合作映画「Still Life」(邦題「おみおくりの作法」)をリメイクした作品。
 牧本壮(阿部サダヲ)は庄内市役所福祉課「おみおくり係」の職員。しかし、所属しているのは牧本ただ独り。牧本は、身寄りのない人の遺体を引き受け、葬儀・火葬・埋葬をする。遺族がいる場合は、遺族に連絡をし、葬儀への参列と骨壺の引き取りを依頼する。
 日々、身寄りのない人の火葬を終え、牧本は骨壺を持って市役所に戻り、亡くなった人の遺族に連絡するが、骨壺の受け取りを拒否したされる日々。牧本のデスクのは骨壺でいっぱいになっており、葬儀費用も牧本の自腹だ。
 身寄りのない人が亡くなると、刑事の神代亨(松下洸平)は牧本に、遺体の引き取りを求める連絡をする。牧本が引き取らずにいると、神代は牧本に「警察は貸倉庫じゃない」と怒りとをぶつける。
 無縁墓地の傍にある墓地には、牧本が自身で購入した墓があり、牧本は無縁墓地に納骨している。独り暮らしの牧本は帰宅すると、「おみおくり」した人の遺影にした写真をアルバムに貼る。
 牧本の暮らすマンションの向かいで、孤独死した62歳の男性の遺体が発見される。警察の捜査で、遺体の身元は蕪木孝一郎(宇崎竜童)といい、親や兄弟は既に他界していた。
 マンションの管理人によれば、蕪木は廊下で放尿したり、喧嘩や酒のトラブルが多い人だったと、牧本に話す。
 牧本は蕪木の部屋から携帯電話やアルバム、免許証などを持ち帰る。アルバムには「とうこ」という少女の写真があり、携帯電話に唯一登録されていたのは「魚住食品」。携帯には田んぼの写真が何枚も保存されていた。
 牧本の部署に配属された新任の局長・小野口義久(坪倉由幸)は牧本に、蕪木の案件を最後におみおくり係を廃止すると告げる。
 牧本は魚住食品へ赴き、蕪木の元同僚・平光啓太(松尾スズキ)と会い、生前の話を聞く。蕪木は、平光が勤務中に、指を切断する事故に遭った際、蕪木は「人手不足だから事故が起こる」と怒り、改善しないなら、肉のミンチの機械に放尿すると脅したという。
 さらに牧本は、平光から蕪木が当時交際していた女性についての情報を得て、「みはる食堂」に向かう。食堂を切り盛りする今江みはる(宮沢りえ)は、牧本に蕪木の話をしながら「頑張った。頑張った」と言う。みはるはその意味を「疲れたと言う代わりに頑張ったと言うの」と牧本に説明した。
 牧本は「とうこ」が蕪木の娘・津森塔子(満島ひかり)であることを突き止め、塔子に会いに行く。
 塔子は牧本に心を開き、蕪木の古い友人・鎗田の名を出す。
 蕪木が炭鉱に勤めていた頃、爆破事故があり、蕪木は負傷した同僚・槍田幹二(國村隼)を背負って脱出したが、鎗田は失明してしまう。
 蕪木は炭鉱を辞めた後、津森千晶と出会い、結婚して塔子が生まれた。塔子は白鳥が大好きな女の子だった。
 鎗田は蕪木を恩人だと思っている一方、蕪木は、盲目の鎗田を差し置いて自分だけが幸せになることを許せず、妻子を捨てたと言う。
 牧本は自分が購入した墓地を、蕪木に譲ることにする。
 塔子は、自分の父のために奔走する牧本に感動し、共に蕪木の「おみおくり」の準備を進める。
 牧本の口から、生前の父の話を聞きたいという塔子に、「お葬式の後に」と約束した牧本は、カメラを買い、白鳥の写真を撮り始める。しかし、ファインダーを覗きながら横断歩道を渡っていた牧本は、車にはねられてしまう。
 薄れゆく意識の中で牧田は「頑張った。頑張った」と呟く。蕪木の葬儀は、牧本の呼びかけによって多くの参列者が集う。
 神代は無縁墓地に牧本の遺骨を納めにやってきてくる。神代は葬儀にやってきた塔子たちを見て「牧本さん、あなたの粘り勝ちですよ」と牧本の遺影に呟く。神代の去った無縁墓地に、死んだ蕪木がやってきて手を合わせます。すると、次々に牧本がおみおくり係として携わった人たちがやってきては、墓地の前で手を合わせるのだった。
 孤独死という重いテーマながら、もどかしいまでに愚直に仕事に取り組み、時には上司や警察にも盾突く牧本を演じる阿部サダヲの姿に、徐々に惹きつけられていく。阿部サダヲの演者としての魅力が十分に引き出されている。それはまるで、本作がリメイク作品であることを忘れさせてしまうほどだ。
 最後、あっけなく死んでしまう牧本。しかし、墓に向かって手を合わせる人の多さが、彼の魅力を物語った感動的なラストシーンに繋がる。牧本は「おみおくり係」としての仕事を全うしたのだ。
 死生観に洋の東西に違いがないことも確認できる作品であり、シリアスな中にも、程よくコメディータッチな空気がストーリーを通じて感じられる。
 一方、牧本のキャラクターが現実離れしていることは確かで、こういった作品は好みが分かれるが、「死」と、その周辺の人間模様を現実に真っ向から描いたストーリーには、美しさすら覚える。
<評価>★★★★☆
<公式サイト>https://www.sonypictures.jp/he/11195836
<ソニー・ピクチャーズ公式X>https://twitter.com/SonyPicturesJP
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<ソニー・ピクチャーズ公式Facebook>https://www.facebook.com/SonyPicturesJP
<監督>水田伸生
<脚本>倉持裕
<製作総指揮>ウィリアム・アイアトン、中沢敏明
<エグゼクティブプロデューサー>堤天心、志賀司、中西一雄、島本雄二、井川泉、ウベルト・パゾリーニ
<プロデューサー>上木則安、厨子健介
<コ・プロデューサー>藤村哲也、丸山典由喜
<ラインプロデューサー>鈴木嘉弘
<撮影>中山光一
<照明>宗賢次郎
<録音>鶴巻仁
<美術>磯見俊裕
<装飾>柳澤武
<人物デザイン監修>柘植伊佐夫
<編集>洲崎千恵子
<音楽>平野義久
<助監督>相沢淳、村田淳志
<キャスティング>田端利江
<制作担当>井上純平
<原作>ウベルト・パゾリーニ「おみおくりの作法」
<エンディングテーマ>宇崎竜童「Over the Rainbow」
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アイ・アム まきもと ブルーレイ&DVDセット [Blu-ray]

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  • 出版社/メーカー: ソニー・ピクチャーズ エンタテインメント
  • 発売日: 2023/02/17
  • メディア: Blu-ray






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