SSブログ

【映画レビュー】「遺灰は語る」(英題「Leonora addio」/2022 イタリア) [映画]

【映画レビュー】「遺灰は語る」(英題「Leonora addio」/2022 イタリア)
 1934年、ノーベル文学賞を受賞した文豪ルイジ・ピランデッロ。「自分の遺体は故郷のシチリアに埋葬し、一部は海に撒いてほしい」と遺言を残し、1936年に死去するが、独裁者ムッソリーニは、彼の名声を政治医用するために彼の遺灰をローマに留め置くように指令していた。
 第2次世界大戦後、イタリアは敗戦国になりファシスト党も潰れ、アメリカの統治下に置かれる。ピランデッロ(ロベルト・エルリツカ)の遺灰もようやくシチリア島へ送られることになり、シチリア島アグリジェント市の特使の特使(ファブリツィオ・フェラカーネ)がその重要な役目を命じられる。しかし、アメリカ軍の飛行機に搭乗拒否されたり、遺灰の入った壺が消えてしまったりと、次々とトラブルが起こる、とんだ珍道中となってしまう。
 イタリアを代表する映画監督であるタヴィアーニ兄弟の弟パオロ・タヴィアーニが、兄ビットリオが2018年死去に死去した後、単独で監督した長編作品であると同時に、パオロも後を追うように2024年2月に亡くなったため、本作が遺作となった作品だ。
 当時の世相を表現するため、全編モノクロームで製作され、イタリアっぽいブラックユーモアや社会への皮肉も所々に散りばめられ、重厚な人間ドラマの中にもコメディー色も込められている異色作だ。
 たかが1人の人間の遺灰を巡って、政治や宗教、古いしきたりに縛られ、大の大人が困惑する姿は滑稽であり、シニカルだ。
 ラストシーン、散骨の場面になって、モノクロの世界からカラーに切り替わる演出はさすが。シチリア島の美しい青い海の美しさを際立たせており、視覚的効果は抜群だ。
 イタリア人にしか理解できないようなセリフやシナリオも含まれ、理解するのは少々難儀だが、カメラワークや音楽にもこだわりが見て取れ、芸術性を感じさせる一作だ。
 本作の製作段階で、パオロ・タヴィアーニが自らの死期が近いことが分かっていたかのようなストーリーで、その死生観を表現している。
 本作を完全に理解するのは、日本人である自分にはほぼ不可能だろう。しかし、敗戦の重苦しい空気から、徐々に明るさを取り戻した歴史は、我が国も通ってきた道。重いテーマから、最後には、ピランデッロが死の20日前に書いたという戯曲「釘」が映画として繰り広げられる。シチリアの男の子が父親と移民としてニューヨークに渡り、レストランを開くという物語なのだがそこに登場する少年、バスティアネッド(マッテオ・ピッティルーティ)は、パオロの生まれ変わりなのだろうか…。大いなる空白を残して、本作は終わる。
 観る人の好みによって、好き嫌いが大きく分かれる作品であることは確かだ。“意味不明”なシーンもチラホラ。しかし、全てを理解する必要などなく、パオロとて、観客のウケよりも、死の直前に、自分が撮りたいものを撮ることを優先した上で作品を完成させ、天に召されたのだと感じるのだ。
<評価>★★☆☆☆
<公式サイト>https://moviola.jp/ihai/#
<公式X>https://twitter.com/ihai_kataru
<映画配給会社ムヴィオラ公式Facebook>https://www.facebook.com/moviolaeiga
<監督・脚本>パオロ・タヴィアーニ
<製作>ドナテッラ・パレルモ
<撮影>パオロ・カルネラ、シモーネ・ザンパーニ
<美術>エミータ・フリガート
<衣装>リーナ・ネルリ・タビアーニ
<編集>ロベルト・ペルピニャーニ
<音楽>ニコラ・ピオヴァーニ
#遺灰は語る #映画 #遺灰 #パオロ・タヴィアーニ #ファブリツィオ・フェラカーネ #マッテオ・ピッティルーティ #クラウディオ・ビガリ #ロベルト・エルリッカ #ノーベル文学賞 #イタリア #シチリア #ローマ #ムッソリーニ #ファシスト #ベルリン国際映画祭 #PG12

映画パンフレット 遺灰は語る

映画パンフレット 遺灰は語る

  • 出版社/メーカー: ノーブランド品
  • メディア:






nice!(0)  コメント(0) 
共通テーマ:映画

nice! 0

コメント 0

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。