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【映画レビュー】「スクロール」(2023 日本) [映画]

【映画レビュー】「スクロール」(2023 日本)
 YOASOBIのヒット曲「ハルジオン」の原作者・橋爪駿輝による小説を、清水康彦監督、北村匠海&中川大志のダブル主演で映画化した青春群像劇。社会に居場所がなく、SNSでストレスを発散しているだけの4人の若者が、友人の自殺をきっかけに自身を見つめ直していくというストーリーだ。
 学生時代の友人である「僕」(北村匠海)とユウスケ(中川大志)は、友人・森が自殺したことを知る。上司からのパワハラに苦しみ、SNSで上司の悪口を書くことでなんとか自分を保っている「僕」と、刹那的に生きてきたお調子者のユウスケ。友人の死をきっかけに、生き方を見つめ直すようになる。
 そんな彼らに、「僕」のSNSの書き込みに共鳴している「私」(古川琴音)と、ユウスケとの結婚によって、空虚な心を満たしてくれると信じる菜穂(松岡茉優)の時間が交錯していく。
 終始、暗いストーリー。特に主人公の「僕」は、口を開けば「死にたい死にたい」ばかりで、その原因とされるパワハラの描写も、現実社会に照らせば大したことではない。作中で、そのパワハラ上司はクビになり、その憂さ晴らしの放火で捕まってしまうのだが、この程度で会社をクビになるのだとしたら、日本中の管理職は誰も部下を叱れなくなってしまうだろう。
 とにかく、北村匠海演じる「僕」のメンタルが弱すぎてイライラさせられる。今の若者ってみんなそうなの?と思わされ、それに共鳴する女性がいるというのも驚き。もはやここまでくるとメンヘラ集団の傷の舐め合いだ。
 原作者の橋爪駿輝は元フジテレビ勤務らしいが、30歳で辞めたところを見ると、対して優秀でもなかったのだろう。こんな社会に斜に構えたような人物がテレビ番組を作っていたとしら、そりゃ面白いわけがないよなと、妙に納得させられる。原作本は未読だが、読む気にもなれないほどのストーリーだ。
 北村匠海、中川大志、松岡茉優、古川琴音という豪華キャストを無駄遣いしており、最後まで「結局、何が言いたいの?」と、鑑賞者側から問いたくなるような意味不明さ。自殺、パワハラ、放火などといったエピソードを適当に放り込んで、若者の生きづらさを描いているつもりなのだろうが、何から何まで中途半端。
 これを商業映画にしたこと自体が謎に思えるほど、稀にみる駄作と断言できる。出演した俳優陣が不憫でならない。
<評価>★☆☆☆☆
<公式サイト>https://scroll-movie.com/
<公式X>https://twitter.com/scroll_movie
<公式Instagram>https://www.instagram.com/scroll_movie/
<監督>清水康彦
<原作>橋爪駿輝
<脚本>清水康彦、金沢知樹、木乃江祐希
<製作>坂本香、鷲見貴彦、小山洋平、佐久間大介、浅田靖浩
<エグゼクティブプロデューサー>麻生英輔、木村麻紀
<チーフプロデューサー>小林有衣子
<プロデューサー>八木佑介、野村梓二
<キャスティングプロデューサー>本多里子
<撮影>川上智之
<照明>穂苅慶人
<録音>桐山裕行
<音響効果>桐山裕行
<美術>松本千広
<衣装>服部昌孝
<ヘア>HORI
<メイク>NOBUKO MAEKAWA
<編集>清水康彦
<音楽>香田悠真
<監督補>長田亮
<VFX>宮城雄太
<助監督>草場尚也
<ラインプロデューサー>門馬直人、安藤光造
<アシスタントプロデューサー>金川紗希子
<制作担当>小林慶太郎
<原作>「スクロール」(講談社) https://bookclub.kodansha.co.jp/product?item=0000372142
<主題歌>Saucy Dog「怪物たちよ」 https://saucydog.jp/news/detail/1316
#スクロール #映画】#清水康彦 #橋爪駿輝 #北村匠海 #中川大志 #松岡茉優 #古川琴音 #水橋研二 #莉子 #三河悠冴 #MEGUMI #金子ノブアキ #忍成修吾 #相田翔子 #宮田早苗 #SaucyDog #ショウゲート

スクロール (講談社文庫)

スクロール (講談社文庫)

  • 作者: 橋爪 駿輝
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2022/12/15
  • メディア: 文庫






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【映画レビュー】「グランツーリスモ」(原題「Gran Turismo」/2023 アメリカ) [映画]

【映画レビュー】「グランツーリスモ」(原題「Gran Turismo」/2023 アメリカ)
 ソニー製のドライビングシミュレーター「グランツーリスモ」に夢中なヤン・マーデンボロー(アーチー・マデクウィ)。元プロサッカー選手の父、スティーブ・マーデンボロー(ジャイモン・フンスー)からは「現実を見ろ」とあきれられる日々だったが、ある日ヤンにビックチャンスが訪れる。
 世界中から集められたグランツーリスモのプレイヤーたちを、本物の国際カーレーサーとして育成するため、競い合わせて選抜するプログラム「GTアカデミー」の参加権を得る。バーチャルなゲームの世界では百戦錬磨のトッププレイヤーたちが、想像を絶するトレーニングやアクシデントを乗り越え、リアルのカーレースに挑む、実話を基にしたストーリーだ。
 「GTアカデミー」には、プレイヤーの才能と可能性を信じてアカデミーを発足したダニー・ムーア(オーランド・ブルーム)と、ゲーマーが活躍できるような甘い世界ではないと考えながらも指導を引き受けた元レーサーのジャック・ソルター(デビッド・ハーバー)、そして世界中から集められたトッププレイヤーたちがいた。厳しいトレーニングに耐え、ついにデビュー戦を迎える。
 初のレースは最下位に終わるが、あきらめずにレースを続け、少しずつ総合順位を上げていく。しかし、4位入賞まであと一歩というところで、チームのドライバーの姑息な手により順位を下げてしまう。
 ドバイでの最終レースを迎えたヤン。4位に入賞しなければ夢を諦めなくてはならず、後がない状態だ。大きなプレッシャーの中、4位でゴール。FIAライセンスを手に入れる。
 ヤンは恋人オードリー(メーブ・コーティア=リリー)と来日し、日産と正式に契約を交わす。本格的にレーサーとして歩み始め、レースに出場していく。。
 そんな中、ドイツでのレース中、ヤンは激しいクラッシュを起こす。意識を取り戻したヤンは、その事故で観客が亡くなったことを知り、罪悪感に苦しむ。
 ジャックはそんなヤンを車に乗せてクラッシュした場所まで連れていく。「かつて自分は他のドライバーの事故に巻き込まれたことがあって、それが原因でレーサーを辞めた」と告白する。
 車を降りたジャックは、そのままヤンにハンドルを握らせて、ラップを完走させる。しかし、死亡事故を起こしたことにより、日産本社から撤退をほのめかされているダニーは新たな挑戦として、ル・マン24時間レースに参戦する。アカデミー生だったマティ・デイビス(ダレン・バーネット)とアントニオ・クルス(ペペ・バロッソ)を加えて3人で24時間のレースに臨む。
 レース当日、父スティーブが「もっと早く応援してあげるべきだった」と涙ながらに伝え、ヤンは強く勝利を誓っう。
 しかし、ヤンはクラッシュに巻き込まれたドライバーを見て、過去の恐怖が蘇る。ジャックはヤンが好きな音楽をマイク越しに流してヤンを勇気づける。再びレースに集中したヤンは、不調のアントニオをカバーし、順位を上げていく。
 残り1時間。ヤンはゲームの中で何度も走ったル・マンでの経験を思い出し、レースで実践する。次々とライバルを抜き、4位につける。そしてファイナルラップ、ヤンは3位に浮上し、初出場にして表彰台に上がる。祝福と喜びに包まれ、ヤンは家族やチームメイトと共に祝うのだった。
 実話ベースのサクセスストーリーだけに、結末が分かり切っている作品ではあるものの、様々な撮影手法を駆使してのレースシーンは迫力十分。門外漢に対する嫌がらせも、カーレースの世界の現実を映し出しているものだろう。
 ヤン・マーデンボローというカーレーサーを生んだのは、ソニーと日産のバックアップによるものであり、日本人キャストがほぼいなくとも、日本がカーレースの世界で重要な役割を果たしていることを実感できる。ヤンが東京を訪れるシーンも、変にデフォルトされておらず、好感が持てる。
 しかし、難点があるとすれば、シンプルなストーリーの割には、134分という尺は少々長く、冗長さも感じる。映像や音楽も含めて、スピード感溢れるレースシーンが秀逸だっただけに、少々もったいない。最後に、本物のヤン・マーデンボローの写真とともに、実話であることを示すラストシーンも余韻を残すものだったが、レース好きやゲーマー以外に訴えるものがあったかといえば、そうでもない作品だった。よって“まぁまぁ”の評価にとどまる。それにしても、レース観戦中にクラッシュで観客が死んだら、補償などはどうなるのだろう…。その辺り、ツッコミどころのある作品でもあった。
<評価>★★☆☆☆
<公式サイト>https://www.sonypictures.jp/he/1183995
<ソニー・ピクチャーズ公式X>https://twitter.com/SonyPicturesJP
<ソニー・ピクチャーズ公式Instagram>https://www.instagram.com/sonypicturesjp/
<ソニー・ピクチャーズ公式Facebook>https://www.facebook.com/SonyPicturesJP
<監督>ニール・ブロムカンプ
<原案>ジェイソン・ホール、アレックス・ツェー
<原作>PlayStation Studios「グランツーリスモ」
<脚本>ジェイソン・ホール、ザック・ベイリン
<製作>ダグ・ベルグラッド、デイナ・ブルネッティ、アサド・キジルバシュ、カーター・スワン
<製作総指揮>マシュー・ハーシュ、ジェイソン・ホール、山内一典、ヘルマン・フースト
<撮影>ジャック・ジューフレ
<美術>マーティン・ホイスト
<衣装>テリー・アンダーソン
<編集>コルビー・パーカー・Jr.、オースティン・デインズ
<音楽>ローン・バルフェ、アンドリュー・カフチンスキ
<キャスティング>メアリー・バーニュー、レイリン・サボ
<主題歌>T-SQUARE「CLIMAXE」
<日本語版主題歌>T-SQUARE「MOON OVER THE CASTLE」
#グランツーリスモ #映画 #ニール・ブロムカンプ #ジェイソン・ホール #アレックス・ツェー #ザック・ベイリン #冨林勇佑 #ヤン・マーデンボロー #デビッド・ハーバー #オーランド・ブルーム #アーチー・マデクウィ #平岳大 #ダレン・バーネット #ジェリ・ハリウェル・ホーマー #ジャイモン・フンスー #ヨシャ・ストラドフスキー #ダニエル・プイグ #メーブ・コーティア=リリー #レース #eスポーツ #ゲーム #ソニー #日産

グランツーリスモ

グランツーリスモ

  • 出版社/メーカー:
  • 発売日: 2023/12/13
  • メディア: Prime Video






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【映画レビュー】「アステロイド・シティ」(原題「Asteroid City」/2023 アメリカ) [映画]

【映画レビュー】「アステロイド・シティ」(原題「Asteroid City」/2023 アメリカ)
 “奇才”ウェス・アンダーソン監督のよって、アメリカ南西部にの砂漠の街「アステロイド・シティ」に宇宙人が到来したことから起こる大騒動を、独特の世界観で描いたコメディ作品。
 ジェイソン・シュワルツマン、エドワード・ノートンなどアンダーソン監督作の常連俳優陣に加え、スカーレット・ヨハンソン、トム・ハンクス、マーゴット・ロビーら豪華キャスト陣が名を連ねている。
 物語冒頭でテレビ司会者が番組の趣旨を說明する。これは新作舞台劇の制作過程を舞台裏から見ていくテレビ番組で、そのために創られた架空のドラマだと紹介する。
 アメリカが輝いていた1955年、隕石が落下して出来た巨大なクレーターが観光名所である「アステロイド・シティ」に、ジュニア宇宙科学大会の栄誉に輝いた5人の天才的な子どもとその家族が招待される。
 子どもたちに母親が亡くなったことを伝えられない父親のオーギー(ジェイソン・シュワルツマン)、マリリン・モンローを彷彿とさせるグラマラスな映画スターのシングルマザーのミッジ・キャンベル(スカーレット・ヨハンソン)、それぞれが様々な思いを抱えつつ授賞式は幕を開けるが、祭典の最中にUFOが飛来し、宇宙人は展示品の隕石を持ち去る。とっさに宇宙人を撮影するオーギー。一方で、人々は大混乱に陥る。
 街は封鎖され、軍は宇宙人の存在を隠蔽しようとするが、子どもたちは、宇宙人の情報を伝えようと学校新聞に記事を掲載する。
 それを聞きつけ、アステロイド・シティには観光客が押し寄せ、宇宙人みやげの露店が並ぶ。そこに再びUFOが現れ、奪った隕石を落としていく。
 その頃、テレビ番組では、優秀な俳優志望の人々が学ぶ演劇ゼミで討論した劇作家が、「目覚めたければ眠れ」という結論に辿り着く。
 翌朝、オーギーが寝坊して起きると、ミッジをはじめ、軍人も少年少女たちも全員が姿を消していた。深夜に拘束の解除が発表され、皆が帰途についたのだ。表彰式が流れたことで、どさくさ紛れにウッドロウ(ジェイク・ライアン)が奨学金の小切手を受け取る。妻の死で子どもたちを義父のスタンリー(トム・ハンクス)に預けることを考えていたオーギーだが、絆が戻り、一家は全員で家に帰って行った。
 非常にややこしい構造の作品で、「アステロイド・シティ」という舞台劇、その舞台劇を紹介するテレビ番組、そのテレビ番組の舞台裏という3重構造になっている。モノクロ画面で映画は幕を開け出たと思えば、テレビ司会者(ブライアン・クランストン)が劇作家のコンラッド・アープ(エドワード・ノートン)の戯曲を紹介。そして画面はカラーのスコープサイズに変貌し、劇中劇「アステロイド・シティ」が始まる。そして時折、テレビ番組の舞台裏が挿入される。途中で付いていくことを諦めさせるほどの目まぐるしさだ。
 シュールなアメリカンジョークが散りばめられ、多重構造のストーリー、美しい映像には見どころはあるものの、とにかく難解。それがウェス・アンダーソンを言ってしまえばそれまでなのだが、かなり見る人を選ぶ作品であることは確か。しかし、これだけの豪華キャストが集っていることから、ハリウッドの中に彼のファンが多いことの証明だろう。
 ウェス自身も、鑑賞者に対して、この世界観を完全に理解することは求めていないのではないだいだろうか。「なんだこの映画!?」と思わせることが狙いのようにすら思える。
 この作品を通じて、ウェスは何を訴えたいのかなど考える必要もないと思えるほどの異色作だ。もはやコメディでも群像劇でもない“ウェス・アンダーソン作品”という新たなジャンルといえる本作。日本では全くといっていいほど話題にならなかったが、それも致し方ないだろう。この作品を日本人の感性で理解するのは不可能と感じるからだ。
<評価>★☆☆☆☆
<公式サイト>https://asteroidcity-movie.com/#
<公式X>https://twitter.com/asteroidcity_jp
<公式Instagram>https://www.instagram.com/asteroidcity_jp
<監督・脚本>ウェス・アンダーソン
<原案>ウェス・アンダーソン、ロマン・コッポラ
<製作>ウェス・アンダーソン、スティーブン・レイルズ、ジェレミー・ドーソン
<製作総指揮>ロマン・コッポラ、ヘニング・モルフェンター、クリストフ・フィッサー、チャーリー・ウォーケン
<撮影>ロバート・イェーマン
<美術>アダム・ストックハウゼン
<衣装>ミレーナ・カノネロ
<編集>バーニー・ピリング、アンドリュー・ワイスブラム
<音楽>アレクサンドル・デスプラ
<音楽監修>ランドール・ポスター
#アステロイド・シティ #映画 #ウェス・アンダーソン #ジェイソン・シュワルツマン #スカーレット・ヨハンソン #トム・ハンクス #ジェフリー・ライト #ティルダ・スウィントン #ブライアン・クランストン #エドワード・ノートン #エイドリアン・ブロディ #リーブ・シュレイバー #ホープ・デイビス #スティーブン・パーク #ルパート・フレンド #マヤ・ホーク #スティーブ・カレル #マット・ディロン #ホン・チャウ #ウィレム・デフォー #マーゴット・ロビー #トニー・レボロリ #ジェイク・ライアン #ジェフ・ゴールドブラム #ジェフ・ゴールドブラム #グレイス・エドワーズ #イーサン・ジョシュ・リー #ソフィア・リリス #アリストウ・ミーハン #宇宙人 #コメディ #カンヌ国際映画祭 #パルコ #ユニバーサル

アステロイド・シティ Blu-ray ジュニア・スターゲイザー・パック

アステロイド・シティ Blu-ray ジュニア・スターゲイザー・パック

  • 出版社/メーカー: NBCユニバーサル・エンターテイメントジャパン
  • 発売日: 2023/11/22
  • メディア: Blu-ray






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【映画レビュー】「The Son/息子」(原題「The Son」/2022 イギリス・フランス) [映画]

【映画レビュー】「The Son/息子」(原題「The Son」/2022 イギリス・フランス)
 本作は、初監督作『ファーザー』(2022)でアカデミー脚色賞を受賞した、フロリアン・ゼレール監督による“家族3部作”の2作目。ゼレールが手掛けた戯曲「Le Fils 息子」を原作にし、親と子の心の距離を描いている。
 主人公の一流弁護士・ピーター(ヒュー・ジャックマン)は、再婚した妻のベス(バネッサ・カービー)と生まれたばかりの息子とともに、幸福で充実した日々を過ごしていた。
 そんな彼の家を、前妻のケイト(ローラ・ダーン)が訪れ、同居している17歳の長男・ニコラス(ゼン・マクグラス)の様子がおかしいと相談される。
 ニコラスは噓をついて学校へも行かず、心に闇を抱えながら、生きる気力を失っていた。彼は父であるピーターと暮らすことを望み、引っ越したいと懇願する。ニコラスは、ニコラスはピーターとケイトが離婚する際、ケイトが激しくピーターを罵ったことによるトラウマを抱えていた。ピーターはニコラスを受け入れ、一緒に暮らし始める。
 ピーターが出勤した後、ニコラスはベスに既婚者だと知っていて、父と付き合ったのかと聞く。ベスはそんなニコラスに警戒心を抱き始める。
 ニコラスは近くの高校へ転校、ピーターはニコラスにセラピーを受けさせたりする。
 一方で、ニコラスの様子が気になるケイトは、メールや電話をしても返事がないと、ピーターに訴え、母親としての自信を失ったと告白する。ピーターはケイトに「立派な母親」だと励ます。また、ベスにも贈り物をしながら、感謝の気持ちを伝える。
 ピーターとベスが愛し合おうとした時、ニコラスがその様子を目の当たりにしてしまう。そしてある日、ベスは帰宅したピーターにニコラスのマットレスの下から、ナイフを見つけたと告げる。驚いたピーターはニコラスに、ナイフを隠し持っていた理由を聞く。彼は護身用と言うが、ピーターは必要ないはずだと答える。逆にニコラスはピーターに銃は何のために持っているのかと聞く。ピーターはその銃は、成人した時に父親から貰った猟銃で、置いてあるだけだと返す。はぐらかされたと感じたピーターは自傷するためではないかと聞き返す。そしてニコラスは、ピーターに自傷行為をする理由を問い質す。ニコラスは生きている実感がなく、自傷し苦痛を感じる時だけ唯一、生きていることを実感するのだと説明する。
 ピーターはそんなニコラスの気持ちが全く理解できず、ニコラスに二度としないよう厳しく言い、ニコラスが傷つくと自分も傷つくとなだめるが、ニコラスはピーターの行動が母のケイトと自分を傷つけたと反論する。
 ピーターは親しい上院議員が大統領予備選に出馬することになり、その参謀チームに誘われ、度々、ワシントンに出張することになる。
 ある日、知人からピーターの父親が病気だと聞かされる。ピーターは父親とは疎遠だったが、ワシントンでの会議の帰りに父親を訪ねる。父親は病気のことを聞いてきたのなら大したことはないと、元気で現役を続けていると告げ、ピーターは大統領予備選の参謀として声がかかっていることを伝える。
 そしてニコラスのことがあり、参謀チームに参加するかどうか迷っていると打ち明けるが、父親はピーターに、良い父親であることをアピールに来たのかと一蹴される。
 そんな父親にピーターは40年前、病気で死に直面した母親を、仕事を理由に一度も見舞わなかったことを非難する。しかし父親は、50歳にもなって、40年も前のことを引きずっているとは情けないと一喝する。
 ある日、ピーターとベスは友人のパーティーに行くことになる。ベスは久しぶりの外出を心待ちにしていたが、アクセサリーがなくなったりシッターが急病になるなど、アクシデントが続きイラ立つ。ニコラスが弟の面倒なら見ると申し出ると、ピーターは容認したが、ベスはそれを拒否し、「頭のおかしい彼には任せられない」と訴える。その言葉を聞いたニコラスはケイトの元に逃げ帰り、「苦しむのに疲れた」と泣きじゃくる。ピーターはニコラスを案じるが、そこに学校から電話が入り登校初日以降、学校に来ていないことを知らされる。
 ピーターはケイトの家を訪ねニコラスと対峙する。最初は穏やかに学校に行かない理由を聞き、前の学校で何かあったのかと追及する。しかし、ニコラスは「分からない」の一点張り。ピーターは自分の経験を持ち出し、あれほど嫌っていた父親と同じようなことを言い、ニコラスを追い詰める。するとニコラスの感情も爆発し、母や自分を捨てたくせに偉そうなことを言うなと、ピーターをクズ呼ばわりする。
 そして再びニコラスは自傷し病院へ搬送され、そこで医師から「急性うつ病」と診断を受ける。加えて、両親が原因で発症しているため、落ち着くまで面会できないと告げる。
 ニコラスとの面会が叶い、ベスは息子を連れて彼女の実家へと帰省する。ピーターとケイトは医師と介護士を交え、ニコラスと面会し今後の治療について話し合う。
 医師は入院の継続を勧めるが、ニコラスは医師をヤブ医者呼ばわりし、余計におかしくなると言う。そして、「もう大丈夫だから、よくなると約束する」と連れて帰ると懇願する。
 医師は精神的な病気は“愛”だけでは治せないと言い、未成年の入院には保護者の了解が必要だと、ニコラスの安全のためにも同意してほしいと訴える。ピーターとケイトは医師の意見を聞き、ニコラスの入院を決めるが、泣き叫びながら両親に助けを求めるニコラスの顔を見て、ピーターは退院させ自分たちで看護しようと決める。
 ピーターの家に3人で帰り、ニコラスにとって久しぶりの3人家族に戻り、穏やかな空気になる。ニコラスは1週間も体を洗っていないと、シャワーを浴びにバスルームへ向かう。ピーターとケイトは今後のことを話し、とりあえず3人で映画でも観に行こうと、ニコラスの快方を信じる。
 しかし突然、バスルームから銃の発砲音が響く。ピーターとケイトは慌ててバスルームに向かうが、「ニコラス!目を開けて!ママを見て!」と泣き叫ぶ声だけが響き渡る。ニコラスは自殺するタイミングを見計らっていたのだ。
 年月が経ち、ピーターの家では会食の準備がされ、ベスと成長した息子もいる。ベルが鳴り玄関のドアを開けると、ニコラスが立っていてケイトと恋人は後から来ると言う。
 ニコラスは、病気と向き合い、立ち直るまでの経験を本にし、最初に父に渡したかったと話し、ピーターに差し出す。ピーターは本を握りしめ立ち上がり、バスルームの方を見つめるが、ベスが「どうしたの?大丈夫?」と声をかける。しかし、そこにはニコラスの姿も本もなかった。ニコラスの自殺から4年が経ったものの、ピーターは悲しみと苦しみから乗り越えられず、空虚の中で暮らしており、その情景は白昼夢だったのだ。
 ベスは、ニコラスの自殺はピーターのせいじゃないと擁護し、4歳になった二男のために立ち直ってほしいと言うが、ピーターは幼い頃のニコラスとの思い出の中で、泣き崩れるのだった。
 自分のことを完璧だと思っている父親が、我が子の心の病を理解しようともしない様を描き、さらにはその父親も輪をかけて無理解な人物であったことを示したことで、息子である少年の自殺という最悪の結果をもたらすストーリーが、観る者の心に突き刺さる。
 ピーターは、社会的な身分は一流だが、父親としては失格といえる人物。さらにはピーターの父親にも同じことが言える。毒親の連鎖が、自殺という最悪の結果を以て、ニコラスは負のスパイラルから解放されたとも言える。
 ヒュー・ジャックマンが演じる父親のピーターは、まるで悪意などないようにニコラスと接し、“正しい道”へ導こうとするが、その道とはニコラスにとっては“正しい道”ではなかったことから起きた悲劇だ。
 さらに、離婚時にニコラスを激しく罵り、ニコラスにトラウマを植えつけたケイトと、最後までニコラスに心を開くことなく、危険視していたベスにも、その責はあるだろう。
 決して登場人物が多いわけではない作品だが、それが奏功し、ストーリーの軸がしっかり押さえられた作品で、見応えある秀作だ。とかく、自分の子どもを型に嵌めたがる親世代には必見の一作だ。
<評価>★★★★☆
<公式サイト>https://www.theson.jp/
<公式X>https://twitter.com/TheSon_jp
<監督>フロリアン・ゼレール
<脚本>フロリアン・ゼレール、クリストファー・ハンプトン
<製作>ジョアンナ・ローリー、イアン・カニング、エミール・シャーマン、フロリアン・ゼレール、クリストフ・スパドーヌ
<製作総指揮>サイモン・ギリス、フィリップ・カルカソンヌ、ヒュー・ジャックマン、ダニエル・バトセック、オリー・マッデン、ローレン・ダーク、ピーター・タッチ、クリステル・コナン、ヒューゴ・グランバー、ティム・ハスラム
<撮影>ベン・スミサード
<美術>サイモン・ボウルズ
<衣装>リサ・ダンカン
<編集>ヨルゴス・ランプリノス
<音楽>ハンス・ジマー
<音楽監修>イアン・ニール
<原作>フロリアン・ゼレール「Le Fils 息子」
#TheSon #TheSon息子 #映画 #フロリアン・ゼレール #クリストファー・ハンプトン #ヒュー・ジャックマン #ローラ・ダーン #バネッサ・カービー #ゼン・マクグラス #アンソニー・ホプキンス #ヒュー・クァーシー #ベネチア国際映画祭 #ゴールデングローブ賞 #ライオンズゲート #キノフィルムズ #家族3部作

【Amazon.co.jp限定】「The Son/息子」Blu-ray 〔非売品プレス付き〕

【Amazon.co.jp限定】「The Son/息子」Blu-ray 〔非売品プレス付き〕

  • 出版社/メーカー: バップ
  • 発売日: 2023/09/13
  • メディア: Blu-ray






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【映画レビュー】「山女」(2022 日本・アメリカ) [映画]

【映画レビュー】「山女」(2022 日本・アメリカ)
 18世紀末の東北の寒村を舞台に、過酷な運命に翻弄されながらも、たくましく生きる女性・凛(山田杏奈)を描いている。脚本も務める福永壮志監督が、柳田國男の「遠野物語」に着想を得たとされる作品だ。
 冷害で食糧難に苦しむ村。農家で子が産まれるが、食わせられないという理由で、両親はすぐに窒息死させるショッキングなシーンでストーリーが始まる。死体処理の汚れ仕事をやっている凛は遺体と料金を受け取り、凛は川に遺体を流して山に向けて祈る。
 そんな彼女の心の救いは、盗人の女神が宿るといわれる早池峰山。ある日、村で米泥棒の事件を起こし、村人から責められる父親・伊兵衛(永瀬正敏)に代わって罪を被った凛は、殴られ、山に逃げ込む。そして、決して越えてはいけないと言い伝えられる山神様の祠を越えた凛は、さらに山の奥深くへと進んでいく。そんな凛の前に現れたのは、人間なのかもわからない不思議な山男(森山未來)だった。
 凛と山男の親子のような共同生活を送っていたが、村長(品川徹)にマタギを雇って凛を捜索させる。火炙りの儀式を行う生贄にするためだ。凛は山男の上着を織ってやり、山男の髪を手入れしてやる。マタギ集団と泰蔵は祠を越えて山に入る。泰蔵(二ノ宮隆太郎)は凛を見つけて説得するが拒否される。そこに山男が現れてマタギと殺し合いになり、山男はマタギを何名か撲殺するが、結局は火縄銃を受け絶命する。凛はその場で自分も殺せと懇願するが、村に連行される。
 村に帰った凛は監禁され、伊兵衛は罪の帳消しと引き換えに凛の生贄を受け入れる。泰蔵は黙っていた春(三浦透子)を責めるが、春は村の掟には逆らえないと一蹴する。夜に父から生贄のお勤めを告げられて凛は了承する。泰蔵は牢屋の前で泣き崩れて凛に謝罪するが、結局家に帰って春を抱く。
 真夜中の牢屋で、凛は馬の銀色に光る立髪に、山男の面影を見る。
 村人総出で火炙りの儀式を行う。凛が磔にされながら山を見つめ、天国へと思いを馳せる。凛の足元に火が着けられた直後、激しい雨が降り、火は消えてしまう。雷が磔の柱を直撃し、縄が解ける。気絶から目覚めた凛は朦朧としたまま山へと歩き出す。村人達は神が降りたと恐れ慄く。
 そして凛は山へと姿を消し、山女の伝説として後世まで村で語り継がれることになるのだ。
 遠野物語から着想を得たと言ってはいるが、その内容は、貧しい寒村で苦しみ、1人の女性を生贄にしようとする救いようもないストーリーだ。
 山男の存在も、ストーリーに大きく影響を与えることはなく、ただファンタジー要素を描きたかったが故に、無理やりネジ込んだような印象を受ける。
 実際に、こういう時代があったのかも知れない。しかし、「東北=貧しい・寒い・意味のない神頼み・生贄・村八分」といったステレオタイプの描写にはウンザリしてしまう。日米合作の作品だが、これは米国側からの視点なのか。だとしても、あまりにも遠野物語と柳田邦男を愚弄してはいまいか。
 主人公を演じた山田杏奈が、新境地を開拓したかのような好演を見せている。逆をいえば、それがなければ何も印象に残らない作品だった。
<評価>★☆☆☆☆
<公式サイト>https://www.yamaonna-movie.com/
<公式X>https://twitter.com/yamaonna_movie
<公式Instagram>https://www.instagram.com/yamaonna_movie/
<監督>福永壮志
<脚本>福永壮志、長田育恵
<プロデューサー>エリック・ニアリ、三宅はるえ、家冨未央、白田尋晞
<エグゼクティブプロデューサー>安田慎、中林千賀子、白田正樹
<撮影>ダニエル・サティノフ
<照明>宮西孝明
<美術>寒河江陽子
<録音>西山徹
<整音>チェ・ソンロク
<装飾>柴田博英
<衣装>宮本まさ江
<メイク>金森恵
<かつら>荒井孝治
<特殊メイクデザイン>百武朋
<VFXスーパーバイザー>オダイッセイ
<編集>クリストファー・マコト・ヨギ
<音楽>アレックス・チャン・ハンタイ
<助監督>北川博康
<制作担当>大村昌史
#山女 #映画 #福永壮志 #長田育恵 #山田杏奈 #森山未來 #二ノ宮隆太郎 #三浦透子 #品川徹 #でんでん #永瀬正敏 #山中崇 #川瀬陽太 #赤堀雅秋 #白川和子 #東北 #遠野物語 #柳田國男 #アニモプロデュース

山女

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【映画レビュー】「ザ・ホエール」(原題「The Whale」/2022 アメリカ) [映画]

【映画レビュー】「ザ・ホエール」(原題「The Whale」/2022 アメリカ)
 劇作家サミュエル・D・ハンターの舞台劇を、ダーレン・アロノフスキー監督が映画化した作品。家族を捨て、極度の肥満に陥った男が自らの死期を悟り、疎遠になっていた娘と寄りを戻そうとするヒューマンドラマ。主演のブレンダン・フレイザーは本作で第95回アカデミー主演男優賞を受賞した。
 家族を捨て、同性恋人アランの元に走った男・チャーリー(ブレンダン・フレイザー)。その後、アランが亡くなり、そのショックからチャーリーは暴飲暴食の日々を送り、体重272キロの極度の肥満体になってしまう。
 そんなチャーリーは唯一の友人である看護師のリズ(ホン・チャウ)の手を借りながら、大学のオンライン授業でエッセイの書き方を指導する講師として生計を立てていた。しかし、自分の太った姿を見られないように、自分の姿が映らないということにしていた。
 ある月曜日、チャーリーの元に、新興宗教「ニューライフ」の宣教師トーマス(タイ・シンプキンス)が訪れた際、チャーリーは発作を起こす。すぐさまリズが駆け付け、チャーリーに病院に行くよう勧める、チャーリーは治療費用も健康保険証もないと言って断る。
 リズは、トーマスがニューライフの宣教師であることを知るや、彼を追い返す。リズは父がニューライフ信者であり、この宗教に不快感を抱いていたのだ。
 翌日の火曜日、チャーリーは、自身の症状をネットで調べ、鬱血性心不全のステージ3で余命は長くないことを知る。そこでチャーリーは約10年もの間、音信不通だった娘のエリー(セイディー・シンク)を呼び寄せる。
 チャーリーはエリーが8歳の時に家族を捨てたのだが、17歳になったエリーは、未だにチャーリーを憎んでいた。家族を捨ててからもなおチャーリーはエリーに未練を残していたのだが、元妻のメアリー(サマンサ・モートン)は決してエリーをチャーリーに会わせようとはしてこなかったのだ。
 チャーリーはエリーに自分の有り金を全てやると言い出す。この頃のエリーは家庭でも学校でも荒れ果て、学校も停学処分になっていた。そんなエリーに、チャーリーは勉強を見てやると持ち掛ける。エリーは自分のレポートを書き直してほしいと頼み、チャーリーは書き直すことの条件としてエリーも自分にエッセイを書くよう頼むが、エリーは立ち去ってしまう。
 さらに翌日の水曜日も、エリーが訪ねてくるが、チャーリーがまだ書き直しに手を付けていないことを知るや帰っていく。
 入れ替わるかのように現れたトーマスは何とかしてチャーリーの役に立とうとしましたが、またもやリズに追い出される。その際、リズはチャーリーと付き合っていたアランは自分の兄であることをトーマスに打ち明けましる。アランはニューライフの宣教師だったのだが、チャーリーとの出会いを機に脱会したため、父や教会から仕打ちを受け、心を病んだ末に自殺していたのだ。
 木曜日、再びチャーリーのもとを訪れたエリーは、チャーリーに睡眠薬入りのサンドイッチを食べさせ、チャーリーが眠っている間、トーマスが訪ねてくる。エリーは大麻を吸い始め、誘われるかのようにトーマスも吸い始める。実はトーマスも教会との問題を抱えている最中で、故郷での布教活動がパンフレットを配るだけだったことに疑問を持ったトーマスは教会に相談しようとしましたが相手にされなかった。そこでトーマスは教会から金を盗んで逃げていた。エリーはトーマスの発言の一部始終を録音していた。
 その時、リズがメアリーを連れて訪ねてくる。リズはエリーがチャーリーに睡眠薬を飲ませたことに激怒するが、チャーリーが目を覚まし、エリーにレポートを渡すと、エリーはその場を立ち去っていく。チャーリーとメアリーとの間には気まずい空気が漂うが、メアリーはエリーの育て方を間違えたことを嘆き、それ故、チャーリーに今のエリーを見せたくなかったのだと明かす。
 2人の会話を聞いていたリズは、チャーリーが隠れてお金を貯め込んでいたことを知り、その金さえあればきちんとした医療を受けられるはずだと嘆くが、チャーリーはあくまでも自分のことよりもエリーのためにそのお金を残そうと考えており、メアリーはチャーリーは金銭面で、自分は子育てで、それぞれ役目を果たしたのだと述べる。
 全員が引き揚げ、独り残ったチャーリーは、冷蔵庫から食べ物を出して食べていたところ、トーマスが戻ってくる。エリーは隠し撮った音声データと写真を、ニューライフ教会とトーマスの両親に送ったそうで、エリーがどんな意図でやったのかはわからないけど両親も教会も許してくれたと語る。チャーリーはトーマスに両親のもとに戻るように告げる。
 そして金曜日、チャーリーはこの日のオンライン授業を最後の授業にすることと決めた。生徒たちに正直な文章を書くよう呼びかけたチャーリーは、今まで決して見せたことのない自分のありのままの姿を見せ、授業が終わるとパソコンを破壊する。
 そこにリズが訪ね、チャーリーはトーマスが自分のせいでアランが死んだと話していたことを伝えると、リズはチャーリーがアランのことを愛してくれていなければアランはもっと早く死んでいただろうと返答する。そしてチャーリーは、エリーがトーマスの写真と音声を教会と家族に送ったのは、トーマスを家に返すためにやったのだとだろうと語る。リズが帰った後、エリーがやってきて、チャーリーに書き直してもらったレポートが不合格になったことを伝える。説明を求めるエリーに、チャーリーは、声に出して読んでくれと頼く。
 実はこのエッセイは、エリーが数年前に書いたものであり、アメリカの小説家ハーマン・メルヴィルの小説「白鯨」に関してのもの。チャーリーは我が娘のこのエッセイをずっと心の支えにしてきたのだ。
 チャーリーはエリーに今までのことを素直に謝罪し、エリーには才能があること、そしてエリーは自分の“最高傑作”であることを伝える。そしてチャーリーはエッセイを読むエリーを見ながら、その巨体を、全身全霊を込めて歩行器なしで立ち上がり、エリーの元に歩み寄る。それはまさに小説で描かれた白鯨のようだった。チャーリーはエリーがエッセイを読み終え、お互いが目を合わせて微笑み合った時、チャーリーは白い光の中に包まれ、消えていくのだった。
 同性愛や新興宗教、そして精神的ショックからの過食症といった、米国ならではの問題を盛り込み、救いようもない現実を描いているのだが、最後の最後で、チャーリーは正直になることで自身を救い、エリーにも希望を残すことができたのではないかと感じさせるラストシーンだ。
 ダーレン・アロノフスキー監督の演出力と、ブレンダン・フレイザーとホン・チャウをはじめとするキャスト陣の演技が素晴らしく、1人の男の人生とその最期の1週間を、ほぼワンシチュエーションの会話劇で描き切っている。ある男を軸としたヒューマンドラマとしての脚本も出色だ。
 ほとんど自暴自棄となり、身動きも取れない巨漢が、命尽きる直前に、自身の過去を悔い改め、生き別れの娘のために懸ける姿には感動を禁じ得ない。
 そして、特殊メイクを施されながら巨漢を演じ、アカデミー賞主演男優賞を獲得したのも納得のフレイザーの演技には圧倒させられた。
<評価>★★★★☆
<公式サイト>https://whale-movie.jp/
<公式X>https://twitter.com/thewhale_jp
<監督>ダーレン・アロノフスキー
<原作・脚本>サム・D・ハンター
<製作>ダーレン・アロノフスキー、アリ・ハンデル、ジェレミー・ドーソン
<製作総指揮>スコット・フランクリン、タイソン・ビドナー
<撮影>マシュー・リバティーク
<美術>マーク・フリードバーグ、ロバート・ピゾーチャ
<衣装>ダニー・グリッカー
<編集>アンドリュー・ワイスブラム
<音楽>ロブ・シモンセン
#ザ・ホエール #映画 #ダーレン・アロノフスキー #サミュエル・D・ハンター #ブレンダン・フレイザー #セイディー・シンク #ホン・チャウ #タイ・シンプキンス #サマンサ・モートン #肥満 #死 #過食 #アカデミー賞 #ゴールデングローブ賞 #ベネチア国際映画祭 #主演男優賞 #A24 #キノフィルムズ

ザ・ホエール [Blu-ray]

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  • 出版社/メーカー: Happinet
  • 発売日: 2023/10/04
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【映画レビュー】「ビニールハウス」(原題「비닐하우스」/英題「Greenhouse」/2022 韓国) [映画]

【映画レビュー】「ビニールハウス」(原題「비닐하우스」/英題「Greenhouse」/2022 韓国)
 本作を語る前に触れておきたいのは、そのティザービジュアル。その謳い文句は「半地下はまだマシ」という刺激的で挑発的な言葉だ。
 監督・脚本・編集を担当したのは、本作が長編監督デビューとなる29歳のイ・ソルヒ。韓国映画アカデミーで学び、『パラサイト 半地下の家族』(2019)で、韓国史上初、パルムドールとオスカーを手にしたポン・ジュノの後輩にあたる。
 ソルヒ自身、認知症の祖母と、その世話をする母の日常から着想を得てオリジナルの脚本を執筆したというだけに、貧困や孤独、高齢者をめぐる介護や認知症といった問題を、リアリティーたっぷりに描き、韓国社会の負の部分に鋭く切り込んでいる。
 新人監督としては異例の第27回釜山国際映画祭で3冠を獲得し、第59回大鐘賞映画祭・第44回青龍映画賞の新人監督賞にノミネートされるなど、鮮烈な長編映画監督デビューを飾った。
 物語は広大な農場にポツンと建つ真っ黒なビニールハウスのアップから始まる。農場といっても農産物が育てられている様子はない。どうやら休耕地のようだ。だとすれば、このビニールハウスはかつて、栽培された作物の集積場だったのだろうか。
 そこに潜り込むようにして暮らしているムンジョン(キム・ソヒョン)。
 ビニールハウスに暮らすムンジョンは、家を借りるお金もなく、少年院にいる息子と再び新居で暮らすことを夢見ながら、盲目の老人テガン(ヤン・ジェソン)と、その妻で重度の認知症を患うファオク(シン・ヨンスク)の訪問介護士兼家政婦として働いている。ファオクは認知症のせいか、ムンジョンを異常なまでに敵視し、入浴介護の際にも全く言うことを聞かず、ムンジョンの顔に唾を吐き掛ける始末だ。
 かたやテガンは、目が見えないにもかかわらず、その状況を知っているかのようで、ムンジョンを気に掛ける言葉をかける優しい主人だ。
 しかしある日、ファオクが風呂で暴れ出し、ムンジョンと揉み合った末、床に後頭部を強打し死んでしまう。
 気が動転しながらも、救急車を呼ぶべく携帯電話を手にするが、その瞬間、着信が来る。その相手は愛する息子からだった。
 ムンジョンは悩んだ末に、同じく認知症で入院中の自身の母親・チュンファ(ウォン・ミウォン)を退院させ連れ出し、ファオクの身代わりとする。ファオクの遺体は毛布にくるんだ上で、テガンの車で運び、ビニールハウスに隠す。
 不可抗力によって起きた事故とはいえ、人を殺めてしまったムンジョンだったが、その出来事を“なかったこと”とし、息子と一緒に暮らす未来を守ることを優先させる。このことが、ムンジョンを地獄へと導くことになる。
 一方でムンジョンは、自らの顔や体を殴りつけてしまう自傷行為に悩まされていた。無料のグループセラピーに通っており、そこでDVに悩まされているスンナム(アン・ソヨ)という思春期の少女と出会う。
 スンナムの置かれた状況に同情し、ビニールハウスで過ごすことを許すムンジョンだったが、ムンジョンが外出中にこっそりと入り、誕生日を祝おうとサプライズでケーキを用意していたスンナムに驚かせられ、思わず叱ってしまう。当然ながら「死体があるから」という理由を話せるわけはなく、スンナムは出て行ってしまう。
 一方でテガンは、医師の旧友から、初期の認知症と告げられていた。テガンは記憶が消えないうちに思い出を作ろうと、旧交を温めたり、盲目になる前まで運転していた車を、大きな駐車場で、助手席に座ったムンジョンのナビゲーションで運転する。
 そのテガンも、すり替えられた妻について次第に違和感を抱く。チュンファの顔に触れたテガンは、その人物がファオクではないと確信するのだが、ムンジョンを問い詰めたりはしない。ムンジョンはすんでのところで、犯行が発覚することから逃れる。テガンは、本作で唯一といっていい常識人で、それ故にムンジョンから騙され続けることになる。
 場面は変わって、ムンジョンは息子と住むことになる新居の床を掃除していた。
 同じ頃、ムンジョンの息子は、予定よりも早く、少年院を出所し、同じく出所した仲間と、ムンジョンの住み家だったビニールハウスに侵入する。テーブルとソファーが残されていたため、酒盛りを始めようとするが、ある人物が入ってきたことで奥に隠れる。
 その人物とはムンジョンだった。引っ越しの最後の後片付けかと思いきや、そうではなかった。彼女は信じられない行動に出て、過去に犯した過ちと同時に、未来をも失うことになるのだった。
 あまりにも衝撃的で救いのないエンディングに、しばし、絶望感に襲われ呆然となる。
 サスペンスというより、ここまで来たらもはや“ホラー”にも感じられる本作。「半地下はまだマシ」というキャッチコピーに嘘はなかった。
 実際、韓国では、家を失った貧困層がビニールハウスに住まいを求める例が増加し、社会問題となっているという。それこそ、「半地下」にすら住めない層が生まれてきているのだ。
 これを“海の向こうの話”として受け止めるがどうかは、鑑賞者の感じ方次第だろう。
しかし、OECD(経済協力開発機構)の調べによると、韓国の貧困率15.3%(2021)に対し、日本の貧困率は15.7%(2018)。格差社会の象徴のような米国ですら15.1%(2022)だ。しかも、韓国はその数字に改善傾向がみられるのに対し、日本では、統計すら取られていない。その数字や取り扱い方から、我が国が先進国の中で“最貧国”であることを示しているとはいえないだろうか。日経平均株価が史上初の4万円超えを記録しても、その不都合な真実に変わりはないのだ。
 監督・脚本を務めたソルヒが、自身の体験をベースに韓国が抱える根深い問題について作品を通じて明らかにした意義は大きい。だからこそ、この終始暗いストーリーを演じ切ったキム・ソヒョンを始めとするキャスト陣ともども、数々の賞に輝いたのだろう。
 ただ、本作を観賞して感じたのは、「これは韓国だけの問題ではない」ということだ。形は違えども、日本の中にある暗部も映し出しているようにも思えるのだ。
 登場人物のほとんどが薄気味悪く、ストーリーもどうしようもないバッドエンドで終わる本作に対して、嫌悪感を覚える向きもあるだろう。そういう意味では見る人を選ぶ作品かもしれない。しかしながら、これでもかとばかりに、絶望的な現実を見せ付けられる本作を通じて、1人でも多く、様々な社会問題に関心を持つ人が増えれば、今よりも少し幸せな未来が待っているはず。ソルヒも、そんな思いを乗せて、本作を作り上げたと信じる。
<評価>★★★★★
<公式サイト>https://mimosafilms.com/vinylhouse/#
<公式X>https://twitter.com/vinylhousefilm
<映画配給会社ミモザフィルムズ公式Instagram>https://www.instagram.com/mimosafilms/
<映画配給会社ミモザフィルムズ公式TikTok>https://www.tiktok.com/@mimosafilms
<監督・脚本・編集>イ・ソルヒ
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韓国映画で学ぶ韓国の社会と歴史 (キネマ旬報ムック)

韓国映画で学ぶ韓国の社会と歴史 (キネマ旬報ムック)

  • 出版社/メーカー: キネマ旬報社
  • 発売日: 2015/12/28
  • メディア: ムック






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【映画レビュー】「空気殺人 TOXIC」(原題「공기살인」/英題「Air Murder」/2022 韓国) [映画]

【映画レビュー】「空気殺人 TOXIC」(原題「공기살인」/英題「Air Murder」/2022 韓国)
 1994年から2011年まで実際に起き、2万人以上の死者と出した「加湿器殺菌剤事件」。加湿器に入れる殺菌剤に、毒性のある物質が含まれていたものの、企業、さらに政府もが有害性を認識しながら販売し、事件が発覚した後も証拠を隠蔽したことから、「家の中のセウォル号事件」とも呼ばれる一大企業スキャンダルに発展する。
 テフン(キム・サンギョン)は、大学病院で救急救命室の医師としている。ある日、息子のミヌ(キム・ハオン)が意識を失い、病院に運び込まれる。最近体調がすぐれなかったミヌだったが、病院に運ばれたときには呼吸ができない状態になっていた。診察の結果、急性間質性肺炎と判明する。
 入院したミヌの身の回り品を自宅に取りに戻った妻・ギルジュ(ソ・ヨンヒ)が突然倒れ、同じ肺の病気で亡くなってしまう。テフンと義妹で、検事を務めるヨンジュ(イ・ソンビン)は、ギルジュの死因を不審に思い、テフンはギルジュが火葬される前に病院に遺体を運び込み、解剖。テフンの死因がミヌと同じ急性間質性肺炎だったことを突き止める。さらに調査を進めると、衝撃的な事実が明らかになる。
 原因は、加湿器用の殺菌剤に含まれている化学物質だった。世界的な企業でもあるオーツー社は、自社製品に有害な物質が含まれていることを隠し、17年間にもわたって販売してきたのだ。
 オーツー社は「殺菌剤を加湿器に入れれば風邪に効く」などと宣伝し、政府も安全性を保証していたため、商品はヒットしたが、一方で、殺菌剤を使用した多くの人々の命が奪われる。テフンは多くの被害者たちを募り、真実を明らかにするために、裁判を通じてオーツー社に立ち向かう。
 どこの国でも言えることだが、大企業、しかも政府とズブズブの関係にある相手とした裁判には困難が付きまとうもの。本作でも、被告側の弁護団は尊大な大度に終始し、陰でオーツー社は、示談金をちらつかせた被害者原告団の切り崩しと、検証結果の改ざんに動いていた。
 オーツー社のイギリス国籍を持つ社長は自社の商品が有害であることを否定し、裁判を起こさせないように、部下のソ・ウシク(ユン・ギョンホ)を呼び寄せる。
 ウシクは、裏で手を回し、政治家の力も借りてテフンの身内のヨンジュが検事として働けないようにする。そこでヨンジュは、原告側の弁護士を務めることになる。
 ヨンジュは尊敬する先輩弁護士に共同弁護士になってほしいと頼むが断られる、そして彼は、第1回目の公判に被告側の弁護士として現れる。彼は報酬が多い被告側につくことを選んだのだ。
 敏腕弁護士の彼は、ソウル大学の医学部教授に再検査を頼んだので、結果が出るまで公判を伸ばして欲しいと主張。ヨンジュは反論するが、結局、被告側の主張が通ってしまう。
 しばらくして、原告側の男性が、オーツー社と示談し、原告名簿を渡したという知らせが入る。テフンが彼に会いに行くと、彼は家族の病気の治療に費用がかかり、膨大な借金を背負っていたことを涙ながらに告白する。
 オーツー社を訪ねてきたソウル大学の医学部教授は、製品には有害物質が含まれていたと述べる。ウシクはもう一度、検査をするように伝えるが、それは「虚偽の報告をしろ」ということだ。さらにウシクはミヌの病室に現れる。彼はミヌへの移植の手配をすると約束し、こちらの条件を飲むよう資料を置いて出ていく。テフンはその封筒を引き裂く。
 ようやく開かれた公判で医学部教授は製品に有害物質は含まれていなかったと証言。さらに驚くべきことが発表される。その検査の立会人が、テフンだったのだ。原告側は、悲鳴をあげながら、テフンに「なぜだ?」と問いかける。
 ヨンジュが証人に反対尋問を行うが、逆転できる見込みはなく、次回公判で判決が言い渡されることになる。訴えた人々はヨンジュに迫るが、テフンは黙ってたたずむだけだった。
 オーツー社は早くもシャンペンを開けて勝利を祝う。当初の約束通り、社長はアジア総合部門のトップの座に移ることになり、ウシクが社長の座につくこととなる。
 社長はウシクにオーストラリアでの契約の件を処理しておくように、殺菌剤の在庫は処分せず、全て市場に回すようにと命じる。彼はそれで誰かが死んでもかまうものかと言い放つ。
 ウシクがすぐにオーストラリアに連絡すると、担当者はこのような危険な商品を扱う事はできない、韓国ではこれを使っているのかと驚きの声をあげる。
 あとは判決を待つだけになった時、衝撃的なニュースが流れる。ソウル大学医学部教授が虚偽の実験をし、虚偽のデータを発表したことを、立会人のテフンが映像と共に暴露したというのだ。
 そのニュースをウシクは冷静に見ていた。実はウシクもオーツー社の加湿器殺菌剤を使用していて、妻と娘を亡くしていたのだ。ショックで一時的に会社を離れていたウシクは、社長に呼び出され仕事をあてがわれた時から、復讐の計画を立てていたのだ。
 テフンは彼の意図を受け取り、立会人となり、調査が捏造される様子を撮影しており、ウシクは、これは民事では済まされない殺人事件だと訴える。
 こうしてオーツー社の面々は拘束され、事情徴収されることになる。弁護士が自信満々に立ち合っていましたが、検事として現れたのはヨンジュだった。彼女の上司が復職させていたのだ。
 一方、安全性を認可していた国の責任を問う裁判の場にはテフンが立ち会う。省庁同士で責任を押し付ける様子にテフンは激怒する。
 その時、外から大きな声が聞こえてきました。裁判所の周辺に多くの被害者たちが集まり、抗議の声を上げていました。その中にはウシクの姿もあった。
 あくまで韓国内の実話をベースにした作品だが、政治家や金を使って証拠隠滅に走る企業人たちの姿が赤裸々に描写されている様は、我が国の姿にも通じるものを感じる。
 主演を務めたユン・ギョンホのみならず、ヨンジュを演じたイ・ソンビンの存在感が目立ち、男勝りの性格で、時に感情が暴走する検事として、シリアスな中に、唯一のコメディーリリーフの役割を果たしており、湿っぽくなりがちな題材を、エンタメ作品足らしめている。
 他のキャスト陣も素晴らしく、名優たちの演技によって没入感が得られ、実際に起きた恐ろしい事件の背景に震撼させられる良質の社会派ドラマに仕上がっている。
<評価>★★★★☆
<原作>ソ・ジェウォ
<監督・脚本>チョ・ヨンサン
<製作>ユ・ジェファン
<製作総指揮>キム・サンユン
#空気殺人 #映画 #韓国 #チョ・ヨンサン #キム・サンギョン #イ・ソンビン #ソ・ヨンヒ #ユン・ギョンホ #キム・ハオン #チャン・グァン #ソン・ヨンギュ #加湿器殺菌剤事件 #オキシー社 #サスペンス #加湿器 #スキャンダル #企業 #ライツキューブ
空気殺人~TOXIC~ [DVD]

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  • 出版社/メーカー: ライツキューブ
  • 発売日: 2023/04/25
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【映画レビュー】「ロストケア」(2023 日本) [映画]

【映画レビュー】「ロストケア」(2023 日本)
 2013年発行の第16回日本ミステリー文学大賞新人賞を受賞した葉真中顕の小説「ロスト・ケア」を原作に、前田哲監督のメガホンと、松山ケンイチと長澤まさみのダブル主演で、連続殺人犯として逮捕された介護士と検事の対峙を描いた社会派サスペンス作品。
 訪問介護会社の「ケアセンター八賀」の職員、斯波宗典(松山ケンイチ)と猪口真理子(峯村リエ)、そして新人の足立由紀(加藤菜津)は預かっている鍵を使って利用者の自宅へと入っていく。
 認知症の家主・梅田の世話をしていると、別に暮らしている娘の美絵(戸田菜穂)が慌ててやってくる。3人の子どもを育てながら夜は夫の焼き鳥屋を手伝い、昼は父親の介護をしている彼女の心身はもう限界だ。
 梅田家を出ると利用者の老人が徘徊しているのを見かけ、斯波は家へと送る。そんな斯波を足立は尊敬していた。センター長の代わりに利用者の通夜に向かう斯波に猪口と足立もついていき、亡くなった母と同居していた羽村洋子(坂井真紀)は離婚後、独りで幼い娘を育てながら介護をしていた。そんな彼女を斯波は労う。
 一方、検事の大友秀美(長澤まさみ)は、高級老人ホームに自ら入居した母を1か月ぶりに訪問する。「そんな頻繁に来なくていいのに」と言う母とは会話がかみ合わない。
 翌朝、実家にやってきた美絵はケアセンター八賀のセンター長、団の死体を発見する。さらに父も亡くなっていた。借金があった団は、利用者の自宅の合鍵を大量に持っており窃盗目的で梅田家に侵入、階段から足を滑らせて落下し死亡したという線で県警の捜査が始まる。
 しかし、捜査を始めた検事の大友は防犯カメラの映像から、アリバイがあると言っていた斯波が現場にやってきていたことを知り、取り調べを始める。
 斯波は利用者が心配で現場に行き、団と鉢合わせになってもみ合いになり転落死させてしまったと正当防衛を主張する。一度に2人も職員が抜けたら業務が回らなくなる、介護士は足りてないと斯波は主張する。
 家宅捜索で訪れた斯波の殺風景な部屋には3年に及ぶ介護ノートがあった。検察事務官の椎名幸太(鈴鹿央士)は、ケアセンター八賀での利用者の死亡件数が平均よりも圧倒的に多いことに気付き、大友は斯波の介護ノートを調べ始める。
 すると、死亡した利用者たちの死亡推定時刻が斯波の休日に集中していることを突き止める。上司の柊(岩谷健司)に大量殺人での立件を目指すことを報告した大友は、県警の沢登保志(梶原善)から証拠となる盗聴器を受け取り、被害者と思われる41人の写真を並べて斯波を尋問する。
 斯波はあっさり、殺人を認め、その理由を介護している家族が限界で救いの手が必要だったからと答える。盗聴器を仕掛けて家の中の様子を把握し、被害者が確実に1人の時間を狙って殺害していたと供述する斯波。梅田の家で彼を毒殺した斯波は、鍵を開けて入ってきた何者かがそのまま2階に上がったのでその様子を伺う。
 センター長の団が盗みをはたらいているのを目撃した斯波は彼を問い詰めるが反撃され、もみ合っているうちに団が階段から落下し死んだと主張する。
 ケアセンター八賀では、斯波が犯人だったことに動揺した足立が錯乱してしまう。猪口は彼女をなぐさめながら、おそらくやめてしまうだろうと感じていた。
 大友は、42人を殺したという斯波の言葉について考える。偶発的な事故死だった団を含めないとすると、あと1人は誰か?その手がかりをつかむために、斯波の介護士になる前の経歴を調べると、前職の印刷会社を辞めてから、斯波には3年4か月の空白期間があった。
 その間、彼は脳梗塞の後遺症で独りでは生活できなくなった父と同居し介護をしてい。アルバイトをしていたものの認知症が悪化し、独りで過ごさせることが困難になり、瞬く間に生活は困窮していく。「生活保護さえ受けられない、この社会には穴がある。この穴に落ちたらなかなか抜けられずおかしくなってくる」と斯波は淡々と語る。
 介護から逃げたくて殺した身勝手な殺人だと責める大友に対し斯波は、「検事さん。あなたは安全地帯にいる」と言い放つ。正気に戻った斯波の父は自分が認知症であることを自覚し、自分も息子も苦しんでいる現状を悲観し、自分を殺してほしいと、息子である斯波に頼むのだった。
 その後、入手した注射器にタバコから抽出したニコチンを入れて父に注射して殺害すると、斯波は警察を呼ぶ。その場で検死が行われたが、結果は心不全。斯波はこの犯罪がバレなかったことが、後の大量殺人のきっかけになったと語る。
 介護士として働き始めた斯波は、かつての自分たちのように介護に疲弊している家族をたくさん目の当たりにする。そして自分が救ってほしかったように、彼らを救うべく密かに殺人を続けてきた。
 それでも勝手に人の大切な家族を殺すのは犯罪だと、正論を吐く大友。しかし彼女も、音信普通になっていた父親が孤独死したアパートを訪れたばかりで、斯波の主張が正しいのではないかという考えが浮かぶ。そんな彼女に斯波は「殺人はよくないというあなたも私を死刑にして殺そうとしている」とつげ、大友は自分の信念が揺らいでいるのを感じる。
 大友と椎名は被害者の遺族にも話を聞く。美絵は斯波の極刑を望むが、母親を殺された羽村洋子(坂井真紀)は、自分も母も彼に救われたと語る。
 一方、ケアセンター八賀では猪口が団と斯波、そして足立のネームプレートを外す。介護士をやめた足立は風俗嬢となり、斯波のニュースにも耳に入らないようにする。
 洋子は以前からよく世話を焼いてくれていた春山登(やす)という男性と再婚する。辛い介護を経験した彼女にまた同じことをさせてしまうと躊躇する春山に対し、誰にも迷惑を掛けないで生きられる人なんていない、自分も迷惑掛けると思うと、笑顔で語り掛ける。
 日本中の注目を集める斯波の裁判で彼は、家族の絆は呪いでもある、自分のしたことは喪失の介護“ロストケア”だと言う。犯した罪は認め、極刑にも甘んじて受けるつもりの斯波だったが、自分のしたことは間違っていないと主張する。傍聴席からは美絵が「お父ちゃんを返せ!人殺し!」と叫んで退場させられる。
 老人ホームで母を見舞った大友は、既に会話が成り立たない母の姿に寂しさをおぼえ、その膝の上に顔をうずめる。母は頭をなでながら「よしよし」と何度も言い、大友は「お母さん!」と涙を流す。
 大友は結審した後、斯波との面会に望む。そして斯波に自らの親のことを話す。大友は斯波を死刑台に送りつつ、その考えを完全に否定できない自分を認めていた。そんな彼女に斯波は、父親を殺したときのことを話し始める。
 認知症になっても人間としての尊厳はある。だから苦しんでいる父を解放してあげなければいけないと斯波は殺害を決意する。しかし、いざ決行しようとすると、父は目の前の息子が誰か分かっていない状態。そして少し苦しんだ後、父は絶命する。部屋には不自由な手で折ったと思われる鶴が残されていた。それを開くと中にはつたない文字で、お前が息子で幸せだったと感謝の言葉がつづられており、それを読んだ斯波は泣き崩れたのだった。
 人は人を殺してはいけない。それが例え、痴呆症などで“廃人”寸前の人物であってもだ。
 しかし一方で、司法は「死刑」という手法で人を殺すことができる。その矛盾と不条理を余すところなく描いている。
 松山ケンイチ演じる斯波の正義と、長澤まさみ演じる大友の「正義」が真っ向からぶつかり、現代の日本社会が抱える深刻な問題に切り込んでいく。
 斯波の主張によって、法律上の正論を吐き続ける検事の大友の心が揺らぎ、しまいには怒鳴りつけてしまう様が、斯波の考え方の正当性を証明している。そして、冒頭に描かれた、大友の父の孤独死のシーンが、それを補完している。大友とて、私生活では父を見捨て、介護という“汚れ仕事”から逃れ、斯波が言う“安全な場所”にしがみ付いていたのだ。
 高齢化社会や、社会的弱者に冷たい行政の在り方に一石を投じる作品であり、脚本もキャスト陣の演技も画作りも完璧で、これでもかと言わんばかりに、不都合な真実を突きつけてくる。
 本作はたかが1本の映画かも知れない。しかし、斯波という存在を通じて、誰しもが逃れることができない問題を提示している秀作だ。
<評価>★★★★★
<公式サイト>https://lost-care.com/
<公式X>https://twitter.com/lostcare_movie
<監督>前田哲
<脚本>龍居由佳里、前田哲
<製作>鳥羽乾二郎、太田和宏、與田尚志、池田篤郎、武田真士男
<エグゼクティブプロデューサー>福家康孝、新井勝晴
<プロデューサー>有重陽一
<ラインプロデューサー>鈴木嘉弘
<アソシエイトプロデューサー>松岡周作、渡久地翔
<撮影>板倉陽子
<照明>緑川雅範
<録音>小清水建治
<美術>後藤レイコ
<衣装>荒木里江
<装飾>稲場裕輔
<ヘアメイク>本田真理子
<音響統括>白取貢
<音響効果>赤澤勇二
<編集>高橋幸一
<音楽>原摩利彦
<VFXスーパーバイザー>佐藤正晃
<助監督>土岐洋介
<キャスティング>山下葉子
<制作担当>村上俊輔、松村隆司
<原作>葉真中顕「ロスト・ケア」(光文社) https://www.kobunsha.com/shelf/book/isbn/9784334928742
<主題歌>森山直太朗「さもありなん」(UNIVERSAL MUSIC JAPAN) https://www.universal-music.co.jp/moriyama-naotaro/products/um1as-01285/
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  • 出版社/メーカー: TOEI COMPANY,LTD.(TOE)(D)
  • 発売日: 2023/08/02
  • メディア: Blu-ray






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【映画レビュー】「映画 マイホームヒーロー」(2024 日本) [映画]

【映画レビュー】「映画 マイホームヒーロー」(2024 日本)
 本作は、山川直輝(原作)、朝基まさし(作画)による講談社「週刊ヤングマガジン」連載の人気マンガを原作とし、2023年秋に深夜枠で放送されたドラマ「マイホームヒーロー」の完結編だ。
 TBSでは、深夜1時半という深い時間の放送で、しかも30分枠ながら、マニアックな人気を誇るドラマ枠だ。ここからは、『賭ケグルイ』や『映像研には手を出すな!』が映画化に至っている。
 一人娘の零花(齋藤飛鳥)の交際相手を装いながら、彼女に危害を加えようとしていた麻取延人(内藤秀一郎)を殺し、延人が所属する半グレ組織と命がけの闘いを繰り広げたおもちゃメーカー「HOLIDAY HOBBY」の営業マンであり、家庭では良き父である鳥栖哲雄(佐々木蔵之介)が主人公だ。
 ドラマ版では、哲雄に殺された延人の父・義辰(吉田栄作)と対峙しながらも、義辰はナイフで自らを刺す。哲雄は驚きながらも命拾いしたが、その死体を奥多摩町の御後山山中に埋めたところまで描かれている。
 そして劇場版では、その7年後からストーリーが始まる。哲雄家には長男も生まれ、零花は警察官となり、強行犯捜査の第一線である捜査一課に配属されていた。
 台風による土砂崩れによって、哲雄がかつて御後山に埋めた義辰の死体が発見されてしまう。
 居ても立っても居られなくなった哲雄は車を走らせ、御後山の土砂崩れ現場を見に行き、そこでマル暴刑事である安元浩司(立川談春)と出会う。
 安元は、見つかった死体が、義辰のものという情報をつかんでいたために派遣されたのだった。哲雄は安元に「バードウォッチングに来ました」などと、見え透いた嘘をついて、その場をやり過ごすが、安元は、この遺体に哲雄が関わっていたことを確信する。
 捜査本部が立ち上がるが、哲雄も“事件関係者”と目されていたため、その娘である零花は捜査から外されてしまう。さらに、当の零花も、父に疑いの目を向け始める。
 一方、死体とともに消えた、義辰の財産10億円の行方を追っていた半グレ集団「間野会」のボス・志野寛治(津田健次郎)は、哲雄に狙いを付ける。志野はその凶暴な性格とカリスマ性から、死んだ義辰の後を継いで、窪(音尾琢真)や竹田(淵上泰史)を差し置いて、トップの座に就いていた。
 手始めに志野は、窪を使って鳥栖の自宅を爆破する。その直前に哲雄が暗示めいたメールを受信しており、消火器を用意していたため、命は助かったものの、一家の思いでの品々はほとんど燃えてしまった。しかし、これは闘いの始まりを告げるゴングでしかなかった。
 佐々木蔵之介と津田健次郎といえば、テレビ朝日系ドラマ『グレイトギフト』でも共演し、ともに殺人球菌に憑りつかれ、人間性が崩壊していく様を好演していたが、本作では、主人公・哲雄を演じる佐々木は、部下の信頼も厚い理想の上司である半面、家族を守るためならその命をも賭す覚悟を持った父親となる二面性を持ち、片や志野役の津田の狂気に満ちた演技も迫力十分で、実に恐ろしい。
 独自に捜査していた零花は、ある男性を訪ねる。それはドラマ版最終回で哲雄らの策略によって、延人を殺した犯人に仕立て上げられ、逃亡した間島恭一(高橋恭平)だった。
 身分を隠して港湾工事の現場で働いていた恭一。事件のカギを握っているであろう彼を通して真相に迫ろうとする零花。一方で、哲雄への復讐と間野会への復帰の機会をうかがっていた恭一は、零花の提案に乗る。
 しかし、恭一の狙いは哲雄のクビでも、消えた10億円でもなかった。「10億円の在りかを知っている」と志野に近付き、最後には自分を見捨てた間野会の壊滅を目論んでいたのだ。
 ところが警察にも半グレにも追われるハメとなった哲雄は、志野に捕らえられてしまう。警察官で捜査本部にも名を連ねている薬師寺(大東駿介)が、間野会とつながっていたのだ。
 志野は、哲雄の妻・歌仙(木村多江)と息子の明(石塚錬)を人質に取り、10億円と引き換えに、哲雄を密室に追い込む。逃亡する中で、既に傷だらけの体の哲雄は、ともに閉じ込められた零花とともに、父娘ならではのコンビプレーでこの窮地を脱する。この伏線は、毎年恒例の鳥栖一家の家族旅行で、幼かったころの零花の思い出がヒントとなっている。なかなか手の込んだ仕掛けだ。
 志野との対決の中で、哲雄は正義を叫ぶが、一方の志野も、その思いは同じなのだ。かつて娘が命の危険にさらされた哲雄だが、志野は家族同然の仲間を殺されている。志野とて彼なりの“正義”に従って行動していたのだ。
 半グレ集団から娘を守るために殺人を犯した哲雄は最後、その愛する娘から、涙ながらに手錠を掛けられる。そして刑務所内、哲雄が家族から届いた手紙を読むシーンで、7年越しの物語は終わる。
 基本的には、娘への可愛さ余って人を殺めてしまうサスペンスドラマで、アクションシーンも本格的なのものだが、突飛なストーリーと、オーバーアクションなまでのキャストの演技によって、どこかコメディー色も帯びている本作。しかし「完結編」と銘打っただけに、哲雄が服役しているにもかかわらず、ありふれる家族愛に満ちた“ハッピーエンド”で締められている。
 冒頭に、ドラマ版の大まかなあらすじと、キャラクター設定がある程度、説明されており、初見でも楽しめる構成になっているが、ドラマのダイジェスト版が公式YouTubeで公開されているので、予習してから鑑賞すれば、さらに楽しめるだろう。
 演技に定評のあるキャストが名を連ねているだけに、どのような切り口からも楽しめる作品だ。
 佐々木蔵之介の多面的な表情を楽しむも良し、津田健次郎の狂気に怯えるも良し、美しいだけではなく、凛とした強さも兼ね備えたの齋藤飛鳥の魅力を味わうも良し、そして、大東駿介演じる薬師寺のように、刑事でありながら裏で半グレとつながっているという、ブラックな設定を楽しむも良しだ。
 優しく夫を支えつつも、ドラマ版で「あなた、人を殺すのは初めて?」というトンデモなセリフで爆笑を誘った木村多江演じる歌仙も、頭のネジが1本抜けたようなキャラクターの持ち味を十二分に発揮している。
 おそらく、初めから「殺人サスペンス」としてみれば物足りない作品かもしれない。しかし、親子愛をテーマとした娯楽作としてみれば、本作はその期待に十分に応えているのではないだろうか。
<評価>★★★☆☆
<公式サイト>https://wwws.warnerbros.co.jp/mhh-moviejp/
<公式X>https://twitter.com/mhh_drama_movie
<公式Instagram>https://www.instagram.com/mhh_drama_movie/
<公式TikTok>https://www.tiktok.com/@drama_mbs
<監督>青山貴洋
<脚本>船橋勧
<エグゼクティブプロデューサー>菊野浩樹、丸山博雄
<プロデューサー>松本桂子、水木雄太、尹楊会、村山えりか
<撮影>榊原直記
<照明>高橋謙太
<録音>矢野正人
<美術>小林蘭
<装飾>岩本智弘
<衣装>天野泰葉
<ヘアメイク>木戸出香
<CGアートディレクター>中島颯星
<DIプロデューサー>齋藤精二
<編集>佐藤和志
<音楽>堤博明
<スクリプター>杉本友美
<助監督>森裕史
<監督補>棚澤孝義
<制作担当>馬越昭光
<主題歌>Eve「インソムニア」 https://eveofficial.com/discography/insomnia.html
<原作・漫画>山川直輝・朝基まさし「マイホームヒーロー」(講談社) https://magazine.yanmaga.jp/c/myhomehero
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映画『マイホームヒーロー』オリジナル・サウンドトラック

映画『マイホームヒーロー』オリジナル・サウンドトラック

  • 出版社/メーカー: Anchor Records
  • 発売日: 2024/03/06
  • メディア: MP3 ダウンロード






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