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【映画レビュー】「阪神タイガース THE MOVIE 2023 栄光のARE」(2023 日本) [映画]

【映画レビュー】「阪神タイガース THE MOVIE 2023 栄光のARE」(2023 日本)
 本作は、2005年以来18年ぶりのリーグ優勝と、1985年以来38年ぶりの日本一を成し遂げた阪神タイガースの2023年シーズンの軌跡を辿ったドキュメンタリーだ。
 本編は冒頭、まさに阪神が優勝を決める瞬間、戎橋に集うファンの姿を上空から映した映像から始まる。
 2008年以来、15年ぶりに虎のユニフォームに袖を通した監督・岡田彰布はもちろん、主力として活躍した村上頌樹、近本光司、大山悠輔、岩崎優、大竹耕太郎、佐藤輝明、中野拓夢、森下翔太といったメンバーのインタビューを軸に、ペナントレースを制する上でキーとなった試合の映像も交えて構成されている
 監督就任会見で「優勝は“アレ”としか言わない」と宣言した岡田。そして第2次岡田タイガースの船出となる秋季キャンプでは、ナインの前で「“アレ”を目指す」と告げる。これは、岡田がナインに無用なプレッシャーを与えないように言い換えた言葉であり、そしてその言葉は、シーズンのスローガン「A.R.E. (Aim!Respect!Empower!)」としても採用される。
 本作を見る前まで筆者は、今季の阪神は、岡田が発した言葉の持つ魔力によってナインが“集団催眠”のような状態になり、実力以上のものを発揮できた末の優勝だと思っていた。
 それは1996年、当時の巨人・長嶋監督から発せられた「メークドラマ」という、ミスターならではの和製英語によってナインが奮起し、11.5ゲーム差からの大逆転優勝を成し遂げたエピソードが想起され、今回の阪神の優勝も、それに近いものなのだろうと感じていたからだ。「アレ」も「メークドラマ」も、その年の流行語大賞に選出されたことで一致していたこともその一因だ。
 しかし、その認識は間違っていたと、本作を通し痛感し、同時に「優勝とはそんな薄っぺらいものではない」と言われているようで、反省させられた。
 就任当時、65歳を迎えていた岡田。もちろん12球団最高齢で、オリックスで最下位に終わった2012年以来11年ぶりの現場復帰とあって、そのブランクを不安視する声も少なくなかった。
 しかも阪神は12球団で唯一、平成生まれの選手しかいない最も若いチームだ。そんなチームに岡田は「最も可能性を秘めている」と、ポジティブな第一印象を語っている。
 岡田がまず着手したのが、内野手の固定だ。遊撃手として絶対的存在で、侍ジャパンに選出され、WBCで世界一も経験した中野を、何のためらいもなく二塁手にコンバートする。加えて一塁手に大山、三塁手に佐藤輝、遊撃手に木浪(開幕時は小幡)で固め、打線も「4番・大山」でフルシーズンを戦うことを決意する。
 岡田の采配は独特だ。基本的には堅実な試合運びをする一方で、勝負どころと見ると、代打・代走を立て続けに投入し、全力で1点を取りに行く野球だ。自ずと試合に絡む選手は増えていき、層も厚くなっていく。
 その真骨頂は、6月5日の交流戦・ロッテ戦。相手マウンドに立ったのは“令和の怪物”佐々木朗希だ。
 先発・才木も踏ん張り、0-0の膠着状態で試合は進む。しかし、5回まで無安打だった阪神打線がワンチャンスをものにする。6回に先頭の中野が四球で出塁。二盗と暴投で1死三塁のチャンスを作ると、大山がチーム初安打となる右前打で先制に成功する。そして結果、この試合をものにする。
 岡田は「四球の価値」を高めた指揮官でもある。フロントに、四球を安打並みの査定ポイントとするように直談判し、その結果、ナインの意識も高まり、四球を選ぶシーンが飛躍的に増えた。四球で出たランナーが試合を決めたことも一度や二度ではない。ベテラン監督ならではの、野球を知り尽くした“名采配”だ。
 半面、作中では、岡田の人間臭い一面も明かされている。
 7月25日に甲子園で行われた、阪神OBにして脳腫瘍のため28歳の若さで亡くなった故・横田慎太郎氏の追悼試合・巨人戦を4-2で制した後のことだ。
 岡田は述懐する。「なぜ4-2というスコアに注目しないんだ?横田の背番号(24)と同じだろ?記者連中はどこを見ているんだ?」と気色ばんだのだ。
 また、8月18日のDeNA戦では、熊谷の盗塁がリプレー検証の上でセーフからアウトになったことで審判団に激高。平田ヘッドが仲裁に入り、退場は免れたものの、これを機にNPBが動き、コリジョンルールの解釈変更を検討するに至った。選手よりも目立つことを良しとしない岡田だが、ここぞの場面では悪役をも買って出るボスの姿に、ナインが燃えないはずはない。
 5月の快進撃、交流戦での足踏み、そしてマジック点灯後の無敵ぶりを、迫力ある試合映像とともに振り返った本作。
 クライマックスは、9月14日、甲子園での巨人戦でリーグ優勝を決め、胴上げされるシーンだ。
 そして、「関西対決」となったオリックスとの日本シリーズを4勝3敗で制し、日本一となったシーン、さらに、11月23日、御堂筋で行われた優勝パレードのシーンが立て続けに映し出される。
 その後、主力選手に岡田監督の印象を聞いていく。他選手がありがちな答えをする中、主砲の大山は、指揮官の印象を「無」と表現する。大山はその意図を明かさなかったため、筆者の頭には「?」がよぎる。
 まさか「無策」の無ではあるまいし、「存在感が無い」という意味でもなかろう。
 考え方を変えてみれば、選手に「無」と言わしめてしまうほど、“選手第一”に徹した指揮官なのだという着地点に落ち着く。
 「アレ」という言葉ひとつで選手のみならず、マスコミやファンをも巻き込み、優勝ムードを一層盛り上げた岡田の手腕は、抑えの3本柱「JFK(ジェフ・ウィリアムス、藤川球児、久保田智之)」に頼り切りで優勝した第1次政権時よりも、一皮も二皮もむけた印象を与えた。
 こうなると、欲深い阪神ファンが連覇を期待するのは必然だ。その年齢から岡田の長期政権を望むのは酷といえるが、幸いナインは若く、伸びしろは十分にある。そこに日本一の経験も加わったのだ。
 来季は他球団も目の色を変えて「阪神包囲網」を仕掛けてくるだろう。しかし、勝負どころの見極めに優れた指揮官の下、粘り強い野球で勝利を重ねたナインの経験値をもってすれば、連覇も十分可能だろう。
 それどころか、今季の優勝は黄金時代の始まりに過ぎないとさえ思えるのだ。それほどまでに、今季の阪神は奇策に頼らず手堅い野球をしていたからだ。
 そして岡田は来季、どのようにチームをマネジメントしていくのかも見ものだ。さらに今季の「アレ」に続くキーワードは飛び出すのか、今から楽しみでならない。
<評価>★★★★☆
<公式サイト>https://tigersmovie2023.com/
<公式X>https://twitter.com/tigersmovie2023
<監督>今村圭介
<制作>ベスティ/G・G
<協力>朝日放送テレビ
<配給>ティ・ジョイ
<製作幹事>TIME
<特別協力>阪神タイガース
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